ICOってなに?仮想通貨での資金調達がスタートアップにもたらす影響

資金調達手帳

はじめてのICO入門

(2017/09/15更新)

ICOによりわずか3時間で約170億円の資金調達…。昨今このような信じられないニュースが世間を騒がせています。

ところで、ICOとはいったいどういうもので、どうしてこんなことが可能になるのか?その仕組みについて知らない方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、世界中のスタートアップ企業が注目するICOについてわかりやすく解説していきます。

ICOとは

ICO(Initial Coin Offering)は日本語に訳すと、「新規仮想通貨公開」となります。
かんたんにいうと、資金調達を行うために、新しく仮想通貨を発行する、いわばIPO(新規株式公開)の仮想通貨バージョンのようなものです。

仮想通貨とは

仮想通貨とは、高度な暗号技術を用いたインターネット上で取引されている通貨のことです。国家による価値の保証がなく、仮想通貨を使う人々が信じることによって成り立っています。
メジャーな仮想通貨に「ビットコイン(BTC)」や、「イーサリアム(ETH)」などが挙げられます。

仮想通貨は国家による束縛を受けないため、国境を超えた取引を手軽に行うことができるというメリットがあります。

ICOとIPOの違い

IPOもICOも、一般の投資家から資金調達をする目的で行われます。しかし、株式を公開するか、仮想通貨を公開するかというところに大きな違いがあります。

IPO(新規株式公開)は、証券取引所に上場し株式を売買可能の状態にすることをいいます。
上場のためには、資本政策の策定や、経営体制の整備、申請書類の作成などで3年前後の準備期間が必要となります。
また、上場審査料や、新規上場料、登録免許税などをあわせると、一般的なスタートアップならば4000万円から5000万円ほどが上場費用として必要となってきます。

ICO(新規仮想通貨公開)は、企業が「独自トークン」よばれる仮想通貨を発行し世界中の一般投資家から仮想通貨で資金を調達する仕組みのことです。
「トークン」とは、既存の暗号技術(ブロックチェーンなど)を使って発行した仮想通貨のことを指します。
“独自の仮想通貨を発行する”といっても、トークンは誰でも発行できるもので、独自技術を開発するわけではないので難しいことではありません。

企業の独自トークンの発行には専用のサービスがあり、IPOよりもはるかに手軽で、コストを抑えた資金調達を実施することができます。

さらに、IPOの場合は上場するだけの事業規模がなければ資金調達ができませんが、ICOの場合はプロジェクトの開始直前・直後から資金調達を行えるため、多くのスタートアップ企業から注目を集めています。

ICOとクラウドファンディングの違い

ICOとクラウドファンディングのどちらも、インターネットにより幅広い投資家から小口の資金を集めることができるという点で共通しています。
違うところは、対価として独自トークンを渡すか、商品や特典などを渡すかの違いとなります。

ICOの場合、商品や特典などで投資家に還元できない、公益性の高いプロジェクトなどでも資金調達が可能となります。
また、商品そのものを対価として渡すわけではないため、確実に有益なプロジェクトだとしても商品としては欲しくないという投資家からの投資機会を増やすことができます。

スタートアップ企業がICOを行うメリット

ICOはスタートアップにとって多くのメリットがあります。

資金調達にかかる費用が安い

どのツールを使うかにもよりますが、ICOを行う際、手数料わずか数百円で済む場合もあります。この点は、資金のすくないスタートアップにとって圧倒的なメリットでしょう。

会社の株式を放出する必要がない

上場をすると、敵対的な買収の恐れや、株主構成比による会社の自由度低下の恐れも考えられますが、ICOでは株式を外部に吐き出す必要がありません。

広報的な働き

投資家にとっては、投資した企業のトークンが値上がりすればするほど自らの利益になるため、企業の宣伝などを熱心にすることになるでしょう。
資金調達のひとつの手段としてだけではなく、マーケティングの観点からもみるべきものがあります。

スピード感を持った迅速な資金調達が可能

迅速な資金調達が可能となるため、市場の流れに乗ったプロジェクトをすぐに立ちあげることもできるようになるでしょう。

海外でのICOの現状

海外におけるICOによるインパクトは非常に大きく、北米を中心に短時間で巨額の資金調達を実現させている企業が次々に出てきています。
例えば、ウェブブラウザのFirefoxを開発しているMozillaの前CEOのBrendan Eich氏が設立した企業「Brave」が、ICOによりわずか30秒で約40億円を調達し、非常に注目を集めました。

イーサリアム上に構築された分散型モバイルメッセージングプラットフォーム「Status」は、たった3時間で約300億円を調達しています。

また先日、米国の世界的金融機関ゴールドマン・サックスがアーリー期のスタートアップの資金調達状況についての調査結果を発表。これによると、2017年6月〜7月において、VCからの資金調達額よりもICOによる資金調達額が上回っているというデータが出ています。
また、2017年4月の時点では総額1億ドルだったICOによる資金調達が、5月までに2億5000万ドルと2倍以上になり、6月には5億5000万ドルを超えています。

ICOによる資金調達は世界的な注目度も高く、今後も大型調達のニュースが次々と聞こえてくるのではないでしょうか。

日本国内でのICOは?

実は日本では、世界にさきがけて仮想通貨法が成立しており、仮想通貨の取り扱い業者は内閣総理大臣の登録を受けた者(仮想通貨交換業者)でないと事業を行うことができません。

様々な問題や不安要素もある仮想通貨ですが、日本で事業を行っている取引所などはある程度安全だといえるでしょう。

また、今後金融庁から公式に取扱いを許可する仮想通貨が発表される予定で、金融庁に許可されないと国内の取引所で売買できなくなるといわれています。

これを受け、仮想通貨取引所の「Zaif」を運営しているテックビューロ社では、仮想通貨法を法的な根拠として2017年10月2日にICO事業を開始することを発表。大変な話題を呼んでいます。

ICOプラットフォーム「COMSA」とは

テックビューロ社が開始するサービス「COMSA」は、企業のICOによる資金調達と、既存アセットのトークン化技術、Zaif取引所、内部勘定技術をワンストップのソリューションで提供する日本初のICOプラットフォームです。

今までのICOでは、ハッキングによってスタートアップが発行したトークンが奪われてしまう可能性がありました。実際に「The DAO事件」と呼ばれる50億円以上のトークンがハッキングにより盗まれる事件も起こっています。
このリスクをなくすために、システムと資金管理を「COMSA」が引き受ける形になっています。

「COMSA」でICOをすると「Zaif」での上場が約束されているため、投資家にとっても安心して取引ができます。

また「COMSA」のICO参加の審査基準は、10社中9社断っているほど非常に厳しく設けているようです。
狭き門にはなりますが、我こそは!という起業家の方は、「COMSA」を利用したICOにも是非挑戦してみてはいかがでしょうか。

まとめ

法的整備や、厳しい水準を設けた新たなプラットフォームの誕生などを考えると、日本でのICOは野放図にできるようなものではなく、健全な資金調達手段として確立されていくのではないかと期待されています。
またICO事業は今後も増えていくと予想されるので、エンジェル投資家に似たような立ち位置のICOプラットフォームも誕生するかもしれません。

しかし一方で、世界中でICOはバブルといわれていることもあり、まだまだ不安定な世界でもあります。

果たしてICOがどのような動きを見せていくのか、国内外での今後の展開にも注目していきたいですね。

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“仮想通貨業界のルール”を創った起業家 bitFlyer代表加納氏インタビュー

(執筆:創業手帳編集部)

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