個人事業主の請求書の書き方って?インボイス制度も合わせて解説!
個人事業主は請求書の書き方に悩みがち?気になるインボイス制度も解説します
請求書は、事業者が取引きを行う上で欠かせない書類です。個人事業主の中には、書き方に迷ってしまう人もいるかもしれません。
請求書に記載すべき項目や、トラブルを防ぐための項目を覚えておけば、取引きをスムーズに進めることができます。
今回は、請求書の書き方や送付の仕方だけでなく、個人事業主にも関わりの深いインボイス制度も合わせて解説します。
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この記事の目次
請求書とはどのようなものか
そもそも、請求書とはどのような書類なのでしょうか。
請求書の意味について
請求書は、証憑(しょうひょう)書類のひとつであり、取引先に商品・サービスを提供した際に、その対価の支払いの請求を行うための書類です。
この書類を取引先に送ることにより、先方の未払いミスを防ぐほか、適正な取引きを行った証明や、売上げの管理にも役に立てることができます。
なお、請求書に記載する項目はいくつか挙げられますが、書式自体に決まったものはありません。
ほかの書類とどう違うのか
請求書と同様に取引先と交わす書類には、以下のようなものがあります。
・見積書
見積書は、取引先に対して提供する商品・サービスの内容や金額について、あらかじめ提示する書類です。
見積書の内容をもとに、取引先が契約の可否を決定するものであり、双方の同意を得た上で契約を結んだことが示せます。
・発注書
発注書は、取引先に商品・サービスを発注するために発行される書類であり、受け取った側にその内容を承諾してもらうためのものです。
そして、契約書を交わした時点で、双方の同意が得られたことを示しますが、商法によると発注書の内容の承諾を契約書で通知しない場合は、自動的に承諾したものとみなされます。
・契約書
契約書は、あらゆる取引きにおいて双方で交わす書類であり、大きな法的効力を持つため、発行が強く推奨されます。
発行を受けた側が契約不履行を行った場合、強制履行もしくは損害賠償を求められるケースもあるほか、社会的信頼を失うことにもなりかねません。
・納品書
納品書は、商品・サービスを提供したことを書類で示すものです。
契約書どおりに成果物を納める義務を遂行したことを取引先が確認すれば、請求書を発行して取引先に対価を求めることが可能です。
請求書に記載すべき項目5つ
以下では、請求書に記載すべき項目について紹介します。
1.発行者の社名・氏名
商品・サービスを提供した側=請求書の発行者の会社名もしくは個人氏名を記載します。個人事業主の場合、屋号があればその名称を入れます。
請求書に記載するのは会社名や個人氏名だけでも問題ありません。しかし、住所や電話番号などの連絡先を記載しておけば、後々のトラブルを防ぐことにつながります。
2.取引きをした年月日
実際に、取引きが発生した年月日を明記します。この日付は、契約内容や取引先の規定によって異なるものの、請求書の発行日や取引先の締め日にすることが多いようです。
取引きの日付を記載することにより、いつ何をどのように取引きしたかが明確になります。
3.取引きの内容
提供した商品・サービスの内容を明記します。軽減税率を採用している場合、税率ごとに対価が異なる旨を「区分記載請求書保存方式」に基づいて盛り込む必要があります。
また、2023年10月から、課税事業者(2期前の課税売上高1,000万円超)が仕入税額控除を受けるためには、後述する「適格請求書等保存方式」(インボイス方式)を導入しなければなりません。
・軽減税率について
2019年10月より適用された制度であり、消費税が8%から10%に引き上げられました。
しかし、酒類および外食以外の飲食料品、定期購読を行う新聞に対しては、消費税を8%のままにする制度が、軽減税率制度です。
これら軽減税率の適用を受ける商品と、それ以外の商品を同時に扱う企業や店舗では、それぞれの税率に応じた計算を行わなければなりません。
4.取引金額
上記の取引内容と税率をもとに単価と数量を計算し、消費税額とともに合計金額を算出します。この時、軽減税率を適用した税額は別途記載を行います。
5.発行先社名・氏名
最後に、請求書の発行を受ける発行先の会社名・個人氏名・屋号を明記します。先方に提出する書類であるため、名称は省略せずに正式なものとします。
請求書のトラブルを防ぐための項目6つ
さらに、取引先とのトラブルを防ぐために入れておくと良い項目を以下に紹介します。
1.書類の名称
書類の名称、つまり同ページで説明している「請求書」であることが一目でわかるよう、大きめのフォントで名称を記載します。
2.請求書番号
請求書番号は、取引先に発行した請求書ごとに番号を付けるものです。請求書番号を付けることで、先方からの問い合わせや会計処理をスムーズに行えます。
3.支払期限
対価の授受がしっかりと行えるように、契約時に支払期限を決めておくとなお良いでしょう。
もし期限を過ぎてしまった場合には、契約不履行として延滞料金の請求が行えるケースもあります。
4.金額の振込先
対価を振込みで受け取る場合は、振込先の口座を必ず書いておきます。
5.振込手数料負担
振込みで入金してもらう場合、振込手数料はどちらが負担するのかを事前に決めておくことをおすすめします。
6.印鑑
請求書に印鑑で捺印しておくことで、証拠書類としての効力を上げることが期待できます。また、印鑑により改ざんも防ぐことが可能です。
個人事業主が迷いがちな請求書の作成・送付について
ここで、個人事業主が請求書を書く際に注意すべき点を説明します。
金額はこのように記載する
個人・法人にかかわらず、請求書内の金額は一目で見て理解できるようにしておくことが大切です。
それは、桁の間違いや金額の認識違いなどのミス、もしくは何らかの不正を防ぐためです。
金額を記載する時は、前に「¥」や「金」を記入、後ろには「‐」や「円也」を記入し、桁を増やせないようにします。
さらに、3桁ごとに「,」を入れると、金額の桁がよりわかりやすくなります。
源泉徴収されているか確認する
個人事業主の場合、成果物に対して源泉徴収税を差し引かれることがあります。
源泉徴収税とは、あらかじめ所得税を概算して対価の金額に応じて算出し、取引先に納税してもらうものです。
源泉徴収を受けている場合、その旨を確認し、請求書にはその金額を明記した上で、合計金額から差し引いて計算を行います。
消費税は詳細に記載する
消費税は、課税事業者か免税事業者(2期前の課税売上高1,000万円以下)を問わず、請求書には正しく記載しておく必要があります。
課税事業者は、消費税を納税する必要があることはもちろん、免税事業者であっても取引先に消費税分を請求することが可能であるためです。
さらに、軽減税率の導入により、税率ごとに消費税と対価の合計額をそれぞれに記載しなければなりません。
印鑑があれば証拠書類としての効力が増す
前述のように、請求書に個人事業用の印鑑もしくは個人の印鑑が捺印してあれば、請求書が証拠書類として成立する可能性が高く、信頼度を得ることも期待できます。
印鑑については、データでやりとりをする場合には、近年普及している電子印鑑でも問題ありません。
請求年月日の記載に注意
請求年月日は、契約時に請求書を発行した日付か、月ごとの締め日かを決めておきます。ただし、請求年月日を成果物の納品日以前に設定することはできません。
また、取引先の締め日についてしっかり理解しておかなければ、入金までに思わぬ時間がかかってしまうことがあります。
例えば、月末締め当月末と勘違いして、その月の21日に請求書を発行したとしても、取引先の締め日が20日で翌月末払いであった場合、認識に齟齬(そご)が生じてしまいかねません。
この場合、当月末に入金があるものと思っていても、翌月末まで入金を待つことになります。
データ送付の場合は確認を取る
2022年1月より国税関連の書類を電子保存することが義務付けられ、紙のやりとりを行っていたとしても、データとして保存する必要が出てきました。
そのため、双方の確認さえ取れれば、データで請求書をやりとりすることも問題ありません。
「様」と「御中」の使い分けに気を付ける
請求書の発行先名称では、正式なものを記載するだけではなく、「様」と「御中」の使い分けに注意が必要です。
会社名のみ・会社名および部署名のように、不特定多数の団体宛てに発行する場合は「御中」を使用します。
そして、部署名の後に個人名を入れる場合、また個人名のみのように、個人宛てにする場合には、「様」をつけます。
ただし、「株式会社 御中 〇〇様」のように、「様」と「御中」の併用はできない点にも注意してください。
締め日をきちんと決めておく
前述した請求書の締め日については、通例となっている決め方があります。基本的に月末締めとなっていることが多いほか、5日ごとに区切られている場合もあります。
請求書の締め日は、会社および個人事業主ごとに異なるものです。また、自身の請求書の締め日も、上記の慣例に従って決めておけば、混乱することが少なくなります。
個人間の取引きでも書類はしっかり交付する
個人事業主同士の場合、口頭でのやりとりもあるかもしれません。
しかし、事業としてスムーズに取引きを進めるためにも、会社との取引きと同様に考えることが望ましいといえます。
請求書はもちろん、見積書から契約書、納品書をしっかり交わしておくことで、様々に起こりうるトラブルを回避できます。
2023年10月から導入されるインボイス(適格請求書)の影響は?
2023年10月より、インボイス方式(インボイス制度・適格請求書保存方式)が導入されます。
個人事業主の多くが免税事業者である中で、この制度において注意すべき点を説明します。
インボイスとは何か
インボイスとは、下記に説明する記載事項を満たした適格請求書のことを指します。
そして、インボイス制度は軽減税率によって複雑化した消費税率にそれぞれ対応したインボイスを発行することで、後述する仕入税額控除を受けられるものです。
インボイス制度における請求書の記載事項について
インボイス制度における請求書の記載事項は、以下の項目です。
-
- 請求書の発行者の会社名および個人名と屋号
- 取引きが行われた年月日と請求書発行年月日
- 取引きの内容
- 取引きの合計金額
- 発行先の会社名および個人名と屋号
- 軽減税率を導入している場合はその旨を示す記載
- 税率10%・8%それぞれに区分した税込み金額、もしくは税抜き金額と消費税の合計
- 税率ごとに区分した消費税の金額
- 「適格請求書発行事業者」の登録番号
インボイスが適用されるのは課税事業者だけ
インボイスの発行が適用されるのは、前述した課税事業者のみです。つまり、免税事業者はインボイスを発行することができません。
個人事業主も覚えておきたい仕入税額控除について
仕入税額控除とは、仕入れの際に取引先に支払った消費税額から、商品・サービスを販売した際に顧客から預かった消費税額を差し引いて、差額のみを納める制度です。
この仕入税額控除の対象とならなければ、仕入れで支払った消費税と、販売の際に預かった消費税の合計額をそのまま支払わなければならず、納める税額がより膨れ上がってしまいます。
仕入税額控除を受けるためにインボイスが必要
インボイス制度の適用を受け、仕入税額控除の対象となるには、インボイスの発行が必要条件です。
つまり、免税事業者が仕入税額控除を受ける場合は、課税事業者として登録を行い、インボイスを発行しなければなりません。
インボイス制度による免税事業者の影響について
インボイスの発行ができない事業者からの仕入れが困難
インボイスを発行していない事業者から仕入れを行うと、仕入税額控除を受けることができません。
そこで、仕入税額控除を受けたい課税事業者は、インボイスを発行できない免税事業者からの仕入れを渋ることが考えられます。
そのため、免税事業者は取引先をなくしてしまうことが危惧され、免税事業者の割合が多い個人事業主は窮地に立たされることも辞さないと考えられます。
取引きを続けるために課税事業者の登録も視野に
以上の理由から、個人事業主が免税事業者である場合、取引きを打ち切られるだけでなく、個人事業主が不利になるような契約内容の大幅な変更を求められることも想定されます。
このような状況を回避するために、免税事業者である個人事業主が課税事業者への登録を行うことを視野に入れるのも方法のひとつです。
個人事業主にできるインボイス制度の対応方法とは
課税事業者になるために準備する
・「適格請求書発行事業者」への登録
免税事業者が課税事業者に登録する場合、まずは税務署に「適格請求書発行事業者」の登録を行います。
制度が開始される2023年10月1日からインボイスを発行するためには、2023年3月31日までに上記の書類を提出するのが原則です。
ただし、2023年10月1日から2029年9月30日までに登録を行った場合、その登録日から課税事業者となる経過措置を受けることができます。
・「消費税課税事業者選択届出書」の提出
課税事業者になるためには、基本的に「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に届け出る必要があります。
しかし、前述した「適格請求書発行事業者」への登録を行った場合、「消費税課税事業者選択届出書」の提出は必要ありません。
ちなみに、課税事業者になるにあたり注意すべきことは、課税事業者になった日から2年間は免税事業者に戻ることができない点です。
・インボイス発行の準備を行う
課税事業者になり、インボイスを発行できるようになれば、インボイスの要件を満たした請求書のフォーマットを作ります。
また、会計処理の変更にともない、レジシステムや会計システムの変更にも着手する必要があります。
消費税納税の不安がない働き方にシフトする
課税事業者となる道を選んだ場合、自身の事業において消費税を納税しても大きな負担にならないよう成長させる方法を見直すことが得策です。
一方で、免税事業者同士で取引きをしていれば影響はありません。
また、制度開始から6年間の経過措置により、インボイスを発行しない事業者との取引きでも一定の仕入税額控除を受けられることになっています。
慌てて対処せずじっくり考慮する
上記で示したように、インボイス制度には6年間の経過措置があります。この経過措置は、事業者の諸事情により登録が遅れることを視野に入れています。
そのため、制度開始後でも、経過措置の期間中に課税事業者となるか免税事業者のままでいるかをじっくり考えてみてください。
取引先から一方的に打切りを通告されたら
課税事業者である取引先から、一方的に打切りを通告された場合や、個人事業主が不利になるような条件を提示された場合には、その条件が法に触れる場合があります。
その法律には、独占禁止法や下請法などが挙げられ、個人事業主の対応次第では取引先を糾弾できる可能性があります。
インボイス発行に関連するシステムについて
インボイスを発行するには、関連するいくつかのシステムにも対応させなければなりません。
請求書発行に関するシステム
請求書発行をシステム管理している場合、そのシステムにおいてインボイスに必要な事項をすべて網羅できるようにアップデートすることが求められます。
会計関連システム
会計システムを導入している場合には、課税事業者と免税事業者それぞれの取引きを分けて計算しなければなりません。
これは、仕入税額控除を行えるか否かで区分しなければならないためで、取引先ごとの対応が必要です。
既存の会計ソフトを導入している場合、そのソフトがインボイス対応にアップデートしているケースも多いようです。
その場合は、会計ソフトをそのまま使用し続けられます。
POSレジ
店舗でPOSレジを採用している場合、インボイスの項目に対応したレシートの発行ができるように見直します。
そのため、税率ごとに区分して計算できるシステムのアップデートや、別のシステムの導入も考慮に入れてください。
上記に挙げた各種システムのアップデートもしくは新規導入に関しては、一定条件のもとに利用できる補助金や助成金が存在します。
経費に無理のないシステム対応を行うなら、補助金・助成金を有効に活用してみるのも有効です。
まとめ
請求書に決まったフォーマットはありませんが、必ず記載しておくべき事項は覚えておきましょう。
また、2023年より施行されるインボイス制度では、その多くが免税事業者と考えられる個人事業主にとって、大きな打撃となることが考えられます。
課税事業者となるか否かを冷静に考慮した上で、最善の方法を選んでください。
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(編集:創業手帳編集部)