法定休日とは?そのほかの休日との違いや決め方を徹底解説

創業手帳

法定休日は必ず取得させるべきもの。その取り扱いを解説します。


従業員を労働させる際に与える休日の中に、法定休日と呼ばれるものがあります。法定休日とは、労働基準法で制定されているものであり、様々なルールが存在しています。
そして、所定休日や振替休日などとの関係も把握しておくとよいでしょう。

特に、休日労働が生じる場合には割増賃金の扱いにも違いがあるため、ルールはきちんと知っておかなければなりません。
今回は、法定休日とは何か、またほかの休日との関係や法定休日の決め方などについて解説します。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

この記事の目次

法定休日について


最初に、法定休日とはどのようなものなのか、解説します。

法定休日とは何か

法定休日とは、労働基準法で定められた休日のことで、1週間に1回、もしくは4週間に4回、労働者に与えるべきものです。
与えられた法定休日については、労働者は働くことを強要されません。

何らかの特別な理由がない限りは、休むべき日と法律で決められています。

法定休日を設定しない場合の罰則はあるのか

法定休日は、労働基準法に制定されているものであるため、法定休日を設定しない場合は法律に抵触します。
罰則としては、基本的に労働者を使用する側(使用者)に対して6カ月以下の懲役、もしくは30万円以下の罰金が科せられることになっています。

もし、恒常的に法定休日を労働者に与えていない場合は、厳しい刑事罰に処されるでしょう。

所定休日との違い

所定休日は、法定休日とは違い法律での定めはなく、使用者側が任意で決められる休日のことです。
例えば、会社のカレンダーなどで週休2日と設定されている場合、その2日のどちらかは所定休日として見れます。

所定休日を設定するのはなぜか

労働基準法では、法定休日とは別に法定労働時間が決められています。法定労働時間は、週40時間まで、1日8時間までが上限です。(休憩時間を除く)
しかし、1週1日・4週4日の法定休日だけでは、この法定労働時間を超えて働かなければなりません。

そのため、法定休日とは別に休日を設け、労働を法定労働時間内に収めることが所定休日の目的です。
法定労働時間の上限内に労働時間を収めるためには、週2日程度の休日が必要です。多くの会社が、週休2日制を採っているのはそのためです。

休暇・代休・振替休日との違い

原則として、与えられた休日に労働者が働く必要はありません。ただし、その休日において労働が義務づけられているか否かによって、それぞれの休日の違いが発生します。

休暇とは

休暇とは、そもそも労働を義務付けられている日でも、労働しなくても良いとされる日を指します。
休暇についても、労働基準法や育児介護休業法による定め(法定休暇)があり、下記のような休暇を与えなければならないとされています。

  • 年次有給休暇
  • 生理休暇
  • 介護休暇
  • 育児休暇、子どもの看護休暇
  • 産前産後休暇
  • など

なお、法律での定めがない休暇(法定外休暇)も存在し、これらは使用者が任意で設定できます。例えば、以下のような休暇が法定外休暇にあたります。

  • ・夏季、冬期休暇
  • ・慶弔休暇
  • ・傷病休暇
  • ・リフレッシュ休暇
  • ・転勤時における休暇
  • など

休暇においては、法定休暇の年次有給休暇を除き、法定・法定外にかかわらず有給か無給を使用者が設定しても良いとされています。

代休とは

代休は、本来休日である日に労働した時、その代替として別の日に与える休日です。
臨時に発生するものであり、休日出勤があったことを前提として労働の義務を別の日に免除されることになります。

そのため、代休を与えたとしても、使用者は休日出勤に対して所定の割増賃金を支給しなければなりません。

振替休日とは

振替休日は、休日出勤と、その代わりの休日をあらかじめ振り替えるものです。
代休と異なる点は、事前に休日を入れ替えて設定していることであり、その時点で休日は決定しているため、休日出勤の扱いにはなりません。

例えば、一定のルールに則り法定休日を別の日に振り替えるとすると、事前に入れ替えが行われていれば振替休日が法定休日にあたると考えられるため、割増賃金は発生しないこととなります。

法定休日に労働させる場合は


何らかの事情で、法定休日に従業員を労働させる場合には、以下のことに注意してください。

割増賃金について

法定休日および所定休日において、労働をさせた場合にはそれぞれ割増賃金が発生します。
法定休日における休日労働では通常の賃金の35%、所定休日では原則的に通常の25%を割増しすべきとされています。

主な計算例

・法定休日と所定休日の1日ずつ労働した場合
例えば、土日休みの週休2日制で、日曜日が法定休日、土曜日が所定休日の時、土日どちらも労働した場合には、日給を8,000円と仮定すると割増賃金は以下のようになります。

土曜日(法定外休日)→8,000円×25%=2,000円
日曜日(法定休日)→8,000円×35%=2,800円

・所定休日のみ労働した場合
上記の会社で、所定休日である土曜のみ労働した場合、基本的には25%の割増賃金が上乗せされるため、割増賃金は2,000円です。
ただし、土曜に労働しても週40時間の法定労働時間を超えない場合は、割増賃金は発生しません。

・法定休日の前日から法定休日の朝まで労働した場合
まず、労働基準法では22時~5時までを深夜労働とし、25%の割増賃金が発生します。
それを踏まえて、上記の会社のパターンで賃金を時給1,000円とし、所定休日の土曜日18時から、法定休日の日曜日の6時まで働いたとすると、計算方法は以下です。

1.土曜18時~22時(4時間)→所定休日出勤で25%割増→1,000円×4時間×25%=1,000円
2.土曜22時~日曜0時(2時間)→所定休日出勤かつ深夜労働でそれぞれ25%ずつ割増→1,000円×2時間×(25%+25%)=1,000円
3.日曜0時~5時(5時間)→法定休日出勤かつ深夜労働で35%と25%それぞれ割増→1,000円×5時間×(35%25%)=3,000円
4.日曜5時~6時(1時間)→法定休日労働で35%割増→1,000円×1時間×35%=350円

以上を踏まえると、割増賃金として合計で1,000円+1,000円+3,000円+350円=5,350円が賃金に加算されます。

休日労働と時間外労働の扱いの違い

休日労働とは、前述している通りもともと休日である日に労働をすることです。一方、時間外労働は、法定労働時間を超過した労働のことです。
つまり、1日の始業が10時、終業を18時とする8時間労働(休憩時間1時間)の会社で18時~20時まで労働した場合は、その2時間は時間外労働にあたり、25%の割増賃金が発生します。

なお、所定休日に労働することで法定労働時間を超える場合は、その労働時間も時間外労働と考えます。

所定休日における割増賃金の考え方

所定休日を設けることにより、法定労働時間の週40時間の上限を守っている場合、所定休日労働は時間外労働の扱いです。
所定休日の割増率は25%で、時間外労働の割増率と同様となる理由はそこにあります。

ただし、前述したように所定休日に労働しても、週40時間労働を超えない場合は、割増賃金は発生しません。

フレックスタイム制ではどうするか

フレックスタイム制とは、あらかじめ決まっている業務を達成できれば、始業時刻や終業時刻を労働者の裁量で決められる制度です。
その中で、一定の期間(清算期間)に総労働時間を定め、その時間を超える労働を行った際に時間外労働とみなします。

ただし、フレックスタイム制でも法定休日を制定する義務があるため、法定休日に労働した場合は一般の会社と同様の扱いです。

36協定の締結について

使用者が労働者に、法定労働時間外に労働をさせる場合、後述する36協定を締結しなければ労働基準法に抵触します。

36協定とは

36協定とは、労働基準法36条に制定された時間外労働協定を指します。この協定により、使用者は労働者に、法定労働時間を超える休日労働をさせることが可能です。

36協定の締結は誰と行うか

36協定は、労働者の過半数で構成される労働組合もしくは労働者の過半数の代表者が、使用者との間で書面で締結し、行政官庁に届け出るものです。

36協定の締結が必須となるケース

・労働時間が法定労働時間を超える時
原則、36協定の締結がなければ、いかなる理由でも法定労働時間を超えて労働させることはできません。
これは、単なる残業や所定休日労働などのくくりに囚われません。

・法定休日に労働させる時
法定休日は、労働者に与えるべき休日ですが、36協定により法定休日に労働させることも認められます。
逆にいえば、法定労働時間および法定休日に、割増賃金を支払って労働させている会社は、36協定を締結している会社です。

法定休日を振替休日に充てることはできるか

法定休日は、あらかじめ決められたものであるため、法定休日を別の日に振り替えるには下記のような条件が必要です。

・就業規則により決まりを作る
法定休日を振替休日とする場合、その旨を就業規則に記載するようにします。その際、振替休日とするにあたり、諸手続きなどについても取決めを行います。

・労働者に事前に伝える
法定休日を振替休日とする旨は、労働者に事前に伝えることが必要です。この場合の事前とは、労働させる法定休日の前日までとします。
法定休日の前に振替休日を設定する場合は、振替休日の前日までに労働者に予告します。

法定休日の決め方とは


では、法定休日は、どのように決めれば良いでしょうか。

基本的にはどこに設定しても良い

法定休日の決め方に、特に明確な決まりは制定されていません。そのため、使用者はどの日を法定休日としても良いとされています。

就業規則に法定休日は記載すべきか

法定休日をどこに設定するかは、労働基準法における定めがないため、就業規則に記載せずとも罰則などはありません。
ただし、就業規則に記載したほうが、後々労働者とのトラブルに発展する可能性を減らせると考えられます。

なお、就業規則に特段の定めがない場合、厚生労働省では週の起点の前日を法定休日にする旨が定義されています。

就業規則への記載の仕方

就業規則への記載例としては、以下のようなものがあります。

  • 「日曜日を法定休日とする」のように曜日を決める
  • 「毎週の休日のうちいずれかを法定休日とする」のようにランダムになる旨を記載する

原則休日制における法定休日の決め方

法定休日を1週に1回設定する原則休日制において、例えば土曜と日曜を固定の休日とする場合、2日のいずれかを法定休日、もう片方を所定休日と決めます。
なお、サービス業などで定休日がある時は、そこを法定休日とするとわかりやすいでしょう。

変形休日制(シフト制)における法定休日の決め方

休日がランダムで設定される変形休日制(シフト制)では、4週の中で起点を決め、その4週間のどこに法定休日を設定しても問題ありません。
ただし、どこを法定休日とするかは、事前に労働者に予告する必要があります。

祝日・年末年始と法定休日の関係

祝日や年末年始については、必ず休日にしなければならない決まりはありません。そのため、祝日や年末年始を法定休日・所定休日・労働日のいずれに設定しても良いです。

ただし、就業規則において法定休日の曜日を設定している場合、そこに祝日や年末年始が重なる時は、通常通り法定休日とします。

就業規則にある法定休日の変更について

就業規則で法定休日を設定している場合、これを変更するには就業規則の変更について、いくつかの手順を踏まなければなりません。

  • 就業規則の変更部分について、使用者の経営者が承認する
  • 労働者の過半数の代表者からの意見書を受け取る
  • 変更した就業規則と労働者からの意見書、就業規則変更届を労働基準監督署に提出する
  • 労働者に就業規則の変更を周知させる

法定休日を正しく運用するために


法定休日の運用を正しく行うために、以下の点に注意してください。

労働基準法に抵触しない

基本中の基本ですが、労働基準法に制定されているように、1週1回もしくは4週4回の法定休日を確実に決めるようにします。
なお、労働基準法における休日の定義は、その日の0時~24時までであり、深夜労働を挟む場合には注意が必要です。

特別な規定を行う時は36協定を締結する

法定労働時間である、1日8時間および週40時間を超える労働をさせる場合は、必ず労働組合もしくは労働者の代表者と36協定を締結します。

策定した休日を就業規則に記載する

前述のように、労働基準法において就業規則への法定休日の記載は必須ではありません。
しかし、使用者と労働者双方の認識違いなどにより、トラブルに発展する例も少なくないため、法定休日や振替休日などの決まりを策定し就業規則に記載するのが得策です。

雇用・労働形態ごとの違いを知っておく

雇用形態では、パートやアルバイト、契約社員に関しては正社員と同様の扱いです。
しかし、派遣社員については派遣元と労働者の間で36協定を締結しなければ、休日労働をさせることはできません。

また、労働形態ごとに見ると、フレックスタイム制では法定休日労働に35%の割増賃金を支給します。
年俸制を採用している場合、提示している年俸に休日労働に対する割増賃金が含まれている場合があり、その際は別途での支給は行いません。

法定休日の疑問を解決


ここからは、法定休日における疑問を解決します。

法定休日に半日だけ労働した時は

前述でも少し触れたように、休日の定義は0時~24時までです。このことから、半日のみの労働でも法定休日労働に該当し、35%の割増賃金の支給を行います。

法定休日を有給休暇にできるか

年次有給休暇は、労働を義務付けられている日に労働を免除され、賃金が発生する制度です。
法定休日は、賃金が発生しない分、労働をする義務も課されないため、法定休日に有給休暇は取れません。

法定休日に出張の行き帰りが重なる時は

出張の行き帰りの時間は、労働時間とはみなされず通常の通勤と同じ扱いです。そのため、法定休日が出張の行き帰りに重なっても、賃金は発生しません。
ただし、例外として仕事に使用する機材などを持って出張に出た場合に、行き帰りも労働とみなされることがあります。

夜勤明けを法定休日に充てられるか

前述のように、休日の定義は0時~24時ですが、夜勤が存在し交代制を採用している場合、夜勤明けから途切れなく24時間空けば、そこを法定休日として定められます。

法定休日を巻き取ることはできるか

法定休日は、使用者が労働者に与えなければならない義務であるため、法定休日の巻き取りは基本的にはできません。
ただし、36協定の締結により法定休日労働を可能とした場合、割増賃金を支給する形で労働させることになります。

非正規雇用でも法定休日を与えるべきか

これも前述で触れたように、正社員以外の雇用形態であっても、派遣社員以外は正社員と同様の条件で法定休日を与える必要があります。

シフト制で法定休日の深夜労働はどうなるか

法定休日は0時~24時まで、深夜労働の時間は22時~5時までです。
シフト制が採用されていて、例えば法定休日の前日から当日までの深夜労働をする場合には、次のように考えます。

22時~24時までの2時間は深夜労働の割増賃金25%、24時(法定休日の0時)~5時までの5時間は深夜労働の割増賃金25%に加え、法定休日労働の割増賃金35%が上乗せされます。

法定休日を設定しなくとも問題はないのか

法定休日は労働者に与える義務があるため、設定しなければ労働基準法に抵触します。
ただし、どの日にちを法定休日と設定するかは任意であり、1週1回もしくは4週4回が守られていれば問題ありません。

法定休日を巡って争われた例


法定休日を巡っては、企業が裁判にかけられた例が存在します。

チェーン店店長と親会社の認識の違い

これは、ある外食チェーン店を展開する会社のケースです。
チェーン店の店長側の主張では、自身が管理監督者ではなく労働者であるとし、親会社に法定休日労働の割増賃金を請求しました。

しかし、親会社側は就業規則において、チェーン店店長への法定休日の取り決めを記載しておらず、割増賃金の算出ができないと主張し対立した事例です。
判決では、チェーン店店長は労働者であることを前提としています。

そして、就業規則に法定休日の記載がなければ、週の起点を日曜とし、1週間休みがない場合は週終わりの土曜を法定休日とすべきとされました。

法定休日の設定を怠っていた

ある外資系金融機関では、毎週土曜と日曜を休日としていましたが、そのどちらが法定休日かの設定はされていませんでした。
労働者とのトラブルの中で、土曜と日曜のどちらが法定休日かによって賃金の割増率が変わるため、法定休日の判断が裁判所に委ねられました。

会社側は、週の起点を日曜として、週終わりの土曜が法定休日であると主張しましたが、判決では日曜を法定休日とするのが一般的であるとの結論に至っています。

まとめ

法定休日とは、労働基準法により定められたもので、労働者には必ず与える義務がある休日です。
しかし、法定休日の決め方には明確なルールがないことから、時にトラブルが起こることもあります。

経営者は、法定休日労働に必ず割増賃金を支給することや、そもそも法定休日労働をさせるには、36協定の締結が必要であることなどのルールを知っておかなければなりません。
また、法定休日と所定休日の違いもしっかりと把握し、的確に運用するようにしてください。

創業手帳冊子版では、労働基準法における法定休日の詳細や運用の仕方などを詳しく解説しています。休日の制定について理解したい経営者の方は、参考にしてください。
関連記事
勤怠管理はなぜ必要?管理する目的や生じやすい問題とは
【2023年4月〜】労働基準法改正のポイントは?中小企業に与える影響と対処法

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳は、起業の成功率を上げる経営ガイドブックとして、毎月アップデートをし、今知っておいてほしい情報を起業家・経営者の方々にお届けしています。無料でお取り寄せ可能です。

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す
今すぐ
申し込む
【無料】