家事代行サービスを開業するには?方法や注意点を徹底解説!
家事代行サービスを開業するメリット・デメリットや成功させるためのポイントとは?
家事代行サービスは、近年需要が伸びつつある業種です。これから開業を考えている人は、家事代行サービスを選ぶのもひとつの方法です。
家事代行サービスを開業するまでに、特に難しい手続きは必要ありませんが、事業を始める・続ける上で注意したい点はいくつか存在します。
今回は、家事代行サービスを開業する際のポイントを解説します。
この記事の目次
家事代行サービスについて
まずは、家事代行サービスとはどのようなものかを解説します。
家事代行サービスとは
家事代行サービスは、これまで個人宅で居住者自身が行っていた家事全般に対し、居住者に代わって行うサービスを指します。
これにより、居住者は家事の負担を大幅に減らすことができ、例えば仕事をしている人や子どもの世話で手が離せない人など、忙しい人々の助けになります。
単発で仕事が入ることもあれば、定期的に継続して仕事が来ることもあり、働き方はケースバイケースです。
家事代行サービスに求められるのは、基本的に掃除や料理のスキルであるため、自身が個人事業主として開業するパターンも多くあります。
ハウスキーパーと何が違うのか
家事代行サービスとハウスキーパーは、仕事内容自体においては特に違いがありません。
ただ、一般的に家事代行サービスは、事業者がスタッフと業務委託契約を結んで現場に派遣する形であり、ハウスキーパーはスタッフ自身と顧客の間に事業者を介さない形です。
ちなみに、ハウスクリーニングとも混同されがちですが、ハウスクリーニングはプロの清掃技術に特化したサービスであるため、家事全般を担うものとは異なっています。
家事代行サービスの主な業務
家事代行サービスが請け負う業務を、以下にまとめました。
・清掃
家の中を、一般的な範囲で全体的に清掃します。
・料理
朝・昼・夕食の料理を用意し、顧客に提供するサービスです。どの食事を用意するかは顧客の希望によります。
・ベビーシッター
小さな子どもがいる家庭で、親に仕事や所用がある場合に子どもを預かって世話します。
・ホームヘルパー
サポートの対象は、高齢者や障がいを持つ人、介護を要する人などです。
・庭の整備
庭にある草花や木の手入れなどを行います。
家事代行サービスの需要について
こちらでは、家事代行サービスについて世間にどれくらい需要があるのかを見ていきます。
市場規模のデータ
2018年に株式会社野村総合研究所が行った調査の報告書『平成29年度商取引適正化・製品安全に係る事業(家事支援サービス業を取り巻く諸課題に係る調査研究)』では、2017年時点での市場規模はおよそ700億円であったとされています。
しかし、その後の予測として、2025年には「利用したい」「まあ利用したい」という意見を持った人の需要が伸び、およそ8,000億円程度まで上昇するとの結果が出ました。
実際に、家事代行サービスを利用した人の理由としては、忙しく時間がないことや気力・体力が追いつかないことのほか、家事の質を上げたいと考える人も多くいます。
家事代行サービスの需要が増える理由とは
それでは、家事代行サービスの需要が年々増えていく理由とは何でしょうか。
・共働き家庭が増えた
共働き家庭は増加の一途をたどっていますが、特に近年は女性の社会進出をより促進させる政策も打ち出され、男女ともに活躍する機会が増えてきました。
このような社会背景から、夫婦両方とも家を空けることが多くなり、家事の負担を減らすために家事代行サービスを利用するケースが多くあります。
・核家族が増えた
上記の共働き家庭の事情に加え、夫婦と子どものみの核家族が増加したことも、家事代行サービスの需要が高まる要因のひとつです。
かつての2~3世代が同居していた時代であれば家事も分担できましたが、核家族になると家事の負担は夫婦2人にのしかかり、体力や気力に限界を感じる人が多くいるようです。
・高齢化社会の流れ
少子高齢化が問題視される中、やがて75歳以上の後期高齢者が、65歳以上の前期高齢者の割合を上回るとされています。
年齢を重ねて、体力が年々落ちていく状況で、家事の負担をできるだけ軽減したいという高齢者も少なくありません。
・単身者の生活が多忙である
一方、若い世代でも未婚者の数が増え、特に男性の未婚者が家事代行サービスを依頼する傾向があります。
理由は、仕事が多忙なことから、家事の時間が取れないというものです。
また、家事代行サービスを利用する若い世代は、比較的高収入であるため、サービス利用に抵抗がないことも考えられます。
家事代行サービスを開業するメリット・デメリット
家事代行サービスを開業するにあたって、メリットとデメリットはどのようなものでしょうか。
メリット4つ
1.自身の家事スキルを活かせる
普段から、自身で家事をし慣れている人にとっては、そのスキルを仕事に活かせるところがメリットのひとつです。
料理や掃除、子どもの世話などはもちろんのこと、それぞれの作業効率を考えて仕事ができる人は、家事代行サービスに向いています。
2.資格は特に必要ない
家事代行サービスを開業するにあたり、特に家事に関する資格を取る必要はありません。
ある程度のレベルで家事ができれば問題ないため、ひととおりの用具が揃えば開業が可能です。
3.プライベートとの両立がしやすい
家事代行サービスの拘束時間は、そう長いものではありません。
顧客が希望するサービスを終了させるまでには、依頼内容にもよりますが、おおよそ数時間で済むことが多いようです。
そのため、プライベートとの両立がしやすく、自宅の家事も無理なく行うことができる仕事でもあります。
4.継続的な顧客を獲得しやすい
家事代行サービスを依頼する理由は、生活スタイルに基づくものが多いようです。
また、生活スタイルは簡単に変わらないため、継続的に利用を依頼される可能性が高くなります。
さらに、質の良いサービスを提供できれば、リピーターも増えて顧客を多数集めることにもつながります。
デメリット3つ
1.資金繰りは自己責任で行う
個人事業主である場合、どの業種にもいえることですが、事業が軌道に乗らなかった場合でも、資金繰りはすべて自己責任で行う必要があります。
開業にあたり、金融機関からの融資を受けている場合、返済がままならず失敗することもあるかもしれません。
2.顧客の自宅などに損害を与える恐れがある
家事代行サービスは、自身の身ひとつと道具があればできる事業ではありますが、顧客の自宅で作業をすることから、万が一損害を与えてしまうことも考えられます。
この場合、責任はすべて事業者にあるため、個人事業主は損害をすべて自己で賠償しなければなりません。そのため、賠償責任保険への加入は必須です。
3.社会的信用を得にくい
個人事業主では、法人の後ろ盾がないことから、社会的信用を得にくい一面があります。
そして、顧客にとっては、他人であるスタッフが家に入ることに抵抗を感じる人もいるかもしれません。
そのため、個人事業主においては依頼を受けるまでに信頼関係を築く必要があり、質の良いサービスを提供することで社会的な信用を積み上げていく地道さが求められます。
家事代行サービスの開業方法
家事代行サービスを開業するには、どのような方法があるのでしょうか。
開業パターン3つ
1.個人事業主として開業する
従業員をともわない個人事業主として開業し、自分自身でサービスを依頼者に提供します。会社の規約に縛られないため、働き方は比較的自由です。
また、時間の融通が利きやすいことから、本業とは別の副業として事業を起ち上げることも可能です。
2.法人を立ち上げる
法人として、家事代行を請け負う事業者になり、実際に現場に派遣するスタッフを雇う形態です。
開業者自身が経営者となるため、経営のノウハウを事前に身に着けておくことが求められます。
さらに、売上げが好調になり事業を拡大する際も、最初から法人を起ち上げておけば楽で、幅広い事業に着手することも可能です。
3.大手のフランチャイズに加盟する
家事代行サービスには、大手の事業者も数多くあります。そこで、フランチャイズ展開をしている事業者に加盟して事業を起ち上げる方法も手段のひとつです。
この場合、家事スキルから経営ノウハウ、各種サポートまで受けられる点がメリットですが、売上げからロイヤリティを事業者に支払うなどの義務もあります。
開業に必要な手続き
家事代行サービスを開業する際、個人事業主であれば税務署に開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出するだけで終了します。
法人の事業者として開業する場合、法務省での会社設立手続きをはじめ、従業員を雇用する場合には、以下の機関で手続きが必要です。
-
- 社会保険事務所……健康保険や厚生年金の手続き
- 公共職業安定所……雇用保険の手続き
- 労働基準監督署……労災保険の手続き
- 税務署……各種税金関連の手続き
介護や宅配サービスを取り入れる時は
提供するサービスの中で、介護や宅配サービスを取り入れる場合は、上記の手続きのほかにも届け出が必要です。
介護サービスを提供する場合は、各自治体で介護保険サービス事業者の指定を受ける必要があります。
また、食品などを宅配する場合は、保健所に食品営業許可申請を行い、許可を得なければなりません。
開業手続きまでに準備すること
開業手続きまでに準備すべきことを紹介します。
・サービスの種類を明確にする
まずは、自分がどのようなタイプの家事代行を行えるか、より質の高いサービスを提供できる分野は何か、提供するサービスの種類を明確にしてください。
また、競合と差別化するための独自のサービスや料金体系を決めておくようおすすめします。
・賠償責任保険に加入する
少し前述したように、顧客の自宅を訪ねて作業を行う事業のため、何らかの損害を与えてしまうかもしれません。
その際には、顧客に対して高額の損害賠償を行うことが考えられるため、そのサポートをしてくれる賠償責任保険には加入しておくべきだといえます。
・個人情報保護などの規定を定める
顧客の自宅で作業をすることは、同時に顧客の個人情報に触れる機会が多くなるということです。
そのため、個人情報を保護するプライバシーポリシーの規定は、より重要視する必要があります。
また、顧客とのトラブルを避けるためにもプライバシーポリシーのほかに、作業内容や報酬の支払いなど、利用規約の必要項目をしっかり制定してください。
・資金を調達する
家事代行サービスの開業では、その規模によって必要な資金は大きく異なります。
事務所を借りるか否か、スタッフを雇用するか、どれくらいの備品を揃えるかによって用意する資金を計算し、余裕を持った金額の融資を受けて調達をします。
・決済方法を幅広く用意する
決済方法については、顧客の都合によって現金のほうが利用しやすい人、クレジットカードや口座振替、電子マネーを選びたい人など、多岐にわたります。
そのため、決済方法は幅広く用意しておきます。特に、個人事業主の場合は、決済に必要なシステムを自身で用意しなければならないことに注意が必要です。
開業資金や備品などについて
前述したように、開業資金や備品は事業規模によって違いが出てきます。
例えば、個人事業主でスタッフを雇わない場合と、法人でスタッフを雇う場合で、必要な資金や備品を挙げていきます。
個人事業主でスタッフなし
この場合、最低限の資金や備品により自宅でも開業が可能であるため、以下のものに資金を費やせば事業を行えます。
- 【設備資金】
-
- PCや電話をはじめとする通信設備
- 家事に使用する最低限の備品(清掃用具など)
- 【運転資金】
-
- 洗剤などの消耗品費
- チラシやホームページなどの広告宣伝費
法人でスタッフあり
法人で開業してスタッフを雇う場合、それなりの規模の事業所を構えることが求められます。そのため、主に以下のようなものに資金が必要です。
- 【設備資金】
-
- 事務所賃貸の頭金
- PCや電話といった通信設備
- 机や椅子などの事務用備品
- 家事に使用する備品や特殊な用具(清掃用具や洗剤)
- 【運転資金】
-
- 事務所賃料
- 事務所のインフラに関する費用
- 人件費
- チラシやホームページなどの広告宣伝費
これらに加え、開業してから事業が軌道に乗るまでの数カ月、運転資金として予備の資金を用意しておくと安心です。
家事代行サービス開業で役に立つ資格とは
家事代行サービス開業に必要な資格は特にありませんが、持っておくとよりクオリティの高いサービスを提供できる資格があります。
整理収納アドバイザー
部屋にあるものを、効率的に整理・収納する技術に関する資格です。
家事の中で片付けを代行する場合、この資格を持っておけば素早く整然と片付けられる能力があることを示せます。
資格取得のための講座を受講すれば、2級および1級の資格を取得可能です。
ハウスクリーニング技能士
特に、清掃に関して特殊な知識や技術を持つことを示す国家資格です。この資格を持つことで、ハウスクリーニングのプロとして活躍しやすくなります。
試験では、基礎のほかに水回りの汚れ落としや床の補修など、いくつかの項目に分けて実技があり、それぞれに深い知識と技術が求められます。
管理栄養士
管理栄養士も国家資格であり、食物や料理全般の栄養バランスに関する豊富な知識を持つことで得られる資格です。
特に料理に特化したサービスを提供する場合や、子どもの食事を作る場合に役に立ち、顧客の健康をサポートする役割も担えます。
調理師
食品の正しい調理方法や衛生管理、そのほか食品に関するあらゆる幅広い知識と技術を示す国家資格です。
飲食店を開くのにも有利な資格であるため、特に質の高い料理を売りにしたい場合は、資格を取得しておくと有利です。
家事代行サービスを軌道に乗せるためには
家事代行サービスを開業して、軌道に乗せるためのコツを紹介します。
サービスの特徴・メリットをアピールする
自分自身が提供するサービスに、競合にはない特徴をつけて、顧客が依頼する際にどのようなメリットが与えられるかをしっかり考えます。
その特徴やメリットは、主に以下のようなものです。
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- サービスの種類(家事全般・料理・掃除・子どもの世話など)
- サービスの質(ハウスクリーニングや調理といった専門的な分野に特化)
- 時間や報酬の特徴(顧客が利用しやすい設定を考える)
上記のような特徴やメリットは、競合のサービスも検討して、いかに差別化が図れるかを吟味する必要があります。
顧客ターゲットを設定する
どのような顧客層も受け入れるよりは、ある程度決まった顧客ターゲットを設定するほうが、事業としての効率は良いといえます。
例えば、提供するサービスが家事全般だったとすれば、そのサービスを求めている顧客層の属性を具体的に考えてみてください。
-
- 共働き家庭
- 子どもがひとりの家庭
- 家事代行サービスを利用する余裕がある年収
など
上記のような設定を考えておけば、ターゲット層に必要とされるサービスの精査が可能となります。
Webやチラシなどを活用して集客する
自身のサービスを宣伝するなら、Webの活用は欠かせません。
顧客が検索をして上位にヒットするか、閲覧して興味を惹かれるかといった点に意識したホームページを作ります。
ホームページのほか、気軽に利用できるSNSも有効な手段のひとつです。
Webをあまり利用しない高齢者をターゲットとするなら、チラシも大いに活用できるツールです。
まとめ
家事代行サービスを開業すること自体は簡単ですが、開業前に事業計画を立てなければ開業後につまずく恐れがあります。
また、顧客の自宅で作業をする特殊な事業であり、思いがけない破損や情報漏洩などのリスクも存在あるため、サービスの提供には細心の注意を払わなければなりません。
自身がどのようなサービスを提供できるかをしっかり決めた上で、顧客の信頼を得られる事業に成長させましょう。
(編集:創業手帳編集部)