法人向けの自動車保険とは?個人向けとの違いや相場まとめ
節税面でも有利な法人の自動車保険を活用しよう
自動車保険は、ケガやトラブル、命に関わるため十分な補償が必要です。
法人として加入できる自動車保険は、法人特有のリスクに対応する特約もあるため、リスク管理としても優秀です。
また、法人の自動車保険料は損金として計上できるため節税面でも有利に働きます。法人向け自動車保険の特徴や選ぶ時のポイントをまとめました。
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この記事の目次
法人向け自動車保険とは?
自動車保険の広告は、コマーシャルや広告でもよく目にします。
しかし、よく見かける自動車保険のコマーシャルは通販型もある個人向けのもので、基本的に代理店で加入する法人向け自動車保険とは違います。
通販型の法人向け自動車保険もありますが、一部の保険会社でしか取り扱っていません。
法人向け自動車保険は、契約者と記名被保険者、車両所有者が法人になっているものを指します。以下で、それぞれの言葉の意味を確認してください。
・契約者
保険の加入者
・記名者被保険者
最も車を運転する人(法人)
・車両所有者
車検証に記載がある所有者名
法人向け自動車保険は、上記の3つすべてが同じ法人名義でなければいけません。
法人向けと個人向け自動車保険の違いは?
同じ自動車保険であっても、個人向けと法人向けでは大きな違いがあります。以下では、法人向けと個人向けの違いをまとめました。
保険料の違い
自動車保険を比較する時に、多くの人が気にするのが保険料です。保険料は、個人向けよりも法人向け自動車保険のほうが高い傾向があります。
法人が所有する自動車は不特定多数の人が運転している上、走行距離も長くなります。そのため、リスクが高いと判断されて保険料が高く設定されているのです。
契約方法や特約の違い
法人向け自動車保険は、契約方法や特約にも違いがあります。個人向けの自動車保険では、「運転者家族限定」のように絞れます。
しかし、法人向けの自動車保険は運転者の範囲を限定できません。
また、事故による死亡やケガの損害を補償する人身傷害保険の補償も、法人向け自動車保険では契約自動車搭乗中のみの補償です。
法人向け自動車保険では、事業用に適した特約が用意されています。
積載した商品や什器を補償する事業用積載動産特約や、旅客を載せてトラブルがあった時のための企業・団体見舞費用特約が用意されている場合があり、事業に合わせて特約を組み合わせ可能です。
法人向けの自動車保険は比較的割高であっても運転者の範囲が限定されず、事業に合わせた特約を利用できる点が大きなメリットです。
事業用車両が加入できるかの違い
個人向け自動車保険の使用目的は日常使いやレジャー、通勤などに限定されているため、お客を乗せて運賃をもらったり配送を請け負ったりするなど、利益に直接関係する業務用の自動車では加入できません。
一方で、法人向け自動車保険は加入できる車の種類が幅広く、タクシーやトラックも加入できます。
配送業のように車を使って利益を出す事業の場合には、法人向けの自動車保険を利用することになります。
法人向けの自動車保険を選ぶポイント
法人が加入する自動車保険は、自分や従業員が使う自動車でのケガや事故を補償する大切な存在です。
なんとなく個人で加入している保険会社をそのまま選ぶ人もいるかもしれませんが、できるだけ多くの自動車保険を比較して選ぶようにおすすめします。
法人向け自動車保険を選ぶ時のポイントをまとめました。
契約の種類
自動車保険はその契約の条件や車の台数によって保険料や補償内容が大きく変わります。
基本的には、保有する車の台数や車のタイプで条件を指定すれば、ある程度保険会社を絞れるでしょう。
法人向け自動車保険には代理店型だけでなく通販型もあるものの、限られた保険会社にしか取り扱っていないケースもあります。
フリート契約や、緑色や黒色ナンバーの車は通販型で引き受けていないことがあるので、その場合には代理店型の自動車保険を選ばなければいけません。
保険会社の代理店では無料相談を受け付けていることが多いので、不安な場合には相談に出向くようにしてください。
法人の自動車保険と契約台数の関係
自動車保険は使用台数によっても契約方法が変わります。社用車が9台までであればノンフリート契約ですが、10台以上になるとフリート契約です。
フリート契約について聞いたことがない人もいるでしょう。ここでは、フリート契約とは何かを説明します。
フリート契約とは
フリート契約は、10台以上の車があって自動車保険に加入する時に適用される契約形態です。
フリート契約は1台ごとの契約ではなく会社単位、法人単位で一括して契約、1台ごとの手続きは不要で保険証券も1枚です。
フリート契約であれば新しく車を購入したようなケースであっても、ほかの車と同じ内容で保険を契約できます。
車の増減があってもそれぞれの車で満期日が同じになるので、更新忘れや契約漏れ、車両変更の手続き漏れのリスクも少なくなります。
事務手続きや管理を効率化するために有効な方法です。
フリート契約の最大のメリットは保険料の割引です。
台数が多いフリート契約や割引率が大きく、新しく車を購入した時にも同じ割引率を適用できます。
フリート契約は、保険料割引率の決まり方も違います。
車ごとの事故の件数ではなく契約者単位で保険料率が決まる仕組みなので、一回の事故でも全体の保険料に影響する点には注意しなければいけません。
ノンフリート契約とは
フリート契約が契約者単位で保険契約がひとつにまとめられているのに対して、ノンフリート契約は自動車一台単位での契約です。
例えば、社用車として3台の車があれば3つの契約を結びます。
ノンフリート契約では、事故件数や適用される事故有係数によって割引率が決まります。等級別料率制度が使われていて、事故の種類によって等級がダウンする仕組みです。
割引率が一台ごとに変わるため、事故などがあってもほかの車の契約に影響しません。また、年齢条件や運転者限定特約を使って保険料を抑えられる点もメリットです。
ミニフリート契約とは
割引率が高いフリート契約は魅力的だが10台も社用車を保有しないから契約できない、そのような時におすすめなのがミニフリート契約です。
ミニフリート契約とは、ノンフリート契約で9台までの自動車保険契約を一本化する契約です。
ミニフリート契約で契約を一本化した場合には、ミニフリート契約の割引率が適用されます。
1台でノンフリート契約を結んだが社用車を増やす、そのような場合にはミニフリート契約も検討してください。
すでに別々の会社や満期日で複数のノンフリート契約を結んでいるような場合では、どちらかの保険契約を解約して乗り換えることになります。
補償内容
保険を選ぶ時には、必ず補償内容をチェックしてください。
自動車保険の補償内容は基本的に以下のものがあります。
-
- 対人賠償保険
- 対物賠償保険
- 人身傷害補償保険
- 搭乗者傷害保険
- 自損事故保険
- 無保険車傷害保険
- 車両保険
- ロードサービス
- 各種特約
それぞれの補償額は保険によって違いますが、対人賠償と対物賠償は億を超えることもあり、無制限の加入をおすすめします。
搭乗者のケガを補償する人身傷害保険や搭乗者傷害保険は、数千万円の設定が一般的です。車両保険は市場価格によって算出するので車種も考慮して判断してください。
法人の特約
法人の自動車保険には個人の契約にはない特約があります。以下では代表的なものをまとめています。
・企業・団体見舞費用特約
事故を起こした時に相手方に支払う見舞金や葬儀参列に関わる費用を負担する。
・搭乗者傷害事業主費用特約
役員や従業員が死亡した時、後遺障害時に事業主が臨時で負担する費用を補償する。
・臨時代替自動車特約
契約車両が整備や修理の際に借りた車を契約車両とみなして保険契約に従う。
・法人他車運転特約
業務のために従業員が取引先から借りた車を運転している最中の事故について補償を適用できる。
・受託貨物賠償責任特約
受託貨物が輸送中に事故などで損害が生じた時に契約上損害賠償責任を負担する場合に保険金を支払う。
割引
自動車保険の保険料は決して軽い負担ではありません。保険会社独自の割引を活用すれば、保険料を抑えることも可能です。
例えば、フリート割引や、新車割引、長期優良割引、新規年払い割引のほか、年齢条件割引のように適用に条件はあっても保険会社によって様々な割引があり、割引率もまちまちです。
保険を選ぶ時には、車を使用する時の条件を伝えて割引を受けた保険料を算出してもらってください。
自動車保険を法人契約する流れ
個人では自動車保険に加入していても、法人として加入したことはない人もいるかもしれません。ここでは、自動車保険を法人契約する時の流れを紹介します。
相談
これから初めて自動車保険を法人契約する場合、補償内容や特約について不明な点もあるかもしれません。
できるだけ事前に代理店や窓口で契約について相談するようおすすめします。
相談する時は、何を聞きたいのか、どういった補償を求めているのかあらかじめまとめておくとスムーズです。
多くの保険会社では相談や資料請求は無料なのでサービスをうまく活用してください。
見積もり
すでに補償内容や契約内容を決めている場合には、見積もりを請求します。見積もりを取るには電話でも問い合わせできますが、インターネットでも手続き可能です。
正確な見積もりを取るために、車両情報なども準備します。希望する条件や特約があれば事前に伝えておくようにしてください。
比較・検討
見積もりを複数社から取得したら、比較してどの保険会社にするか検討します。検討する時によく基準となるのは、保険料です。
できるだけ同じ条件で調べて、会社ごとに比較します。
また、保険料以外にも特約や補償範囲、車両保険金額の違いにも注意してください。
ほかよりも安いと思って契約したら、特約が付帯していなかったり条件が同一になっていなかったりするケースもあります。
契約
どの保険に加入するか決めたら申込書の内容を記載して署名捺印後に提出します。
必要書類として登記事項証明書などが含まれることもあるので、不足がないようにしましょう。
申込書を提出して保険料を支払えば、保険の始期日より補償が開始します。事業のスタートに間に合うように、保険の手続きも計画的に進めてください。
法人向け自動車保険に加入するメリットは?
自動車保険を法人名義で支払うことになれば、保険料は会社の必要経費として計上できるようになります。
また、保険料以外の自動車にかかる費用、燃料代や車検費用、車両費用も経費計上可能です。
保険料が経費として増えればそれだけ利益は減少し、課税される対象額も小さくなります。正しく経費計上することは節税するために有効な方法です。
また、フリート契約で加入して保険料を割引が受けられる点も大きなメリットです。法人契約になれば、運転手ごとに自動車保険に加入する必要もありません。
さらに、法人向けの自動車保険にしかない特約を付帯できるので、リスクへの備えを充実させられます。
自社製品を社用車に積載する場合には、事業用積載動産特約で補償受けるといった事業内容に合った特約を選べるので、より細やかなリスクマネジメントが可能です。
個人から法人、法人から個人に名義変更はできる?
すでに個人で自動車保険に加入している場合、せっかく上がった等級を活かして法人契約したいと考える人もいるかもしれません。
個人から法人への契約は条件次第で可能です。
まず、新しい法人契約はノンフリート契約である必要があります。フリート契約には等級がないので、個人契約の等級を活用できません。
さらに、法人契約となることで運転者の限定ができなくなります。家族限定など条件をつけたほうが安い場合もあるので注意してください。
また、個人事業と法人事業の内容が同一であるか証明を求められることもあります。
法人から個人への名義変更でもノンフリート契約であることが求められます。
また、法人を解散して仕事を辞めるか、個人事業主として仕事を引き継がなければいけません。
個人と法人間での名義変更には書類が必要ですが、等級を承継できるメリットがあります。手続きの詳しい内容は、保険会社に問い合わせてください。
まとめ・法人の自動車保険は事業の見通しから考えよう
法人で自動車契約を結ぶことは、事務処理の効率化や節税面で大きなメリットがあります。
法人にかかる費用は利益に直結する問題なので、法人として自動車保険を加入する時には今後の事業や利益の見通しも考えておくようにしてください。
自動車保険は、ケガや命の補償に関わる部分です。開業する時には、開業準備とともに自動車保険について早めに相談しておくようにおすすめします。
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(編集:創業手帳編集部)