人手不足倒産とは?物流業や建設業だけではない!原因や今後の動向は?
特に中小企業で人手不足倒産の増加が懸念される「2024年問題」
少子高齢化による労働人口の減少や新型コロナウイルス感染症の影響で、従来とは違うニューノーマルな働き方が増えています。
ただでさえ労働人口が減少しているのに、ニューノーマルな働き方の普及により、人材採用の難易度は高まっているのが現状です。
このような状態を「2024年問題」と呼び、中小企業では人手不足倒産の増加が懸念されています。
今回は、そのような人手不足倒産について、原因や多くみられる業種、防ぐ方法などを開設していきます。
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この記事の目次
人手不足倒産の原因
人手不足倒産を余儀なくされる背景には、必ず原因があります。まずは、どのような原因があるのか、いくつかピックアップしてご紹介します。
少子高齢化による労働人口の減少
人手不足倒産が増えてきた背景には、少子高齢化による労働人口の減少があります。日本の人口は減少に一途をたどっていて、それに比例するように労働人口も減少しているのが現状です。
出生率も低下しているので、今後はさらに労働人口が少なくなると予測できます。
総務省統計局が発表している「人口推計令和5年(2023年)10月確定値、令和6年(2024年)3月概算値」を見てみると、75歳以上の人口が前年と比べて約713,000人増えています。
しかし、15歳未満や15歳~64歳の人口は減少しているので、出生率が大幅に高まらない限り、労働人口の減少は続いていくでしょう。
そのため、企業は激しい人材獲得競争に勝ち抜かなければ、人手不足で事業が立ち行かなくなる可能性は高いといえます。
離職率の上昇
総務省が発表した「新規学卒就職者の離職状況を公表します」によると、新卒で入社してから3年以内で退職する割合は新規高卒就職者で36.9%、新規大卒就職者で31.2%となっています。
つまり、約3人に1人が3年以内に退職していることになります。新卒採用にコストをかけているのに、すぐ退職されてしまうのは中小企業にとって大きな痛手です。
また、厚生労働省が発表した「令和5年上半期雇用動向調査結果の概況」によると、生活関連サービス業や娯楽業、宿泊業、飲食サービス業、医療・福祉などで離職率が増加していることがわかります。
従業員数の数が減ることで業務が滞ってしまい、事業を円滑に進められなくなる可能性もあります。
売り手市場による採用難易度の上昇
近年の就職や転職は、売り手市場といわれています。売り手市場は、求職者よりも企業が出している求人数が多い状態です。
独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が発表した2024年2月の「職業紹介-都道府県別有効求人倍率」をチェックしてみると、全国の有効求人倍率は1.26倍となっています。
このことからも売り手市場であることは明らかです。
求人の数よりも求職者数が多い状態を表しているので、採用の難易度は高いといえます。
優秀な人材を採用するには、企業側も待遇を良くするなどの工夫を凝らさなければいけません。
しかし、中小企業の場合は大手企業に勝るような待遇を提示するのは難しい現状です。
フリーランスの増加
フリーランスが増加したことも、人手不足倒産の増加に関係しています。近年は、起業を考える方の支援制度が増えていたり、自由な働き方が増えたりしています。
そのため、独立してフリーランスで働くケースも多くなってきました。
働き方やライフスタイルが多様化しているので、これまでは当たり前とされていた会社員という働き方も当たり前ではなくなりました。
中小企業で働いていた方がスキルや知識を活かせるビジネスをスタートするためのフリーランスになれば、企業側は人手不足に陥ります。
これからはさらに働き方が多様化する可能性もあるので、中小企業の人手不足倒産はさらに増加するのではないかと懸念されています。
人手不足倒産が多くみられる業種
人手不足倒産は、どの業種でも起こる可能性があります。しかし、その中でも特に多い業種もあります。
建設業
建設業は、「仕事が大変そう」というイメージを持たれがちで、求職者から避けられる傾向があります。
そのため、求人を出しても思ったように採用活動を行えないケースも珍しくありません。
肉体労働がメインになることから、敬遠する方が多いことが大きな理由です。
人手が不足してしまうと案件を進めにくくなってしまうので、大型案件を受けることが難しくなります。それは、売上げの低下にも直結する大きな問題です。
また、資材の高騰も倒産を余儀なくされる理由のひとつです。施主に対する価格交渉が難航し、請負単価を上げることが難しい状況にあります。
それでも資材の価格高騰は止まらず、中小の建設企業は収益を得にくくなってしまうためです。
物流業
帝国データバンクが行った調査によると、物流業の人手不足も目立っていることがわかります。コロナ禍と同レベルの水準になっていて、高止まりが続いています。
2023年10月の人手不足倒産の件数は29件で、年間累計は209件に達しました。このような結果が出ていることからも、「2024年問題」は顕在化しているといえるかもしれません。
物流業は拘束時間が長いなどのイメージを持たれていて、応募したいと考える人は減少傾向にあります。
こういったイメージも人手不足を引き起こす大きな原因で、人手不足倒産の引き金のひとつです。
仕事はあっても慢性的な人手不足で受注できず、売上げが減少してしまうといったケースもあります。
中小企業では一つひとつの仕事が大切になるので、大きな痛手になりかねません。
ホテル・旅館業
ホテル・旅館業も、人手不足倒産が多くみられる業種です。
厚生労働省が行った「令和5年雇用動向調査」の結果をチェックしてみると、ホテル・旅館業の入職率は比較的高いことがわかります。
つまり、従業員の獲得は問題なくできているといえます。
しかし、離職率も同様に高い水準になっているので、人材確保ができたとしても、結果的に従業員数は変わりません。
これは、ほかの業界と比べて定着率が低いことを示しています。
ホテル・旅館業において離職率が高い状況は10年以上継続しているので、慢性的な人手不足に陥っていることは明白です。
サービスを提供するために従業員は必要な存在です。従業員が足りないままだと適正なサービスを提供できないため、倒産を余儀なくされてしまいます。
情報サービス業
情報サービス業も、慢性的な人手不足に悩まされている業種のひとつです。
近年のIT技術は目覚ましい進展を遂げていて、IT業界だけではなくそれ以外の業界でも商品やサービスの開発に欠かせないものとなっています。
システム開発を自社で行うため、IT人材を雇用する企業も増えています。
しかし、IT化やDX化を推進する企業が増加し、それらに関する知識を持つ人材は足りない状況になっているのです。
IT需要の拡大だけではなく、前述した労働人口の減少も原因のひとつと考えられます。
ITやDXに関する知識やスキルを身に付けた人材がいたとしても、その数は労働者の数と同じように足りていません。
人手不足倒産を防ぐ方法とは?
人手不足倒産は、どの会社も防ぎたいと考えるものです。人手不足倒産を防ぐためには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
続いては、防ぐ方法について解説していきます。
働きやすい職場環境を構築する
人手不足倒産を防ぐためには、離職率を下げることが重要です。いくら採用活動を積極的に行っても、離職率が高ければ人手不足の解消にはつながっていないことになります。
そのため、働きやすい環境を構築することは必要不可欠といえます。
働きやすい環境を構築するためには、賃金を上げたり、福利厚生を充実させたりするのがおすすめです。
いくら仕事にやりがいを感じていても、賃金が低ければ「もっと条件の良い会社で働きたい」と考えるようになり、離職してしまう可能性が高いからです。
また、労働環境の見直しも効果的といえます。サービス残業の廃止やノー残業デーの設定などは、働きやすさに直結します。有給休暇も適切に取得できるようにしてください。
業務を効率化する
業務を効率化することも、人手不足倒産を回避するために押さえておきたいポイントです。
人手不足が深刻化している中小企業では、少ない人員で少しでも多くの成果を出さなければいけません。
そのためには、工数や経費がかかり過ぎている部分を洗い出し、やり方を変えたり、やめる決断をしたりすることが重要です。
このような取組みを行うことで、業務の中にあるムダやムラなどを省くことにつながります。ムダやムラがなくなればコストの削減にもつながるので、メリットは大きいです。
業務のプロセスを見直す際は、現状の業務フローを可視化するのがおすすめです。可視化することで、改善点を洗い出しやすくなります。
洗い出しが難しい場合は、社外のコンサルタントなどに相談してみると、適切なアドバイスをもらえます。
副業を認める
副業を認めることは、時代の流れに合わせた働き方をサポートしている会社といえます。終身雇用制度が当たり前だった時代だと副業を禁止する企業が大半を占めていました。
しかし現在は、それぞれの能力や本人の希望に合わせた柔軟な働き方が広がっているため、副業を認める企業も増加傾向にあります。
副業を認めることによって、機密情報が流出したり、本業に集中できなくなったりするなどのリスクも考えられます。
しかし、幅広い知見を身に付けるチャンスが得られるので従業員の質が高まったり、優秀な人材を確保できたりする可能性もあるかもしれません。
また、多様な働き方を認めれば、その分定着率も高まりやすくなります。
リカレント制度を取り入れる
リカレント制度は、学び直しやリスキリングをサポートするための制度です。周期的に教育を受け続ける仕組みを指します。
スキルアップ研修で知識や技術を身に付けたり、新たなスキルを身に付けたりするための研修を実施し、業務にも学んだことを活かせるようにすると効果的です。
リカレント制度を導入することで、他社との競争力が高まったり、人材不足の解消につながったりします。
また、学び続けたり、学んだことを活かせたりする環境が整っていれば、仕事にもやりがいを感じやすくなり、定着率の向上にも期待できます。
人手不足倒産を防ぐためにも、リカレント制度は積極的に取り入れてみてください。
アウトソーシングを活用する
人手不足倒産の恐れがある場合、アウトソーシングの活用もおすすめです。アウトソーシングは、業務の一部を外部に委託することを指します。
不足している人材やサービスを外部から調達することで、生産性の向上や競争力強化につながります。
アウトソーシングの対象になる業務は、事務関連や受付、営業、コールセンターなど多種多様です。
委託先が持つ専門的な知識やノウハウを活用できるので、業務品質の向上効果も期待できます。
必要な業務ではあるけれど、社内で行う必要はないと考えられる業務がある場合は、ぜひアウトソーシングの活用を前向きに検討してみてください。
ただし、社内にノウハウが蓄積されない、社員のスキルが向上しない、機密情報が漏洩する恐れがあるなどのデメリットもあります。そのため、依頼先は慎重に検討すべきです。
人手不足倒産は2024年以降も増え続けていく?
現在も人手不足倒産は少なくありません。今後もその数は増えていくかもしれません。最後に、その実態に迫っていきます。
「2024年問題」で時間外労働の上限規制が適用されるとさらに人手不足は深刻化
働き方改革関連法で、2020年4月から中小企業を含むほとんどすべての企業に対して、「時間外労働の上限規制」が適用となりました。
さらに2024年4月からは、その範囲が広がることで発生する「2024年問題」が懸念されています。
これは、時間外労働の上限規制が適用されることで、人手不足は深刻化すると考えられるためです。
建設業と物流業を含む自動車運転業務などは、改正法施行5年後にあたる2024年4月に上限規制が適用となります。
「2024年問題」に続く「2025年問題」に関する懸念も
「2024年問題」だけではなく、「2025年問題」に関する懸念もあります。「2025年問題」は、団塊の世代と呼ばれている75歳以上になることに起因する問題です。
超高齢化社会の進行により、様々な社会問題が発生することを指します。
様々な社会問題のひとつが、後継者不足による廃業が経済縮小を加速させてしまうことです。
中小企業の経営者の多くが2025年に平均引退年齢の70歳を迎えますが、後継者が決まっていない企業も多くあります。
人手不足と後継者不在が重なれば、引退と同時に倒産することになりかねません。
まとめ・人手不足倒産を防ぐための対処法を把握して対策をしよう
人手不足倒産のリスクは、どの企業にもあります。しかし、防ぐための対処法を把握していれば、回避できる可能性もあるので、対策を講じることが重要です。
従業員の離職を防ぐために副業を認める、リカレント制度など新たな制度の導入するなど、前向きに検討してみてください。
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(編集:創業手帳編集部)