人材派遣の平均単価はどれくらい?内訳やコストを抑える方法などを解説

創業手帳

人材派遣を利用する前に平均単価や相場を知っておこう


コストをできるだけ抑えつつ人材を確保したい場合には、正社員雇用ではなく人材派遣サービスを選ぶ人もいます。
しかし、人材派遣サービスが実際どれくらいの費用が必要となってくるのかわからない人もいるでしょう。

そこで今回は、人材派遣の平均単価や料金の内訳、人材派遣を利用する際にコストをできるだけ抑える方法などを解説します。
これから人材派遣サービスの利用を考えている人は、ぜひ参考にしてください。

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人材派遣サービスの平均単価


人材派遣サービスを活用した場合、平均単価はどれくらいになるのでしょうか。ここで派遣料金の平均単価や、職種別・地域別での平均単価を紹介します。

派遣料金(8時間換算)の平均単価

厚生労働省の「令和4年度労働者派遣事業者報告書の集計結果(速報)」によると、令和4年度における派遣料金は全業務平均で24,909円でした。
前年度は24,461円なので、500円ほどアップしていることがわかります。
また、無期雇用派遣労働者の場合は25,843円と全体よりも派遣料金は高めで、有期雇用派遣労働者は20,783円で全体よりも低めになっていました。

派遣料金はあくまで人材派遣会社に支払う料金となっているため、派遣労働者の賃金と同額というわけではありません。
実際に派遣労働者の平均賃金(1日あたり8時間換算)は、全業務平均で15,968円でした。

職種別平均単価

上記は全業務における平均単価になりますが、職種で見ると同じ派遣労働者でも平均単価は異なってきます。

職種 派遣料金
一般事務従事者 17,145円
会計事務従事者 18,394円
商品販売従事者 15,699円
営業・販売事務従事者 18,520円
営業職業従事者 23,652円
製品製造・加工処理従事者 16,073円
運搬従事者 15,592円
清掃従事者 14,674円

派遣の職種で人気のある一般事務だと平均単価は17,145円です。
営業・販売事務従事者や会計事務従事者は一般事務よりも専門的なスキルを必要とする場合もあることから、派遣料金の平均単価は一般事務より1,000円ほど高くなっていました。
また、営業職業従事者は実績が会社の売上に直接影響するため、高めの派遣料金が設定されていると考えられます。

地域別平均単価

ジョブズリサーチセンターの「平均賃金レポート(派遣)」にて、三大都市圏における派遣スタッフの平均時給調査が公表されています。
2025年1月度の結果は以下のとおりです。

地域 平均時給 8時間換算
三大都市圏平均 1,608円 12,864円
関東 1,706円 13,648円
東海 1,474円 11,792円
関西 1,490円 11,920円

関東が1,706円と東海・関西に比べて200円以上高いものの、前年同月比は1,748円なのでマイナスになっていることがわかります。
東海も同様に前年同月比より少ないものの2円の減少に留まっており、関西に関しては前年同月より21円増加する結果となっていました。

派遣料金に換算すると仮に人材派遣会社のマージンを30%とした場合、各地域の派遣料金
は以下のようになります。

地域 派遣料金
三大都市圏平均 約18,377円
関東 約19,497円
東海 約16,845円
関西 約17,028円

紹介予定派遣の平均手数料

一般的な派遣とは異なり、直接雇用を前提とする「紹介予定派遣」の場合、手数料の相場は変わるのでしょうか。
そもそも紹介予定派遣の場合、派遣期間中に発生する手数料と、採用が決まった際に発生する手数料の2種類を支払うことになります。

派遣期間中に発生する手数料は、時間単価×実働時間に手数料がプラスされる形となっており、相場は派遣社員の月給に対して約30%とされています。
また、派遣社員から正社員としての採用が決まった際には、その社員の理論年収に対して15~30%で設定されている場合が多いです。
例えば、理論年収が500万円で手数料が20%に設定されていた場合、500万円×20%=100万円の手数料を支払うことになります。

人材派遣にかかる料金の内訳


人材派遣サービスを利用する際に発生する料金には、様々な費用が含まれています。ここで料金の内訳について解説します。

初期費用

人材派遣サービスを利用する際に初期費用がどれくらいかかるのか気になる人もいるでしょう。
しかし、多くの人材派遣会社は採用活動からスタッフの教育までを担っており、実際に派遣社員が決まって働きはじめるまで初期費用はかかりません。
かかるのは、派遣社員が決まった際に仕事で使用する物品を用意するための費用程度です。

正社員やアルバイト・パートなど直接雇用だと、求人情報を掲載するための広告費やプロモーション費、さらに仕事をする前の研修費用なども用意することになります。

派遣社員の賃金

派遣料金の約70%を占めているのが、派遣社員に支払う賃金です。
派遣料金に占める派遣社員の賃金の割合は約70%ですが、実際に支払われる賃金は職種や派遣の期間によって違ってきます。

例えば、職種で見ると一般事務従事者の平均賃金は11,656円、会計事務従事者は12,246円で、会計事務のほうが若干高くなっています。
また、同じ一般事務従事者でも無期雇用派遣労働者の場合は12,209円、有期雇用派遣労働者の場合は11,093円です。
このように、職種や派遣の期間によって賃金が変動していることも念頭に置いておきましょう。

社会保険料

派遣料金の中には、派遣社員を雇用した際にかかる社会保険料も含まれています。主な社会保険料は以下のとおりです。

  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料
  • 労働保険料(労災保険料・雇用保険料)

派遣料金に社会保険料が含まれているものの、社会保険料に関する手続きは人材派遣会社が行うため、自社が負担する手続きなどはありません。

有給休暇の費用

派遣社員は以下の条件を満たすことで有給休暇を取得できるようになります。

  • 同じ派遣先企業に6カ月以上勤務している
  • 全労働日の8割以上出勤している

この条件を満たすと派遣社員も有給休暇を取得できることから、派遣料金には有給休暇を取得した日の給与分も含まれています。

派遣会社の諸経費

派遣会社が人材派遣サービスを行うために必要な諸経費も、派遣料金の中に含まれています。
例えば、派遣社員が利用できる相談窓口の運営費用や、企業や派遣社員に対してフォローするための人件費、派遣社員に実施する教育研修にかかる費用などです。

これらの諸経費は派遣料金における全体の約10~15%を占めています。派遣会社がサービスを提供するために必要な費用でもあるため、サービス料として考えられます。

営業利益(マージン)

営業利益は、派遣会社が得られる純利益になります。
近年は社会保険料の増加や派遣社員のキャリア構築を推進するための教育費用など、ほかの費用が追加されていることもあり、営業利益率は年々減少傾向にあります。

一般社団法人日本人材派遣協会によると、派遣料金を100%とした際に営業利益が占める割合は1.2%です。
例えば、前述した全業務平均の派遣料金(1日あたり)24,909円、週5勤務で考えると以下のようになります。

24,909円×20日=498,180円(1カ月あたりの派遣料金)
498,180円×1.2%=約5,978円

約5,978円が、派遣社員1人あたりの派遣会社が得られる営業利益ということになります。

人材派遣のコストを抑える方法


人材派遣のコストを少しでも抑えるためには、以下で紹介する方法を取り入れてみてください。

求める人材の条件を整理する

求める人材のスキルが高ければ高いほど時給が上がり、支払う派遣料金も増えてしまいます。
そのため、求める人材の条件を改めて整理し、そのレベルのスキルが本当に必要かどうか検討してみてください。

また、オフィス勤務から在宅勤務に変更することでも派遣料金を軽減できる場合があります。
求める人材の条件や雇用形態などを今一度見直して、派遣料金を抑えられるようにしましょう。

複数の派遣会社を比較する

人材派遣サービスを利用する場合、1社に依頼するよりも複数の派遣会社を比較して決めたほうが派遣料金の負担を軽減できる可能性があります。
なぜなら、派遣会社によって登録している派遣社員の数や職種、得意な業種などが違ってくるためです。
同じ職種・同じ地域だったとしても、派遣会社ごとにマージンなどが若干異なることから、派遣料金にも違いが出てきます。

ただし、派遣料金だけで比較してしまうと、その分派遣社員へのサポートや教育体制が充実しておらず、最終的に無駄なコストとなる可能性もあるので注意が必要です。

残業時間を減らす

派遣社員の残業代は派遣料金に基づき、最低でも25%の割増料金が発生します。
これは正社員の残業代よりも高い傾向にあるため、少しでも派遣料金を抑えたい場合は残業時間を減らすことも重要です。

もし残業時間が多く発生している場合は、どの仕事にどれだけの時間がかかっているのかを確認した上で、適切な対応を取るようにしてください。
そもそも契約上、派遣社員に残業をさせられない場合もあることから、もし残業が必要となった際には事前に派遣会社へ確認を取っておくと安心です。

ミスマッチを防ぐ

雇用形態に限らず、事前に聞いていた仕事内容と異なっていたり、イメージしていた社内風土とは違っていたりする場合、ミスマッチが発生することになります。
派遣社員の場合、契約期間が決まっていることから契約後すぐに退職となることはほとんどありませんが、更新時期が訪れると更新を継続せず、そのまま離職する可能性が高いです。

そうなると人員を確保するために再び派遣社員を雇用することになります。長期的に見て負担を増やさないためにも、採用のミスマッチを防ぐことが大切です。

必要な時だけ派遣社員を利用する

派遣社員というと、無期雇用や同じ事業所・同じ部署において派遣社員は原則最大3年までとする3年ルールがあるなど、ある程度長期的な雇用を前提として、最終的には正社員雇用を促す努力が求められます。
しかし、数年単位で雇用するとなると、その分ランニングコストがかかってしまうので注意が必要です。

少しでも派遣料金を抑えるなら、必要な時だけ派遣社員を利用する「短期派遣」の活用を検討してみてください。
短期派遣なら繁忙期の時期だけ受け入れることになるため、必要な期間以上に派遣料金を支払うこともありません。

チーム全体でコスト意識を持つ

経営者に限らず、チーム全体でコスト意識を持つことも大切です。
コスト意識といっても物品に関するものだけでなく、作業効率を上げるための工夫を取り入れて、無駄なコストが発生しないようにする心がけも重要となってきます。

また、派遣社員も含めてチーム全員の役割を見直し、改善を図ることで、各自の仕事内容やタスクを把握しやすくなり、業務効率化が期待できます。
コスト意識や業務効率化を周知させることで、組織全体における生産性の向上にもつながるでしょう。

人材派遣会社をコスト以外で比較する際のポイント


上記でも解説したように、人材派遣会社は派遣料金だけで比較すると余計にコストがかかってしまう場合もあるため注意が必要です。
コスト以外だとどの部分を比較すれば良いのか解説していきます。

派遣形態

各派遣会社では対応可能な派遣形態が異なっている場合もあります。主な派遣形態の種類は以下のとおりです。

登録型派遣 派遣先の企業で就業が決まった人材と派遣社員が雇用関係を結ぶ。同じ事務所・同じ部署での勤務は最長3年。
常用型派遣 派遣元の企業に正社員または契約社員として派遣社員が在籍する形態。専門的なスキルを持つ人材が多い。派遣先企業で3年以上勤務することも可能。
紹介予定派遣 派遣先の企業で正社員または契約社員になることを前提として派遣される形態。派遣後6カ月以内に正社員または契約社員になる。

登録型派遣と常用型派遣は似ていますが、常用型は3年以上同じ派遣先企業で勤務することも可能です。
派遣会社がどの形態に該当しているか確認し、自社の希望に合うものを選んでください。

得意とする職種・業種

派遣会社の中には、幅広い業種に対応している企業から、特定の職種・業種に強い企業もあります。
即戦力になる人材を求めている場合は、特定の職種・業種に強い派遣会社を選んだほうが適切な人材も見つけやすいです。

ただし、特化型の派遣会社は登録している人材が少ない可能性もあるため、注意が必要です。
派遣会社がどのような職種・業種に強いのかはホームページなどで確認してください。

フォロー体制

派遣会社を選ぶ際には、フォロー体制もチェックすることが大切です。
例えば、派遣会社の担当者が派遣先の企業や派遣社員に対して定期的に状況を確認するなど、細やかなチェック・サポートを実施してくれるかどうかを確認してください。

フォロー体制が万全な派遣会社だと、派遣契約を結んでいる最中に万が一トラブルが発生した場合も、迅速に対応してもらえます。
また、派遣社員がスムーズに業務へ取り組めるようなサポートも提供されていれば、派遣社員のモチベーションも保たれるので仕事の生産性・効率性が向上する場合もあります。

スタッフの数

派遣会社を選ぶ時は、その会社にどれだけのスタッフが登録しているのかもチェックしておきたい部分です。
登録人材が少なくてもその分野に特化したエキスパートが揃っていれば良いかもしれません。
しかし、単純に登録スタッフの数が多ければ多いほど自社に適した人材も見つけやすいです。
そのため、派遣会社を選ぶ際は登録スタッフの数も確認してみてください。

まとめ・平均単価を理解した上で人材派遣サービスの利用を検討しよう

人材派遣サービスの平均単価(令和4年度)は、全業務平均で24,909円になることがわかりました。料金の内訳は約7割が派遣社員の賃金です。
そのほかに派遣社員の有給休暇を取得する際のコストや社会保険料、派遣会社の諸経費などが含まれているため、コストを削減することは難しいでしょう。
しかし、残業時間を減らしたりミスマッチを減らしたりすることで、派遣にかかるコストを少しでも抑えることが可能です。
平均単価も理解した上で、人材派遣サービスを活用して自社に適した人材を探してみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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