フリーランスの健康診断の受け方|メリットから金額の目安まで解説
医療費控除の要件にも!個人事業主が健康診断を受けておくべき理由
フリーランスでもぜひ受けておきたい「健康診断」。受診の義務があるわけではなく、経費にも計上できないのがネックですが、フリーランスの場合は健康を損なうと無収入になってしまうリスクもあります。
とはいえ、「どこで健康診断を受ければいいのか?」「どんなコースの健康診断を選べばいいのか?」などわからないことも多いのではないでしょうか。そこで今回は、フリーランスが健康診断を受ける方法やメリット、注意点などを詳しく解説します。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
フリーランスが健康診断を受けるべき3つの理由
フリーランスは特に健康診断を受けることが義務付けられているわけではありません。ですが、次のような理由からぜひ受けておくことをおすすめします。
- 無収入になるリスクを減らせるから
- セルフメディケーション税制(医療費控除)の要件だから
- 健康への意識向上につながるから
以下、詳しくご説明します。
①無収入になるリスクを減らせるから
会社員の場合、一時的な体調不良であれば有給休暇を充てることができ、長期的な病気治療が必要な場合でも会社の加入している健康保険組合から傷病手当金を受け取ることができます。傷病手当金は給与のおよそ2/3、最長1年半の間支給されます。
一方でフリーランスには、このようなセーフティーネットがありません。健康を損なえば収入源や無収入につながってしまいます。また、継続的な案件を断る場合には、回復後の仕事再開も難しくなってしまうかもしれません。
健康診断を受けておけば、自身の健康状態を把握することができ、病気のリスクをある程度未然に防ぐことができます。義務はなくても、フリーランスこそ受けておきたいのが健康診断なのです。
②セルフメディケーション税制(医療費控除)の要件だから
実は、健康診断を受けていることはセルフメディケーション税制の要件の一つとされています。
セルフメディケーション税制とは、2017年1月から開始された医療費控除の特例。健康の維持増進のための取り組みをしていると、対象となる医薬品(主にドラッグストアで購入できる市販薬)の購入費用(一定額以上の分)について所得控除を受けることができます。
健康診断の受診は「健康の維持増進のための取り組み」として認められているため、健康診断を受けていればその年には医療費控除の適用が可能になるのです。
- 健康保険組合、市区町村国保などが実施する健康診査【人間ドック、各種健(検)診等】
- 市区町村が健康増進事業として行う健康診査【生活保護受給者等を対象とする健康診査】
- 予防接種【定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種】
- 勤務先で実施する定期健康診断【事業主検診】
- 特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導
- 市町村が健康増進事業として実施するがん検診
(国税庁HPより)
③健康への意識向上につながるから
健康診断を受けると、自身の体のよくない部分がわかったり、来年の健康診断で良い結果を残そうと普段の健康への意識が向上したりといってメリットがあります。
前述のとおり、フリーランスにとって健康は本当に重要な要素。「体が資本」といえる働き方なので、健康への意識は常に高く保っておきたいところです。
フリーランスの健康診断項目の選び方
では、フリーランスはどのような項目のある健康診断を受ければ良いのでしょうか。また、「人間ドック」と健康診断とはどう違うのでしょうか。
フリーランスが受けるべき健康診断の項目
自身の体調や年齢にもよりますが、フリーランスが健康診断を受ける場合、会社員の健康診断項目を参考にすると良いでしょう。厚生労働省が事業者に向けて指定している定期健康診断の項目は次のとおりです。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査及び喀痰検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
(厚生労働省HPより)
健康診断と人間ドックの違い
健康診断は、自身の健康状態を調べ、病気の兆候がないかどうかを診断するもの。基本的な検査項目が中心で、所要時間は30分〜1時間程度、料金も数千円〜1万円前後と比較的低額です。また、会社に勤めている場合は労働安全衛生法に基づき、年1回の定期健康診断の受診が義務付けられています。
一方人間ドックは、健康診断より多くの検査項目があり、健康診断だけでは手の届かない部分まで調べることができます。時間も費用も健康診断よりかかってしまいますが、病気の早期発見につながることもあります。
人間ドックは20歳から受けることができますが、40代くらいから年1回程度受けるのが一般的です。また、女性の場合は女性特有の病気のリスクも踏まえ、30代から受診するのが望ましいと言われています。
理想としては30〜40代から人間ドックを受けるのがおすすめですが、費用面や時間面でハードルが高いという場合は、まずは年1回の健康診断から習慣づけてみてはいかがでしょうか。
フリーランスが健康診断を受ける3つの方法
フリーランスが個人で健康診断を受けるには、主に次の3つの方法があります。
- 市区町村の健康診断
- 各病院・クリニックの健康診断
- 加入している国民健康保険組合の健康診断
以下、それぞれ詳しくご紹介します。
①市区町村の健康診断
住んでいる市区町村によっては、その自治体が実施している健康診断を無料または低額で受けることができます。
ただし、指定された医療機関でしか受けられない場合もあること、検査項目が限られてしまうことといったデメリットもあります。
②各病院・クリニックの健康診断
病院やクリニックが個別に実施している健康診断を受ける方法もあります。会社員の方が受ける検査と同じ項目の検査を受けられること、自身の行きやすい場所を自由に選べることなどがメリットです。
受診の申し込みをするには、インターネットや電話などで直接病院に連絡をします。フリーランスでも補助金等が出るわけではないので、他の手続き等は必要ありません。
料金は数千円から1万円前後が相場です。
③加入している国民健康保険組合の健康診断
フリーランスとして、市区町村の「地域」によって加入する国民健康保険ではなく、「業種や職種」によって加入する国民健康保険組合に加入している場合には、そこで実施されている健康診断を受けられることもあります。
国民健康保険組合とは同業種の人たちが集まってつくる組織。文芸や美術、編集などの業種に就くフリーランスの方で組織された「文芸美術国民健康保険組合」などが有名ですが、他にも様々な組合があります。
組合に加入していれば、会費がかかる代わりに健康診断の受診の際に給付を受けることができる場合があります。加入している組合のあるフリーランスの方は一度条件を確認してみましょう。
他にもフリーランスの方が加入できるものとしては、健康診断1回につき2,000円(2021年時点)を補助してもらえる「あんしん財団」などもあります。
フリーランスが健康診断を受ける際のポイント
最後に、フリーランスで働く方が健康診断を受ける際に知っておきたいポイントや注意点を解説します。
フリーランスの健康診断の費用は経費計上できない
フリーランスだと、健康診断にかかった費用を経費として算入することはできません。なお、法人化をすれば福利厚生の一環として経費にすることが可能です。
自費負担となってしまうのは少し痛いところ。ただし、健康を害して収入を失ってしまうことを考えれば大切な投資といえます。
必要に応じて健診項目を追加する
市区町村や病院の実施する健康診断では、いくつかの項目がセットになったコースが用意されています。一つずつ検査項目を選ばなくても、「定期健康診断A」「定期健康診断B」のようなコースを選べば一定の検査を受けることができます。
ですが、特に気になる箇所や過去に疾患のあった箇所などがある場合は、必要に応じて自身で項目を追加するのが望ましいでしょう。フリーランスでせっかく時間を割いて健康診断を受けるのですから、ぜひ気になるところは一緒にチェックしてみてください。
健康診断で病気が見つかった場合は医療費控除の対象に
健康診断を受けるだけではフリーランスの場合経費に計上することができませんが、もしも健康診断の結果病気が見つかって治療することになった場合は、健康診断の費用も医療費控除の対象となります。
自身の健康向上のためになるのはもちろん、節税の効果がある場合もありますので、健康診断の結果見つかったのがちょっとした不調や病気であっても面倒くさがらず、ぜひ治療を検討してみてください。
まとめ
フリーランスが健康診断を受けるべき理由や受ける方法、注意点などについてご紹介してきました。
今回の内容をまとめると下記のようになります。
- フリーランスは無収入になるリスクやセルフメディケーション税制のメリットなどを考え、年1回の健康診断を習慣化するのがベター
- フリーランスが健康診断を受ける主な方法は、市区町村の実施するもの・各クリニックの実施するもの・国民健康保険組合の実施するものがある
- フリーランスの健康診断費用は経費計上できないが、病気が見つかり治療する場合には医療費控除の対象になる
健康診断の申し込みから支払いまで自身で行わなければならないフリーランスにとっては少し腰の重いことかもしれませんが、自身の健康を最優先に考え、ぜひ受診をしてみてくださいね。