セルフメディケーション税制とは?税制のポイントから確定申告の仕方まで徹底解説

資金調達手帳

2017年開始!セルフメディケーション税制を活用しよう

(2017/12/27更新)

平成29年(2017年)分の確定申告から導入される「セルフメディケーション税制」。あなたも、特定の市販薬を購入した場合、確定申告で税金の還付を受けられるかもしれません。

でも、「そもそも、セルフメディケーション税制って何?」「医療費控除とどちらを使えば良いのだろう」「確定申告のときの書き方は?」など、分からないことも多いですよね。

この記事では、セルフメディケーション税制について詳しく説明します。しっかり内容を理解して、スムーズに確定申告を進めましょう。

セルフメディケーション税制とは?

セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例として2017年から設けられた制度です。

医療費控除を受けるためには、原則として年間に支払った医療費の合計が10万円を超える必要がありました(超えた額が所得から控除され、税金が還付・減額される)。しかし、健康な人であれば、医療費が少ないために控除を受けられないということも少なくありません。

実際、病院にかかるほどでない程度の体調不良であれば、薬局で市販薬を買って治すことも多いですよね。セルフメディケーション税制では、一定の条件を満たせば、対象となる医薬品を1年間に12,000円以上購入した場合に、12,000円を超えた金額が所得から控除され(上限88,000円)、税負担が軽くなります。

セルフメディケーション税制の導入によって、医療費控除が身近なものとなり、活用しやすくなったのです。

セルフメディケーションとは?

セルフメディケーションとは、直訳すると「自己治療」。
自分自身で治療する=自分で傷や症状を判断して、医薬品を使用し、健康維持を行うことを指します。

セルフメディケーション税制の導入により、自分の健康管理への意識を向上させること、また、個人で手当を行うことで、医療費の適正化にもつながることが期待されています。

セルフメディケーション税制の対象となる人

セルフメディケーション税制を活用するためには、以下3つの条件を満たしている必要があります。

所得税・住民税を納めている

そもそも非課税の場合は、還ってくる税金や納めるべき税金がないので適用されません。

1月から12月までの間に健康診断等※を受けていて、自身の健康増進や病気予防に取り組んでいる

「一定の取り組み」を証明するため、確定申告の際に領収書や結果通知表等を提出します。
任意で受診した健康診査(全額自己負担)や、市町村の予算で実施される健康診査は、一定の取り組みには含まれません。
※健康診断等:メタボ検診、定期健康診断、がん検診、予防接種、健康診査

1月から12月までの間に、対象となるOTC医薬品を12,000円以上購入している

世帯ごとに購入費用を合算できます。夫の確定申告でセルフメディケーション税制を活用する場合、夫が購入した医薬品だけでなく、妻や子が購入した医薬品の費用を合計して12,000円を超えていれば対象となります。

「対象医薬品の合計額が足りないから、あと少しでセルフメディケーション税制の対象にならなかった!」となるのは悔しいので、医薬品をドラッグストアで購入する際は「セルフメディケーション控除対象の商品か」という点に注意しながら選ぶと良いかもしれませんね。

OTC医薬品って何?

「OTC医薬品」とは、医師の処方せんがなくても薬局やドラッグストアで購入できる薬のことです。
その中でも、セルフメディケーション税制の対象となるのは、医療用医薬品でも使われている83の成分を含むOTC医薬品です。

風邪薬、胃薬、頭痛薬、軟膏、目薬など、幅広い薬が対象になっています。対象となるOTC医薬品のパッケージやレシートには「セルフメディケーション税控除対象」ということが分かるマークが表示されますから、それを参考に選ぶようにしてください。

セルフメディケーション税制5つのポイント

セルフメディケーション税制を活用するにあたって、おさえておきたい5つのポイントを順に説明します。

医療費控除制度との併用ができない

セルフメディケーション税制は、医療費控除制度との併用ができません。

たとえば、1年間で

  • 対象となるOTC医薬品の購入額が12,000円を超えている
  • 1年間の医療費が10万円を超えている

という状況の場合、セルフメディケーション税制か医療費控除かどちらかを選んで申告する必要があります。

どちらを選ぶほうが節税になるのか?という疑問については、後ほど詳しく説明します。

扶養家族が使った分も合算できる

OTC医薬品の購入額は、世帯で合算ができます。

夫の確定申告でセルフメディケーション税制を活用したい場合、夫が購入した医薬品だけでなく、扶養家族(妻や子ども)の購入額も合計して12,000円以上になればOKです。

一人分の医薬品額では12,000円を超えなくても、家族分を合算すれば超えるかもしれませんね。

ただ、セルフメディケーション税制の対象となるための「健康増進への取り組み」は、申告者自身が行っている必要があります。例えば、申請者の子どもが予防接種をしているからと言って、一定の取り組みをクリアしていることにはなりません。

控除対象となるのは「支払った金額」

セルフメディケーション税制で控除となるのは、「支払った金額」の合計額です。

医薬品の販売価格は、薬局やドラッグストアによって異なりますよね。セールや特売で通常価格より安く販売されていた場合でも、控除対象となるのはセール価格(実際に支払った金額)となります。

また、税込み額で計算するという点も注意してください。

領収書の保管が必要

セルフメディケーション税制を使う場合、平成29年度からは「セルフメディケーション税制の明細書」を作成して提出する必要があります。ただし、確定申告の期限から5年間は「対象OTC医薬品を購入したことが分かる領収書(レシート)」の原本を自宅で保管しなくてはなりません。

年間の購入額が12,000円を超えるかどうか分からなくても、購入した際の領収書(レシート)を細かく保管するようにしましょう。

※平成31年(2020年)分の確定申告までは、領収書の添付または提示で行うこともできます。

通販で買った分の領収書は販売元に発行してもらう必要がある

インターネット通販で医薬品を購入する場合もありますよね。通販でOTC医薬品を購入した場合の領収書は、販売元に発行してもらう必要があります。

ペーパーレス化を進めているお店も多く、「領収書はWebで確認し、必要に応じて自分でプリントする」という形式が取られていることもあります。しかし、自宅のプリンタで出力した領収書は、証明書類の原本としては認められず、確定申告に使うことはできません。

セルフメディケーション税制と医療費控除どちらにするべきか

OTC医薬品によっては、医療費控除とセルフメディケーション税制の両方に使えるものもあります。

セルフメディケーション税制の対象とならない医薬品でも、治療のために購入したOTC医薬品は、医療費控除に含めることができます。

ここで、OTC医薬品と医療費控除の関係性を確認しておきましょう。

治療のために購入したOTC医薬品
  • 従来の医療費控除に含めることができる
  • 医療費と合算して、10万円を超える金額が所得から控除される(セルフメディケーション税制対象の医薬品も合計できます)
治療のために購入したOTC医薬品の中で、セルフメディケーション税制対象の医薬品
  • セルフメディケーション税制に含めることができる
  • 12,000円を超える部分が所得から合算される
  • 医療費との合算はできない

どちらの制度を使うかは、「医療費」と「OTC医薬品の購入費用」を比較して決定します。実際の額に応じて、3パターンの選択肢があります。

①どちらも受けられない
  • セルフメディケーション税制対象医薬品の合計額が12,000円以下
  • 医療費+OTC医薬品の合計額が10万円以下

この場合は、いずれの医療費控除も使うことができません。

②セルフメディケーション税制を活用する
  • セルフメディケーション税制対象医薬品の合計額が12,000円以上
  • 医療費+OTC医薬品の合計額が10万円以下

この場合は、セルフメディケーション税制を活用できます。

③控除額の多い方を選ぶ
  • セルフメディケーション税制対象医薬品の合計額が12,000円以上
  • 医療費+OTC医薬品の合計額が10万円以上

この場合は、両方の控除額を計算してみて、より「控除額が大きい方」を選択するようにしましょう。控除額の計算方法は次の項目で解説します。

控除額の計算方法


医療費控除とセルフメディケーション税制の控除額計算方法を簡単に説明します。

従来の医療費控除

控除額=医療費+治療のためのOTC医薬品購入額-10万円(所得金額が200万円未満の人は「所得金額×5%」の額)

例えば、年間の医療費が9万円、OTC医薬品購入額が3万円だった場合、医療費控除の額は2万円となります。ちなみに、医療費控除の上限は200万円です。

セルフメディケーション税制の控除額計算方法

控除額=セルフメディケーション対象のOTC医薬品購入額-12,000円

例えば、年間のセルフメディケーション対象OTC医薬品の購入額が3万円だった場合、医療費控除額は18,000円となります。ちなみに、セルフメディケーション税制の控除上限額は88,000円です。

医療費も市販薬購入費もある場合は、上記の計算式に従って控除額を計算し、額が大きい方を適用することで節税に繋がります。

セルフメディケーション税制を受けるために必要なもの

セルフメディケーション税制を受けるためには、確定申告書を作成して2月15日~3月15日の間に申告する必要があります。

確定申告の際、申告書と合わせて提出する必要がある書類は以下の3点です。

必要書類
  • セルフメディケーション税制の明細書
  • 健康増進への「一定の取り組み」を行ったことを証明する書類
  • 健康診断の結果通知表や予防接種の領収書など

予防接種の領収書は原本が必要ですが、健康診断の結果通知表はコピーでもOKです。検診結果部分については提出が不要なので、黒塗りや切り取りを行ってから提出しましょう。

個人事業主であれば、事業の確定申告書類やその他の所得控除証明書類(保険や年金など)と合わせて準備します。
給与所得者であれば、源泉徴収票も同時に提出します。

セルフメディケーション税制の明細書の書き方

平成29年分の確定申告から、「セルフメディケーション税制の明細書」の添付が必要になりました(医薬品購入費の領収書の添付または提示の必要はありません。しかし、5年間の自宅保管が必要です)。

明細には、「予防への取り組みについての詳細」と、「医薬品購入費の明細」の情報をまとめて記載します。

明細の様式は、国税庁のHPからダウンロードしてご活用ください。
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/yoshiki02/pdf/ref2.pdf

健康の保持増進・予防への取り組みについての詳細

健康の保持増進・予防への取り組みについて、取組内容をチェックボックスで選択し、結果通知表や領収書の発行者名を記載します。

結果通知表や領収書については、確定申告書類と合わせて原本を提出します。

医薬品購入費の明細

以下4つの項目について記載します。

1.薬局などの支払先の名称

薬局やドラッグストアの名称を書きます。1箇所で複数回購入している場合は、購入先ごとに1行にまとめることができます。

2.医薬品の名称

購入した医薬品の名称を記入します。複数の医薬品がある場合は、並べて記入します。領収書には、控除対象の医薬品であることが「★印」等で示されています。

3.支払った金額

医薬品の購入金額を記入します。複数の医薬品がある場合は合計します。実際に支払った金額を計算しましょう(税込み。セール等の場合はセール価格を書く)。

4.3のうち生命保険や社会保険などで補填される金額

生命保険契約、損害保険契約などに従い保険金や給付金がある場合は、その金額を記入します。

明細書の計算式に従い、控除額の計算を行ったら作成は完了です。

確定申告書の書き方

確定申告書類は、国税庁ホームページの「確定申告書作成コーナー」から簡単に作成できます。作製した書類をインターネット上で送ることもできますし、プリントアウトして税務署に郵送提出することも可能です。

国税庁ホームページの作成ツールを使う場合は、画面の指示に従って入力していけば作成は完了します。
手書きで作成する場合は、明細書下部の計算結果を申告書に転記していきます。記入する場所は、次の2箇所です。

1.確定申告書 第一表

左側の「所得から差し引かれる金額」の部分にある「医療費控除」の欄に、明細書下部のD「医療費の控除額」を記載します。収入額やその他の控除の情報を記入し、税金の計算を行います。必ず埋めるべき場所は、記入欄が太枠で囲まれているので、その指示に従って入力していけばよいでしょう。

2.確定申告 第二表

右側の下の方に、医療費控除の内容を記載する箇所があります。「支払医療費」の項目には、明細書下部のA「支払った金額」を書き、「保険金などで補填される金額」の欄には明細書下部のB「保険金などで補填される金額」を書きます。

難しいと思われるかもしれませんが、しっかり領収書を保管し、明細書を作成すれば、スムーズに申告書類を作成することができます。新しい税制を活用して、上手に節税を行いましょう。

【確定申告のしかたについて詳しく知りたい方はこちら!】
確定申告のやり方/書き方を徹底解説します!

(執筆:創業手帳編集部)

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