飲食店で「立ち退き」を迫られたら 損しないための6つのポイント

飲食店の経営者向けに、立ち退きに備えるポイントをお伝えします

(2020/01/06更新)

「道路を拡幅するから…えっ、立ち退きしろって?どういうこと!」
「駅前の再開発ついに決まったのか。うちも立ち退きか…」

飲食店を経営していると、立ち退き問題に直面することがあります。突然通達された場合はもちろん、ある程度予期していた場合でも、対応への憂慮は避けられないでしょう。特に、開店にあたって厨房の設備や店舗のデザインなど造作に手をかけていたり、店舗の立地自体にアドバンテージがある場合などは、不満・不服が生まれやすくもあります。

避けられない立ち退きあたって、店主がなるべく有利に立ち回るにはどうしたらよいのでしょうか。適切に対応するためのポイントをまとめて紹介します。

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立ち退きも正しく知れば怖くない?

道路などの公共事業や都市再開発などの開始が決まった場合、立ち退きは法律に従って行われ、最終的には拒否できません

一方で、所有権者や賃借権者は権利が保護されており、

・代替地の用意
・金銭的補償

がありえることをご存知でしょうか。億単位の補償金が認められた、というケースもあります。金銭的補償のみならず、立ち退き時に起こりがちな問題も、対処の方法を正しく知ることで、有利に解決しやすくなります。

立ち退きに備えて抑えておきたい6つのポイント

立ち退きにあたって頭に入れておきたい6つのポイントを見ていきましょう。

ポイント1: すぐに出て行く必要はありません。慌てずに準備を

公共事業、例えば道路の建設などの場合でも、都市再開発の場合でも、事業を推進する主体が存在します。「施工者」「起業者」といった名称で呼ばれていますが、便宜上この記事では「事業者」で統一します。

立ち退きにあたっては「事業者と権利者が話し合いのうえ、契約を結んで補償金などの条件を決めて立ち退く」ことが原則です。この場合、権利者は、土地や建物の所有権者だけではなく、借地人・借家人も含みます。「事業者」は、所有権者から土地を買い取り、または賃借権などの権利を、補償金を払って消滅させて、目的の事業を進めることになります。

土地収用の場合、事業者は、土地収用まで大きく分けて3段階のステップがあります。i) 土地や物件の状況を調査・確認し、ii)調書を作成して収用委員会に申請・公告縦覧=公開の手続を経て、iii)収用委員会の審理のうえで裁決を得る、という流れです。そのため、通常立ち退きまでは、ある程度の余裕があります。

このように手続きに一定の期間が必要ですし、事業者の側も、強制的な排除ではなく合意による明渡しによって穏当に処理しようとすることが通常です。すぐに対応しなければ、と焦らず落ち着いて対処しましょう。

ポイント2: 調書の内容に少しでも不明点があったら、そのまま認めず異議をとどめる

土地の収用に際しては、事業者が土地調書・物件調書を作成します。土地調書・物件調書は、測量その他の実地調査で補償金や代替地を提供するための基礎資料となります。そのため、後に事業者と交渉する上でも非常に重要な資料となります。

権利者は、調書作成の際に原則として署名又は捺印を求められます。そして調書の内容に「異議はないか」と聞かれます。

この時、調書に不明点があるのに、異議をとどめなければ、調書の内容は真実だと推定されてしまい、そのまま補償金の額に反映される可能性が高くなります。不服があれば、認めないという選択肢もある、ということを念頭に、少しでも有利な条件で話し合いを進められるよう判断を下しましょう。

ポイント3:大家さん・周辺の店主や住民とトラブル発生?最低限記録を取りましょう

「大家さんは補償金を早くもらって飲食店を運営している店子にも早く出ていってほしい、ところが店子は出ていきたくない」

あるいはその逆など、立ち退きには利害関係が交錯するので、事業者だけでなく、大家さんやその周辺の関係者とのトラブルも発生しがちです。

公共事業や再開発事業などの事業開始が決まってから気を付けておきたいのは、「記録を詳細にとっておくこと」です。だれが何を言ってきたか、どんな書面が配られたか、困ったときに行政や弁護士に相談するための資料となります。

ファイルなどにまとめて、いつでも見返せる、そしてコピーが取れる状態にしておき、トラブルから身を守る手段を用意しておくことが望ましいです。

ポイント4:賃借人にも補償・代替地の提供等はある

賃借人は、賃貸人がもし所有権を失ったら、通常はそこで賃貸借権が消滅することになります。しかし、土地の収用の場合は、所有権者のほかに賃借人等の所有権者以外の土地・建物の利害関係人も補償を受けられる可能性があります

なお、賃借人の補償の中身ですが、飲食店のように公共事業・再開発事業により、営業を中断させられたといった場合、借地権の評価額だけでなく、売上ないし休業補償も含めて補償金をもらえることもあります。

そのため、一等地での賃借店舗による飲食店営業の例では非常に高額の補償金が出るケースもあるのです。

ポイント5: 周囲の補償金の額や、補償金の算定基準・目安は自分で情報収集を。不動産鑑定士の鑑定書取得も検討すべき。

所有権にしても、賃借権にしても店舗の建物の造り・外壁の堅牢性・売上・土地の時価など多くの要素を考慮して補償金や代替地などの条件が決まります。一律の条件を当てはめる必要もありません。

一方で、同等の条件で、自分以外にも立ち退きを迫られる人がいる可能性があります。そのため、日ごろから付き合いのあった自店周辺の店舗などと情報交換をして、周囲と補償金やその他の条件をなるべくそろえ、バランスをとった交渉をすることも、交渉経過次第では大事になります。

しかし、周辺店舗の補償金・条件に関する情報は、自分が不当に不利にならないようにするための交渉材料として使うにすぎず、もっと自店に価値があることを主張する場合にはあまり材料となりません。情報収集もトラブルのもとにならないよう、他人の事情に深く立ち入らない程度にとどめましょう。

それ以上に大事なのは、補償金の算定額の根拠となる、客観的な資料・数字を集めておくことです。また、不動産の価値をアピールする説得力のある資料としては、やはり専門家である不動産鑑定士の鑑定書が考えられます。補償金が高額になりそうな案件であれば特に、専門家のサポートを受けることも積極的に検討しましょう。

ポイント6:トラブルが発生した場合は、弁護士に相談する

公共事業・再開発事業の際には、先ほどご説明した通り、大家さんなど周辺関係者との間でトラブルが生じる可能性があります。
「大家さんまで立退けと言ってきた!」
「どうしても納得できない条件を言われて調書に異議をとどめたい」
「関係者から不当な嫌がらせを受けている」
といったトラブルが発生した場合は弁護士に相談しましょう。

行政は手続きの流れなど、再開発事業の管理に関することには積極的に対策してくれますが、個人間の争いごと・もめごとに介入することは消極的なことがあります。

特に立ち退き問題を専門的に扱っている弁護士の場合、事例にあった解決を提示するノウハウを得られる可能性が高くなります。
また、無料相談を受け付けている事務所も増えてきているので、困ったら問い合わせてみましょう。

まとめ

飲食店の行政による立ち退きは、道路を作る予定があるなど、入居時や取得時にすでに将来的な立ち退きの可能性がわかっているケースもあります。

しかし、具体的な立ち退き時期が決まって、飲食店の店主がいざ交渉、となると「自分には交渉のための法律知識がない」「専門用語がわからない」「交渉しようと話したら、相手が正面から取り合ってはくれなかった」と想像していた以上にうまくいかない、と感じられることがあります。

逆に、早期に交渉が成立した場合には、税制上の優遇が受けられるなど、メリットがあるケースもあります。法令に従った手続きにより、立ち退きそのものは拒否できないとなれば、場合によっては交渉を長引かせるのも考えものです

このように、立ち退きの対応はあらゆる事柄を考慮しなければならないため、店主の準備は大事です。早くからこまめに行政主導で開かれる説明会等に顔を出し、計画全体像を知るなど情報収集をした上で、不動産鑑定士、弁護士などの専門家や、行政の担当者に相談して必要な知識を仕入れて、具体的な立ち退きでの自分の行動に見通しをつける・トラブルの際はすぐに弁護士に任せられるように、弁護士のあたりをつけておくなどの対策を早めにしておきましょう。

行政の担当者や専門家に相談する上でも、この記事で説明したポイントと筋道は役に立ちます。ぜひ活用して、納得のいく条件での立ち退きができるよう備えてください。

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(監修: 弁護士法人堂島法律事務所/安田健一弁護士
(編集: 創業手帳編集部)

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