「食」と「栄養」を通じて、健康に過ごせる社会を。栄養士が立ち上げた料理教室・コンサルサービス

創業手帳woman

株式会社アン・サンテ 代表取締役 島田淳子インタビュー

(2018/11/15更新)

現代の日本は「超高齢化社会」と呼ばれており、増加していく高齢者のケアとともに、疾病予防や健康寿命の延伸という課題に取り組む必要に迫られています。
その分野を、栄養士としての知見を生かして解決していこうと奮闘しているのが、株式会社アン・サンテ 代表取締役の島田淳子さんです。

「創業手帳セミナーに参加したことが、起業の大きなターニングポイントだった」と語る島田さん。
今回は、そんな島田さんが行なっている事業や解決するべき課題、これから実現したい社会についてお話を伺いました。

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島田淳子
1986年同志社女子大学卒業。(株)クッキングゆたか(現 三惠フードサービス(株))、第二岡本総合病院(現 京都岡本記念病院)勤務を経て、給食会社でのアドバイザーや専門学校の准教授を歴任。
2018年に株式会社アン・サンテを設立。管理栄養士として、在宅療養をするための支援体制の充実、健康寿命を延伸するための活動に取り組んでいる。

「病気を治すため」ではなく「病気を予防する」食事療法が必要

株式会社アン・サンテのホームページより引用

—最初に、今行なっているビジネスの概要を教えてください

島田:私たちが行なっている主な事業は5つあります。

一つ目は、少人数で行うホームヘルパー向け料理教室「えがおクッキング」。
在宅療養されている方の食事支援を担当されるホームヘルパーが学びたい、「時短料理」「市販品の活用」「簡単に作れる介護食」を教える料理教室です。

二つ目は、対象者に合わせた料理教室。
例えば、糖尿病など様々な症状で食事療法実践中の方や、一人暮らしの方、男性向け、料理初心者向けなど、様々な方を対象とした料理教室を行なっています。

三つ目はコンサルティング業務。
給食会社や保育園など、給食関連の方に向けた対象者ごとのレシピの違いやコツをアドバイスしています。

四つ目は人材育成。
在宅療養支援体制の構築や充実のための、ホームヘルパーの方や管理栄養士、薬剤師の技術向上、知識習得などのレベルアップ研修を行なっています。

五つ目が、レシピ提案。
ホームヘルパーの方やご家族のために、介護食、時短料理、疾病や減量など、目的に応じた分かりやすく美味しいレシピを提案しています。

—なるほど。様々な状況に合わせた活動をされているんですね。このビジネスを始めたきっかけはどのようなものでしたか?

島田:私は病院など様々な職場で管理栄養士の経験を積んできたのですが、そこで感じたのは、「病気を治すための食事療法には限界がある」ということでした。
病気にならないための予防がとても重要だと感じたことが、このビジネスをやろうと思ったきっかけです。

それと同時に、近年は少子高齢化が加速しています。これからは在宅療養の必要性が高まってくることが予想できますが、在宅療養の分野で活躍できる管理栄養士の人材不足が課題です。こういった人材をもっと増やしていきたいとも考えていました。

また、自分自身の老後に関しての考え方も、きっかけの一つです。
私はシングルマザーで子供3人を育ててきたのですが、学費等の出費の影響で貯金の状況が心配でした。
定年退職してから動くのではなく、早めに退職して準備をし、60歳の時点で安定収入が得られる事業を展開したいとも考えていました。

「やっぱり食事のことは栄養士さんだね」と頼ってもらえる環境を作りたい

—栄養士という立場から見て、どう世の中に影響を与えたいですか?

島田:栄養士の認知度を上げたいと思っています。
様々な現場で栄養士が活躍し、関わる人が笑顔になってくれたり、健康増進が実現できたりしています。「やっぱり、食事のことは栄養士さんだね」と頼ってもらえるような環境を作り上げていきたいです。

ちなみに、栄養士は業務独占資格(※1)がありません。例えば、医療行為は医師でないとできませんが、食事のアドバイスをするのは栄養士じゃなくてもできます。栄養士の必要性が低くなりやすいという課題があるので、これを解決できるように活動していきたいですね。

※1
業務独占資格:弁護士、公認会計士、司法書士のように、有資格者以外が携わることを禁じられている業務を独占的に行うことができる資格のこと。

—在宅栄養の分野において、課題は何でしょうか?

島田:食事の内容が複雑だという点です。例えば、食材を細かく刻む、とろみをつけるなどのひと手間が必要だったり、チューブで栄養剤を入れる方法だったりする時もあるなど、多岐にわたる調理法をしなければいけないことが課題です。

また、高齢者の夫婦のみ、または独居というパターンが多いので、食事を作ること自体が大変です。子供と同居していたとしても、共働きが多く、高齢者の世話ができない家庭が多い。そのため、栄養不足な状態に陥る方もいるので、そういった課題を解決したいです。

超高齢化が課題の京都でできること

—京都の魅力と課題、どう貢献していきたいかを教えてください。

島田:京都の魅力といえば、豊かな自然と歴史ある建物が多いところですね。はんなりと落ち着いた感じがします。

対して、京都の課題は高齢化率が高いという点です。
一般的に21%を超えると「超高齢化社会」と呼ばれていますが、京都府の高齢化率は33%という数値が出ています。
学生が多い町や子育て世代が多い町もあれば、高齢者夫婦、独居も多い。

栄養士だけでなく、在宅医療に関わる医師、ケアマネジャー、看護師、歯科衛生士、保健師など多職種連携できめ細かいサポートをする、いわゆる「多職種連携体制」を確立するために貢献したいと思っています。

創業手帳セミナーは同じ志を持っている仲間を引き寄せる魅力がある

—最近手掛けている料理教室の事業はいかがでしょうか?

島田:ホームヘルパー向けの料理教室ですが、一般の方も参加可能なので、最近は一般の方が身内に糖尿病で治療を受けているからと参加してくださる方もいます。
今後は診療所と連携して、料理教室で食事療法を学べるシステムを検討中です。

—起業するにあたり、問題となった部分はありましたか?

島田:開業資金がなかったことです。教育ローンを抱えていて、起業してもやっていけるか不安でした。
教育ローンが完済するまで待っていたら、私自身が高齢者になり、起業できないのではないか。そんな悩みを抱えていました。

—どうやってその問題を解決したのでしょうか?

島田:京都商工会議所にも起業について相談しましたが、たまたまFacebookで見つけた「創業手帳セミナー」に参加したことで、京都信用保証協会の創業サポーターの方とそのときに講演された公認会計士の方と出会ったことが大きかったです。

会社設立の手続きもその方がすべて進めてくれまして、「こんな私でも会社ができた!」と本当に嬉しかったです。

—ちなみに、「創業手帳セミナー」を受けた感想はいかがですか?

島田:このセミナーに参加していなければ、今の自分はないと思います。
「起業したい!」という強い思いを持った人の集まりなので、お互いに引き寄せる力も強いです。

私自身のビジネスもこのセミナーがきっかけで実現しましたが、同じ「食」をテーマにしたビジネスをする仲間もここで知り合いました。しかも、初対面のメンバーです。引き寄せる力がハンパじゃないですね!

できると思ったら100%信じる。迷ったら立ち止まることも大事

—女性の起業で特有の課題はありますか?

島田女性が起業する場合、夫がいる場合でも援助してくれるかどうかは重要です。
資金面や精神面でのサポートは大きいと思います。その点を始めにきちんと相談しておくことです。

また、女性は基本的に数字に弱く、長期的展望を考えるのが苦手だと思います。
だからこそ、信頼できる専門家を持ち、疑問があった時にアドバイスをもらいながら進めることが必要です。

—今後の夢、目標を教えてください。

島田:目標は、自分自身の還暦までに事業を安定させることです。

少子高齢化で、高齢者が70代80代でも現役で活躍すると予想されています。
自分たちが行う取り組みで「自分のことは自分でできる高齢者」を増やして、新たな地域のつながりができていくことで、高齢者も皆笑顔で快適に暮らせる街を実現したいと思っています。

そのためには、今の現役世代、つまり40代50代が今から取り組み、自分自身が住みやすい街にしようという思いが必要なので、まずはこの点から手がけていきたいです。

—最後に、起業家に向けてメッセージをお願いします。

島田ありきたりかもしれませんが、できない理由を考えないほうがいいです。「できる」ことを前提に考えていきましょう。

そして、「できる」と思ったことは100%信じる。心の中にちょっとでも迷いがあると実現しません。不可能かもと思っても、「できる」と100%信じていれば、不思議とチャンスが見えてきます。

もし迷ったときは、一旦立ち止まってみましょう。そういう時は、動けば動くほど、悪い方向に進んでしまっているものです。

(取材協力:株式会社アン・サンテ 代表取締役 島田淳子)
(編集:創業手帳編集部)

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