クラウドファンディングの成功率を上げるために起業家ができることとは

創業手帳

最後の1秒までやりきろう!

(2019/07/02更新)

新しい資金調達方法として、活用する方が増えているクラウドファンディング。しかし、誰もが簡単に目標額を集められるわけではないのも現実です。

今回は、創業手帳代表の大久保が、「起業家がクラウドファンディングで資金調達する場合に、成功率を上げるためのポイント」を解説します。

起業後の資金調達に関する基本的な情報をおさらいしたい人は、無料で利用できる創業手帳も合わせて参考にしてみてください。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

この記事の解説者 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。無料創業相談も受付中。

クラウドファンディングとは

クラウドファンディングは、インターネット上で不特定多数の人から少額ずつ資金調達ができる仕組みです。特定のプロジェクト(事業や企画、製品開発など)を目的として掲げて、必要な金額目標に向けて、資金提供を募るスタイルのものが一般的です。

クラウドファンディングには、主に資金提供に対する見返り(リターン)として提供されるものによって、3つのタイプがみられます。1つ1つ説明していきます。

寄付型

資金提供者に「金銭的な見返りがない」、または「見返りを目的としない」タイプのものです(見返りが設定されていても「お礼状のみ」などの場合も寄付型と言えます)。
自身の事業や考え方に共感してもらえるようであれば、寄付型クラウドファンディングが向いています。
例えばボランティア活動、災害被災地支援や福祉・慈善事業など非営利事業の資金調達に活用されている事例が多くみられます。

購入型

資金提供者に物やサービスの形で見返りを提供するタイプのものです。例えば募った資金を使って開発した製品を資金提供者にリターンとして提供する事例が典型的です。
出資者を見込めるような物やサービスを提供することができる場合は、購入型クラウドファンディングが利用できます。そのほか、イベントへの参加、著名人・タレントとの食事会を行う権利など、さまざまな見返り設定の事例がみられます。

金融型

資金提供者に金銭的な見返り(リターン)を提供するものです。資金提供者が資金を「融資」するタイプ、「出資」するタイプに分かれます。
事業が成功することが資金提供者のメリットになります。
法改正にともない日本でも株式を見返りとして提供するクラウドファンディングが可能になりました。

クラウドファンディングを活用して資金調達をしようと考える場合はまず、自身の取り組みたいプロジェクトにあったスタイルを吟味して選ぶ必要があります。

クラウドファンディングの始め方


まずは、クラウドファンディングを行う場合のおおまかな流れを確認しておきましょう。

1.目標を設定する

まずはプロジェクトの中身を決め、必要な金額などの目標を決めます。

2.利用するクラウドファンディングサービスを決める

さまざまなクラウドファンディングサービスの中から、特徴や手数料などを確認して最適なものを選びます。

3.プロジェクトをサイトに掲載

プロジェクトをクラウドファンディングサービスのサイトに掲載します。なお、多くのサービスが掲載前の審査を行っていますので、実現可能性が低いものなど基準に合わないものは却下されることがあります。

4.募集期間終了

期間中に目標金額に達すればひとまず成功です。手数料等を差し引いた額がプロジェクト実行者に振り込まれます。

5.プロジェクトの実行・支援者への見返り(リターン)の提供

集まった資金で約束のプロジェクトを実行します。また、資金提供への見返り(リターン)として約束した物やサービスがある場合は提供します。

クラウドファンディングの始め方について、詳しくはこちらからご覧ください!
クラウドファンディングの始め方。基本の手順を押さえよう

しっかりしたプロジェクトの計画を立てるためには、その根っことなる「事業の目的」を明確にしておく必要があることは言うまでもありません。事業の目的がまだ定まっていない場合は、クラウドファンディングで資金調達を考える前にまず事業計画を詰めておくべきでしょう。創業手帳では、事業計画の立て方についても詳しく解説しています。

クラウドファンディングの成功率を上げるためにできること


そもそもクラウドファンディングの「成功」には2つの意味合いが含まれます。

1つ目は「目標額(またはそれ以上)の資金調達が実現すること」です。クラウドファンディングの中には「目標額100%以上の資金を集められなかった場合は不成立として全額キャンセル」…つまり100%以上の成功かゼロか、というルールで運営されている場合もあります。

2つ目は「集めた資金でプロジェクトを成功させること」です。資金調達できればそれで終わり、ではありません。約束した見返りを提供することも含めて、資金集めはあくまでもプロジェクト実行の手段であることを忘れてはいけません。

今回の記事では、1つ目の成功を主なテーマに取り上げます。

しかし、例えば世界最大規模のクラウドファンディングサービス「kickstarter」が公表している成功率は35%前後。気軽にチャレンジできるイメージとは裏腹に、目標額を集めるのは意外と簡単ではありません。(成功率はサービスにより異なります。)成功のために起業家ができる取り組みや工夫を、準備から終了まで順を追ってご紹介します。

プロジェクトにあった規模や分野のクラウドファンディングサービスを選ぶ

現在、日本で利用できるクラウドファンディングサービスは数十社にのぼります。「大手」とみられる著名ないくつかのサービスのほかにも、特定の分野やテーマ、あるいは地域に特化したクラウドファンディングサービスが多数運営されています。

資金提供する意思のある人が多く集まっている、大手のサービスに掲載して注目を集めることができれば成功確率は高まります。また、プロジェクトを実施する人へのアドバイスなどのサポートを充実させて成功率向上をはかっているサービスもあります。

一方、分野・地域に特化したサービスにはその分野や地域に関心のある資金提供者が参加していますから、多くの案件が集まる大手サービスでは埋もれてしまうプロジェクトであっても注目を集められる可能性があります。

例えば鎌倉(神奈川県)に特化したクラウドファンディング「iikuni」はまだ件数が多くないこともありますが、90%以上の成功率を達成していると発表しています。

事業の目的に合う規模や分野の出資先を探すことは、クラウドファンディングに限らず全ての資金調達手段で必要となってくるプロセスです。創業手帳では、各資金調達手段の特徴を解説しています。

プロジェクトの掲載前にアピールして、掲載期間を有効活用する

通常、プロジェクトは設定した期間内に目標を達成することが求められます。
しかし掲載前の準備期間に限りはありません。「近いうちにこんなクラウドファンディング行う予定で、見返りはこんなものを用意するので、ぜひ力を貸してほしい。」そんな話を身近な人から広めてみることも大切です。それによって、プロジェクトのニーズや実現可能性、見返り(リターン)は十分魅力的か、などを検証することもできるでしょう。

サービスによっては「プロジェクト掲載開始後の見返り(リターン)の修正はできない」としている場合があります。修正を認めると資金提供者との約束を裏切ることになるリスクがあるためですが、逆にいうと、掲載後に「見返り(リターン)の魅力不足で資金が集まらない!」と気づいても手遅れだということです。

また、成功しているプロジェクトは、目標額の1/3くらいをプロジェクト実行者自身で、身近な人や関係者などから集めている場合が多いと言われています。あらかじめ一定人数の約束をとりつけておけば、開始直後のスタートダッシュを演出する効果もあるからです。まったく無関係な資金提供者から見て「誰も支援していないプロジェクト」よりも、ある程度の人数(それが実はプロジェクト実行者の友人、知人だったとしても)が支援を申し出ているプロジェクトのほうが安心して参加できるというものです。

プロジェクトの中身をわかりやすく伝える

調達資金を何に使ってどんな成果を出すのか、しっかり伝える必要があることは言うまでもありません。個別にコメントのやりとりができる場合もありますが、基本的にはウェブサイト上に掲載した文言だけで「お金を出す」という重大な判断をしてもらわなくてはならないので、それなりの工夫が必要です。

特に、「共感」を集めることが大切だと言われています。社会貢献がテーマのプロジェクトや、地域の課題に取り組むプロジェクトの場合は言うまでもありませんが、購入型のプロジェクトでも、何より、その製品やサービスを「欲しい」「実現して欲しい」と思ってもらえなくては始まりません。プロジェクトの社会的な必要性、意味、価値などとともに、なぜこのプロジェクト立ち上げようと思ったか、プロジェクトにかける思い、そのためにこれまでにどんなことをしてきたか、などの背景やストーリーを語ることも効果的です。

また、これまでの成功事例の中では、プロジェクトを動画で紹介・説明しているものの成功率が高いことが指摘されています。視覚的なわかりやすさのほか、プロジェクトの実行者の人となりなど、文字・写真では伝わりにくい情報から共感を得られる可能性もあるのです。

さらに、プロジェクトの「名称」もポイントです。資金提供を考えてクラウドファンディングのサイトを開く人は、最初に多数のプロジェクトがずらりと並ぶページを開きます。その中から選んでもらうために、目に入りやすいプロジェクト名を工夫しましょう。

始まったら全力でアピール

いったん始まったら、走り切るしかありません。
ただし、やみくもに走るのではなく、どのタイミングで(いつまでに)どんなアピールをするのか、あらかじめスケジュールを組んでおく必要があります。

期間中に直接会う機会のある人にアピールしたり、メールで呼びかけたりすることはもとより、自身のSNSを起点に友人・知人などに拡散してもらったりして、一人でも多くの人の目に触れるように取り組みましょう。成功している事例からも「友人の友人」「知人の知人」は比較的支援につながりやすいと言われています。

また、期間中にもプロジェクトの経過報告、活動報告などを書き込める機能がある場合もありますので、さまざまな機会をとらえてアピールしましょう。支援者に感謝を伝えることもできます。

また、「最後の数日間」の追い込みが大切だとも指摘されています。選挙であればよく「投票箱のフタが閉まるまで」と言われますが、クラウドファンディングも「最後の1秒まで」やりきりましょう。

まとめ

気軽に挑戦できる資金調達方法としてクラウドファンディングは有効な手段ですが、資金調達には成功しても「プロジェクトを完遂できない」「製品を完成できない」というケースも発生しているようです。あくまでも資金調達の成功は「過程」であり、そこから先の事業を進めることの方がはるかに大変だ、と言えます。

悪意はなくても結果的に支援者を裏切ることにならないように、自分自身の実行能力の冷静な評価も含めて、プロジェクトの実現可能性を十分検証してからクラウドファンディングに取り組みましょう。

クラウドファンディングで道標となる事業計画の立て方や、販促や組織などその後の展開も大事です。創業手帳では、事業計画作成ツールも無料で提供しているので、必要に応じて活用してみてください。

失敗から学ぶ「プロジェクト成功の心得」
クラウドファンディング失敗、プロジェクト未達成の場合どうなる?

(執筆:創業手帳編集部)

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