分譲マンションをオフィスにしても大丈夫? 知っておきたいメリット・デメリット
起業家の「ココが知りたい!」にお答えします
(2018/11/12更新)
今、借りているレンタルオフィスが閉鎖されることになりました。
再度レンタルオフィスを借りるか、会社で分譲マンションを購入するか迷っています。
たまに分譲マンションを事務所代わりにしている零細企業がありますが、分譲マンションを事務所に使う場合、メリットは「資産になること」として、デメリットはありますか?
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この記事の目次
分譲マンションをオフィス利用する際のメリット・デメリット
近年は賃貸オフィスやホームオフィスの他、レンタルオフィスやコワーキングスペース、シェアオフィスなどオフィス形態が多様化しており、どう選べば良いのか分からず迷う方も多いようです。
今回は分譲マンションを購入するか迷っているということなので、分譲マンションをオフィス利用する際のメリットとデメリットを整理してみましょう。
メリット
一番のメリットは、おっしゃる通り「会社の資産になること」です。
毎月の支払い(ローン)=会社の資産となり、ローンの支払いが終われば家賃分の費用をコストカットすることができます。
長期的な資産増につながりやすいと言えるでしょう。
また、一度購入してしまえば、自由にリフォームできるのも嬉しいポイント。オフィスデザインを自由にアレンジできます。
デメリット
反対に、デメリットは「企業規模の変動に対応しにくい」こと。
特に創業初期は、従業員数の増減や事業内容の拡大・縮小が起こりやすいので、臨機応変に対応できるよう、できるだけ身軽にしておく方が多いようです。
もし分譲マンションから他所へ移転する場合、分譲マンションを売却することになりますが、売却金額によっては差額分を負担することもあります。
また、「初期費用がかさむ」のも気になるところ。個人住宅と同様、頭金や仲介手数料などのまとまったお金が必要です。
注意点
分譲マンションのオフィス利用には、忘れてはいけない大事な注意点があります。
それは「事務所利用ができる物件」を選ぶこと。
マンションには「事務所利用を禁止しているところ」「事務所利用を許可しているところ」「使用用途を定めていないところ」があります。
特に、住宅街にあるマンションは「事務所利用を禁止しているところ」が多いです。
なぜ禁止しているかというと、居住者以外の不特定多数の来客者が出入りすることで、来客者と他の居住者間のトラブルなど防犯上の問題が発生するから。
そのため、エステサロンやバーといった接客業の店舗として利用するのは、マンションの管理会社やオーナーさんから断られる可能性が高いです。
なお、「事務所利用を禁止している」マンションをこっそりオフィス利用してしまうのは違法行為となります。発覚した場合、退去を求められることもあるので注意しましょう。
分譲マンションを購入してオフィスにする場合は、まず管理会社に事務所利用の可否を確認し、区分所有権を購入する、という流れになります。
また、居住エリア・執務エリアを区切っておくのは環境上、経費の算入上も重要です。
エリアをテープなどで見えるように区切るケースもあります。
まとめ
簡単に言えば、多少の初期費用は必要経費と割り切って分譲マンションを購入し、長期的に資産を増やすか、レンタルオフィス等を活用して流動性を上げ、身軽にしておくかの違いです。
起業初期は人員や必要スペースの変化が激しいので、対応力を重視する方が多いと思います。
ご自身の運営プランと照らし合わせ、何を優先するか考えて選びましょう。
税務面から見たメリット・デメリット
分譲マンションを購入して事務所として利用する場合
まず、マンション購入にあたる家屋部分については、建物の構造に応じて一定の期間における減価償却費により経費計上となります。
土地部分については資産計上となるため、費用とはなりません。
以下、購入した時に発生する費用別に見てみましょう。
リフォームにかかる費用
支出した項目や金額により事業供用時に費用計上できるものと、一度資産計上し減価償却費として一定期間において費用化するものに分かれます。
購入にかかる不動産取得税や登録免許税について
税務上、資産計上・費用計上どちらも選択可能なため、その事業年度の損益により調整することができます。
建物部分にかかる消費税
購入時の事業年度において支払消費税額を預り消費税額から控除できるため、消費税の課税事業者となっている事業者においては、消費税の節税となります。
レンタルオフィスを借りる場合
毎月、定額が経費となるので、損益の把握がしやすいことがメリットになります。
まとめ
レンタルオフィスを借りるよりも分譲マンションを購入する方が、いろいろと論点が多いです。
分譲マンションを購入する場合、初期に費用計上額が多くなることが想定され、購入初年度の会社の利益と資金繰りを圧迫することも考えられます。
そのため、金融機関からの借入を利用する等、資金繰りには余裕のある計画をたてることが望ましいです。
また、資産計上を選択できる初期費用については、資産計上し減価償却により一定金額を費用計上することも可能です。
なお、資産計上ではなく費用化を選択し、法人の1年間の損益が赤字になっても、青色申告法人であればその欠損金は9年間引継ぎ(平成30年4月開始以降事業年度は10年間)が可能なので、会社の状況に応じた会計処理を選択しましょう。
(監修:てづか税理士事務所 代表 手塚 誠(てづか・まこと))
(編集:創業手帳編集部)