キャッシュフロー改善の基本と具体的な実践策を解説!

資金調達手帳
弥生キャンペーンバナー

健全な経営状態にするにはキャッシュフロー改善が必須


どれだけ売上げや利益が伸びていても、資金の出入りを管理できていなければ企業の経営は安定しません。
特に中小企業や個人事業主にとって、入金と出金のタイミングがずれることで資金が一時的に不足し、黒字倒産に陥るリスクもあります。
そのリスクを防ぐために欠かせないのが「キャッシュフロー改善」です。

この記事では、キャッシュフローに関する基礎的な知識から、改善するための具体的な実践策まで詳しく解説していきます。
資金繰りの改善に努めたい人や、トラブルを未然に防ぎたい人はぜひ参考にしてください。

yajirushi【完全無料】シリーズ累計250万部「みんなが使ってる起業ガイドの決定版」『創業手帳』

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

キャッシュフローとは?基礎知識をおさらい


キャッシュフローの改善について解説する前に、そもそもキャッシュフローについて理解しておく必要があります。まずは、キャッシュフローに関する基礎知識から紹介します。

キャッシュフローとは?

キャッシュフローとは、事業活動における現金の動き・流れを指す言葉です。
事業活動のなかでキャッシュフローが適切に管理されていないと、いつの間にか手元の資金が不足してしまい、黒字倒産に陥る可能性があります。

キャッシュフローは会社がいくら現金を生み出し、どれだけ使っているかを示す指標であり、「キャッシュフロー計算書」を作成することで企業の財務状況を把握しやすくなります。

キャッシュフローと利益の違い

利益とは、売上げから費用を差し引いた金額を指します。一方でキャッシュフローは、会計上ではなく実際の現金の動きを表したものです。

例えば会計上だと利益が出ていても、実際のキャッシュフローでは手元の資金不足によって黒字倒産になる可能性があります。
逆に会計上は利益が出ておらず一時的な赤字に陥ったとしても、現金は十分に確保できている場合もあります。

キャッシュフローが経営において重要な理由

上記でも紹介したように、利益とキャッシュフローは会計上と実際の現金の流れという違いがあります。
そのため、損益計算書で利益が出ていても、手元の現金が不足していれば事業が行き詰まり、黒字倒産に陥るかもしれません。
このようなリスクを避けるためにも、損益計算書だけでなくキャッシュフロー計算書を作成し、正しく現金の流れを把握する必要があります。

また、キャッシュフローを正確に把握しておけば、金融機関などに融資の申し込みをした際に、前向きな回答が得られる可能性も高まります。
なぜなら、手元の現金について把握できていない経営者は意外と多く、正確に把握できていれば管理能力の高い経営者だと金融機関から判断してもらえるためです。

キャッシュフローの種類

キャッシュフローは主に4つの区分に分類することが可能です。

区分 特徴
営業キャッシュフロー 本業の営業活動でどれだけ現金を生み出せたのかを示す。商品・サービスの販売による現金収入や、仕入れ・人件費などが影響。
投資キャッシュフロー 投資活動による現金の増減を示す。設備投資や固定資産への投資、資産の売却などが影響。将来の収益アップにつながる投資であれば一時的なマイナスでも事業が成長している証といえる。
財務キャッシュフロー 資金調達における現金の増減を示す。借入金や社債による資金調達、返済、配当金の支払いなどが影響。マイナスの場合は借入金の返済や株主還元が進んでおり、財務体質が改善していると評価できる。
フリーキャッシュフロー 営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを合わせたもの。企業が自由に使っても良い現金の流れで、企業の財務健全性を評価するための指標。

yajirushi【完全無料】シリーズ累計250万部「みんなが使ってる起業ガイドの決定版」『創業手帳』

キャッシュフロー改善が期待できる対策


健全な経営状態を目指すために、キャッシュフロー改善に向けた取り組みが必要です。
具体的に、どのような対策を講じればキャッシュフローを改善できるのでしょうか。ここで、具体的な対策方法を解説していきます。

資金繰り表・キャッシュフロー計算書を作成する

キャッシュフロー改善に向けて、まずは資金繰り表・キャッシュフロー計算書を作成します。

資金繰り表は、日々の事業活動で生じた収支と手元に残る現金を示した表です。
売掛金の回収予定日や仕入れの支払日、借入金の返済日などスケジュールも記録するため、資金不足になるタイミングを事前に把握することができます。
キャッシュフロー計算書は、企業の一定期間における現金の増減をまとめた資料です。上記で紹介した営業・投資・財務の区分で現金の流れを記録していきます。

資金繰り表とキャッシュフロー計算書は、両方作成することでリアルタイムに現金の流れを把握でき、さらに将来に向けた長期的な資金計画や成長戦略の構築に役立てられます。

利益を増やすための施策を講じる

キャッシュフローを改善するためには、手元の現金を増やすために利益アップを目指す必要があります。
利益を増やすための施策は様々なものがありますが、例えば商品・サービスの値上げや無駄なコストの削減などが挙げられます。
また、新規顧客の開拓やリピート率の向上も、利益アップにつながる施策です。

新規顧客の開拓では飛び込みやテレアポなどの直接的な方法もありますが、Webマーケティングや展示会への参加、セミナーの主催・共催などによる新規顧客の開拓もできます。
自社のメリットや優位性を示すことも大切ですが、顧客目線に立ち、相手に寄り添って要望に応えることが重要です。

リピート率を向上させるためには、顧客満足度を高めることがポイントとなってきます。
例えば電話やメール、チャットなど複数のチャネルに問い合わせフォームをつくり、迅速に回答できる体制を整えることで、顧客の疑問や不安、悩みを素早く解決できるようになります。
また、ポイント制度の導入やリピーター限定の特典を設けるなども効果的です。

売掛回収を徹底する

売掛金は会計の効率化やキャッシュフロー改善、取引関係の強化など、様々なメリットがありますが、その一方で支払いが遅れたり取引先の倒産によって回収できなかったりするリスクがあります。
売掛回収を徹底することが大切です。

売掛金の回収漏れが起きないように、まずは売掛管理台帳を作成して取引先の支払い状況をまとめておき、納品書の控えを元に請求書を発行します。
入金期日を迎えたら銀行口座の取引明細を確認し、入金されているかチェックしてください。入金が確認できた場合は売掛金のデータを台帳から削除します。

期日までに入金されない、または入金されても売掛金以下だった場合、入金を催促します。
もし入金を催促して数日が経っても入金されない場合は、商品提供を差し止めたり、内容証明郵便を送ったりするなどの対応が必要です。

売上げは前払い、支払いは後払いにする

キャッシュフローを改善するには、売上げを前払い、支払いを後払いにすることも重要です。
支払いのほうが先になってしまうと、売上げが入る前なので手元の現金が不足し、支払いができなくなる恐れがあります。
売掛金を回収する日付を早めるように取引先と交渉することも可能ですが、変更に難色を示されるケースが多いです。

売上げを早めるのが難しい場合は、支払いを先延ばしにする方法もあります。
仕入れ先などと交渉することもできますが、現金払いではなくクレジットカード払いにすることで、資金が必要になるタイミングが月末ではなく、翌月または翌々月にできます。

無駄な支出を減らす

無駄な支出を減らすことで、キャッシュフローの改善につながります。企業によって削減できる支出は異なってきますが、主に削減対象となるのは、以下の経費です。

  • 人件費
  • オフィスコスト(事業所の家賃、設備費用など)
  • 広告宣伝費 など

また、無駄な支出削減を目指す際には、経営陣だけでなく全社でコスト削減に向けた意識を高めることも重要です。
社員全員が協力して削減につながる体制を整えられれば、キャッシュフローの改善に加え安定性も高まります。

在庫や遊休資産を見直す

在庫や遊休資産を見直すことも、キャッシュフローの改善に有効です。
在庫は将来的に売上げになるものと認識できますが、いつまでも売れない状況が続いてしまうと、不良在庫として保管スペースを圧迫し、管理に必要なコストが発生してしまいます。
不良在庫を出さないためにもまずは適正在庫を把握し、過剰在庫や欠品を防ぐことが大切です。

遊休資産とは、事業で活用するために取得したものの、使っていない資産を指します。
例えば新店舗を立ち上げるために土地を購入したものの、途中で計画が頓挫してしまい、手つかずのまま放置されている場合、その土地は遊休資産ということになります。
こうした資産は使われていなくても固定資産税の課税対象となり、さらに維持管理にも費用がかかるのが実情です。
そのため、企業が所有する固定資産のなかに遊休資産がないか見直し、活用できる方法はないか、売却・処分するかを検討しましょう。

設備を導入する際にリースを検討する

設備を導入しようとすると、多額の初期費用が発生し、手元の現金が一気に枯渇するケースもあります。
初期費用を少しでも抑えるためには、購入ではなくリース契約で導入することも検討してみてください。

リース契約とは、リース会社が機器・設備を購入し、毎月一定の料金を支払うことで長期間設備を利用できる契約です。
リース契約だと毎月のリース料のみで設備を導入できるようになり、余剰資金を運転資金として活用できます。
また、リース料は経費として全額計上でき、コスト把握もしやすいです。

ただし、途中で解約すると違約金の支払い義務が発生してしまいます。
また、リース期間中は所有権がリース会社にあるため、自社の判断で設備を売却したり、廃棄処分したりすることができません。
手数料や支払利息によって、直接購入するより支払総額が高くなることにも注意が必要です。

資金調達をする

資金調達を行い、一時的に手元の資金を増やす方法もあります。
売上げはあるものの入金までにしばらく時間がかかる場合や、急な支払いが重なり現金が不足した際には、外部から資金調達を行ってキャッシュフローを安定させましょう。

資金調達にもいくつか方法がありますが、なかでも代表的なのが金融機関からの融資です。
日本政策金融公庫や地方銀行、信用金庫などの融資は比較的低金利で利用できる点が魅力といえます。
ただし、融資の実行までには通常1カ月から2カ月ほどの期間を要するため、時間的な余裕が必要です。

すぐに現金を増やしたい場合には、ファクタリングの活用がおすすめです。
ファクタリングは売掛金をファクタリング会社へ売却し、手数料を差し引いた分の現金を受け取れます。

注意点として、3社間ファクタリングだと手数料を抑えられるものの、売掛先の企業も含めて契約を結ぶことになるため、取引関係に影響を及ぼす可能性があります。
売掛先に通知が行かないようにしたいなら、手数料は高くなってしまうものの2社間ファクタリングを選択したほうが良いでしょう。

yajirushi【完全無料】シリーズ累計250万部「みんなが使ってる起業ガイドの決定版」『創業手帳』

キャッシュフローが悪化する主な原因


キャッシュフローが悪化してしまうのには、以下の要因が影響しています。それぞれの原因について詳しく解説します。

売掛金の増加や回収遅延

キャッシュフローが悪化する原因の1つが、売掛金の増加や回収遅延です。
売掛金は最終的に利益となるものの、回収するまでに一定の期間がかかってしまい、それまでに支払いがあると手元の現金が不足してしまいます。
また、支払期日になっても取引先から入金されなかったり、回収漏れが発生したりする恐れもあります。

在庫の抱えすぎ

過剰に在庫を抱えすぎていると、保管や管理にコストがかかってしまい、手元の現金が不足してしまう可能性があります。
過剰に在庫を仕入れたとしても、すぐに捌ききれればコストも一時的なものになるため、キャッシュフローはすぐに改善できます。
しかし、いつまで経っても売れない在庫を抱えていると、キャッシュフローの悪化につながるので注意が必要です。

固定費・設備投資による負担増

事業活動における毎月の家賃や通信費、水道光熱費、保険料などの固定費がかかりすぎていると、キャッシュフローの悪化につながってしまいます。
また、過剰な設備投資によって負担が増えてしまうことも原因の1つです。
特に固定費は毎月決まった金額を支払うことになるため、早めに見直しを行い、コスト削減を図るようにしましょう。

借入金返済・利息負担の重さ

借入金の返済や利息負担の重さによって、手元の現金が不足しキャッシュフローが悪化してしまいます。
特に利息負担を軽減する目的で早期返済をすると、一気に現金が不足する可能性があります。
早期返済する時は、手元の現金や利息負担との兼ね合いも考慮しなくてはなりません。

yajirushi【完全無料】シリーズ累計250万部「みんなが使ってる起業ガイドの決定版」『創業手帳』

キャッシュフロー改善で得られるメリット


キャッシュフロー計算書は財務諸表の1つであり、損益計算書や貸借対照表などと一緒に企業の財務状況を判断する上で活用されます。
金融機関から融資を受けたい場合、キャッシュフロー計算書などを通じて改善の実績が示されることで信頼性が高まり、資金調達の成功率が上がる可能性があるでしょう。

また、手元の現金があることで投資余力を確保でき、既存事業の拡大や新規事業への挑戦もしやすくなります。
さらに、日頃からキャッシュフローを意識して経営に取り組むことで、黒字倒産のリスクを回避することも可能です。

yajirushi【完全無料】シリーズ累計250万部「みんなが使ってる起業ガイドの決定版」『創業手帳』

まとめ・キャッシュフロー改善で安定した経営基盤を築こう

キャッシュフローは企業にとって欠かせない存在であり、その流れが滞れば健全な経営は維持できません。
売掛金の早期回収や在庫管理の最適化、コスト削減や借入の見直しなど、日々の小さな工夫の積み重ねがキャッシュフロー改善につながります。
単に資金繰りを楽にするだけでなく、安定した経営基盤を築き、事業を継続的に成長させるための一歩にもなるため、キャッシュフローの改善に努めましょう。

創業手帳(冊子版)は、経営・ビジネスに役立つ基本的なノウハウから、具体的な施策まで幅広く紹介しています。経営面で悩みを抱えている人は、ぜひ創業手帳をお役立てください。

関連記事
運転資金が不足する要因とは?必要な資金の計算方法や資金調達方法を解説
赤字体質を改善したい!経営者が知っておきたい原因・対策方法を解説

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す