業務システムとは?どんな種類がある?定義や例、役割、導入のメリットなどを解説
自社に合った業務システムで仕事を効率化!業務システムの基本情報から導入方法のポイントまでお伝えします
IT化が進む現代、中規模以上の企業では、9割以上が何らかの業務システムを活用しているといわれています。もちろん中小企業や小規模事業者にも業務システムは普及しており、6割以上が「業務処理の効率化」を実感しているとのデータもあります。
自社に合った業務システムを導入し、それを使いこなせば、経営の効率が高まり、収益性もよくなる可能性が高いです。これを機に、ぜひ一度、業務システムの導入について考えてみてください。
今回は「業務システムとは」をテーマに、業務システムの定義や例、種類ごとの役割などを紹介します。また導入の際に意識すべきポイントや注意点もお伝えします。
この記事の目次
業務システムとは
業務システムとは、業務を効率化するためのITツールのことです。「業務支援システム」とも呼ばれます。また「業務アプリケーション」も、厳密な定義は異なりますが、ニュアンスとしては同じです。
業務システムのわかりやすい例は、経理担当の人が帳簿や決算書を作るときに使う「会計ソフト」。会計ソフトがあることによって、入力や集計が自動化され、経理業務を効率的に行えます。
そのほか、飲食店で使われるPOSレジや、出勤・退勤時にICカードをかざす勤怠管理のリーダーなども、業務システムの一例です。
IT化が進む昨今は、多くの企業が何らかの業務システムを活用し、日々の業務を遂行しています。自分の会社のことを思い浮かべても、1つくらいは業務システムを見つけられるのではないでしょうか。1つも思い当たらない場合は、これを機会にぜひ導入を検討してみましょう。
業務システムの種類
業務システムには、主に以下のような種類があります。
分類 | 種類 | 内容 |
---|---|---|
経理系 | 会計管理システム | 伝票入力や帳簿作成、データ連携など、経理業務の効率化に役立つ。 |
固定資産管理システム | 土地・建物をはじめとする固定資産の台帳管理や減価償却計算、税務申告などをサポート。 | |
商材系 | 在庫管理システム | 在庫数をリアルタイムで更新したり、在庫管理帳票を作成したりできる。 |
発注管理システム | 発注や仕入れの情報を一括管理。発注先の選定や注文書の作成、発注状況の確認など。 | |
品質管理システム | 製品やサービスに関する検証と改善をサポート。検査情報と規格値の比較や出荷判定、各種帳票の作成など。 | |
生産管理システム | 原価や製造コスト、工程、納期など、商品の生産に関わる業務を一括管理する。 | |
販売系 | 販売管理システム | 商品の売れ行きや検品の状況、入金時期などを一括管理。小売業ではPOSレジと連動。 |
顧客管理システム | 顧客の基本情報や購入履歴、クレーム、サポートの履歴などを一元管理。 | |
営業支援システム | 顧客情報や案件の進捗、商談事例などの情報を管理・分析し、営業の効率化や生産性の向上につなげる。 | |
見積管理システム | 見積書や請求書の作成、請求書発行後の入金履歴・回収残高の管理など。 | |
輸配送管理システム | 配車計画から進捗管理、運賃計算、請求書発行まで、物流における管理業務を効率化。 | |
人事系 | 人事管理システム | 従業員の基本情報や配属先、給与、昇格などの情報を管理。組織編成や人材育成に役立つ。 |
勤怠管理システム | 出勤や退勤、休暇の取得など、従業員の勤怠情報を管理。 | |
給与計算システム | 勤怠情報をもとに従業員の給与を自動計算する。 |
業務システムには、さまざまな情報を一括管理したり、データをもとに自動計算をしたりという特徴を持つものが多いです。
なお、上記のうち、複数の機能を統合した業務システムも存在します。いくつもの機能があれば、部署をまたいで使うことも想定されるので、より利便性が高いです。
また業務システムは業務の数だけ開発しえるので、実際には上に当てはまらないシステムもたくさんあると考えられます。とりわけ特殊な業務を行う企業や業種では、独自に構築したユニークな業務システムが用いられる場合もあるでしょう。
業務システムと他のシステムを比較
システム | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
業務システム | 業務の効率化を実現できるITシステム(広義の概念) | ー |
基幹システム | 企業の存続に欠かせない重要な業務に用いられる業務システム | 会計システム、生産管理システム、販売管理システム、人事管理システムなど |
情報系システム | 社内外の情報共有やコミュニケーションに利用される業務システム | チャットツール、社内SNS、グループウェア、メールアプリなど |
ERP | 複数の基幹システムや情報系システムを統合し、情報を一元管理できるようにしたもの | ー |
業務システムに似た概念として、「基幹システム」や「ERP」、「情報系システム」といった言葉も存在します。以下では、それらシステムの定義や役割を、業務システムとの違いという観点から解説するので参考にしてください。
なお、結論を先に述べておくと、業務システムを広義に捉えるなら、基幹システムもERPも、情報系システムも、すべて業務システムだといえます。つまり業務システムは、基幹システムやERP、情報系システムに分類できるということです。
基幹システムとの違い
基幹システムとは、企業が主要業務を行うのに必要なシステムのこと。そのシステムがなくては、企業が存続できないような、重要なシステムのことです。「基幹業務システム」とも呼ばれます。
企業や業種ごとに基幹業務は異なるので、どのシステムが基幹システムになるかも、場合によってさまざまです。例えば、製造業の場合、生産管理システムや販売管理システムが基幹システムになります。銀行の場合は、会計勘定処理を行う勘定系システムが基幹システムです。
また輸送配管理システムは、運送業者にとっては基幹システムですが、小さな副業としてデリバリーをやっている飲食業者にとっては基幹システムとはいえません。
なお、基幹システムはすべて業務システムです。一方、業務システムは基幹システムでない場合もあります。業務システムは、基幹システムもその他周辺的なシステムも含めた概念です。
情報系システムとの違い
情報系システムとは、チャットツールや社内SNS、グループウェアなど、社内外の情報共有やコミュニケーションに使われるシステムのこと。情報系システムも、業務を効率化・円滑化する点で業務システムの一種だといえます。
なお、「情報系システム」という言葉は、主に基幹システムとの区別を目的に使われます。情報系システムは、たとえ停止しても代替手段を比較的容易に見つけることができ、生産管理や販売管理などの基幹システムとは重要度が異なるからです。
以上を踏まえると、ERPを含む基幹システムと情報系システム、その他周辺のシステムを合わせたものが、業務システムの総体だといえます。
ERPとの違い
ERP(Enterprise Resources Planning)とは、複数の基幹システムや情報系システムを統合し、単一のデータベースで一元管理するシステムのこと。会計管理システムや販売管理システム、人事管理システムなどの情報を、まとめて管理・分析し、利用することができます。
ERPと業務システムとの違いは、ERPは統合的なシステムなのに対し、業務システムは個別のシステムを指す場合が多いことです。しかし、業務システムを広義に捉えれば、ERPも業務システムの一種だという見方もできます。
なお、1995年前後から普及し始めたERPは、技術的なハードルから、当初は大企業でないと導入が難しいものでした。しかし、現在はインターネット上で利用できるクラウド型のERPが主流になりつつあり、中小企業でも導入しやすいです。
業務システムを導入するメリット・デメリット
企業が業務システムを導入することには、以下のようにメリットもあれば、デメリットもあります。導入をお考えの場合は、両方を十分に理解したうえで、是非を判断するのが良いでしょう。
業務システムのメリット
業務システムを導入すれば、以下のようなメリットが得られます。
業務の効率性や確実性が高まる
業務システムを導入すれば、業務の効率は格段によくなります。手作業でデータを入力して分析することと、ITシステムがデータを自動処理してくれることを比較すれば、そのことは明らかです。
また業務システムを使うことで、人為的ミスがなくなり、業務の確実性・正確性が高まるという魅力もあります。
データを正しく管理できるようになる
業務システムでは、一元管理したデータを新しいものから順に序列したり、メンバー間でデータを共有したりすることができます。ITシステムがそれらの作業を担当することから、途中でミスやトラブルが生じる確率は低いです。
一方、人為的にデータ管理を行う場合、紙やファイルが膨大になり、どれが最新のデータなのかわからなくなることがあります。またほかのメンバーにデータを渡す際に、紛失や破損が起きてしまうリスクも考えられます。
以上より、管理データの品質を保つという観点からも、業務システムの導入はおすすめです。
オフィススペースやコストを節約できる
業務システムの導入により、紙媒体でのデータ管理をやめれば、ファイルをしまうためのスペースを削減できます。またインターネット上で利用できるクラウド型の業務システムであれば、社内サーバーの設置場所もなくすことが可能です。
さらに業務システムによって業務が効率化されれば、余分な業務にかかっていたコストも減らせます。余った人材や時間、お金をほかの業務に投入することもでき、売上や利益にも好影響を与えるでしょう。
システム障害やメンテナンスの影響が限定される
個別の業務システムでは、システム障害やメンテナンスなどによってシステムが使えなくなっても、業務への影響は限定的です。システムが止まれば、その業務のメンバーは仕事ができなくなってしまいますが、ほかの業務は変わらず続けられます。
またクラウド型の業務システムでは、たとえ社内がトラブルに見舞われても、管理データの品質は保たれます。例えば、災害で社内のサーバーが壊れてしまっても、業務システムのデータが破損することはありません。システムのデータは、インターネット上で管理されているからです。
業務システムのデメリット
一方、業務システムの導入には以下のようなデメリットもあるので注意してください。
システムの導入に工数や労力がかかる
業務システムの導入には、企業や部署の規模、システムの性質などに応じた工数、労力が必要になります。とくに自社で業務システムを開発する場合、導入までにかかる手間や費用は、比較的大きいです。
とはいえ、導入後に業務が大きく効率化することを踏まえると、費用対効果は決して悪くありません。また昨今は、クラウド型をはじめ、手軽に導入できる業務システムもたくさんあります。
システムを使いこなせないと効率は上がらない
一般的に業務システムは、業務の効率化や円滑化に寄与しますが、システムを使いこなせなければ、そうした恩恵は受けられません。業務システムには、専門的な知識やスキルがないと正しく使えないものもあるので、注意してください。
従業員が問題なく扱えるか、資料の配布や研修などで使い方を教えられるかといったことを、事前によく検討するのがおすすめです。
障害やトラブルが業務に与えるリスクがある
業務システムを導入すると、システム障害やその他のトラブルで、対応する業務が止まってしまうリスクが発生します。とくに基幹システムやERPに障害が発生した場合、企業活動の大部分がストップし、大きな損害が出る恐れもあります。
そのため、不測の事態にどれだけの影響があるのかを意識してシステムを選ぶ、組み合わせることが大切です。単一のシステムに大きく依存するような状況を作ることは、できるだけ避けましょう。
業務システムの導入方法【大きく分けて2通り】
開発形態 | メリット | デメリット | 中小企業向け | |
---|---|---|---|---|
自社で開発する | ・自由に設計することができる ・フレームワークを使えばコストを下げられる |
・費用が高額 ・導入までに時間がかかる |
△ | |
既製品を購入する | パッケージ型(オンプレミス型) | ・カスタマイズが可能 ・セキュリティが強い |
・社内にハードウェアやソフトウェアが必要 ・初期費用がやや高い |
◯ |
クラウド型×サブスク式 | ・初期費用を抑えて導入できる ・すぐに始められる |
・カスタマイズができない ・セキュリティへの配慮が必要 |
◎ |
業務システムの導入方法は、大きく分けると、自社で開発するか既製品を購入するかの2通りです。以下では、それぞれの方法の特徴やメリット・デメリットを解説するので参考にしてください。
1. 自社で開発する:より自由なカスタマイズが可能
自社で独自の業務システムを開発する場合、コンピュータの能力の範囲内で、自由な設計が行えます。業務の内容や規模などに合わせて、細かいカスタマイズができるため、最も高い精度で業務の効率化ができるでしょう。
しかし、社内で一から業務システムを構築するには、C言語やC++、Javaなどのプログラミング言語に精通したエンジニアが必要です。もちろん外注することもできますが、開発費用が高額になることから、ハードルは高いといえます。
システムを一から構築するのが難しい場合は、「フレームワーク」と呼ばれるシステムの雛形を利用するのも良いでしょう。フレームワークを使えば、カスタマイズ性は落ちるものの、基礎ができた状態から開発を始められるので、コストを低減できます。
また小規模な業務システムなら、データベースソフトウェア「Microsoft Access」を使ったより安価な開発も可能です。
2. 既製品を購入する:手軽に導入できるのが魅力
パッケージ型の業務システムを購入すれば、開発の必要がないため、システム導入にかかる工数や労力を少なくできます。カスタマイズをせず、既製品をそのまま使えば、より安価な導入を実現することも可能です。
また昨今は、パブリッククラウドサービスを使ったサブスクリプション形式の業務システムも増えてきています。クラウド型×サブスク式のシステム※なら、オンプレミス型の物理サーバーを社内に設置しなくて良いため、初期費用を抑えられます。
ただし、クラウド型では、「インターネット回線を使う」、「業者にデータ管理を依存する」という性質上、より情報セキュリティ対策に気を配らなければなりません。加えて、クラウド型のシステムは、カスタマイズ性が高くないため、システムに合わせて業務を変えることが求められます。
よって、セキュリティやコンプライアンスを重視する、業務内容を大きく変えられないといった場合には、パッケージ型(オンプレミス型)を選ぶのも良いでしょう。とくに中規模以上の企業には、オンプレミス型のほうが適切であるケースも多いはずです。
一方、小規模の企業、個人事業主の場合は、システムに合わせて柔軟に業務内容を変えやすいため、クラウド型との相性がむしろ良いといえます。その場合は、クラウド型の特性に合わせた情報セキュリティ対策を講じましょう。
※最近は「オンプレミス型×サブスク式」のサービスも一部存在
業務システムを導入する際のポイント・注意点
以下では、自社に合った業務システムを導入するためのポイントや注意点を紹介します。以下を参考に、事前の検討や準備をしっかり行ったうえで、最適な業務システムを選択してください。
業務フローをもれなく洗い出してから導入
業務システムの役割は、業務を効率化することにあるので、業務内容に合ったものを導入することが肝心です。よって、適宜現場へのヒアリングやアンケート調査も行って、事前に業務フローを完全に洗い出しましょう。
業務フローに漏れのある状態で業務システムを導入してしまうと、一部でシステムが機能せず、十分な効果が得られない恐れがあります。またシステムの要件定義からやり直す必要が生じ、コストがかさむ事態も想定されます。
現場の課題やニーズに合ったものを選ぶ
業務システムを使うのは現場であるため、現場の課題やニーズに合ったものを選ぶことが大切です。「既存のシステムより使いにくい」、「必要のない機能が多い」などと、現場から不満が出て、システムが十分に機能しないケースもあるので注意しましょう。
業務の担当者へのヒアリングやアンケートで、業務上の課題を明らかにし、それを解決するようなシステムを導入する。これが業務システムの導入における正しいプロセスだといえます。
予算や費用対効果を踏まえて導入の是非を決める
業務システムを導入する際は、事前に予算を決め、それに合ったものを選ぶのが基本です。予算が決められない場合は、「年間売上高(年商)の10%程度」を目安にしてみましょう。
また十分な費用対効果が得られるかを考えることも重要です。費用に見合った効果が得られなければ、システムを導入する意味はないといえます。
費用対効果の検証には、小規模な試作で効果を確かめる「PoC(概念実証)」を行うのが良いでしょう。業務システムの無料体験版などを活用すれば、実際にシステムを試してみることができます。試験的にシステムを導入し、どれだけ作業時間を短縮できるか、業務にかかる人数を何人減らせるかなどを確かめましょう。
業務システムの導入にかかる費用の相場
導入方法 | 費用の目安 |
---|---|
スクラッチ開発 ※ | 500万円〜 |
購入+カスタマイズ | 100万円〜 |
購入のみ(サブスク) | 月額10万円〜 |
※フレームワークなしで一から開発すること
業務システム(基幹システム)の導入にかかる費用は、10万〜500万円以上だといわれています。ただし、業者によって値段はさまざまなので、実際はもっと安く済む可能性もあります。
なお、複数の基幹システムを統合するERPの場合、個別のシステムを導入するより費用は高額になることが多いです。導入費だけでも1,000万円以上、そこに数万〜数千万円のライセンス費用、開発費が加わるとされています。
とはいえ、ERPの場合もやはり実情はピンキリで、「初期費用なし・月額1万円未満」で導入できるクラウド型ERPもあります。
メンテナンスにかかるコストも考慮する
業務システムのメンテナンスにかかるコストは、オンプレミス型とクラウド型で大きく異なります。
オンプレミス型では、自社に物理サーバーを設置するため、社内にも機器の保守を行う担当者を配置するのが望ましいです。システム保守を外注することもできますが、その場合は別途費用が必要になります。
一方、クラウド型の場合は、メンテナンスをすべて業者に任せられるのが一般的です。自動でシステムがアップデートされるので、利用者側でシステム保守を行う必要はありません。よって、メンテナンスのための人材確保が難しい場合は、クラウド型を選ぶのも良いでしょう。
ただし、業者への依存度を高めることは、障害発生時の影響やセキュリティなどの点で、リスクを高めることにもつながります。よって、業者に丸投げすれば良いという態度ではなく、社内でもノウハウの蓄積や人材育成などに取り組んでいくのがおすすめです。
まとめ
業務システムの役割は、業務を効率化・円滑化すること。自社に合った業務システムを使いこなせれば、業務の能率がよくなり、ヒト・カネをはじめとする経営資源を節約できます。
なお、業務システムには、会計管理システムや生産管理システム、販売管理システムなど、さまざまな種類があります。また役割や性質ごとに、「基幹システム」や「ERP」、「情報系システム」、その他周辺システムに分類することも可能です。
以上を参考に、自分の会社に業務システムは必要か、導入するならどのような種類のシステムが良いかなどを考えてみましょう。
(編集:創業手帳編集部)