弁理士とは?業務内容や依頼するメリット、選ぶ際のポイントをわかりやすく解説
弁理士は知的財産権に関する専門家
弁理士は知的財産権にかかわるスペシャリストとして、企業のアイデアや発明、意匠などの知的財産権にかかわります。
知的財産権は専門性が高い上、うまく活用するには経験やノウハウが求められるものです。
どのように弁理士がビジネスにかかわるのか、その業務内容や依頼する時のポイントを紹介します。
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この記事の目次
弁理士とは?
事業を行う上でスペシャリストのケースは頻繁に発生します。弁理士は知的財産権のスペシャリストです。
これから知的財産権を取得する企業にとっては、弁理士は必須の存在です。
権利関係でトラブルになっている事業者にも役立つ存在なので、どういった専門家なのか確認しておいてください。
弁理士が扱う知的財産権
人間の知的活動によって生み出された創作物、アイデアには財産としての価値を持つものがあります。
知的財産権とは、そういった人間の幅広い知的創造活動の成果を指す言葉です。
知的財産権制度は、知的財産の創作者に一定期間の権利保護を与えて法律で保護することを目的としています。
知的財産の中には、様々な種類があり特許権や著作権のように創作意欲の促進を目的とする「知的創造物についての権利」と、商標権や商号といった使用者の信用維持を目的としている「営業上の標識についての権利」に分けられます。
以下では知的財産の種類についてまとめました。
特許権
特許権は、発明と呼ばれる比較的程度が高く新しい技術的アイデアを保護するものです。発明には、「物」の発明と「方法」の発明、「物の生産方法」の発明があります。
特許権は、出願から20年間の保護期間ですが、医薬品等については最長25年まで延長できるケースもあります。
実用新案権
実用新案権は、発明ほどは高度な技術的アイデアではない、小発明と呼ばれるアイデアの保護が目的です。例えば、日用品の構造を工夫したような場合があります。
実用新案権の保護期間は出願から10年です。
意匠権
意匠権は、建築物や画像、物のデザイン(意匠)を保護します。
デザインの一部を部分的に保護することも可能で、家電製品の外観やアプリのアイコンなどが意匠権の対象です。
意匠権の保護期間は出願から25年です。ただし、2023年3月31日以前の出願は登録から20年とされています。
商標権
商標権は、自分が取り扱う商品、サービスと他人が取り扱う商品、サービスを区別するための文字、マークなどを保護しています。
会社のロゴや宅配便の会社などのトラックについているマークが該当します。
商標権の保護期間は登録から10年で、10年ごとに更新が可能です。
著作権
著作権は、美術や文芸、学術、音楽といった作者の思想感情を創作的に表現した著作物を保護するものです。
書籍や論文、イラストなどのほか、コンピュータープログラムも含まれます。
著作権の保護期間は、原則として創作時から著作者の死後70年とされています。法人著作の場合には、公表後70年です。
弁理士と弁護士の違い
弁理士と弁護士は字面が似ている上に、両方が法律を扱う国家資格です。中には両方の資格を取得して登録している人もいます。
しかし、弁理士と弁護士の役割や業務の内容は違います。
弁理士が行うのは特許庁に知的財産を登録するための手続きの代行、それらの知的財産権に関する審判請求、異議申し立ての手続きの代行です。
一方で、弁護士は訴訟事件を中心とした法律事務を行っています。扱う法律の範囲は弁護士のほうが広い一方で弁理士は知的財産法という法律についてのみ扱うのです。
弁理士と知的財産管理技能士の違い
知的財産にかかわる資格には知的財産管理技能士もあります。
知的財産管理技能士は、知的財産をマネジメントするスキルの習得レベルを測定、評価するもので、すでにある知的財産を活用する役割を担います。
弁理士は知的財産の申請などを行うことができる一方で、知的財産管理技能士は知的財産を活用、利益化する時に役立つ資格です。
弁理士に依頼できる業務内容
弁理士は、弁護士や知的財産管理技能士とも違う専門家です。具体的に弁理士に対してどのような業務を依頼できるのか、業務内容や対応範囲についてまとめました。
産業財産権の出願代行
弁理士の独占業務として知られているのが、産業財産権の出願代行です。これは基本的に弁理士のみに認められた業務で、弁理士資格を持っていない人が代行すれば違法です。
産業財産権とは、上記で説明した特許権や実用新案権、意匠権や商標権などが該当します。
特許などの技術が産業財産権として保護されるためには、特許庁に出願して認められなければいけません。
これは単純に出願するだけでなく、中間処理と呼ばれる特許庁の審査の結果に対して意見、補正といった対応の必要もあります。
知的財産権に関する契約業務
弁理士のメインの業務は、特許庁との手続きですが、契約にかかわる業務も担当します。
例えば、特許権などの売買をする時の契約代理業務や知的財産権にかかわる問題解決などが弁理士の業務です。
知的財産にかかわる契約は、専門性が高く知的財産の管理には高度なノウハウが求められます。
そこで弁理士が契約業務や契約の相談を行うことで法的リスクの検討を行うことになるのです。
弁理士が知的財産権を適切に管理して、財産をめぐる環境を健全化することによってトラブルを避けることができます。
知的財産権に関する訴訟関連業務
特許等の産業財産権は、紛争に発展することもあります。訴訟になってしまった時に行う業務として「審決取消訴訟」と「知的財産権侵害訴訟」の2つがあります。
審決取消訴訟は、特許庁の審決・決定に納得できない時に知的財産高等裁判所に不服申し立てをすることです。
これは、企業や人間同士のトラブルではなく行政手続きに関する訴訟です。そのため当事者と行政のやりとりになります。
知的財産権侵害訴訟は、知的財産権の侵害に対し差止請求や損害賠償請求を行う業務です。審決取消訴訟と違って、権利を侵害する第三者が存在しています。
ブランドのコンサルティング業務
知的財産権の管理は、繊細で広い知識が求められます。
豊富な経験を活用して他社の意匠を侵害しないデザインを提案したり、ブランド戦略を考えたりするのは弁理士のフィールドです。
いわゆるコンサルティング会社とは違う視座があるため、心強いサポートになるはずです。
M&Aにおけるデューデリジェンス
M&Aにおけるデューデリジェンスは、事業を売る側の企業価値を算定するプロセスです。
一般的なM&Aでは、その事業の適切な価値を把握するために保有している資産を細かく調査します。
資産の中には不動産から設備、人材など幅広く含まれ知的財産権も当然該当します。知的財産権の調査の中で、弁理士の高度な知識や経験が活用されているのです。
弁理士に依頼する際の費用相場
「特許権を取得したい」「商標権が侵害されそう」といった権利にかかわる問題を解決するには弁理士が力になります。
弁理士に依頼する時には、費用の問題も考えなければいけません。
弁理士の費用は、その特許事務所によって異なります。いわゆる定価や標準価格といった物はなく、費用体系は千差万別です。
具体的には、1案件当たりの固定報酬制の場合や着手から方針決定、出願といったステップごとに費用を請求する場合もあります。
弁理士のメイン業務として、特許出願、商標出願、意匠出願とさらに調査やコンサルティングがあります。
各業務の費用として挙げられるのが、手数料や実費、弁理士費用、特許庁に支払う費用などです。
弁理士に依頼する時の費用相場として特許を出願したケースを紹介します。
特許出願時に20万円~40万万程度、さらに審査請求で20万円、さらに登録時と維持更新時に費用が発生します。特許にかかる費用総額で50~90万円程度が相場です。
ただし、拒絶理由通知を受けたケースなど、その時々で費用が発生することも考えておかなければいけません。
弁理士に依頼する時には、自社が持つニーズも考えなければいけません。1案件で終わりではなく定期的に依頼をしたいと考えるケースもあります。
そういった場合は、月当たり定額の顧問料を支払って、出願は通常よりリーズナブルな価格で行う顧問契約制も検討してみてください。
企業が弁理士に依頼するメリット
今まで弁理士に依頼したことがない企業にとっては、本当に依頼が必要なのかと疑問に感じるかも知れません。
ここでは、企業が弁理士に依頼することで得られるメリットをまとめました。
複雑な手続きを代行してもらえる
特許を取得するためには複雑な手続きが必要です。中でも大変なのが技術的なアイデアを言語化することです。
今までにない形状やアイデアをどういった表現で伝えるかは弁理士の腕の見せ所になります。
また、どういった仕組みのものなのかを詳細に羅列しなければいけません。
弁理士に依頼することで、知的財産権にかかわる内容を適切な形で言語化するとともに複雑な出願書類の作成する手続きを一任できるのです。
拒絶理由通知が送付されても反論できる
特許権などの権利を取得するには、特許庁の審査を通過しなければいけません。
すでに同じような発明やアイデアが出願されていないか、似たようなデザイン、他人の商標に似ていないかといった点が特許庁で審査されます。
審査を通過しなかった場合、特許庁から拒絶理由通知という通知が送付されます。
弁理士は拒絶理由通知に対して理由を示して反論したり、特許庁の判断を踏まえて出願内容を補正したりといった対応を行います。
特許庁の判断例や裁判について詳しい弁理士だからこと、適切な対応や反論が可能です。
権利取得以外の選択肢も提案してもらえる
特許を取得するためには、審査を通過しなければならず、費用や時間が大きくなり過ぎる可能性もあります。
アイデアの内容や顧客の目的によっては、特許権取得以外に実用新案権にするといった選択肢もあるかもしれません。
弁理士は知的財産権の専門家として、具体的なアイデアや顧客が置かれた状況からどのような手続きにするのが顧客にとっての利益が大きいのか判断して提案してくれます。
自分にとって、どの手続きが良いのか迷った時に弁理士が相談を受けてくれるでしょう。
最新の法律改正にも対応できる
知的財産にかかわる法律は、頻繁に改正されます。法律改正の動向を把握したり、改正に合わせて適切な対応をしたりことも弁理士の仕事です。
弁理士は知的財産権の専門家として最新の法律を把握していて、法律改正に関する研修の受講が義務化されています。
頻繁に法律が改正されていても弁理士であれば適切な対応が可能です。
弁理士に依頼する際のポイント
弁理士は、知的財産権を守って事業を遂行するために重要な役割を果たします。特許を取得したり、他社からの侵害から権利を守るために弁理士選びは重要です。
知識や経験が豊富な弁理士であれば、ライセンス展開も含めた知財戦略にも長けているため、ビジネスの幅を広げてくれるかもしれません。
さらに弁理士に依頼する時には、その弁理士の専門分野も確認します。自社の発明分野詳しいかどうかは必ずチェックしてください。
化学系か機械系、物理学なのか発明によってジャンルはいろいろあります。
適切に権利範囲を設定して知的財産を活用するには、そのジャンルに詳しい特許事務所に依頼するようにおすすめします。
特許などの出願にはまとまったお金がかかるため、できるだけ安く請け負ってくれる弁理士を探そうとするかもしれません。
しかし、特許の価値は弁理士次第で高くも低くもなります。
その知的財産権にかかわるパートナーとしてサポート体制が整っていて、権利の内容を理解して活用してくれる弁理士を探すようにしてください。
まとめ・知的財産権に関する悩みは豊富な知識を持つ弁理士に相談しよう
特許申請や知的財産を適切に管理するために弁理士は不可欠な存在です。弁理士を探す方法や弁理士会のWebサイトや知り合いからの紹介などいろいろあります。
しかし、弁理士の選び方によって特許が取得できるかどうか、自社の権利を守り切れるかどうかなど事業に大きく影響します。
弁理士を選ぶ時には、どういった分野の専門家なのか、いままでにどれだけの経験を積んでいるのかも確認してください。
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(編集:創業手帳編集部)