アパート経営にはどのくらい費用がかかる?初期費用や維持費について徹底解説!
アパート経営の初期投資は長期的な収益を見据えて検討すべし
アパート経営は、初期投資が大きくなるビジネスといわれます。しかし、初期費用の問題をクリアできれば長期的に安定した収益も期待できます。
アパート経営を考える時には、初期投資だけでなく維持費や修繕費といった長期的にかかっていく費用も計算しておかなければいけません。
どういった費用が発生するのか知って、収支計画を精査してください。
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この記事の目次
アパート経営の初期費用には何がある?
アパート経営は、安定した収益が期待できるビジネスである一方初期費用が大きくなってしまうことが広く知られています。
アパート経営の初期費用として何が発生するのかそれぞれ項目ごとに紹介します。
初期費用の全体像
アパート経営の初期費用として、最も多いのは建築費です。あとは建築費以外の諸費用と維持費が発生します。
建築費は、主に本体の工事費と建物付帯工事費があります。建築費は、アパートの構造や規模によっても変化する部分です。
塀や駐車場といった外構工事費のほか、アパートに取り付ける設備の費用も発生します。
建築費以外の費用としては土地の調査や測量の費用のほか、登記費用や家屋調査費用、税金などがかかります。
また、災害リスクに備えて保険加入は必須です。保険費用やローン手数料、入居者募集の費用もかかります。
アパートは建てて終わりではありません。建築してからも修繕費や光熱費、税金は継続してかかります。
アパート経営をはじめる時には、どのタイミングでどれだけの費用が発生するか、数年先の費用も考えておくことが大切です。
初期費用の目安:総額と自己資金
アパート経営には、様々な費用がかかります。自己資金は人によって違いますが、一般的には20~30%は必要とされています。
つまり、アパート経営の初期費用が5,000万円必要である場合には、1,000~1,500万円の自己資金が必要ということです。
お金が足りなければ融資を受ければいいと考える人もいるかもしれません。しかし、融資を受けるための審査でも自己資金がどれだけあるかは確認されます。
自己資金なしでは、融資を受けられたとしても、金利などの条件が悪くなる可能性もあります。
将来の返済負担を減らすためにも、より多くの自己資金を用意しておくようにしてください。
ただし、自己資金として過剰に投入して貯金が少なく成りすぎてしまえば、アパートの修繕費などの維持費が賄えないこともあります。
ある程度は手元に残せるようにしてください。
アパート経営の建築費用の詳細
アパート経営をはじめるには、アパートを用意しなければいけません。ここからはアパート経営に建築費用の詳細を説明します。
本体工事費:構造別の坪単価
アパートの本体工事費は、建物の規模や構造によって変わります。
アパートの戸数や間取り、設備によって変化するので、どういったアパートを建てたいかをまず考えてください。
アパートを建築するエリアをリサーチして、ファミリー向け賃貸やワンルームのようにどういった物件の賃貸需要があるのか調べておきます。
基本的には、規模が大きいほど工事範囲が広くなって高額です。また、木造か鉄骨造かによっても変わります。
本体工事費を抑えるなら木造建築が適していて、坪75~95万円が目安です。鉄骨造や鉄筋コンクリート造は木造より高価で坪あたり100万円~120万円は必要です。
しかし、鉄骨造や鉄筋コンクリート造は耐久性や防音性に優れています。そのため、入居者を募集する時や将来の修繕費といった長期的な視点で選択するようにしてください。
また、坪単価は建築会社によっても違いがあります。坪単価の違いは最終的な本体工事費にも影響が大きく、投下資本の回収や利回りにも関わります。
複数の建築会社から見積もりを取って選ぶようにしてください。
別途工事費:外構工事や設備工事
本体工事費とは別にかかる費用として別途工事費があります。これは地盤改良や給排水、ガスや電気、フェンスなどの外構が含まれています。
さらに建て替えする場合には、解体工事関連費用が必要です。
別途工事費は、本体工事費の約20%程度が目安です。ただし、地盤が弱いと地盤改良費用が大きくなります。
アパート経営を計画する時には、外構工事や設備工事にどれだけかかるかを把握しておくと予算オーバーを避けやすくなります。
アパート経営に必要な諸経費用の詳細
アパートは、建築費用が高額になりますが、それ以外の諸経費も大きくなります。諸経費は、ローンで借りられず、自己資金で準備するのが一般的です。
どのような費用を用意すればいいのか以下でまとめました。
登記費用と税金
アパートを建築すると、不動産取得税の納税が求められます。不動産取得税はアパートの固定資産税評価額の3%です。
固定資産税評価額は、時価のおよそ7割程度とされています。時価で1億円のアパートであれば7,000万円程度であり、そこに3%を掛けると210万円です。
ただし、アパートの底面積によっては控除を受けられる場合があります。
不動産取得税は取得して半年以上たってから納付書が送られてくることがあるので、手元に資金を残しておかなければいけません。
さらに、当期の費用として所有権保存登記と抵当権設定登記が必要です。
所有権保存登記は、建物を建築したことを届け出るための登記です。抵当権設定登記は、アパートに抵当権を設定するために行います。
登記費用としては、20万円~50万円程度は必要と考えておいてください。
これらの諸費用が初期費用全体の約5~10%を占めます。登記費用や固定資産税なども含めアパートの初期費用を計画しなければいけません。
保険料と管理費
自然災害や住民トラブルといったアパート経営に対するリスクも管理が必要です。中でも火災保険の加入は必須です。
保険料は、どの保険会社でどれだけの期間かけるかによって違います。一般的な火災保険であれば地震保険5年付き10年ものの火災保険で30~50万円程度です。
加えて、施設賠償責任保険や、孤独死保険といった保険もあります。
保険料は、建築費の約0.05%/年が目安です。長期的な運営コストを見据えて資金計画を立てるようにしてください。
アパート経営後にかかる維持費の詳細
アパート経営は、初期費用だけでなく建築してからも多くの維持費が発生します。具体的には、共有部分の管理費や修繕費、光熱費など、細かい費用が積み重なっていきます。
一つひとつでは大きな金額にならないため、維持費は見落としがちです。
しかし、合計すると無視できない金額になります。詳細な見積もりと予算管理が必要不可欠です。
アパートローンと資金調達
アパート経営は初期費用が大きくなるため、多くの人は自己資金以外の資金調達を活用しています。
そのひとつであるアパートローンは、アパートやマンションを経営する時に利用できる事業系ローンです。ここではアパートローンについて詳しく見ていきます。
アパートローンの種類と特徴
アパートローンは、どこから借りるかによって分類されます。大別すると一般銀行のような民間金融機関と公的金融機関です。
公的金融機関には、日本政策金融公庫と住宅金融支援機構、地方自治体などがあります。
また、提携ローン、プロパーローン、ノンバンクなども確認しておいてください。
提携ローンとは、不動産会社と提携して独自のプランで提供しているローンです。提携ローンは審査期間が短く、低金利で利用できます。
プロパーローンは、各金融機関が独自に融資しているローンで、柔軟な融資プランに対応してもらえる点がメリットです。
ノンバンクは、信販会社、クレジット会社のようなノンバンクが提供しているローンです。審査がスピーディーな点が魅力ですが、金利が高めといわれています。
アパートローンは、それぞれ金利や返済期間、融資条件が違います。自身の財務状況や収支計画に最適なものを選択するようにしてください。
融資審査のポイントと対策
アパートローンの融資審査では、様々な書類を提出して面談に臨みます。融資審査で必ず確認されるのが、収支計画の妥当性です。
収支計画は見た目が良ければ高評価につながるわけではありません。
どれだけ理想的な収支計画でも、現実的な入居率や修繕費を提示しなければ意味がないということです。
大切なのは物件の競争力や将来の市場動向も考慮した上で、現実的な収支計画を立て審査に臨むことです。
アパート経営で初期費用を抑えるための戦略
アパート経営に興味があっても、初期費用がないからとあきらめる人もいるかもしれません。
しかし、初期費用は工夫次第で抑えることが可能です。どういった戦略があるのか紹介します。
土地選びと建築プランの最適化
アパート経営の初期費用を抑えるためには、立地条件に合わせた最適な建築プランの選択が重要です。
こだわって建築しても、ワンルームの需要が多い場所でファミリー向けの物件を提供するのは最適ではありません。また、そもそも賃貸需要が少ないエリアもあります。
需要が高くて、かつ建築コストが抑えられる土地を選ぶことが第一前提です。
その土地の特性を活かした効率的な建築プランを立てることで無駄をなくし初期投資を最適化できます。
税制優遇の活用方法
アパート経営には、様々な税金の支払いが発生します。しかし、制度を利用すれば税負担を軽減することが可能です。
例えば、不動産取得税の軽減措置のように各種の税制優遇を積極的に活用してください。
また、アパート経営をスタートしてから初めて確定申告をする人もいるかもしれません。
確定申告の時の経費計上や減価償却の方法も節税のポイントです。青色申告にすることによって、最大で65万円の控除を受けられます。
赤字が出た場合には、損益通算することによって税負担を軽減することが可能です。
税理士などの専門家に相談して、最大限の税制メリットを得られるよう計画を練ってください。
アパート経営での初期費用と長期収益のバランス
アパート経営は初期費用が大きくかかり、長期的に費用を回収していきます。
初期費用が大きくなる分、費用を回収するまでにどれだけの期間がかかるか気になる人も多いかもしれません。回収するまでにかかる年数は、一般的には10年が目安です。
以下では、回収するまでにどれだけかかるのか計算の方法を紹介しています。
投資回収期間の計算方法
アパート経営の投資回収期間は、年間キャッシュフローを基にして初期投資の回収期間を計算します。
例えば、以下の条件で考えてみてください。
-
- 戸数 10戸
- 初期費用 6,000万円
- 自己資金 2,000万円
- ローン 4,000万円
- 家賃 8万円
- 諸経費率 20%
- 空室率 10%
- 月の返済額 20万円
まず、年間の家賃収入は、8万円×10戸×12カ月で960万円です。空室率が10%なので、960万円×0.9で864万円です。
次に支出を考えます。年間の経費が20%かかるとして約172万円です。
さらに年間の返済額は、20万円×12カ月で240万円になります。
収入である864万円から支出である172万円と240万円を差し引いて452万円が年間のキャッシュフローです。
自己資金が2,000万円なので、4~5年で回収できる計算となります。
ただし、この例では、空室率が10%で固定されていて、修繕費を想定していません。想定していた以上に費用がかかるかもしれません。
確実に10年前後で回収できるように余裕を持って計画してください。
初期投資を回収した後の、純利益期間を見据えた経営戦略を立てることが重要です。
長期的な収益性を高める初期投資のポイント
アパート経営の長期的な収益性を高めるには、省エネ設備など、将来的に収益に貢献する初期投資を検討することがおすすめです。
例えば、宅配ボックスや防音室のように入居者ニーズを先取りした設備や、メンテナンスコストを抑える工夫など、長期的視点での投資が将来の競争力維持につながります。
アパート経営成功のための初期費用管理
アパート経営は初期費用が大きい分、リスクが高くなってしまいます。アパート経営を成功させるためにどうやって初期費用を管理すればいいのか紹介します。
予備費の重要性と運用方法
アパート経営を成功させるには、予期せぬ支出に備え、総事業費の5-10%程度の予備費を確保するようおすすめします。
予備費の使い道は、建築中の追加工事や、開業後の早期修繕、税金や管理費といった支出です。
ある程度利益が安定すれば、これらの支出は収入から賄えます。しかし、実際に入居者を募集してから部屋が埋まるまでには時間もかかります。
また、空室率が上昇する時期もあるかもしれません。収益の一部から予備費として積み立てておいてください。
収入が安定して予備費を積み立てられるようになってから、アパート経営をはじめた時に手元に残した資金をほかの投資に回すといった運用も可能です。
専門家のアドバイスを活用する方法
アパート経営の初期費用を最適化するには、税理士や不動産コンサルタントなど、各分野の専門家に相談することも検討してください。
不動産投資は土地や建物、税金など多くの専門知識が関係しています。
専門家の知見を活用することで、見落としがちな費用項目の洗い出しや、効果的な節税策の立案といった客観的な初期費用計画を立てられます。
まとめ・アパートの初期費用の最適化が成功への第一歩
アパート経営をはじめる時にまず解決すべきは、初期費用の準備です。
様々な費用が発生するものの、税制を利用したり、経営計画を精査することで初期費用を最適化できます。
入念に収支計画を立てておくことによって、資金調達も円滑に進みやすくなります。まずは、アパート経営のプランや見積もりを用意して自分に合うものを探してみてください。
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(編集:創業手帳編集部)