AIビジネスの具体的イメージ

創業手帳

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(2018/08/24更新)

企業のAI活用事例、特に中小企業がどのようにAI活用を進めているのかについてご紹介していきます。

1 今は第3次AIブーム

昨今、AIという言葉がさまざまなメディアで取り上げられていますが、これが第3次AIブームであることをご存じでしょうか。第1次は1950年代、第2次は1980年代にありました。 第1次は、AIという言葉が生まれ、チェスを指したり、数学の定理証明をしたりするコンピューターがイメージされていました。第1次は、研究者の中での話だったといえるでしょう。

続く第2次は、人間の専門家が持つ意思決定能力を模倣し、それに近しい能力を実現するエキスパートシステム等が目指されました。当時の通商産業省が推進した第5世代コンピューターの開発もこの頃で、多くの大企業も取り組みました。第2次は、国や大企業を中心とした話だったといえるでしょう。

2 第3次は身近なAI

そして2010年代に入った今、第3次を迎えています。第3次AIブームは、1990年代から著しい成長と発展を遂げた機械学習と深層学習(ディープラーニング)が背景にあることは間違いありません。

また、AIブームを下支えしているのは、さまざまなモノがネットワークにつながるようになった“IoT(Internet of Thing)”、大量のデータを扱えるようになった“ビッグデータ”です。つまり、ネットワークにつながったさまざまなモノからデータを取得し(IoT)、それらのデータを大量に処理・蓄積し(ビッグデータ)、その大量データを使って賢くなっていく(AI)ようになったということです。

これらが実現されつつあるのは、コンピューターやネットワークの性能向上と低価格化が進んだためですが、この流れこそ、規模の大小を問わず、企業がAIを手軽に利活用できるようになってきたことを意味します。第3次を迎え、ようやく私たちの身近な話になったといえるでしょう。
人工知能という広い概念の中に、機械学習があり、その手法の1つにディープラーニングがあります。その関係を示した図表です

3 広がるAIサービス

とはいえ、AIの活用事例として取り上げられるのは、大企業や最先端技術に取り組む企業の話ばかりで、まだまだ身近には感じられないかもしれません。しかし、前回ご紹介したチャットボットやRPA(Robotic Process Automation)などは、中小企業でも手が届く価格で提供されています。

例えば、自社のホームページ上に、資料請求や質問を受け付けるチャットのボックスを備え、チャットボットが自動で住所を尋ねたり、質問の答えになるページのリンクを返したりする仕組みを備えている中小企業も出てきています。中小企業が使えるその他のAIサービスを見てみましょう。

会計系のAIサービス

どのような企業でも会計処理をしなければなりません。中小企業にとっては意外と業務負担が重いもので、課題になっていることでしょう。この業務負担を軽くし、さらにその企業の会計データを基に、AIがアドバイスをしてくれる「クラウド会計サービス」があります。

勘定科目の自動提案といった作業効率に役立つ機能、同業種の企業との比較ができる機能、助成金の申請や融資に関する提案などの機能が備わっています。人間の専門家ほど具体的なアドバイスではないかもしれませんが、社長に気付きを与え、経営判断の材料を提供するサービスとして、中小企業の利用者が増えています。

営業系のAIサービス

「営業力・販売力の強化」も多くの中小企業にとって大きな課題です。その解決に向けて、Webサイトを設け、試行錯誤を重ねながら、Webマーケティングを含めた取り組みを進めている中小企業も多いことでしょう。しかし、なかなかうまくいっていない、あるいはどこをどうすればいいのかが分からないといった声もたびたび聞こえてきます。

このような場合、AIを用いてWebサイトを分析し、サイト改善の提案までしてくれるサービスがよいかもしれません。Webの専門家のように、サイト改善のポイントとその根拠となるデータを示してくれるので、情報リテラシーが高くなくても、なるほどと思えることでしょう。

なお、Webサイトの分析で、Google Analyticsを利用している中小企業も多いことでしょう。現在、Google AnalyticsでもAIを用いたアシスタント機能が提供され始めています。

このアシスタント機能では、Webサイトのパフォーマンスを週次で比較リポートしてくれる他、例えば、あるページに関して、「関連記事を書きましょう」「このページを目立たせましょう」といった助言が提示されます。今後、こうした機能が中小企業のWebサイト運営を高度化してくれるかもしれません。

「営業力・販売力の強化」に向けては、AIを用いた営業支援サービスもあり、AIを用いて精度の高い見込み客を抽出することに強みを持っています。リソースが限られている中小企業の営業部門にとって、見込みが薄いお客さまを回る“無駄足”は避けたいところです。このようなAIサービスも中小企業の生産性向上に貢献するといえるでしょう。

4 個別課題の解決に向けたAIの利用

これまで紹介してきたAIサービスは、多くの中小企業にとって共通的な課題に応えた汎用的なサービスです。一方、中小企業が個別に持つ課題に対応したAIの利用も、徐々にではありますが、広がりつつあります。

例えば、街のパン屋さんの事例で考えてみましょう。パン屋さんでは、たくさんのパンの種類をしっかりと覚えて瞬時に特定できないと、レジ対応をすることができません。アルバイトの確保も困難で、そのアルバイトにパンの種類を覚えてもらうことを考えると、これはパン屋さんにとっては大きな課題です。こうした課題に対して、下向きにセットされたカメラの下にパンをのせたトレーを置くと、画像処理によってパンの種類を識別し、その価格や個数を把握する仕組みが作られています。これは、どれがメロンパンなのか、どれがカレーパンなのかをAIに学習させ、外見上の違いを瞬時に判断できるようになっています。

5 独自のAIサービスを作るプラットフォーム

自社の、より個別な課題解決や新たなサービス価値の提供のために、AIあるいは機械学習を活用したいと考えている人がいるかもしれません。データの質・量、技術的な知見など満たすべき条件はありますが、中小企業でも、自社の個別の用途に合わせて扱うことができる機械学習のプラットフォームが提供されています。機械学習では、大量のデータを処理できるスペックの高いコンピューターが必要となるため、かつてはかなり高額な費用がかかる取り組みでした。しかし、今ではクラウドサービスとして提供されるようになって、個人でも中小企業でも取り組みやすい状況となりました。

代表的なクラウド機械学習サービスとしては、AWSのAmazon Machine Learning、MicrosoftのAzureML、GoogleのPrediction APIなどがあります。それぞれ異なる特徴があり、利用の目的や環境によって一長一短ありますが、技術的な知見を持っている専門家などに一度、相談してみるとよいでしょう。

大事なことは、単にAIや機械学習を利用することそのものを目的とせず、個別の課題を解決するためのアイデアや新たなサービス価値を作るためのアイデアを実現するために、道具としてAIや機械学習がふさわしいかどうかを考えることです。AIは決して万能ではありません。自分のアイデアが「言語」「画像」「音声」「制御」「最適化・推論」のいずれかに関係するようであれば、AIや機械学習を利用できる可能性があります。

既に、自分のアイデアに近しいAIサービスがあるなら、自分で取り組むことをせず、そのAIサービスを利用するほうがいい場合も少なくありません。その点は十分に考える必要があるでしょう。

もはやAIは遠い存在ではなく、個人や中小企業にとっても手を伸ばせば利用できる道具だということを忘れてはなりません。ビジネスとして成功するには、さまざまな要素が作用するため、決して簡単な取り組みではありません。しかし、AIの利用を臆することなく考えてみることができる時代になっています。AIは、まさに私たちの身近な話になっているのです。

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2017年9月4日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

バーチャレクス・コンサルティング株式会社 執行役員 辻 大志
早稲田大学法学部卒業。アクセンチュア株式会社等を経て、2012年6月に当社に入社。2013年3月より現職。事業構想策定、CRM戦略策定、ビジネスプロセス改善、システム導入、アウトソーシング活用等といったプロジェクトに従事。その他、アジアでの新規事業構想策定、事業立ち上げ支援及び事業提携に係る調整等を推進。事業展開・拡大に向けた施策やビジネスモデル構想、CRMやデジタルマーケティング等の領域を得意とする。

(記事提供元:りそなCollaborare
(執筆:バーチャレクス・コンサルティング株式会社 執行役員 辻 大志)

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