領収書の宛名は必要?正しい書き方や宛名がないリスクなどを徹底解説

創業手帳

領収書の宛名はどう書けばいい?宛名の取扱いについて解説します


領収書に必要な項目のひとつに、宛名書きがあります。基本的に宛名は記載すべきですが、省略している人もいるかもしれません。
領収書の宛名を書かない、または省略などを行うと、税務処理の際に弊害が出ることがあります。

今回は、領収書の宛名の取扱いについて解説します。

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領収書の役割とは


領収書は、商品・サービスを提供された際に金額を支払ったことを証明するものです。
領収書の発行を受け、確認する際に未払いの金額があったり、重複して支払っていたりといったミスや不正を発見できます。

このように、取引きがあった旨を証明する書類を証憑(しょうひょう)書類と呼び、契約書や請求書と同様に領収書も取引きが正確に行われたことを示す大事な書類です。
民法においては、商品・サービスの対価を支払った側は、支払いを受けた側に対して受取証書の請求ができる旨が記載されています。

つまり、支払いを受けた側は、領収書の発行に必ず応じなければならないということです。

領収書に記載する項目について

発行した日付

取引きが発生した年月日を記載します。この際、発生した年は和暦でも西暦でも構いませんが、元号や上2桁の省略は避けるようにします。

宛名

金額を支払い、領収書を受け取る側の名称を記載します。宛名は個人の氏名、法人であれば会社名を記載しますが、こちらも省略はせず正式名称で書くのが基本です。

発行者

領収書を発行する側(金額の支払いを受けた側)の氏名・会社名・店舗名を明記し、さらに住所や連絡先も合わせて記載します。

但し書き

提供された商品・サービスの内容を明確にするものです。この時、商品やサービスがどのようなものであったか、一目で確認できるように明示します。

領収金額

支払った金額を正確に記載します。
また、不正を防ぐために、数字の前に「¥」・「金」、数字の後に「‐」・「也」のように、改ざんが行われないよう記号を付けておきます。

収入印紙

商品やサービスの対価が50,000円以上かつ現金で支払った場合は、課税対象です。そのため、金額に応じた種類の収入印紙を領収書に貼付しなければなりません。

領収書の正しい宛名書きとは


領収書の宛名は、上記に示した項目の中に含まれるものです。宛名が記載されていない領収書は、原則的に証憑書類として成立しません。
また、宛名を記載する目的には、不正利用の防止も挙げられます。紛失した際などに宛名を書き換えられたり、重複して金額を請求されたりする恐れがあります。

以下では、法人と個人事業主に分けて宛名の書き方をまとめました。

宛名が法人の場合

支払いを行った側が法人の場合、会社名や支払者の所属部署、可能であれば個人名まで記載を行います。
詳細に宛名を記録することで、経理処理を簡素化することにつながります。ただし、企業宛てで問題ない場合は、個人名の記載は必要ありません。

会社名を記載する場合は、略さずに正式名称を書くようにします。
例えば、株式会社であれば、前株や後株はもちろんのこと、(株)とせずに「株式会社」と記載するのが基本です。

また、会社名自体も社名がアルファベットであるのに、カタカナで表記することも避けてください。これは、会社の規定で経費として認められないケースもあるためです。

宛名が個人事業主の場合

領収書の発行を受けるのが個人事業主である場合、個人の氏名を略さずに記載します。名字や名前のみでは、正確な税務処理ができない場合があります。
個人事業主の事業に屋号がある場合でも、個人名を正確に記載してあれば問題ありません。ただし、より正確な証憑書類とするためには、屋号まで記載するようにします。

領収書の宛名書きに迷う2つのケース


領収書の宛名書きで、問題があるか否かに迷うケースは以下のようなことです。

領収書の宛名を自身で記載できるのか

時に、領収書の発行を受ける側が自ら宛名を記載することがありますが、これはなるべく避けてください。
自身で宛名を記載してしまうと、支払いを受けた側が発行したものであると正確に証明することができず、税務上で問題が出るケースも考えられます。

ただし、取引きを行った金額が少額の場合は、後述のように宛名がない場合でも税務に支障がないケースもあるため、わざわざ自身で記載する必要もないといえます。

領収書の宛名に「上様」の使用はOKなのか

領収書において、宛名を「上様」とする慣習があります。この記載について、はっきりとOKかNGかの線引きは難しいところです。

例えば、「上様」の記載でも、会社の規定により認められるところと、認められないところがあり、対応が分かれます。
税制上では、基本的に支払った側が誰なのかが明確でなければ、証憑書類としては不十分とみなされることもあります。

ただし、税法において「上様」の宛名が完全に禁止されている項目も、実際には存在していません。
つまり、「上様」を使えるか否かは、以下のようにケースバイケースであるといえます。

使えるケース

2022年12月時点の消費税法では、領収書などの証憑書類について取引金額が30,000円未満であれば、帳票への記載のみで良いとされています。
つまり、正規の領収書の保存について言及されていないため、宛名がなくとも問題視されません。

なお、会社名や個人名の宛名の記載を免除される事業が、以下のように定められています。

  • 小売業
  • 旅客運送業
  • 旅行業
  • 飲食業
  • 駐車場業

 

使えないケース

反対に「上様」が使えないのは、以下のようになります。

  • 取引金額が30,000円を超える場合
  • 宛名の記載を免除された事業以外を営んでいる事業者

ただし、2023年10月より施行されるインボイス制度においては、課税事業者でインボイス発行が義務付けられている場合、取引金額30,000円以下でも領収書の宛名は必須です。

領収書に宛名がないとどうなるのか


前述した、領収書の宛名が免除されるケース以外の場合、宛名がないことによりどうなるのか、ケースごとに説明します。

・経理上の問題
経理処理自体においては、宛名がなければならないという法的な縛りはありませんが、会社の規定により義務付けられているケースが多いようです。

・税務上の問題
領収書の宛名がない場合、税法上では縛りはないものの、税務調査が入った際には調査官に不正を疑われて容認されないことがあり、追徴課税を徴収される場合があります。

・消費税法上の問題
領収書の宛名が必要であると消費税法で定められている理由は、仕入れを行う課税事業者が、仕入税額控除を受けるためです。
仕入税額控除とは、仕入れの際に支払った消費税と、顧客に商品・サービスを販売した時に預かった消費税の差額を控除される制度を指します。

仕入税額控除を受けるためには、領収書の宛名を含めた各種項目の記載が必須です。

領収書に宛名がない時のリスクとは

そのほか、領収書に宛名がない場合に負ってしまうリスクを紹介します。

悪用されることがある

宛名がない、もしくは「上様」などで明確な法人・個人名が記載されていない領収書では、例えば他人が手に入れた場合、虚偽の経費を申告される恐れがあります。
そのため、領収書の宛名書きを免除されている場合でも、極力宛名は正確な記載のあるほうが無難です。

領収書の発行元に調査が入る

宛名が不明瞭な領収書の発行が続く場合、その領収書の発行元=支払いを受けた側に、税務署の調査が入ることがあります。これを反面調査といいます。

つまり、領収書を発行する側にとっても、正確に宛名を書くことはメリットにつながるということです。

脱税を疑われることがある

宛名が詳細に記載されていない領収書を受け取り、重複発行で脱税を図ったことが判明すれば、もちろん発行を受けた側が罪に問われます。
加えて、発行する側に関してもその脱税行為をほう助したとみなされ、犯罪に手を貸したと疑われることにもなりかねません。

領収書の宛名がないレシートは有効か

それでは、店舗で発行されるレシートについては、宛名がなくとも問題がないのでしょうか。

レシートでも処理が可能

税務上ではレシートも証憑書類の扱いとされ、店舗印が押されていなければならないという規定もなく、問題なく処理されます。
そのため、レシートを受領していれば、別途領収書の発行はなくても良いといえます。

ただ、法人であれば社内の規定にてレシートでの処理が禁止されている場合もあるため、経理担当に確認してください。

レシートのほうが内容が詳細にわかる

通常、領収書には取引先もしくは店舗において、金銭授受を行った日付・支払先(発行元)・取扱品名・金額合計の記載が求められます。
レシートには、これらの情報が網羅されているため、証憑書類として問題ありません。

さらに、領収書では「〇〇代として」としか記載されていない取引きも、レシートには取扱いを行った品名まで詳細に記載されているため、より不正をしにくい面もあります。

領収書の宛名などを書き間違えてしまったら


領収書を手書きする時、もし書き間違えてしまった場合には、発行を受けた側が訂正を行うことは避けます。
これは、領収書の改ざんを疑われ、不正とみなされる恐れがあるためです。

処理する際の注意点について

基本的には、取引先に訂正を依頼します。領収書の訂正処理をする場合は、必ず取引先や店舗(発行元)で行ってもらうようにします。

金額や日付など、取引きの記録を正確に残さなければならない項目は、自身で書き換えることを認めるとその処理がまかり通ってしまい、不正の温床になりかねません。
そのため、金額や日付が間違っている場合は、その場で発行元に訂正を求めるようにします。
また、但し書きについては別途処理方法があります。

なお、但し書きが間違っている場合にも、発行元に訂正を求めるのが望ましい方法ですが、必ずしも発行元にゆだねなければならないことはありません。
間違った但し書きの領収書を受け取った場合は、自身で領収書の裏側などに詳細を記載しておけば、問題なく処理される場合があります。

また、領収書の訂正は間違った箇所に二重線を引き、その上に担当者もしくは社印、店舗印を訂正印として押印する方法で行ってください。
そして、訂正箇所の上に正しい情報を記載すれば、正式な訂正として認められます。

訂正処理でNGとなる方法

領収書の訂正において、以下の方法ではNGとなります。

修正液などを使う

修正液もしくは修正テープで、間違った箇所を隠す方法では、改ざんの恐れが無限に出てきます。

つまり、発行を受けた側もしくは第三者が、いくらでも不正ができてしまうということです。
以上の理由から、正式な証憑書類として認められないことが考えられます。

消せるボールペンで書く

近年、摩擦によって消えるボールペンが普及してきました。これは、事務処理には便利なものですが、そもそも領収書の記載自体に使用するものではありません。
理由は、上記の修正液と同様で、必要な情報を消すことができれば、何度でも改ざんできてしまうためです。

また、税務調査の際には、消せるボールペンで記載された証憑書類は、消す前の記載跡を厳しくチェックされます。

領収書に抜け漏れがあった場合の対策について

もし、領収書の内容に抜け漏れがあった場合には、以下のように対策することをおすすめします。

帳簿に詳細を記載する

領収書に何らかの不備があった場合、取引内容は帳簿に詳細に記載します。
記載すべき項目は、以下のとおりです。

  • 取引先もしくは店舗、個人名などの正式名称
  • 取引きを行った日付
  • 取り扱った商品、サービス内容
  • 取引金額

帳簿にこれらの記載があれば、領収書に不備があっても原則認められるとされています。

領収書に代わる書類を用意する

上記の帳簿記入に加え、領収書に代わる書類となるもので対策を取ることも有効です。例えば、以下のようなものが挙げられます。

  • 何らかの項目に不備がある場合、裏面に詳細を記載する
  • 出金伝票を用意し、詳細を記載する
  • 請求書や納品書などで代用する
  • レシートが感熱紙だった場合、日光に触れないように内側に折って保管する

これらの対策により、領収書の不備を補完し、取引きの証拠として提示することが可能になる場合があります。

領収書そのものがない・紛失した時は


領収書の発行を受けなかった、もしくは紛失した場合にも有効な対策が存在します。

そもそも領収書が発行されない取引きの場合は、このような対策が有効です。

  • 振込みの場合は、金融機関発行の受領証を使用する
  • クレジットカード支払いの場合は、請求金額の明細を使用する
  • 冠婚葬祭にかかる出費では、案内状やのし袋の金額が記載された面をコピー、スキャンする

領収書を紛失した場合にも、上記に示した対策を取れば証憑書類に代えることが可能であるケースは多いようです。
具体的には、取引きの日付・取引先・取扱内容・金額が明確に提示できれば、領収書の代わりになりえます。

そのほか、領収書を紛失した経緯がわかる書面を発行するのも有効です。

領収書を再発行することはできるか

領収書の再発行については、基本的に取引先や店舗に申入れをすることが可能です。
ただし、この場合に注意したいのは、誤った領収書と再発行を受けた領収書は引換えとなる点、

また、誤った領収書は発行した側で保管しなければならない点です。
発行を受けた側が領収書を2枚所有していると、重複して経費を請求する疑いを持たれ、発行した側についても、不正のほう助を疑われる危険性が高くなります。

そのため、発行を受けた側は誤った領収書を返し、その領収書は発行した側が厳重に保管しておく必要があります。

まとめ

領収書の宛名には、基本的に正確に記載する必要があります。トラブルを避けるためにも、略称の使用や空欄などのないように正しく記載してください。
場合によっては宛名の記載が免除されているケースもあります。領収書に不備がある場合にも対策方法があるため、覚えておくと良いでしょう。

領収書の発行は適正なものを受けるようにし、また、発行する側も十分に留意することが大切です。

創業手帳の冊子版(無料)では、領収書をはじめとする証憑書類について詳しく解説しています。取引きの際に重要な書類のため、ぜひご参考になさってください。
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(編集:創業手帳編集部)

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