なぜリゾート地を留学先に選ぶのか。フィリピン留学の草分け社長が描くセブ島の未来 

創業手帳
※このインタビュー内容は2019年01月に行われた取材時点のものです。

株式会社QQ English代表取締役 藤岡頼光インタビュー(前編)

(2019/01/28更新)

突然ですが、読者の皆さんはフィリピンの「セブ島」にどんなイメージを持っていますか?
おそらく、多くの人が「セブ島=リゾート地」だと思っているのではないでしょうか。リゾート地として人気のあるセブ島ですが、もう一つの顔があります。それは、優秀な大学や最新のIT技術が集まる都市としての顔です。

そんなセブ島で起業したのが、株式会社QQ English代表取締役の藤岡 頼光氏です。
日本人で初めてセブ島での英会話事業を始め、熾烈な競争がある中で現在も第一線で活躍している草分け的存在の経営者です。

「元々は、バイク便事業をやっていた」と語る藤岡氏。セブ島で英会話事業をやることになったきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
今回は、藤岡氏がセブ島で英会話事業をやることになったきっかけや、現地に渡って見えたビジネスをする際のフィリピンの魅力について、創業手帳 代表の大久保がお話を伺いました。

藤岡 頼光(ふじおか らいこう) 
QQイングリッシュ代表取締役
フィリピン・セブ島に拠点を置く、英会話学校QQイングリッシュを経営。約800人の教師が、年間5000人の語学留学生と1万人を超える世界中の 生徒にオンライン(スカイプ)で授業を提供。1992年バイク便のキュウ急便設立後、2000年バイクショップのコネクティング・ロッド設立。2005年 フィリピン・セブ島に留学後、2009年オンライン英会話事業のQQイングリッシュ開始。2010年に留学事業も開始。QQイングリッシュは現在、東京、 セブ、上海、ソウル、サンパウロ、テレランで展開。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳の創業者(代表取締役)
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。
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セブ島は「教育の島」

QQ Englishのホームページより引用

大久保:英会話事業を行う地として、フィリピンを選んだ理由は何だったのでしょうか?

藤岡:実は僕自身、フィリピンのことはよく知らなかったんです。英語を使って、関わりのあったイタリア人と趣味のバイクの話がしたい。最初はそれだけだったんですよね。それでいろいろ探していたときに、フィリピンは日本から近いし、人件費も安く、授業もマンツーマンでやることができる。この3つのポイントが刺さったからです。

フィリピンの中でもセブ島を選んだ理由は、歴史がある島で、教育レベルがかなり高かったからです。
現在はマニラがフィリピンの首都ですが、もともとはセブが首都でした。日本でいう京都みたいな感じで、歴史ある島なんです。
もう一つ京都と似ているのは、様々な大学があるところ。セブ島には実は優秀な大学がたくさんあって、フィリピンの中では教育レベルがかなり高い。その分優秀な人材も豊富なんですね。

さらに、フィリピンの使用言語は、大きく分けても87言語あります。それも、大阪弁と標準語くらいの違いではなく、全部がまったく違う言語なんです。それを統治するために英語が取り入れられた経緯があるため、フィリピン人はみんな英語をはじめ3か国語以上喋ることができる。
こうした背景があり、「セブ島=英語のメッカ、教育の島」というイメージを作っていきたいと思ったのです。

セブ島はリゾート地のイメージもありますが、我々は「教育の島」だと思っています。アメリカの植民地だった時代があるので、アメリカの文化を色濃く受けており英語や最新のIT技術を学ぶこともできます。
ちなみに、マニラとセブ島は雰囲気が全然違います。マニラは都会ですが、セブ島は田舎の雰囲気が今も残っていて、個性もありますね。

大久保:なるほど。実際にフィリピンに行ってみて、現地の方々の印象はいかがでしたか?

藤岡フィリピンでは、貧富の差はすごくある一方で、前述した通り英語をしゃべれる優秀な人材がたくさんいる国でもあります。特に教育はしっかりしているし、大学まで行っている人が多い。子供が生まれると、地元がお金を出して大学に行かせようとする地域もあるくらいです。
フィリピン人は、小さい頃からそういう恩恵を受けているから、地元にもちゃんと貢献するし、周りを助けるのが好きな人種なんですよね。貧しいけれど、助け合いの精神がしっかりしている国です。

フィリピン人の性格といえば、とにかくホスピタリティがあって、穏やかなことです。大家族で生きているから、助け合いの精神があるんだと思います。

ドゥテルテ大統領就任の衝撃

大久保:フィリピンは、2016年にドゥテルテ大統領が就任したことでも注目を浴びていましたよね。藤岡さんから見て、環境に変化はありましたか?

藤岡:劇的に変わりました。それまで、フィリピンの一番の課題は、治安と汚職でした。ドゥテルテはそれの撲滅を目指して、様々な政策を打ち出しています。やり方は過激に見えますが、犯罪率が目に見えて低下しましたし、街も怖くなくなりました。その点では効果は発揮していると思います。

僕のイメージでは、彼はシンガポールのリー・クアンユー(※1)に近いと思います。彼はすごいリーダーシップを発揮し、厳しいルールを作って強い国を作っていきました。
貧困から抜け出すには強い大統領が必要ですね。僕はフィリピンがついに「アジアの病人」を脱出して、アジアの中で存在感を示せる国になるのではないかと思います。

※1
リー・クアンユー:シンガポールの政治家であり、初代首相。経済発展の為には「政治的安定」が必要であるとして、国民の政治参加を著しく制限し、独裁を正当化した「開発独裁」を長期に渡って行い、独裁政権下ながらシンガポールの経済的繁栄を実現した。

ビジネス拠点としてのフィリピンの魅力

大久保:フィリピンでビジネスをするメリットとして、どんなことが挙げられるでしょうか?

藤岡先ほどもお話ししましたが、フィリピン人は英語を喋ることができます。フィリピンではあらゆる契約書を英語でやり取りするし、英語以外の契約書は認められないくらいなんです。

さらに、日本では40歳を超えている国民の平均年齢ですが、フィリピンは24歳だということも重要なポイントです。働き盛りの若い世代が多い、ということですね。
2091年まで労働人口が増え続けるといわれていて、治安がよくなり、汚職もなくなろうとしているので、将来的にビジネスの可能性を秘めている国です。

第二次世界大戦のとき、フィリピンは日本以外の外地の中で一番の激戦区でした。終戦後に、日本がフィリピンに投資したり、開発援助もたくさんしてきたので、現在フィリピンはアジアでも有数の親日国となっています。先代の日本人が頑張ってくれたからこそ、今のフィリピンの大きな可能性へとつながっていることも忘れてはいけません。

大久保:フィリピンでビジネスを始めた当初、現地の方とのコミュニケーションなどで大変だったことはありますか?

藤岡僕は、思ったよりも人間はみんな一緒だなと感じています。要は、日本でも世界でも「ハートで付き合うこと」が大切だということです。

「フィリピン人男性はまじめに働かないから、絶対に日本人がマネジメントをやらないといけない」「フィリピン人は安い労働力としか考えてはいけない」といったイメージが日本にはあるかもしれませんし、僕もそうしたアドバイスをされてきました。しかしそれは違ったなと思います。

単なるシステムではなくハートで付き合うことが大切なのは、日本の厳しい組織でもバイク便の組織でも、どこの世界でも同じです。自分が先頭を切ってやっていくところを見せていくこと。やはりお金じゃ動かないですよね。人間関係は“人”であるかぎり、みんなで一緒になってビジネスをやることが大事だと思います。

日本でも世界でも、人は「ハートで付き合うこと」で動いてくれる

セブ島は「人材輩出センター」へ

大久保:藤岡さんはセブ島の今後の可能性をどう見ていらっしゃいますか?

藤岡:日本にいると、どこの会社もみんな人材不足だと言いますよね。タイやシンガポールで起業している人に聞いてもみんなそう言います。

セブ島には、毎年3万人もの人が英語を勉強しに来ています。英語を覚えてビジネスがしたい、グローバル企業で働きたいと思っている人材が山のようにいる場所は、世界中を見てもセブ島だけです。セブ島は、世界中の志の高い人材がいっぱい集まっている場所なんです。

日本だけじゃなく、世界中の国からたくさんの学生たちが集まっているからこそ、ものすごく可能性を秘めた人材がたくさんいる。英語のメッカでありながら、人材のメッカでもあるんです。前向きに海外に出たい、やる気のある日本人もたくさんいるので、セブは人材の輩出センターになっていくでしょう。

【後編はこちら】株式会社QQ English代表取締役 藤岡頼光インタビュー(後編)
ビジネスを上手くやる必要はない?異国でリスクを取り続けた社長の必勝方程式

(取材協力:株式会社QQ English 代表取締役 藤岡頼光)
(編集:創業手帳編集部)



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