「世界一難しい課題」に挑戦する、トーク術分析サービス「UpSighter(アップ・サイター)」
コグニティ代表取締役 河野理愛インタビュー
(2018/05/11更新)
あなたの周りに「セールストークやプレゼンテーションの上手い人」や「いつも営業成績がトップの人」はいませんか?
そのような人のトーク術を「できることなら自分のものにしたい!」と考える方は多いと思いますが、人のトーク術を盗むことはなかなか難しいですよね。
こんな「誰しもが経験したであろう葛藤」に真っ向から挑戦するのが、コグニティ株式会社の「UpSighter(アップ・サイター)」。
セールストークやプレゼンテーションの内容を分析・採点し、「この言葉を使うと成功率が上がる!」といった要素を洗い出してくれるサービスです。
今回は、コグニティ株式会社 代表取締役の河野理愛さんに「見えないスキルを見える化」する、画期的なサービスを始めた経緯や、事業を行う上での信念を伺いました。
1982年生まれ、徳島県出身。慶應義塾大学総合政策学部卒業。大学在学中の2001年にNPO法人を設立、代表として経営を行う。 2005年にソニー株式会社入社、カメラ事業を中心に、 経営戦略・商品企画に従事。2011年に株式会社ディー・ エヌ・エー入社。 2013年コグニティ株式会社を設立。
2回の倒産危機を乗り越えて生まれた「UpSighter(アップ・サイター)」
河野:「UpSighter(アップ・サイター)」は、セールストークやプレゼンテーション、人事面談など、コミュニケーションを定量評価するための解析サービスです。
会社の中での成績上位者や商材別の傾向把握を行う「UpSighter Standard(アップ・サイター スタンダード)」、従業員のトークを定点観測する「UpSighter Boost(アップ・サイター ブースト)」を展開しております。
使い方としましては、まず録音した音声データを「UpSighter」にアップロードします。そのデータは、5000本超の会話データを蓄積したデータベースをもとに分析され、トーク内容のロジック構成や情報の種類の違いがわかるように、AIによって採点されます。
また、業績上位者と比較することで、具体的な改善点をピックアップすることができます。
例えば、営業社員のスキル向上や人材開発、営業担当1人あたりの売り上げの差を縮めたいといった要望に応えることができます。
河野:技術的に目標とするサービス像は別に存在しているのですが、それを実現させるための研究開発期間中にも、ビジネスモデルを創り出す必要がありました。
そのため、3年間で何度も方向転換しながら、私たちが核としている技術を使用するサービスを考えていきました。
そんな時、今とは別のプロダクトをお客様に提案した際に、お客様からの助言で行き着いたのがこの「UpSighter」でした。
河野:これまで営業やマーケティング職などが未経験であったため、ニーズを掴む観点に乏しく、商品が売れないまま長く過ごしてしまいました。その間に、会社を2回も潰しかけたということが一番大変だった時期です。
最後の挑戦だという気持ちで臨んだ日本と海外の起業家育成アクセラレータプログラムで、お客様にヒアリングすることの重要性に気付かされ、改めて「お客様の欲しいものを作る」とはどういうことかを考えられるようになりました。
河野:これまで意思決定が難しかった「コミュニケーション起因での経営課題」に対して、たくさんの大企業様に「UpSighter」を導入いただいており、サービスの意義を感じるとともに、その難解な課題に「ともに取り組んでいける機会」をいただけていることがとても嬉しいです。
河野:正直に言うと、起業した時点では一般的なスタートアップとして必要な人材を集めることはできませんでした。多くの時間を「たった一人の役員」でありつつ、「自分だけがエンジニア」、「自分だけが営業」として過ごしましたが、こんな小さな会社でも力になってくれるリソースを求め、ハローワークやアルバイト誌での募集を行い、パートさん・アルバイトさんをたくさん採用し、今のコグニティがあります。
「一難去ってまた一難」を楽しむ
河野:単に商品を売ることができればいいという考えではなく、お客さまと一緒に創り上げていくことを意識しており、社会的貢献なども含めて議論ができる存在になれるように努力をしています。
河野:会社のミッションでもある「技術の力で、思考バイアスなき社会を。」です。
コグニティは私にとって2社目の起業になります。1社目の起業のきっかけとして、数々の経験ができたのは、年齢や場所の制約・制限に囚われることなく「挑戦してみなさい」と言って機会を用意してくれた人たちがいたからでした。
コグニティとして制限なくフェアでフラットな判断ができるツールを提供していきたい、会社自体もそうしたいと考えるのは、「バイアスのない判断をする人が増えれば、もっと機会が増える」という私自身の経験もその理由となっています。
河野:長期的な目標としては、大きな会社を創り、多くの人が働ける環境を作りたいと考えています。1度目の起業のあと、ソニー株式会社で約7年勤めるときに「世の中のためになる製品」と「たくさんの人が勤められる会社」を創っていくことの意義を強く感じました。コグニティもたくさんの人が働き、たくさんの人に愛される会社でありたい、と考えています。
河野:「一難去ってまた一難」という言葉が、起業家の日々を表す言葉であると感じます。
サラリーマンの間は苦手なことを他の人に頼むこともできますが、経営者として逃げられない・やらざる得ないことはたくさんあります。「課題・困難はいつも自分の足りないものをアラートしている」と考えるべきだと今は思えます。
それを乗り越えることが起業家・経営者としての成長なのだ、と思って困難を楽しんでほしいですね。
(取材協力:コグニティ株式会社 代表取締役/河野理愛)
(編集:創業手帳編集部)