人事考課制度を上手につくる8つのポイント(1) -何を評価すればよいのか?

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人事考課制度は「成果の実現度」「発揮能力」「服務態度」を評価して、社員のモチベーションをアップさせよう

人事考課制度を上手につくる8つのポイント -第1回 何を評価すればよいのか?

(2018/5/7更新)

人事考課制度は、いうまでもなく賃金を決定する上で最も重要なものだ。そして、賃金決定以外にも、社員教育や配置転換にも用いられ、社員のモチベーションの維持、モラルの向上にも非常に重要になる。

起業して会社が成長し、社員数が増えてくると、優れた人事考課制度が必要になってくるはずだ。これから3回にわたって、人事考課制度を作っていく上で押さえておきたいつのポイントを紹介していこう。

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人事考課制度の必要性(目的)を明確にする

人事考課制度を構築していく上では、その必要性(目的)がはっきりとしていなければ、かえって逆効果になる場合がある。まずは、目的を明確にしよう。

1. 会社の目指すべき姿、理念を明確に社員に伝える

評価制度の目的は、賃金や賞与を決めるためだけのものではない。会社の経営方針や理念を貫くために社員にどのような行動を望むか、そのための処遇をどうするかなど、評価制度を通して社員に浸透させていくことも目的の一つだ。

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2. 社員のモチベーションの維持・向上を図る

多くの会社が社員のモチベーション(やる気)をいかに上げ、会社を成長させていくかに悩んでいる。社員としても、自分の仕事の評価が高ければやる気はますます向上し、評価されなければ、やる気は萎えていく。

その評価は、賃金や賞与への反映ももちろん大切だが、それだけではなく、仕事の達成感、役割への使命感、自己の成長、家族や社会から承認してもらう、などモチベーションアップにつながるさまざまな要因がある。

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人事考課制度の8つの視点

人事考課制度は、特に法律で定めがあるわけではないので、どのような評価制度を作っていくかはそれぞれの会社の自由だが、構築にあたっては、以下の8つの視点が基本となる。

① 成果の実現度
② 発揮能力
③ 服務態度
④ 人事評価・査定
⑤ 賃金
⑥ 賞与
⑦ 配置転換
⑧ 教員訓練

さらにこれらの視点は、以下の図のように大きく3つのブロックに分けることができる。
評価制度を構築する_図1

今回は、1つめのブロックに含まれる、「人事考課制度を作る場合、社員の何を評価するのか?」を、①成果の実現度②発揮能力③服務態度の3つの視点から説明していこう。

「①成果の実現度」を評価するには

成果の実現度とは、成果に達するまでのプロセスを考慮せず、あくまでもノルマの達成度や個人あるいは組織の業績に対する評価だ。そのために使われるのが、目標管理制度といわれるものだ。

目標管理制度とは?

目標管理制度は、ピーター・F・ドラッカーが『現代の経営』で提唱したもので、社員一人ひとりが職務目標を明確に掲げて職務遂行にあたるという概念だ。

実施にあたっては上司(小さな会社であれば経営者)が部下に対して組織の年間目標と課題を説明し、部下は半年あるいは1年間の仕事上の目標を定量的・定性的両面から、できるだけ具体的にたてる。

その結果として、毎日漠然と仕事に向かうのではなくある程度目標を持って仕事に臨めるという効果が期待できる。

目標管理における上司の役割は、部下が自己統制するために役立つ目標設定や、その自己統制をサポートすることだ。決して、上司が部下の目標をノルマとして締め付けることではないことを肝に銘じてほしい。

目標管理面談の主役は部下=目標が主役ではない

人事考課制度を上手につくる8つのポイント(1)・何を評価すればよいのか?目標管理制度の一環として、「目標管理面談」がある。その主役は「目標」という事柄ではなく、「部下」という人だ。

したがって、面談の際には、「今期の目標は……」「来期の目標は……」というように、「目標」を主語にして話すのではなく、「○○さんは……」「お前は(君は)……」といったように「部下」を主語にした会話をおこなう。

もちろん、「目標」は大事だから話の中心になるのは当然だ。しかし、上司のあなたが直接目標に焦点を当てるのではなく、「今期の目標について、○○さんはどう思うのか?」「来期の目標について、君はどうしたいのか?」と部下に焦点を当てるとともに、部下自身から目標に焦点を当て、目標を設定するよう支援していく。

時には、上司である自分自身の目標に対する考えを伝える必要もあるだろう。そのときも、「私は......と思う」と伝えたうえで、「○○さんはどう思う?」と部下が自らの考えを明確にできるように質問してみよう。

目標設定のコツは3つの目標をうまく合体させること

企業理念目標設定には、売上・利益などの結果として得られる「結果目標」だけでなく、部下自身が直接コントロールしたり影響を及ぼすことができる「行動目標」も設定することが重要だ。営業職であれば、訪問件数や電話コール数などがこれにあたる。これによって、目標は部下にとってより具体的で、身近なものになっていく。

そしてさらに加えて、期末には部下自身がどんな自分になっているのかという目標、「自分目標」も設定すべきだ。自分目標の中身は能力的なものかもしれないし、人格面にかかわることかもしれない。部下自身の成長目標として「自分目標」を設定することで、目標と部下自身のつながりはさらに強いものになってくのである。

「今年度末にはどんな自分になっていたいか=自分目標」「自分ならどんな行動を行うか=行動目標」「どんな結果を生み出しているか=結果目標」と合体させることで、「目標」はより実現可能性が高まるのである。

「②発揮能力」を評価する

「人の能力」には、以下の3つがある。

  1. 保有能力
  2. 発揮能力
  3. 潜在能力

人事考課制度を取り入れるにあたって、これらの能力を正しく認識しておく必要があるだろう。なかでも特に重要なのが「保有能力」と「発揮能力」のかけ合わせ方だ。

「保有能力」とは、仕事を遂行するプロセスで必要となる知識・技能・態度など仕事の成果を生み出す源となる能力で、具体的には専門知識・業務処理・企画立案、推進力・責任感・持続性・ストレス耐性などが挙げられる。しかしこの「保有能力」には、職務を遂行するうえで必要なものとそうでないものがあることを覚えておきたい。

この「保有能力」をいかに発揮できるかというものが「発揮能力だ。「保有能力」を「発揮する能力」にするには、会社の理念や経営方針に合致させて行動力を発揮してもらうことが重要だ。 そうすることで、大きな成果を得ることができるようになる。

したがって、「保有能力」「発揮能力」評価の項目は「本当に会社の方針や理念又は事業に合致しているか」を常にチェックして、定期的に見直すことが重要だ。

「③服務態度」を評価する

服務態度の評価は、会社で仕事をしていくうえで、会社が理想とする「考え方」「心構え」「態度」を示すものだ。すぐに業績に直結する評価ではなく、「会社で仕事をしていく上で、こういう心構え、態度で仕事に取り組んでもらいたい」という点について評価する。

主な服務態度評価の切り口は4つある。

  1. 規律性・・・社内規則を守り、職場秩序を維持しようとする姿勢
  2. 責任性・・・最後までやり遂げようとする姿勢
  3. 積極性・・・自分の業務の創意工夫、自分以外の業務も課題として取り組む姿勢
  4. 協調性・・・上司・同僚・部下、他部署との関係を円滑にしようとする姿勢

会社が直接業績につながらない服務態度を評価する目的は、会社という組織で仕事をしていく以上、そこには秩序が必要であり、皆が気持ちよく仕事ができる環境づくりが必要だからだ。たとえ一人だけが仕事ができても、周りの人が不愉快な気持ちや仕事がしにくい環境になったりしては、会社としても大きなマイナスになる。

「③服務態度」を評価する服務態度評価に当たって考課者が取るべき態度は、部下の評価材料を多くの行動場面から集め、公正な立場で、社員がどのような態度の傾向があり、どのように定着した態度があるかを見抜くことだ。

誰しも態度というものは、行動する場面によって変化する。そのときの体の調子とか、相手を好きか嫌いかによっても態度は変わる。必ずしも一定した同じ態度を取るとは限らない。ある場面における部下の態度のみに着目し、それが彼の「協調性だ」「原価意識だ」と短絡的に判断することのないよう注意が必要である。

このように、人材の評価は、人間という不安定なもの扱うため、専門性が非常に高くなってきます。もし起業家自身で人事考課制度を整備することに不安があるのなら、専門家に相談するとよいでしょう。
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人事考課については、下記記事もチェック!
第二回:人事考課制度を上手につくる8つのポイント(2) -どのように評価すればよいのか?
第三回:人事考課制度を上手につくる8つのポイント(3) -評価結果をどう反映するか?

(監修:社会保険労務士事務所ALLROUND東京北 北條利男 社労士)
(編集:創業手帳編集部)

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