アイピーアライアンス 木嶋 豊|「泥だらけのダイヤに投資したい」スーパーエンジェルが投資したいベンチャーの条件(インタビュー前編)
投資家は起業家と伴走して成功を目指すもの
(2017/08/09更新)
起業にとって必要なもの。それは「資金調達」です。補助金制度やエンジェル税制など、資金調達には様々な方法がありますが、「自分に合った方法がどれなんだろう?」と頭を悩ませている起業家も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、『企業の成長戦略が10時間でわかる本』の著者で、エンジェル投資家の木嶋豊さんに直撃取材!前編では、木嶋氏が投資家として行っている活動や、そのなかで見えた成功する企業の傾向について、お話を伺いました。
株式会社アイピーアライアンス代表取締役社長。亜細亜大学都市創造学部・亜細亜大学大学院MBA教授。
1986年東京大学法学部卒業後、 日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。ハーバード大学に留学。テクノロジー系VCの取締役、投資総括常務執行役員を務め、 現在、ベンチャー投資、成長戦略支援、IPO支援を行う。20社以上を上場させたベンチャーキャピタリスト。20社のエンジェル投資家、4社の会社オーナー、15社以上の成長企業の社外役員・アドバイザー。サンフランシスコ州立大学客員教授を兼職。
起業家と伴走しながら成長を目指す投資
木嶋:かつては日本開発銀行(現日本政策投資銀行)にいて、その後はあるベンチャーキャピタルの常務をやっていました。さまざまな起業の相談を受ける中で、「これは、自分自身でも投資したほうがいいんじゃないか?」と思い立ち、エンジェル投資をやり始めました。今でも20件ほど投資しています。
起業家たちの話を聞いて、面白いと思えれば投資して、社外役員として起業家と伴走していく感じですね。ですから、案件はそんなに数多くできないんです。
粗削りの中に光るダイヤモンドの原石を探して、面白そうな案件は、僕のほうで様々な方を紹介したり、ベンチャーキャピタルの社長を紹介しています。それよりも前の段階であれば、エンジェル向けのベンチャーキャピタルに、「僕自身も出すので、あなたも出資しませんか」と話を持ち掛けたりしています。そういうふうに自分でもリスクを取りながら、企業と一緒に成長できるようにやっています。
起業家をサポートするには、幅広い知識が必要
木嶋:そうですね。投資家をやりつつ、亜細亜大学でベンチャー論を教えています。中小機構、中小企業庁の支援プログラムのアドバイザーなんかもやっており、他にもNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委員や補助金の審査員をやっています。
もともとは文系なんですが、ハーバード大留学中にUSCPA(米国公認会計士)を取得して、東北大学で工学の博士号も取得しました。そのため、技術と経理・財務の両方わかるっていうことで、ありがたいことにいろいろなところから声をかけて頂いてます。
木嶋:エンジェル投資家には、そういう人がいたら良いと思います。IT系でもバイオ系でも、多少技術的な背景が理解できて、活用できるモデルを構築することが重要です。
起業家だけでは、すごくフワッとしたものでも、文系・理系両方の観点を持っていると、「こういうシステムにしたらどうでしょう?」と助言して、事業計画の根幹から変えてあげることができます。
そこからだんだん売上が立ってくると、今度はお金のアドバイスも有効になってきます。なので、銀行員とか税理士のような方たちは、その段階で力を発揮するんじゃないかと思います。
誰もがいいねという会社は面白くない
木嶋:それは大いにあると思います。僕がいたベンチャーキャピタルでは、例えば10人中9人が良くないって言うけど、「僕は絶対にこれが面白いと思う」と確信をもって投資したものは、爆発的に成長しているものが多かったんです。
さらに言うと、そういう案件を目利きして選ぶだけじゃなくて、より良くするために起業家に寄り添ってサポートしてあげる。そうすると、アイデアが良いが計画がダメなものが、結果として良くなっていきます。
木嶋:そうですね。10人のうち9人が「いいね」って言う案件はすごくきれいにまとまっていて、ビジネスモデルもしっかりしています。
そういうのも良いですが、「これ、本当に儲かるの?」とつい聞いちゃうようなビジネスモデルにもダイヤの原石があって、サポートすることでそれを磨き上げていけば、非常に革新的な起業ができると思います。
木嶋:おっしゃる通りです。光っているダイヤは誰にとっても光ってますから、私はあまり興味がないんですね。
木嶋:そうです。常識を持った人に説明しても理解されないような世界かもしれないので、自分の財産の中で投資するほうが有利かもしれないですね。
(取材協力:株式会社アイピーアライアンス/木嶋豊)
(編集:創業手帳編集部)