債権回収の話をしよう!田中弁護士の白熱回収教室(2)
第2回:「チョイヤバ」な債権回収は内容証明郵便で!内容証明郵便の基本を理解する
今回は、ちょっとヤバイ(チョイヤバ)な状態になった債権回収について講義する。
前回説明したような電話での話し合い等で、回収の見込みがつかない場合には、ただ待っていても回収できる可能性は低い。
【関連記事】債権回収の話をしよう!田中弁護士の白熱回収教室(1) | 第1回:早期の督促対応が債権回収の可能性を高める
よって、このようなちょっとヤバイ(チョイヤバ)な債権回収は、原則として直ちに次のステップである「内容証明郵便による督促」に移るべきである。
そもそも内容証明郵便とは何か?
内容証明という言葉は知っていても、そもそも内容証明郵便とはどのようなものか詳しくは知らない人が多いだろう。
内容証明郵便とは、端的にいえば、「そんな内容の書類を受け取っていねぇよ!」ということを相手方に言わせないための証拠となる郵便物の郵送方法である(※1)。
内容証明郵便は、日本郵便が提供しているサービスで、一般的には、相手方に到達したことも証明してもらえる配達証明を合わせて付けることにより、
-
- ある内容の書面が
- 特定の日にちに
- 特定の住所に到達したこと
を郵便局が証明してくれるのである。
これを送っておくと、裁判の際に、相手方が「そんな内容の書類受け取ってねぇよ!」という言い訳ができなくなるのである。ヤッタネ!
内容証明郵便で送る法的意味は薄い?
内容証明郵便は、相手方が受け取ったことの証拠になるという点に意味があるので、法的意味としては、相手方が受け取ったことを証明したい場合に内容証明郵便を使うことになる。
相手が受け取ったことを証明したい場面としては、例えば、
- 消滅時効の完成を一時的に防ぐ(細かい説明は、今回は割愛する)
- 契約を解除する場合
といった場面が想定されるが、これらは債権回収とはあまり関係のない場面である。
よって、債権回収の場面についていえば、督促状を内容証明郵便で送ることに法的な意味はないことが多いだろう。
「ヘイヘイ!内容証明郵便の前に恐れおののけぃっ!」と考えた調子に乗りやすい人は少しガッカリして欲しい。
内容証明郵便で送るメリット・デメリット
内容証明郵便で送るメリット
債権回収の場面においては、督促状を内容証明郵便で送ることは、法的な意味よりも、心理的なプレッシャーをかけるといった点の意味合いが大きい。
まず、内容証明郵便は、1頁の最大文字数が定められている等、普段見慣れない特別な様式であるため、見た瞬間、特別な書類だとわかる(※2)。
内容証明 ご利用の条件等|日本郵便
そのため、受け取った相手側(債務者)に自社(債権者)が本気で債権の回収にかかっているということを示す意味があり、相手側も、このまま支払をしない場合には、訴訟等の手段に出られる可能性を認識することになる。
特に、弁護士名義の内容証明郵便の請求書を送付する場合には、よりその意味合いが強いので、担当者の名義ではなく顧問弁護士の名義で送るとベターだ。
一般に、弁護士名義で内容証明郵便により書類を送ったにもかかわらず、相手方がこれに応じない場合には、訴訟を提起する等、弁護士が次のアクションを採る可能性が高いことは知っておいてよいだろう。
また、通常の郵便物とは区別されるため、受け取った側では、担当者のレベルでなく社長が目にする可能性が高くなる。その意味で、可能であれば、送付先の箇所には、相手方の会社名だけでなく、社長の名前も書いておくとよいだろう。
例えば、担当者がノンビリ屋のウッカリさんで未払いを軽く認識しており、社長との認識にズレがある場合、社長が内容証明郵便で送られてきた書類を見れば、支払ってくるということもありうる(きっと担当はその後社長にお灸を据えられることだろう)。
内容証明郵便で送るデメリット
一方で、デメリットとして、対決姿勢が鮮明になってしまうという点が上げられる。
例えば、相手方が、提供された仕事の出来等に不満があるために、全額の支払をするか悩んでいたところに内容証明郵便で督促状が届いた場合等には、態度を硬化させることがある。冷静に考えれば、払わなければいけないはずのものであっても、別件で文句があると、かえって態度を硬化させてしまうこともあるのである。
債権回収も人対人のコミュニケーションだ。「だって、人間だもの~」という某詩人的感覚は忘れないようにしたい。
また、相手方が会社を閉めること等を考えているような状況の場合、回収にかかろうとしていると知られてしまうことにより、預貯金等の財産を隠されてしまうといったデメリットもある(この点については、民事保全に関する講義で説明する)。「ヘイヘイ!内容証明郵便を恐れて逃げ惑えぃ!」「ではお言葉に甘えて。。。」と逃げられるのも困る。
これらのデメリットが予想される場合には、すぐに内容証明郵便で送るべきか、立ち止まって考える必要がある。
次回は、内容証明郵便で送る督促状を作成する際に、注意すべきポイント等を紹介しよう。
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(監修:田中尚幸 弁護士)
(創業手帳編集部)
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