白色申告での赤字はどうなる?青色申告との違いや確定申告の必要性を解説
白色申告で赤字になったら確定申告は必須ではない

白色申告で事業を行っている個人事業主が赤字になった場合、「確定申告はしたほうがいいのか」「そもそも申告しなくても問題ないのか」と悩む人も少なくありません。
赤字=税金がかからないから不要、と思われがちですが、実際には状況によって対応が分かれます。
白色申告は青色申告と比べて手続きが簡単な一方、赤字に関する扱いやメリット・注意点を正しく理解していないと、後から不利になるケースもあるでしょう。
この記事では、白色申告で赤字になったらどうなるのか、青色申告との違いや確定申告の必要性について解説します。
【完全無料】令和7年分の確定申告がわかる!「確定申告ガイド」
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
白色申告で赤字になった場合は税金はかからないが注意点がある

まず理解しておきたいポイントとして、個人事業主が赤字になった場合は所得税などの税金を納める必要がありません。
例えば、所得税額の場合、課税される所得金額×税率-税額控除から求められます。この「課税される所得金額」は収入から必要経費と所得控除を差し引いたものです。
また、個人事業主になると毎年1年間に生じた所得金額と納めるべき税額を確定させる「確定申告」を行わなければいけません。
しかし、納めるべき税金がない赤字決算の個人事業主は、確定申告を行わずに済みます。
ただし、いくら税金が発生していないからといって確定申告が不要だったとしても、確定申告は行ったほうが良いでしょう。
【完全無料】令和7年分の確定申告がわかる!「確定申告ガイド」
白色申告の赤字は繰り越せる?

法人だと赤字になっても翌年度以降に繰り越し、将来的に得られる黒字部分と相殺できますが、白色申告だとどうなるのでしょうか。
原則赤字は繰り越せない
結論からいえば、白色申告だと原則赤字を繰り越せません。たとえ赤字分の損失が計上された場合でも、その年で切り捨てられることになります。
もし赤字を繰り越せた場合は、翌年度以降の黒字分で相殺できるため、課税所得額を減らすことができます。これにより、翌年度以降に税負担を抑えることが可能です。
白色申告は原則赤字を繰り越せないため、税負担の軽減につながらないことを知っておいてください。
特例で繰り越せる場合もある
白色申告だと原則赤字は繰り越せないものの、特例によって繰り越せる場合もあります。例えば、被災事業用資産の損失や変動所得の損失です。
被災事業用資産の損失は、事業用資産・棚卸資産が火災や地震、風水害などの影響を受けてしまい、損失を被ることを指します。
一方、変動所得の損失とは、変動しやすい所得で損失を受けた場合です。例えば、原稿料や著作権使用料、漁業・養殖など収入が不安定なものは変動所得に該当します。
また、自然災害や盗難、横領などの被害から損害が発生した場合、雑損控除として一定の金額を差し引くことができ、年度内に控除しきれない場合は繰り越しが可能です。
【完全無料】令和7年分の確定申告がわかる!「確定申告ガイド」
白色申告で赤字でも確定申告をすべき理由

白色申告の場合、事業が赤字であれば必ずしも確定申告が義務付けられているわけではありません。
しかし、赤字であっても確定申告を行うことで、金銭面・実務面の両方でメリットを得られるケースがあります。
ここでは、白色申告で赤字でも申告をしておくべき主な理由を解説します。
納め過ぎた所得税の還付を受けられる
事業所得が赤字であっても、給与所得や報酬から源泉徴収されている所得税がある場合、確定申告をすることで納め過ぎた税金の還付を受けられる可能性があります。
例えば、副業として事業を行っている場合や、途中まで会社員だったケースでは、赤字分をほかの所得と相殺することで、税額が下がることがあります。
申告をしなければ還付は受けられないため、少しでも戻る可能性がある場合は確定申告をしておくほうが有利です。
ただし、事業所得で損失になった場合でも、以下の所得税については還付されない可能性が高いので注意が必要です。
-
- 預金の利子など
- 土地・建物などの譲渡所得
- 株式などの譲渡所得
- 山林所得
所得証明として活用できる
確定申告を行うことで、所得金額を公的に証明できるようになります。
赤字であっても、申告書の控えや市区町村が発行する所得証明書は、各種手続きで必要になることがあります。
所得証明書は事業用融資の審査や住宅の賃貸契約、ローンやクレジットカードの審査などで収入状況の証明を求められることが多いです。
特に赤字の状況を脱するために、事業用融資を利用したいと検討している人は、確定申告をして所得証明書を受け取れるようにしてください。
国民健康保険料の軽減措置を受けられる可能性がある
国民健康保険料は、所得に応じて計算する「所得割」と、加入者全員が負担する「均等割」があります。
所得割は前年度の所得をもとに計算されるため、確定申告で赤字を申告しておけば、保険料の軽減・減免を受けられる可能性があります。
もし確定申告をしていなかった場合は所得を把握できず、軽減措置が適用されない可能性もあるため注意が必要です。
非課税証明書を受け取れる
赤字で所得税や住民税が非課税になる場合、確定申告を済ませておけば地方自治体から「非課税証明書」を発行してもらえます。
非課税証明書とは、住民税が非課税であることを証明するための書類です。内容は課税証明書とほとんど変わらないものの、課税額が0円の場合にのみ発行できます。
非課税証明書では特定の給付金や支援制度、行政サービスの申請に必要な場合があります。
将来受ける可能性がある手続きをスムーズに進めるためにも、確定申告をして非課税証明書を受け取れるようにしておきましょう。
【完全無料】令和7年分の確定申告がわかる!「確定申告ガイド」
赤字で確定申告を行う場合の流れ

赤字になってしまった場合、確定申告はどのように進めていけば良いのでしょうか。ここでは、赤字で確定申告を行う場合の流れや、通常の確定申告との違いなどを解説します。
1.収支内訳書を作成する
赤字になった場合の確定申告は、通常の確定申告と同様に確定申告書を作成し、税務署へ提出する必要があります。また、白色申告者の場合は収支内訳書も必要です。
収支内訳書は、申告する所得の種類によって書式が変わります。事業所得のみであれば「一般用」の様式を使って作成します。
- 【1ページ目の項目】
-
- 氏名・住所などの基本情報
- 収入金額
- 売上原価
- 経費
- 専従者控除(同じ事業を行う家族がいる場合)
- 給料賃金の内訳(従業員がいる場合)
- 税理士・弁護士などの報酬、料金の内訳(税理士・弁護士などに報酬を支払っていた場合
- 事業専従者の氏名など(専業従事者がいる場合)
- 【2ページ目の項目】
-
- 売上(収入)金額の明細(売上先の名称や所在地、登録番号、売上金額など)
- 仕入金額の明細(仕入れ先の名称や所在地、登録番号、仕入金額など)
- 減価償却費の計算
- 利子割引率の内訳(金融機関のものは除く)
- 地代家賃の内訳
- 本年中における特殊事項
収支内訳書をスムーズに作成するために、日頃から帳簿に日々の取引きについて記録しておくのがおすすめです。
帳簿は決められたフォーマットがないため、自分にとってわかりやすい形で記録してください。
2.確定申告書を作成する
収支内訳書の作成が完了したら、次に確定申告書を作成します。
事業所得で赤字になった場合、確定申告書第一表の「収入金額等」の「事業」の部分と、「所得金額等」の「事業」の部分に金額を記入します。
所得金額がマイナスになる場合は、数字の頭部分に△を付けてください。
ほかにも第一表には氏名や住所、個人番号などの基本情報に加え、「種類」の欄にある「損失」に丸を付けます。
第二表では氏名・住所のほかに、所得の内訳や雑所得、総合課税の配当所得・譲渡所得、一時所得に関する事項を記載します。
国や地方公共団体などから補償金を受け取ったり、マイホームを売却して利益・損失があったりした場合は「特例適用条文等」に、専業従事者がいる場合は「専業従事者に関する事項」も記入してください。
さらに、損失申告用の第四表にて、氏名や住所、損失額または所得金額を記入します。
【完全無料】令和7年分の確定申告がわかる!「確定申告ガイド」
青色申告なら赤字を繰り越せる

白色申告だと特例に該当する以外は赤字を繰り越すことができませんが、青色申告だと赤字を繰り越すことが可能です。
青色申告で赤字を繰り越す制度について詳しく解説します。
損失を3年間繰り越せる
青色申告は、白色申告とは異なり複式簿記での記帳をすることで、確定申告を行うと特別控除や家族従業員の給料を経費にできるなど、様々な優遇措置が認められています。
その中の1つが、赤字を出しても翌年以降3年間は繰り越しが可能になる制度です。
例えば、100万円の赤字が出て、翌年度に30万円の黒字、翌々年度には120万円の黒字が出たとします。
100万円の赤字を翌年度に繰り越したことで黒字の30万円が相殺され、赤字分は70万円となり、この年も課税所得ゼロになるため所得税・住民税はかからないことになります。
さらに70万円を繰り越したことで、120万円-70万円=50万円の黒字となり、税負担を大きく軽減しつつ赤字を解消することが可能です。
損失の繰り戻しが可能
青色申告だと損失の繰り越しだけでなく、「繰り戻し」をすることも可能です。繰り戻しとは、前年に遡って所得税の還付を受けられる制度を指します。
例えば、今年赤字となってしまった場合に、前年の黒字分と相殺することが可能です。前年の黒字と相殺することで所得税の還付を受けることもできます。
還付対象は所得税のみであり、住民税や事業税には適用されないものの、税負担を抑えるためにも活用したい制度です。
なお、繰り越しと繰り戻しによる還付は同時に両方を利用することはできず、どちらか一方を選択することになります。
シミュレーションをしてより節税効果の高いほうを選ぶようにしてください。
【完全無料】令和7年分の確定申告がわかる!「確定申告ガイド」
白色申告から青色申告にしたほうがいい人の特徴

白色申告は手続きが簡単で始めやすい一方で、税制上のメリットは限定的です。
事業の状況や今後の見通しによっては、青色申告へ切り替えることで大きなメリットを得られるケースも少なくありません。
ここでは、白色申告から青色申告にしたほうがいい人の特徴を紹介します。
事業収入が少ないまたは赤字の人
一見すると、収入が少ない人や赤字の人にとっては、青色申告のメリットが少ないように思えるかもしれません。
しかし、上記でも紹介したように、青色申告では赤字を最長3年間繰り越せるため、将来黒字になった際に所得と相殺できます。
白色申告では赤字の繰越ができないため、今は利益が出ていなくても、今後事業の成長が見込まれる場合は、早めに青色申告へ切り替えておく価値があります。
また、繰り戻しに関しても、赤字となった年の前年も青色申告で確定申告をしている必要があるため、早めの切り替えがおすすめです。
節税メリットを受けたい人
青色申告における魅力の1つに、税制優遇を受けられる点が挙げられます。
例えば、要件を満たすことで最大65万円の青色申告特別控除を受けられるほか、家族に支払った給与を必要経費にできる「青色事業専従者給与」も利用可能です。
また、1つあたり30万円未満の少額減価償却資産を、購入または使用した年度にまとめて経費に計上できる「少額減価償却資産の特例」も適用されます。
白色申告と比べて課税所得を大きく抑えられる可能性があるため、税負担を軽くしたい人には青色申告が向いています。
税務調査を極力避けたい人
青色申告は帳簿付けや申請手続きが必要ですが、正しく記帳し、期限内に申告を行っていれば、税務署からの信頼性は高まりやすいといわれています。
記帳が曖昧になりがちな白色申告よりも、日々の取引きを整理して管理している青色申告のほうが、結果的に税務調査のリスクを下げる効果が期待できます。
もちろん、青色申告でも調査対象になる可能性はありますが、白色申告よりも対象になりにくいため、極力避けたい人には青色申告への切り替えがおすすめです。
会計ソフトを導入している人
すでに会計ソフトを導入している、またはこれから導入を検討している人は、白色申告から青色申告への切り替えによる負担が比較的少なくなります。
最近の会計ソフトは、日々の取引入力から複式簿記への自動変換、決算書・青色申告決算書の作成まで、一連の作業をサポートしてくれる場合もあります。
そのため、会計・税務の専門知識に自信がない場合でも、正確な帳簿管理がしやすくなり、青色申告の要件も無理なく満たせるようになるでしょう。
記帳の手間を抑えつつ、節税メリットをしっかり享受したい人にとって、会計ソフトの活用は大きな後押しとなるはずです。
【完全無料】令和7年分の確定申告がわかる!「確定申告ガイド」
まとめ・白色申告だと赤字は繰り越せないため将来を見据えた判断が重要
白色申告で赤字になった場合、確定申告は必須ではないものの、還付の受取りや各種証明書の取得、保険料の軽減など、多くのメリットがあります。
一方で、白色申告では赤字を翌年以降に繰り越すことができないため、将来的に事業の黒字化が見込まれる場合は不利になる可能性もあります。
節税効果を高めたい人や事業を継続・拡大していく予定がある人は、青色申告への切り替えも含めて早めに検討することが大切です。
現在の状況だけで判断せず、今後の事業計画を踏まえた上で、自分に合った申告方法を選びましょう。
(編集:創業手帳編集部)







