消耗品費と雑費の違い|具体例や仕訳のテクニックまで紹介
似ているけど違う!消耗品費と雑費の違いに注意!
ビジネスでは様々な経費が発生するため、いつ・何にいくら使ったのかなどの情報を帳簿で管理することが大切です。
仕訳で使用する勘定科目には、消耗品費と雑費があります。この2種類は似ているようで対象となる経費が異なるため、違いを理解して仕訳を行わなければなりません。
そこで今回は、消耗品費と雑費の違いや該当する経費例、仕訳例・テクニック、経費計上の注意点について紹介します。
消耗品費と雑費の定義を理解し、正しく仕訳をするための参考にしてください。
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この記事の目次
「消耗品費」と「雑費」の違いは?
消耗品費と雑費の定義と、両者の違いについて解説します。
消耗品費とは
消耗品費は、消耗性のある備品の購入費に対して使われる勘定科目です。
消耗性のある資産で、使用可能期間が1年未満、もしくは取得価額10万円未満の什器備品であれば消耗品費として仕訳できます。
使用可能期間1年未満とは、1年以内に買い替えが必要な消耗品のことを指します。
また、1年以内に買い替えない消耗品でも、購入費が10万円以下であれば消耗品費として計上可能です。
取得価額10万円未満という判断は、適用している消費税の経費処理方式によって異なります。税抜経理方式であれば税抜価格、税込経理方式なら税込価格で判断します。
雑費とは
雑費は、ほかの勘定科目に分類できない少額かつ一時的に発生した経費に対して使われる勘定科目です。
対象は明確に定められておらず、あらゆる経費が雑費として扱われる傾向にあります。そのため、迷った時は雑費で計上しようと考えてしまう人も少なくありません。
しかし、帳簿付けは企業のお金の流れを正確に把握することが目的であるため、支出管理において雑費の勘定科目は慎重に使用することが求められます。
消耗品費と雑費の主な違い
消耗品費の場合、使用可能期間1年未満か取得価額10万円未満の消耗性がある資産が定義です。
そのため、要件を満たしていれば雑費ではなく、消耗品費として計上するのが基本です。
一方、雑費は基本的に少額かつイレギュラーな支出に対して用いるという点が消耗品費との違いといえます。
消耗品費と雑費の具体的な経費例
消耗品費と雑費には定義があるものの、対象となる経費が多く、具体的なイメージが掴みにくいかもしれません。
ここでは、参考として消耗品費と雑費に該当する経費の例を紹介します。
消耗品費に該当する経費の例
消耗品費は、使用するうちに使い切ってしまう消耗品の購入費が対象です。具体的には、以下のものが消耗品に該当します。
-
- ノート・ボールペンなどの文房具
- コピー用紙
- トナー
- ペンチや軍手などの工具類
- レジ袋や包装紙など包装材料
- 社用車のガソリン
- 清掃用品 など
上記のようなものは、消耗品以外の勘定科目で計上しても問題はありません。
業務で使用する文房具やコピー用紙などは事務用品費として計上できます。
個人事業主や企業によって使用する勘定科目は異なるため、どの範囲まで消耗品費として計上するのか決めておいてください。
雑費に該当する経費の例
雑費として計上できる具体的な経費例は以下のとおりです。
-
- 振込手数料など少額の手数料
- OA機器や事務用品など一時的なレンタル代
- クリーニング代
- 粗大ごみの処分費
- 自治会費
- 引越し代
これらのもののように、ほかの勘定科目で分類できない経費は雑費とすることが可能です。
消耗品費と同じく明確な対象が決まっていないため、どのような経費にするかを定めておくことが大切です。
消耗品費と雑費の使い分けのポイント
消耗品費と雑費はあらゆる経費に対して使える勘定科目であるため、どちらを使い分ければいいのか悩む人もいるかもしれません。
ここでは、消耗品費と雑費を使い分けるために意識したいポイントを紹介します。
消耗するかどうかで判断
消耗品費と雑費の判断は、使用することでなくなるかどうかを基準に考えてください。悩んだ時は、以下のポイントから判断してみてください。
消耗品費 | 雑費 | |
---|---|---|
ものorサービス | 目に見えて形があるもの | 目に見えず形がないサービス |
使用頻度 | 頻繁に利用、出費が発生する | 一時的に出費が発生する |
金額 | 10万円以下 | 少額 |
トイレットペーパーやボールペンは目に見えるものであり、また日常的に使用するものであるため、消耗品とみなされます。
しかし、代金の振込で発生した手数料は目に見えないものであり、一時的に発生する出費であるため雑費にできます。
金額と事業との関連度による判断
金額と事業との関連度からどちらで計上するのか判断する方法もあります。
金額から判断する場合、「10万円以内で頻繁に使うものは消耗品費、それ以外は雑費」とすれば、難しく考えずに仕訳できます。
また、事業に直接関係する物品かどうかも、消耗品費と雑費を判断する大事なポイントです。事業で直接関係するものは消耗品、間接的なものは雑費としてください。
例えば、「業務で使う文房具は消耗品費、事務所のクリーニング代など業務との関連性が低い費用は雑費」と判断します。
金額と事業の関連度から判断する場合、雑費が多くなりやすい点に気を付けてください。
消耗品費と雑費の仕訳の違い
すべての取引きを帳簿に記録する仕訳は、企業のお金の流れを管理する上で欠かせないものです。
消耗品費や雑費が発生した際、どのように仕訳をするのか理解しておく必要があります。続いては、消耗品費と雑費の仕訳例からそれぞれの違いを紹介します。
消耗品費の仕訳例
消耗品5,000円を現金で購入した場合の仕訳例は以下のとおりです。
借方 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 5,000 | 現金 | 5,000 |
上記の例では、消耗品費が増えて、現金が減った状態になるため、借方科目は「消耗品費」、貸方科目は「現金」になります。
また、借方・貸方には購入代金の5,000円を記載します。仕訳では、借方・貸方の金額が同一になるのがルールです。
クレジットカード払いは決済の時点で代金が未払いとなっているため、貸方科目には「未払い」を使用します。この場合、決済が完了したら、その分の仕訳も必要です。
雑費の仕訳例
3,000円の一時的なサービスの利用や備品を購入し、現金で決済した場合の仕訳例は以下のとおりです。
借方 | 貸方科目 | ||
---|---|---|---|
雑費 | 3,000 | 現金 | 3,000 |
上記の例では、雑費が増えて、現金が増えた状態となります。
そのため、借方科目には「雑費」、貸方科目には「現金」と記載します。代金も借方・貸方それぞれ同額で記載してください。
なお、事務所の引越し代も雑費として扱えます。事務所を別の事務所に移転するのであれば、上記のような仕訳で問題ありません。
しかし、自宅と事務所を兼用している個人事業主の場合、引越し代の一部を雑費として計上する必要があります。
引越し代6万円を現金で支払い、仕事用の荷物量が30%、個人的な荷物が70%としたケースの仕訳は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
雑費 | 18,000 | 現金 | 5,000 |
事業主貸 | 42,000 |
全体の荷物量に対して、仕事用の荷物30%分は「雑費」、個人的な荷物70%分は「事業主貸」として、それぞれの割合に応じた金額を借方科目に記載します。
借方科目は「現金」となり、引越し代の金額をそのまま記載します。借方の合計金額と貸方金額が一致すれば正しい仕訳です。
このように、経費にプライベートの支出が含まれる際は仕訳方法に注意してください。
消耗品費と雑費の経費計上における注意点
消耗品費と雑費を正しく経費計上するために、注意したいことがあります。それぞれの注意点を紹介します。
消耗品費を計上する際に注意すること
消耗品費を計上する際の注意点は以下のとおりです。
いくらまで計上できるか
基本的に消耗品費として計上できるのは取得価額10万円未満です。取得価額10万円以上の物品は固定資産として処理することになるので注意してください。
固定資産は購入した年度に代金のすべてを計上するのではなく、減価償却費として各年度分の費用を計上することになります。
しかし、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」が適用される場合、30万円未満であれば購入代金を購入した年度に全額計上することが可能です。
特例を利用できるのは、常時使用する従業員数が500人以下(2020年3月3日までの取得については1000人以下)で、青色申告をしている中小企業・農業協同組合などとなっています。
なお特例には期限があり、2026年3月31日までに消耗品を取得して経費に計上しなければ適用されません。(2024年9月現在)
消耗品費にできないもの
消耗品費として扱えない経費について把握しておくことも大切です。消耗品費にできない経費とは、建物や建築物、機械などが該当する減価償却資産になります。
減価償却資産に該当する資産とは、取得価額10万円以上、使用可能期間が1年以上という要件を満たしたものです。
また、材料費など、製造のための物品購入費は棚卸資産となります。
棚卸資産は製造・製作に必要な資産であるため、仕掛品などの勘定科目で処理する必要があり、消耗品費にはできません。
どのような用途で使われる物品なのか考慮して、勘定科目を使い分けるようにしてください。
雑費を計上する際に注意すること
雑費を計上する際の注意点は以下のとおりです。
雑費の使用が多いと税務調査のリスクが上がる
雑費を多用しすぎると税務調査のリスクが高まることに注意が必要です。
雑費は便利な反面、経費の内訳が不明確な決算書となってしまい、税務署に悪い印象を与えてしまう可能性があります。
雑費は経費の5~10%程度が目安といわれています。過度に使いすぎないように、支出に合わせて適切な勘定科目を使って処理することを心がけてください。
「とりあえず雑費」をしすぎない
雑費の多用を防ぐためには、何でも雑費にしないことが大切です。金額が大きい出費や頻繁に出費するものに対しては、ほかの勘定科目を使うようにしてください。
例えば、定期的にオフィスのクリーニングサービスを利用しているのであれば、掃除費として計上できます。
また、インターネット関係のサブスクリプションサービスであれば、通信費として計上可能です。
雑費以外に使える勘定科目がないか検討し、独自のルールを設けて経費を処理してください。
経費計上の実務的なテクニック
最後に、消耗品費や雑費を経費計上する際に役立つ実務的なテクニックを紹介します。
補助科目を使う
補助科目とは、勘定科目の内訳を把握できるように、より細かく区分した科目です。どのような科目を設定するかは自由です。
補助科目を活用することで、消耗品費や雑費の内訳を明確にできます。
補助科目例には、以下のものが挙げられます。
-
- 事務用品
- 作業用品
- 広告宣伝用印刷物
- 包装材料
- パソコン用品
多く処理する経費に対しては、補助科目を設定するのがおすすめです。
摘要欄を使う
帳簿や伝票の「摘要欄」を活用するのもおすすめです。摘要欄は、取引内容について詳しく書かれたメモ欄のような項目になります。
購入したものや購入数、店舗名、決済方法など、残しておきたい情報を記載します。
消耗品費や雑費を処理する際に、何をどのくらい購入したのか記録すれば、経費の内訳を明確にすることが可能です。
取引内容を具体的に記録することは、企業の経理体制に対する信用度を高める効果もあります。
経費計上のルールを作り統一する
雑費の多用を防いだり、消耗品費として適切に処理したりするためには、経費計上のルールを策定することが大切です。
どのような経費をどの勘定科目で仕訳をするのかルールが明確であれば、悩まずに処理できます。
新たな経費が発生するたびにルールを見直し、使用する勘定科目を統一してください。
まとめ・消耗費と雑費の違いを把握して正確に仕訳をしよう
今回は消耗品費と雑費の違いや仕訳例、経費計上での注意点などを紹介しました。明確なルールはありませんが、消耗性の有無や金額などによって仕訳を使い分ける必要があります。
なお、雑費を多用すると税務調査のリスクが高まるため、経費計上に関する独自ルールを設け、悩まずに処理できる体制を整えるようにしてください。
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(編集:創業手帳編集部)