株主名簿の記載事項や管理方法は?必要な場面や類似書類との違いも解説!

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株主名簿は株式会社設立時に必ず作成する書類のひとつ!


株主名簿は、株式会社を設立する際に作成する書類です。会社法で作成が義務付けられているので、作成しなければなりません。
また、設立後に何らかの変更があった場合は、適宜更新する必要もあります。

今回は、会社を設立する際に必要となる株式名簿の記載事項や管理方法などについて詳しく解説していきます。

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株主名簿とは


株主名簿は、株主に関する情報が記載されている書類です。会社法に基づき、全ての株式会社が作成する義務があります。
株式名簿は会社を設立する時だけではなく、法人設立届出書を出す時にも一緒に提出しなければいけません。

また、相続や譲渡で株式が移動した場合も、株式名簿の情報を更新する必要があります。
株式名簿の整備を怠ると、会社法第976条に基づき、100万円以下の過料が科せられる可能性があるので注意してください。

株主リストや株主名簿記載事項証明書との違い

株主名簿に似たものとして、株主リストや株主名簿記載事項証明書が挙げられます。それぞれにおける相違点について確認していきましょう。

株主名簿 株主リスト 株主名簿記載事項証明書
作成目的 株主情報の管理を行うため 法務局に提出するため 株主名簿の記載内容の証明するため
記載事項 ・株主の氏名もしくは名称
・株主の住所
・株主の有する株式の数
・株主が株式を取得した日
・株券の番号(株券を発行しない会社の場合は不要)
・株主の氏名もしくは名称
・株主の住所
・株主が所有する株式数
・議決権数
・議決権数の割合(株主全員の同意もしくは種類株主全員の同意を必要とする場合は不要)
・株主の氏名もしくは名称
・株主の住所
・株主が所有する株式数
・株式を取得した日付
・代表取締役の署名と記名押印

株主リストとの違い

法人・商業登記を利用した違反や犯罪を防ぐために、株主リストの作成が義務付けられています。
犯罪や違反を未然に防ぐために作成する書類で、株主名簿と同様に株主に関する情報を記載します。登記変更や変更申請を行うためにも必要な書類です。

株式名簿と株主リストとの違いは、株主リストは議決権数を記載しなければいけないという点です。
場合によっては議決権割合を記載することもあります。また、登記申請を行う時は株主総会の議事録とともに提出しなければなりません。

株主名簿記載事項証明書との違い

株主名簿記載事項証明書は、株券不発行会社で株券の譲渡を行う場合に必要となる書類です。
株主名簿記載事項証明書には、株主名簿の情報や代表取締役または代表執行役の署名・記名・押印が記されます。
株主は、企業に対してこの書類の発行を依頼でき、株主名簿記載事項証明書によって譲渡する側が株券の所有者であることを証明できます。

株主名簿に記載する内容


株主名簿には記載すべき内容があります。次は、株主名簿を作成する際に理解しておくべき記載内容について解説していきます。

株主の氏名・名称と住所

株主が個人の場合は氏名、法人の場合は法人の名称を記載します。また、住所も忘れずに記載してください。法人の場合の住所は、本店の所在地となります。

株主となる法人は、一般会社だけではありません。ベンチャーキャピタルなどの投資会社やファンドも含まれます。
株主が1人しかいなければわざわざ必要ないと考えるかもしれません。しかし、たとえ1人でも作成が義務付けられているので注意が必要です。

株主が所有している株式の数とその種類

株主の氏名ごとに所有する株式数を記載する時、普通株式の場合はその旨を記載したうえで所有株式数を記載する必要があります。
「普通株式50株」といったように記載してください。

2種類以上の株式(種類株式)を発行している会社(普通株式を含む)の場合は、種類別に株式数を記載してください。
種類株式には、普通株より配当を優先的に受けられる優先株、配当などの制限がある劣後株などがあります。

種類株式の記載方法は、甲種優先株式、乙種優先株式、丙種優先株式、第1種優先株式などです。
それぞれの会社が独自に定めた数字やアルファベットが入るため、会社ごとに記載方法が異なります。

株主が株式を取得した日付

株主が株式を取得した日付は、それぞれの株主が代金の払い込みを完了した日とするのが一般的です。
なぜなら、払い込みの完了によって株式を取得したとみなされるためです。

株券番号(株券発行会社のみ)

株券を実際に発行している株券発行会社であれば、株券番号を明記する必要があります。株券不発行の場合は、備考に「株券不発行」と記載しなければいけません。
2006年の会社法改正で、日本国内では株券不発行会社が原則となっています。
つまり、株券を発行しているのは、定款に株券発行会社であることを記載している会社のみということです。
そのため、基本的には「株券不発行」と記載するという認識で問題ありません。

会社法が再度改正されれば、変更となる可能性も考えられます。法的に問題のない会社経営を行うためには、法改正の情報も適宜チェックしておくと安心です。
2006年以降改正が行われていないこともあり、何らかの理由で会社法が再度改正される可能性もないとは言い切れません。

質権設定がある場合は質権者の情報や目的も盛り込む

会社法第146条では、保有する株式に質権設定ができると定められています。
質権は、債権者が債務に対して設定できる担保物権を指します。返済ができなかった時に売却し、売却価額から債務を返済するというものです。

株式に質権を設定している場合は、質権者の氏名や住所、質権設定を行っている株式の数も株式名簿への記載が必要です。
質権設定を行うのであれば、誰が所有する株式のうち何株に質権設定をするのか、といった点を明確にすることが重要になります。

また、対象となる会社や第三者が法的に主張できる対抗要件に備え、対象会社の株式名簿にあなたの会社名や住所を記載することも重要です。

法人設立届出書に添付する場合は金額や役職名・間柄も記載する

法人設立届出書を提出する際、株主名簿を添付しなければなりません。
法人設立届出書は、設立した法人に関する基本情報を税務署や都道府県、市町村に知らせるための書類です。
会社を設立したら、納税の義務が発生するため、適切に行うようにしてください。
法人設立届出書の提出は、会社を設立するために法務局で法人登記を終えた後に行う税務関連の手続きに該当します。

会社設立時に作成して会社に保管しなければいけない株主名簿と設立後に法人設立届出書に添付して提出する必要がある株主名簿は、記載する内容が異なります。
法人設立届出書に添付する株主名簿には、保有している株式の数のみならず、株式の金額や役職名、役員・他の株主との間柄なども記載しなければなりません。

株主名簿の管理方法


株主名簿を作成したら、管理をしなければいけません。開示請求があったら速やかに対応しなければならないため、株主名簿は適切な管理が必要不可欠です。
続いては、株式名簿の管理はどのようにして行われるのかについて解説します。

本店で保管する

株主名簿の要件には、基本的に本店で管理しなければいけないという点が盛り込まれています。
会社法第125条では、株式会社は株主名簿を本店に備え置かなければいけないとされているためです。

また、株主や債権者は会社の営業時間内であればいつでも株式名簿の開示請求ができます。
したがって、株主や債権者から株主名簿の閲覧やコピーを求められた場合は、その理由が正当なものであれば会社側が拒否することはできません。

管理人または管理会社の営業所で保管することも可能

株主名簿の要件には、管理人または管理会社の営業所で保管することも可能という点も盛り込まれています。
株式の売買が盛んに行われており、株主や株式数が日常的に変動する上場企業の株式名簿は、株式振替制度に基づいて証券会社などの口座管理機関を通じて保管されるケースが多いです。

管理人は、株式名簿管理人のことを指します。株式名簿管理人は、会社の代わりに株主名簿の作成や保管、関連事務を行う人です。
特に規定はありませんが、中小企業は司法書士、資本金が5億円以上もしくは賃借対照表の負債額が200億円以上など規模の大きい企業は、信託銀行や信託会社が管理するのが一般的となっています。

株主名簿の作成に関するよくある質問


株主名簿は、何度も作成するものではないので、疑問が生まれることも往々にしてあります。
そのため続いては、株主名簿の作成に関して多くみられる質問をピックアップし、回答していきます。

株主名簿が必要になる場面は?

株主名簿が必要になる場面は、会社設立時、株主から閲覧謄写請求があった時、招集通知等で株主の特定が必要な時です。それぞれについて詳しく確認していきましょう。

会社設立時

会社を設立する際、以前は税務署に株式名簿を届け出えう必要がありました。
具体的には、会社設立後2ヶ月以内に「法人設立届出書」を税務署に提出しなければいけないのですが、その時に株式名簿も一緒に提出する必要があったのです。
しかし現在は、会社設立時に「法人設立届出書」を税務署に提出する際の添付書類に株主名簿は含まれていません。
そのため、すぐに準備しなければいけないというわけではなくなっています。

株主から閲覧謄写請求があった時とき

会社法第125条2項では、前述したように正当な理由に基づいた開示請求に応じなければいけないとされています。
つまり、株主から閲覧謄写請求があった時に株主名簿は必要ということになります。
正当な理由であると判断されたら速やかに対応しなければいけないので、会社設立時に必要ないと言っても、設立時には開示できる状況にしておくことが望ましいです。

ただし、会社が閲覧謄写請求を拒絶することもできます。拒否できる理由は以下の通りです。

  • 請求者が権利の確保もしくは行使に関する調査以外の目的で請求を行った場合
  • 請求者が株式会社の業務の遂行を妨げたり、株主の共同の利益を害したりする目的で請求を行った場合
  • 株主名簿の閲覧もしくは謄写によって知った事実について、利益を得て第三者に伝えるため請求を行った場合
  • 過去2年以内において、株主名簿の閲覧もしくは謄写によって知った事実について、利益を得て第三者に伝えたことがある人物である場合

招集通知等で株主の特定が必要な時

招集通知等で株主の特定が必要な時にも、株主名簿が活用されます。具体的には、株主総会の招集通知を出したり、株主が権利を行使したりする場合などです。
特に株主総会を行う場合は、株主名簿に記載されている全員を召集するので、株主名簿は必須です。
また、株主が権利の行使を止めている場合は、その人物が本当に株主なのかどうかを確認するために株主名簿が用いられます。

株主とのトラブル防止が発生した時

株主とのトラブル防止が発生した時にも、株主名簿が必要になります。会社側が正しい株主名簿を作成していれば、株主が誤った主張をした場合に訂正できるためです。
相手の主張を訂正できるエビデンスになるので、万が一トラブルが発生した場合にも大きくなるリスクを低減できます。
株主の相続などがあった場合に、認識の相違が生じる可能性もあります。
そのような時にも、株主名簿を会社が適切に作成されていれば、未然にトラブルを予防したり、解消したりすることも可能です。

株主名簿を作成・更新しないとどうなる?

これまでにも説明したように、株主名簿は会社の規模や業態に関わらず作成しなければなりません。一人会社の場合でも作成が必須となっています。
株主名簿の作成や更新を怠った場合、冒頭でも述べたように会社法976条に基づいて100万円以下の過料が科せられる可能性があります。

株主名簿の記載事項を更新するタイミングは?

株主名簿は必要に応じて記載事項の内容を更新しなければなりません。更新するのは以下のようなタイミングです。

株主の住所に変更があった時

株主の住所に変更があった時は、変更が必要不可欠です。なぜなら、株主に対する通知や催告は株主名簿に記載されている住所に送られるためです。
株主と連絡が取れなくなった場合でも、株主名簿に記載されている住所あてに招集通知を発想すれば会社側は義務を果たしたことになります。

株式の相続・譲渡で移動が生じた場合

株式の相続・譲渡で移動が生じた場合、株主が変更されたことになります。
株主が変わったのに株主名簿を変更していないと、会社法上は株主名簿に名前が載っている人物が株主になります。

すると、本来の株主が議決権を行使できない、配当金が過去の株主に渡ってしまう、といった事態が発生してしまうでしょう。
株主ではない人物が議決権を行使したり、会社に不当な要求をしたりする恐れもあります。

株式名簿の記載事項は状況によって更新することも大切!

株式名簿は株主に関する情報が記載されている書類で、会社を設立する際に作成しなければいけません。
作成を怠ると過料が科せられることになるので、必ず作成するようにしてください。
また、変更点があった時は随時更新することも必要不可欠です。株主や債権者に開示請求される場合もあるので、適切に保管をしておきましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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