レッドクリフ 佐々木 孔明|日本最大のドローンショーで夜空に驚きと感動を届け、イベントの新しいマネタイズを実現
ドローンショーなら企業の広告コンテンツでも視聴維持率を高められる
空撮や農業、物流などあらゆるシーンで「ドローン」の活用が進んでいますが、近年は1台のドローンを飛行するだけでなく、複数台のドローンで夜空を彩る「ドローンショー」のニーズが高まっています。
ドローンショーはエンタメ要素が強く、広告媒体としても人気です。広告コンテンツでありながら、視聴維持率・コンバージョン率ともに高く実現できます。
そこで今回は、前職でドローン世界最大手DJIの日本一号店に勤務し、ドローンの活用に精通しているレッドクリフの佐々木さんに、ドローンビジネスの概要やドローンの活用方法について創業手帳の大久保が聞きました。
株式会社レッドクリフ 代表取締役
1994年秋田県生まれ。
関東学院大学建築・環境学部へ進学。在学中にドローンと世界一周の旅に出る。
帰国後、大学を中退しドローン世界最大手DJIの日本一号店に勤務。ドローンの販売・講習・空撮を担当。
2019年「株式会社レッドクリフ」を設立、テレビ番組の空撮やゴルフ場の空撮を行う。海外企業のドローンショーの空撮を担当したことからドローンショーに興味を持ち、世界のドローンショーを見て回る。
東京オリンピックの追い風を受け2021年より日本最大規模のドローンショー運営会社を開始。
ドローンショークリエイターとして企画演出を担当する。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
学生時代にドローンとともに世界一周を経験
大久保:まずは過去のご経歴から教えていただけますか?
佐々木:大学を2年間休学して世界一周の旅に出たのですが、ただ旅行するのではなく何かを掛け合わせた旅にしたいと思い、当時出始めの「ドローン」を手に取りました。
私が世界一周の旅に出た2016年ごろは、ドローンを日本で見ることもなく、自分で購入したドローンが初めて見るドローンでした。その一方で、海外の様々な観光地では、ドローンをよく見かけていました。
1年半ほど海外を転々として、2年間の休学期間の内の半年ほど時間が余ったため、建築業界以外で働く経験をしてみようと思い、ドローンの求人を探しました。
ちょうど、私が当時使っていたドローンのメーカーDJIが、日本に一号店を出すということでオープニングスタッフを募集していたんです。そこに応募し、アルバイトをすることになりました。
大久保:ドローン会社のアルバイトを通じて学んだことや、衝撃を受けたことがあれば教えてください。
佐々木:ドローンがただの撮影だけでなく、農業、物流、郵送など、様々なものに使えるんだと知ったことです。これからのドローン市場が拡大し、あらゆるものがドローンに置き換わっていく、そしてその時代がすぐそこまで来ていることを知りました。
このアルバイトを通じてドローンの分野に魅了され、大学を中退し、アルバイトとして入ったDJIの代理店に就職しました。
ドローンの販売だけでなく、テレビ番組の空撮の仕事、ミュージックビデオや映画の空撮など、様々な仕事をしながら2年間で知識を身につけ、自分1人でもお金を稼げるという自信がつきました。
自分1人とドローンがあれば仕事が完結する現場が増えていく中で、販売より空撮の仕事に注力したいと考えるようになり、テレビ局の空撮、ゴルフ場のコースの空撮といった領域で独立しました。
エンタメ領域のドローンショーは広告媒体としても魅力が強い
大久保:ドローンがあれば、1人でも仕事が完結できるようになったんですね。実際に身軽に始めて良かったと思いますか?
佐々木:私は特殊な面もあったのですが、空撮だけだと収入の波が出てしまうところ、インバウンド狙いで民泊をやっていました。
そちらの収入も上がってきたこともあり、独立することができました。
ただしコロナのロックダウン時には仕事がピタッと止まってしまいました。そこで何か新しいことに挑戦したいと思い、PC1つで500台以上のドローンを飛ばす「エンタメ領域のドローンショー」に興味を持ちました。
当時のドローン業界には若い人材が多くいませんでした。そのため、エンターテインメントで広告の要素もあり、さらに私は建築やアートが好きだったこともあり、やるなら自分だ!と思いました。
「ドローンショー」に可能性を感じてピボット。海外も視野に事業を拡大
大久保:どのような流れで事業計画を進められましたか?
佐々木:コロナのタイミングを利用して、事業計画を立てて「広告媒体」という切り口で資金調達を始め、徐々にスタートアップの動きに変わっていきました。
もちろんドローンの空撮でも事業拡大を考えました。ただし、パイロット1人に対する人件費の単価を上げづらかったり、時代が進むにつれて単価も下がる可能性も考えると、パイロットを増やしていく方針での事業拡大は見込めませんでした。
一方で、ドローンショーであれば、売り上げが1回のショーで3,000万円程度が見込めることもあり、動くお金も大きい分野ですので、事業拡大の可能性を感じました。
大久保:今後はどのようにスケールしていく計画を考えているのでしょうか?
佐々木:日本のマーケットにとどまると、やはり頭打ちを感じます。そのため、大きくスケールするためには、海外に出ることが必要だと思っています。
そのためには、まず我々のドローンショーサービスを多くの方々に利用してもらうことが大事です。
海外にはすでに同じサービスを提供している会社があります。弊社では、ドローンを飛ばすためのプログラムデータの作成を依頼していただき、データだけ海外のドローン会社に提供する、ということも可能です。
グローバルマーケティングとして請負い、レッドクリフに頼めば、そこがハブになって世界のドローンメーカーと連携してドローンを飛ばせます。
さらに、まだドローンショーがない国も多いですが、どの国も日本と同じく必ず伸びてくる市場だと思っています。
そのため、まだドローンショーがない国にドローンを置いて、種まきをしていく形の戦略も進めていきます。
大久保:ITやAIはアメリカが強いイメージで、手作業による製造業は途上国に集まっているイメージがあります。そこでいうと日本はその中間点のようなどちらの良いところも持っている印象です。
佐々木:おっしゃる通りで、日本はアニメやゲームなどのコンテンツに強い国なので、弊社に頼んでいただければ質の高いデータを作れる、というのがグローバル視点としての強みとして考えています。
東京オリンピックの影響でドローンショーへの注目が高まる
大久保:ドローンショーといえば、東京オリンピックですよね。やはり影響はありましたか?
佐々木:もちろんありました。
当時、資金調達のために動いている時期でしたが、VCさんにいくら説明しても、ドローンショーがどういったものなのか、どうマネタイズに繋がるのか、本当に飛ばせるのか、全くイメージしてもらえませんでした。
東京オリンピックの開会式でドローンショーが実施されたことを経て、一気に流れが変わり、資金調達も前に進められました。
大久保:事業をイメージしやすい事例を見せる、ということの大事さが改めてわかりますね。
佐々木:やはり形あるものを見せた時の安心感はありますよね。投資する側としても、イメージしやすいと思います。
ドローンショーの「エンタメ領域」と「広告領域」ごとの戦略の違い
大久保:ドローン事業の進むべき方向性などは、いくつかに分類できるのでしょうか?
佐々木:エンタメ領域と広告領域の2タイプに分かれていきます。
弊社の場合はちょうど真ん中くらいで、スタート時は自治体系が多く、今は徐々に広告系の依頼が伸びています。
ドローンショーは、花火に変わる次世代エンターテインメントと言われているんです。夜空の中で輝き、キャラクターや文字を表現できますし、花火が上げられない場所でもドローンは上げられる、といったメリットもあります。
花火のデメリットとして挙げられる騒音、燃えカスなどの問題も、ドローンにおいては回避できることも非常に魅力的です。
もう一方で、広告領域としても大きなメリットがあります。ドローンショーはエンターテインメント性が高いので、広告コンテンツを表現しても20分近くしっかりと視点を集めることも難しくありません。さらに、SNSでの二次拡散効果も期待できます。
また、ドローンではQRコードも表現できます。屋外看板にもQRコードが表示されていることもありますが、それだとわざわざ読み取らないですよね。
しかし、エンタメ要素を含んだドローンショーの中で、ドローンによるQRコードを表現すれば、観客に読み取ってもらいやすくなり、その後のコンバージョンも期待できます。
花火大会を持続可能に。ドローンショーの広告効果で協賛金不足を解消
大久保:花火が打ち上げられる場所がどんどん減っていますよね。その点でもドローンが期待されているのですね。
佐々木:海外ではすでに「花火の次がドローンだ」と言われています。
ただし我々としては、花火大会を競合だとは考えていません。ドローンショーにより花火大会を持続可能なものにできると考えています。
花火大会の物価高騰と協賛金不足で、花火大会の実施件数が毎年右肩下がりで減ってきています。
そこで、花火大会の前後をドローンショーの枠として弊社に提供してもらいます。花火の費用や時間を削ることはありません。
まずは前座として、企業のプロモーションなどのコンテンツをドローンショーとして実施します。すると広告費を頂けるので、弊社は花火大会に協賛金を納めることができます。
元々、花火大会でのプロモーション手法としては、会場での読み上げ広告と会場で配られるパンフレットに企業名が入るなどしかありませんでした。
ドローンにより夜空に企業のロゴを出したり、製品のイメージ図を出したりすることで、広告効果が非常に高まります。さらに企業からの広告費によって、協賛金が増える仕組みです。
大久保:プログラムで動かせる分、空中に長時間止まらせたり、自在に動かしたりできるので、表現の幅も広がりますね。お祭りや花火などの日本の伝統と対峙するのではなく、彼らを持続可能にできるということですね。
佐々木:弊社の考えとしては、主役はあくまでもお祭りや花火であり、人や協賛も集めやすくできる、というのがドローンショー導入のメリットです。
大久保:最後に記事を読んでいる起業家へメッセージをお願いします。
佐々木:どんなに大きいことを夢見ても、0を1にしないと何も進みません。
どんなに未完成でも、プロトタイプを作って世に出してみる、といったことを進んでしてほしいです。
我々が東京オリンピックのタイミングで一気に動けたように、法律が変わったタイミングやその他の外部要因など、チャンスのタイミングを見逃さないようにするといいと思います。
さらに、その流れに柔軟についていけるのが、ベンチャー企業の強みだと思いますので、先手を打ちながら挑戦してください。
(取材協力:
株式会社レッドクリフ 代表取締役 佐々木孔明)
(編集: 創業手帳編集部)