M&Aで仲介会社を使うメリットは?企業の役割や選び方、利用時の費用まで解説
M&Aの仲介会社は中立的な立場で交渉をサポートしてくれる
近年、日本ではM&Aの件数が増加傾向にあります。
M&Aは大手企業を中心に活発な動きを見せていましたが、最近では後継者問題などの影響で小・中規模の企業で事業承継としてM&Aが活発化しています。
また、2023年12月には2024年度税制改正において、中小企業のM&Aを促す税制優遇を拡充していく方向に決まりました。
こうした背景もあり、今後さらに多くの企業でM&Aが実施される可能性があります。
実際にM&Aを行う際には仲介会社を利用することが多いですが、具体的にどのような役割を持っているのでしょう。
そこで今回は、M&A仲介会社の特徴と役割についてご紹介します。
費用相場や選ぶ際のポイント、依頼するメリットなども解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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この記事の目次
M&A仲介会社とは?
M&A仲介会社は売り手と買い手の間に入り、中立的な立場でM&Aをサポートする企業です。
取引きをスムーズに進めるために交渉の仲介やアドバイスを行ってくれます。基本的には売り手側と買い手側を結び、双方から手数料を得ています。
手数料を双方から得ることでどちらかの利益を最大化するのではなく、両社にとって利益となるよう折り合いをつけていくのが特徴です。
M&Aの仲介会社は「業界特化型」と「業界非特化型」の2種類
M&A仲介会社は大きく2種類に分類されます。業界特化型は、IT・製造・不動産・医療など特定の業界に強い仲介会社です。
専門知識やノウハウ、ニーズなども理解しており、業界特化型ならではのサポートが受けられます。
一方、業界非特化型は業界を選ばず、多岐にわたるM&A案件に対応できる仲介会社です。ネットワークが広いため、例えば別業種間でのM&Aにも対応できます。
業界特化型・業界非特化型以外にも、企業規模や案件規模に特化した仲介会社やグループ内の専業仲介会社、独立系仲介会社など、様々な形で存在しています。
M&A仲介会社とFAの違い
M&A仲介会社はFA(ファイナンシャルアドバイザー)とどのような違いがあるのでしょう。
そもそもFAはM&Aを検討中の企業に対して、計画の立案から成約に至るまで一連の助言業務を担います。
FAが重視しているのは、契約を結んだ売り手側もしくは買い手側の利益を最大化させることです。
M&A仲介会社でもFAと同様に計画立案から交渉、スキーム立案、成約まで幅広く対応できますが、どちらか一方の利益を最大化させるために動いてはいません。
両社にとってメリットのあるM&Aにすることが大きな目的です。
また、FAは大手企業同士や海外企業とのM&Aなど、比較的規模の大きいM&Aへの支援として利用されていますが、M&A仲介会社は中小企業のM&Aもサポートしています。
M&A仲介会社の役割
M&A仲介会社はM&Aを支援するにあたり、様々な役割を担っています。ここでは、M&A仲介会社の役割について解説していきます。
買い手や売り手の候補となる会社を選定
M&A仲介会社は、買い手側や売り手側の企業とマッチする候補先を選定し、提案してもらうことが可能です。
買い手側・売り手側がM&Aを実施後にどういったシナジーが起きるのか、双方にとってどのようなメリットがあるのかなどを意識して候補先を選定してくれます。
また、M&A仲介会社の中には独自のネットワークを活用し、多くの候補先の中から自社に合う企業を選定してもらえるのも大きな強みです。
企業価値の算定と価額の調整
M&Aにおいて企業価値の算出は、譲渡価額を決定づける要素にもなります。企業価値を算出する方法は以下3つです。
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- インカムアプローチ:将来のキャッシュフローや利益に基づき企業価値を算出する方法
- マーケットアプローチ:上場する同業他社や類似取引事例などから企業価値を推算する方法
- コストアプローチ:評価対象の貸借対照表の純資産に注目し、企業価値を評価する方法
こうした方法を活用して企業価値の算定は自社でも行えますが、第三者が行うことで相場観と合った価額に調整しやすくなります。
例えば売り手側の場合、譲渡価額を決める時に様々な要因から高い値段で見積もるケースが多く見られます。
しかし、実際の相場観と価額に差が生じてしまい、いつまで経っても買い手が現れない可能性も考えられます。M&A仲介会社はこうした価額の調整も可能です。
成約までのスケジュールの調整
M&Aは企業の規模によっても異なりますが、事前準備から実際に統合が完了するまで、約半年から1年かかるのが一般的です。
場合によっては1カ月で完了する案件もあれば、条件を満たす企業を見つけられず、2~3年かかってしまうこともあります。
M&A仲介会社は契約をスムーズに進められるよう、スケジュールの調整も行います。
もしできるだけ素早く成約までつなげたい場合は、M&A仲介会社を利用するだけでなく、事前準備として目的や条件などを明確にしておくことも大切です。
交渉の仲介や調整
M&A仲介会社は双方の意見を聞き、中立的な立場で交渉の仲介や調整を行っていきます。
交渉する際は売り手側と買い手側で齟齬が起きないようにしたり、お互いが出した条件に対して折り合いをつけたりします。
M&A仲介会社が間に入ってくれることで、話し合いもスムーズに進みやすくなるでしょう。
デューデリジェンスのサポート
デューデリジェンスとは、買い手側が売り手側に対して企業の価値やリスク、将来的にリターンがあるのかなどを把握するために行われる調査です。
専門的かつ法的な知識を有することも多く、M&A仲介会社だけでなく公認会計士や弁護士などに依頼する傾向にあります。
各契約書の準備と条件の確認
M&Aのプロセスの中で、契約書が必要となる場面もあります。例えば候補先を選んでからすぐに双方が秘密保持契約を締結するために、秘密保持契約書の準備が必要です。
ほかにも両社がM&Aに対する意向を示す意向証明書、M&Aを進める意向や独占交渉権、独占交渉期間などを示した基本合意書などがあります。
これらの各契約書は準備するのにも手間がかかってしまいますが、M&A仲介会社に依頼すれば、事前に契約書を準備してくれます。
また、契約書に関してわからないことがあってもすぐに相談が可能です。
M&A仲介会社を利用した時の費用相場と内訳
M&A仲介会社に依頼した場合、費用がかかってしまいます。事前にどれくらいの費用がかかるのか相場を知っておくと、予算も立てやすいでしょう。
ここでは、費用相場と内訳についてご紹介します。
相談料
M&A仲介会社に相談した際にかかる料金で、相談料の相場は無料~1万円程度です。
多くの仲介会社は無料相談としていますが、中には相談料を取っているところもあります。
「相談は無料だと思っていたらお金がかかった」と後悔しないためにも、事前に相談料がかかるのか確認してください。
着手金
着手金とは、業務委託契約を仲介会社と結んだ際に支払う手数料になります。着手金の相場は無料~200万円程度と、非常に幅広いです。
一般的には着手金がかかりますが、中には無料に設定しているところもあります。
着手金は万が一M&Aに失敗しても戻ってくることはないため、手元資金が少ない場合は着手金無料の仲介会社を選ぶことも検討してみてください。
中間金
中間金とは、M&Aのプロセスがある程度進んできた時に支払う手数料です。多くの場合、基本合意書の締結が支払うタイミングです。
相場は無料~100万円程度となりますが、仲介会社によっては成功報酬の10~20%に設定している場合もあります。
デューデリジェンスにかかる費用
デューデリジェンスを行うにも費用がかかります。相場は無料~200万円程度です。
200万円近くかかってしまう理由は、公認会計士や弁護士など専門家へ依頼した際に報酬として支払うためです。
なお、案件の規模や調査に関わる専門家の人数・稼働時間などによって費用は変動します。
成功報酬
成功報酬は最終契約を締結させたら支払う費用になります。成功報酬の算出方法には、取引金額をもとにするレーマン方式を採用しているケースがほとんどです。
レーマン方式だと取引金額が高くなればなるほど手数料の割合が下がっていきます。
例えば取引額が5,000万円までの部分には手数料率10%、取引額5,000万円~1億円までの部分には5%の手数料率です。
リテイナーフィー
リテイナーフィーとは、M&A仲介会社に毎月支払う月額費用を指します。仲介会社によってリテイナーフィーが不要な場合と毎月50万円程度かかるところに分かれます。
契約期間中は毎月費用が発生することになるため、成立が遅れてしまうと負担も大きくなっていくかもしれません。
M&A仲介会社を選ぶ時のポイント
M&A仲介会社には業界特化型や業界非特化型など、様々な種類があることをご紹介しました。仲介会社の数も多いため、どこを選ぶべきか迷ってしまう方も多いかもしれません。
そこで、M&A仲介会社を選ぶ時のポイントについてもご紹介します。
開示されている過去の実績やマッチング数
M&Aの成功について重要な要素となってくるのが、仲介会社の実績です。
独自のネットワークなどを駆使し、これまでに多くの企業のM&Aを成功に導いてきた仲介会社であれば、自社にとっても最適な候補先を見つけてくれるでしょう。
そのため、M&A仲介会社を選ぶ際は実績やマッチング数などを確認してください。
また、開示されている実績の中に、自社と同規模・同業種がないか探してみるのもおすすめです。
対応している業種や規模の広さ
M&A仲介会社にはひとつの業界に特化してM&Aをサポートする仲介会社もあります。専門的な知識やノウハウなどもあり、同じ業界同士でのマッチングに強みを持っています。
ただし、業界を限定しているため企業の母数が減ってしまう点はデメリットです。
業界非特化型は業界に縛られず、多くの企業情報を有しているため、業界は違っても自社の条件にピッタリな候補先を見つけてもらえる可能性があります。
このように、対応可能な業種や規模の広さなどもチェックしておくと、自社に適したM&A仲介会社も見つかりやすいでしょう。
情報管理の整備体制
M&A仲介会社は情報の取り扱いに対して慎重に動く必要があります。
万が一M&Aの交渉中に外部へ情報が漏れてしまった場合、交渉が決裂してしまう以外にも取引先への影響やインサイダー取引きなどが発生する可能性もあります。
情報漏えいが起きないように、仲介会社を選ぶ際には情報管理の整備体制がどうなっているのか確認しておくのがおすすめです。
M&A仲介会社に相談するメリット
M&Aを検討している方は、仲介会社への相談も考えておいてください。M&A仲介会社へ相談することで様々なメリットが得られます。
専門的なアドバイスやサポートが受けられる
M&A仲介会社は、買い手と売り手のどちらにもメリットがあるM&Aをスムーズに行うために、専門的な知識・ノウハウを有しています。
M&Aに関する知識はもちろん、会計や法務に関する情報も備えています。
これまでに何度もM&Aをサポートしてきたアドバイザーが支援してくれるため、安心して任せられるでしょう。
また、M&Aを進めている時でも通常業務をこなす必要がありますが、M&A仲介会社を利用することで進行をサポートしてもらうことも可能です。
通常業務に支障をきたすことなく、スムーズにM&Aを進められます。
幅広い売り手や買い手先の候補から選定してもらえる
M&A仲介会社はネットワークを使って情報収集を行い、自社とマッチする候補先を見つけてきてくれます。
また、幅広い候補先の中から自社の風土に合った企業やシナジーを発揮できる企業を見つけ出し、提案してくれるため、自社だけで探すよりも効果的かつ効率的に候補先が見つかるのです。
複雑な交渉でも仲介に入ってもらえる
M&A仲介会社は、当事者同士だとどうしても時間がかかってしまうような複雑なプロセスにも仲介できるのは大きな強みとなります。
特にM&Aは交渉において決めることが非常に多いです。
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- 株価交渉
- 社員の処遇
- 引き継ぎ方法 など
当事者同士よりも第三者が仲介することで冷静かつ客観的に話し合いを進められるようになります。
仲介者を介してコミュニケーションも取りやすくなり、スムーズな成約につながる可能性も高まるでしょう。
ただし、売り手側はできるだけ高く、買い手側はできるだけ安く契約を結びたいと考えています。
双方がどちらも満足できる形で合意することは難しく、場合によっては一方の利益が優先され、利益相反と指摘されるケースもあります。
行政からも利益相反の問題が指摘されており、経済産業省は利益相反のリスクについて中小M&Aガイドラインを策定し、紹介しています。
利益相反は特に売り手側がデメリットを被ってしまうため、売り手側となる場合は十分に注意してください。
まとめ・M&Aの仲介会社は自社に適したサービス企業と手法を選ぶことが大切
M&A仲介会社は売り手と買い手、双方にとってメリットのあるM&Aが行えるようサポートしてくれます。
M&Aを成功させるためにも仲介会社の存在は大きいです。費用相場や内訳をきちんと確認し、自社に合った仲介会社を見つけるところからはじめてみてください。
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(編集:創業手帳編集部)