ゼロゼロ融資を返済しないとどうなる?踏み倒すリスクや返済できない時の対処法
ゼロゼロ融資を返済しないのは危険!リスクを解説
ゼロゼロ融資は、新型コロナウイルスによって事業に影響を受けた中小企業や個人事業主を対象とした融資制度のひとつです。
ゼロゼロ融資によって倒産せずに済んだものの、あくまでも融資であるため、返済に頭を悩ませている企業も少なくありません。
しかし、資金繰りが厳しいからといって返済しないのは危険です。今回は、ゼロゼロ融資を返済しないリスクを解説するとともに、返済が厳しい場合の対処法をお伝えします。
ゼロゼロ融資の返済でお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。
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この記事の目次
ゼロゼロ融資(コロナ融資)の概要
ゼロゼロ融資とは、2020年から2023年にかけて世界中で猛威を振るった新型コロナウイルス感染拡大により、売上げが減少した中小企業や個人事業主に対する救済措置制度です。
ゼロゼロ融資は、本来であれば金融機関に支払うべき利子を公的機関が3年間負担することと、担保が必要なく返済できなくても信用保証協会が肩代わりすることから、実質利子と担保がゼロであるため「ゼロゼロ融資」と呼ばれています。
無利子で担保が必要ないとはいえ、無利子の期間は借入後3年間、据置期間は5年以内などの条件があり、政府系金融機関のゼロゼロ融資は、返済の8割近くがすでに始まっています。
民間金融機関でも、これから返済が本格的にスタートする予定です。
ゼロゼロ融資の返済に不安がある企業の割合
コロナ禍に多くの企業の資金繰りを支えたゼロゼロ融資ですが、返済に不安を感じている企業も少なくありません。
実際、東京商工リサーチが2022年12月には発表した「第25回新型コロナウイルスに関するアンケート調査」では、返済に問題ないと回答した企業が7割超える中、残りの3割近くは返済見通しに問題ありと回答しています。
コロナ禍が収束しつつあるとはいえ、原材料費やエネルギー価格の高騰などコスト上昇の影響により、売上高が以前の水準に未だ戻っていない企業は少なくありません。
そこへ、ゼロゼロ融資の返済が始まった場合、負担の大きさから資金繰りに悩む企業が増える可能性は高いです。
ゼロゼロ融資を返済しなかった場合のリスク
ゼロゼロ融資を返済しなかった場合、どのような事態に陥る可能性があるのでしょうか。ここでは、返済しなかった場合のリスクについて、詳しく解説します。
支払督促を受ける
返済期日を過ぎても返済しない場合、支払い督促を受けます。最初は金融機関から返済期日を過ぎている旨の電話連絡があり、応じない場合には郵送で督促状が届きます。
督促状が届く頃には、信用情報に傷が付いたり、遅延損害金(遅延利息)が発生したりといった不利益が生じるため、万が一滞納してしまった場合は早めに対応することが大切です。
代位弁済が行われる
代位弁済とは、債務者に代わって保証会社が金融機関に返済することです。
督促状の郵送後、約3カ月経っても返済しない場合、金融機関から融資した金額+利息を一括返済するよう求められます。
返済しない場合には保証会社による代位弁済が行われ、その旨が通知されます。
ゼロゼロ融資の返済ができず、保証会社によって代位弁済が行われた事例は、神奈川や千葉など全国で多数あります。
ここで注意しておきたいのは、保証会社が代位弁済したからといって返済しなくて良いわけではない点です。
むしろ、代位弁済が行われると、本来であれば返済までお金を借りることが可能である「期限の利益」を喪失し、これまでのように分割で返済することはできなくなります。
訴訟される
保証会社による代位弁済が行われた後は、金融機関に立て替えた分を一括返済するよう請求がきます。返済に応じない場合、保証会社から訴訟を起こされるかもしれません。
訴訟になれば、債務者は裁判所に出頭するよう求められます。
出頭しないことも可能ですが、出頭しなくても裁判は予定通り行われ、保証会社側の主張が全面的に認められる可能性が高いです。
そうなれば、保証会社との和解はできず、一括での支払いしか認められないかもしれません。分割払いを希望するのなら、裁判所に出頭することが望ましいです。
強制執行により財産を差し押さえ
強制執行とは、裁判所の執行官により、債務者の持つ財産のうち価値のあるものを強制的に押収することです。
訴訟により保証会社の主張が認められた場合、強制執行が行われ、財産が差し押さえられます。
差し押さえの対象は、現金や土地、建物や自動車、ブランド品などの財産です。
預金口座や給与、持ち家なども差し押さえ対象のため、その後の経営にも大きな影響を及ぼすすかもしれません。
ゼロゼロ融資は、返済しなかった場合のリスクが高いです。踏み倒しても何ひとつ良いことはないため、返済が難しい場合には、しっかりと対処することが大切です。
ゼロゼロ融資を返済できない時の対処法
ゼロゼロ融資は踏み倒した際のリスクが高いため、万が一返済できない時は、きちんと対処することが大切です。
ここでは、返済できなくなった時どうすれば良いのか、取るべき方法を解説します。
債務状況・資金繰りの確認
まずは、債務状況や資金繰りはどうなっているか確認することが大切です。
現在の状況を適切に把握するためにも、現時点での借入金残高や返済金額、資産をチェックしてください。
税金や賃金の未払いなど、負債がある場合はそれらも明確にする必要があります。
次にするべきことは、今後の売上予測です。どのくらいの売上げが見込まれるのか、予想される支出とともに、確認しておいてください。
もしも、会社に建物や土地などの不動産、有価証券などの資産がある場合は、担保に供されているかもあわせて明確にすることが重要です。
債務状況や資金繰りの情報をまとめると、今後の返済が可能かどうかを判断する材料になります。
返済に悩んだ時は専門家に相談しよう
自分で返済の見通しが立てられない時は、専門家に相談するのもひとつの方法です。
税理士や弁護士など、経営や法律に関する専門家に相談することで、解決策が見つかる可能性があります。
特に、顧問税理士がいる場合は、どのように対処すれば良いか話合いを行ってください。少しでも早く相談することで、実行できる選択肢の幅が広がるでしょう。
法人の財務や法務、債務整理に強い弁護士なら、専門家ならではのアドバイスを受けられるほか、返済や督促を一時的に止めて貰えたり、裁判所の手続きをしてくれたりといったサポートが期待できます。
また、日本政策金融公庫や中小企業庁、金融庁といった各行政機関でもゼロゼロ融資の返済で困った場合に相談できる窓口が設けられています。
融資や資金繰りに関する相談ができるため、ぜひ活用してください。
コロナ借換保証の利用
ゼロゼロ融資の返済に行き詰まった際は、コロナ借り換え保証の利用も検討してください。コロナ借り換え保証は、企業の負担を軽減すべく政府が新たに設けた制度です。
売上げまたは利益率が5%減少などの定められた要件を満たすほか、経営行動計画書の作成や金融機関による継続的な伴奏支援を受ける必要がありますが、借入れ時の信用保証料を大幅に引き下げられます。
なお、本制度を行っているのは中小企業庁ですが、問い合わせ先は金融機関もしくは信用保証協会です。問い合わせする際には注意してください。
返済条件の変更
借入れしている金融機関に、このままでは返済が難しい旨を伝え、返済条件の変更ができないか、相談してみてください。
コロナ禍によって打撃を受けた事業者が多いことから、政府は各金融機関に対し、積極的に支援するよう要請を出しています。
相談することで、返済への新たな糸口が見つかる可能性があるため、悩んでいる場合には一度交渉することをおすすめします。
なお、返済条件の変更方法として有効な方法は以下の通りです。
-
- 据置期間の延長交渉
- 返済条件のリスケジュール
- 借り換え
据置期間の延長を交渉する
設定された据置期間を延長できないか交渉する方法があります。据置期間とは、利息のみを支払う期間のことです。
据置期間を延長できれば、元金の返済を遅らせることが可能であるため、その間は毎月の支払額を大幅に抑えられます。
ゼロゼロ融資の据置期間は最長5年ですが、中には1~2年という条件で融資を受けた事業者も少なくありません。
しかし、長引くコロナ禍により、業績が回復していない状態で元金まで返済するのは、非常に厳しいと考えられます。
政府は金融機関に対し、据置期間に関して積極的に応じるよう要請を出しているため、まずは一度相談してみることをおすすめします。
返済計画をリスケジュールする
リスケジュールとは、計画を変更する、組み直すという意味です。
返済日や返済額など、返済計画を見直し、返済条件を変更することで、返済が楽になる可能性があります。
返済計画を見直したい場合には、税理士など専門家に相談し、融資先に交渉してみてください。
なお、経済産業省でも、コロナ禍の影響によって資金繰りに悩む事業者に向け、「新型コロナ特例リスケジュール支援」を行っています。
原則無料で専門家からの支援を受けられるため、資金繰りに悩んでいる方は、一度相談してみると良いかもしれません。
利率の低い金融機関に借り換える
借り換えとは、別の銀行から融資を受けて既存の借入金を返済することをいいます。
利率の高い銀行から低い銀行に変更することで、月々の返済額が減り、負担を軽くすることが可能です。
ただし、借り換えには審査があるほか、手数料や利息の支払いも発生します。
借換先の金利や返済期間によっては必ずしも負担が軽くなるとはいえないため、注意してください。
任意売却
任意売却とは、債権者(金融機関)の了承のもと行われる不動産売却方法のひとつです。
返済条件を変更しても返済が難しい場合には、任意売却を行うという方法もあります。
通常、不動産はローンが残っている状態では売却できません。しかし、債権者である金融機関の了承が得られれば、抵当権を解除し、売却活動を行うことが可能です。
任意売却は、裁判所に強制的に売りだされる競売に比べ、一般相場に近い価格で売却できたり、残債を分割で返済できたりするメリットがあります。
ただし、債権者の同意がなければ売却はできないほか、滞納した段階で信用情報に傷が付くため注意が必要です。
ファクタリング(売掛債権の売却)
ファクタリングとは、専門の会社に売掛金の債権を買い取ってもらい、資金を調達する方法です。売掛金とは、取引先から商品やサービスの代金を後から請求する方法です。
ファクタリングは、自社にいずれ入る予定の金額を専門の会社を介すことで期日よりも早く現金化できます。手数料が引かれるため本来の予定よりも金額は少なくなります。
しかし、借入れや融資とは違い、負債が増えないのが特徴です。
ファクタリングしすぎると、その後の経営に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要ですが、手っ取り早く資金繰りの改善が期待できます。
企業再生
企業再生は、債務超過状態で実質的な破綻状態にある企業に対し、様々な方法を活用し、立ち直らせることをいいます。
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- 負担が減ることで資金繰りの正常化が期待できる
- 経営者に再生したいという意欲がある
- 事業内容に需要がある など
ゼロゼロ融資を返済できない場合でも、上記の条件を満たしていれば企業再生できる可能性があります。
民事再生
民事再生は、経営が行き詰まった場合に、裁判所が選任した人員のもと、会社の再生に向けて行う債務整理のことです。
債権者全員の同意が必要なほか、再生計画に従った手続きを行います。
事業を停止しなければならない破産と違い、民事再生は借金を返済しながらではあるものの、事業を継続することが可能です。
会社を畳まずに事業を継続したい、立て直しをしたい場合には、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
会社更生
会社更生は、会社更生法に基づき、会社の再生を目指す手続きの一種で、裁判所を利用し手続きを行います。
裁判所が選任した更生管財人が主導となって、債務整理や組織変更に関する更生計画を作成します。
会社更生の対象は法人のみです。基本的に、会社更生は大企業が利用することを想定して作られています。
したがって、中小企業などが事業再建を目指す場合は、民事再生が主となります。
特定調停
特定調停とは、債務者と債権者の債務に関する利害関係の調整を行う手続きです。仲介役務める裁判所の調停委員のサポートを受けられます。
特定調停は、事業再生を行っていることを取引先に知られることなく手続きすることが可能です。
ただし、債権者が意義を申し立てた場合、不調となって終わることもあります。
特別清算
特別清算は、返済しきれなくなった債務を清算し、会社そのものを消滅させる手続きです。対象となるのは株式会社のみで、それ以外の法人は利用できません。
手続きは清算株式会社主導で行われ、破産手続きに比べ、会社の清算が簡易かつ迅速であるのが特徴す。なお、特別清算には、協定型と個別和解型の2種類あります。
協定型は債権者集会により弁済方法を協定するものです。協定が可決されれば、裁判所の認可を経て、債務の弁済などが行われます。
一方、個別和解型は、裁判所の許可を得て、債権者と個別に和解することで清算手続きを行えます。
最終手段・法人破産
法人破産は、債務超過や支払い不能に陥った場合に、会社を清算する方法です。
倒産手続きのひとつであり、裁判所が選任した破産管財人により、財産が処分され、債権者に配当を行います。
破産や倒産というとどうしてもネガティブなイメージも持ってしまいます。
しかし、再生が難しいようであれば、借入れを増やすことになる前に、会社を畳む決断をすることも大切です。
最終手段ではありますが、経営悪化や資金繰りに関する悩みからは解放されるかもしれません。
まとめ・ゼロゼロ融資は滞納しないために対処法を活用して返済しよう!
ゼロゼロ融資の返済が始まる企業も増えていますが、返済できないからといって滞納すると、訴訟や強制執行が行われる可能性があります。
思うように返済ができない時は、今回紹介した内容を参考に、金融機関に据置期間の延長やリスケジュールなど、返済条件の変更ができないか、相談してみてください。
(編集:創業手帳編集部)