オープンデータはどう活用できる?ビジネスでの活用事例や注意点を解説
オープンデータを活用して新サービスやビジネスを創出しよう
ビジネスシーンでデータ活用の重要性が高まっています。そのような状況下で、政府や地方自治体から提供されるオープンデータの活用も注目されています。
しかし、オープンデータを活用したことがないと、どのように活用できるかわからないものです。
そこで今回は、オープンデータの活用方法を詳しく解説していきます。
ビジネスでの活用事例や注意点についても解説していくので、オープンデータを活用したいと考えている方は、参考にしてみてください。
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この記事の目次
オープンデータとは政府や地方自治体などが公開するデータ
オープンデータは、政府や地方自治体などが公開するデータのことです。二次利用が可能な無償データで、機械判読に適した加工が施されています。
決められたルール内で誰もが複製・加工・再利用しやすく、営利目的でも非営利目的でも二次利用ができます。
データの閲覧やダウンロードに必要以上にお金がかかってしまう、紙媒体しか存在しない、データの使用先に制限がかかっている、といった場合はオープンデータとはいえません。
オープンデータの事例には、民間企業の退職金の実態や景気動向指数、動物検疫の統計などが挙げられます。
これはあくまでも一例で、公開されているオープンデータの種類は多岐にわたります。
個人や企業で調査することが難しい、または調査ができない範囲の公共データだと考えればわかりやすいです。
オープンデータが公開されている目的
オープンデータがほぼ無償で提供されているのは、経済の活性化が目的です。
人口や財政状況など公的な機関でしか調査できないデータを得ることで、より顧客のニーズに合うサービスの提供や、サービスの改善が可能です。
また、課題解決のヒントになる場合もあるかもしれません。
最近は、国やそれぞれの自治体でオープンデータの普及が促進されていて、活用の幅が広がっています。
公的なデータが公開されることによって、見えづらい行政組織の評価が高まり、信頼性が向上するでしょう。
政府は行政の透明性を確保して国民から信頼を得るため、オープンデータの公開に力を入れています。
オープンデータのビジネス活用事例6選
オープンデータのビジネス活用事例は増加傾向にあります。
続いては、実際にオープンデータの活用した事例を6つピックアップしてご紹介します。活用する際の参考にしてみてください。
公共交通機関のルート検索サービス
公共交通機関のルート検索サービスにはオープンデータが使われています。
サービス自体はWebアプリやスマートフォンアプリとして提供されているので、誰でも気軽に利用できます。
ターゲットは、国内外の旅行者がメインで、日本語以外にも英語・中国語・韓国語での表記も可能です。
沖縄での利用が想定されているサービスは、沖縄県内の路線バスの路線が複雑という問題を解決するために生み出されました。
移動の利便性を向上させるため、バスやモノレール、レンタカー、船舶などの移動経路を検索するアプリが作成されました。
オープンデータの提供元は、沖縄のバス会社などです。それ以外にも、オープンデータとして公表されている公共交通機関の時刻表や路線情報も活用されています。
給付金の情報を取得できる家計簿アプリ
給付金の情報を取得できる家計簿アプリにも、オープンデータが活用されています。活用しているオープンデータは、自治体が公開している給付金に関する情報です。
取得したオープンデータは、アプリに登録している家計簿や家族構成から受給できる給付金を自動で知らせるための機能に使われています。
アプリで受給できそうな給付金を知ることが可能で、給付金の存在を知らなかったという事態も回避できます。
また、いくら受け取れるかわからない方に対しても正しい情報を提供できます。
そうすることで、受け取るべき方に給付金が行き渡るようになる魅力的なアプリです。
避難所の情報提供・検索サービス
災害時に役立つ避難所の情報提供・検索サービスにも、オープンデータが活用されています。このサービスを利用すると、全国にある避難所の情報を確認できます。
使われているオープンデータは、内閣府と地方自治体が公開している避難所情報です。
避難所に関する情報は、紙媒体で保管するのが一般的でした。そのため、情報の編集や地図の使用申請に手間がかかるというデメリットがありました。
そのような問題を解決し、万が一の時にどこにいても確認できるデータベースが開発されたのです。
避難所の情報は常に新しくなければいけません。最新データを更新するため、オープンデータだけではなく独自のヒアリングを行った上で更新されています。
感染症の流行状況の可視化・警告サービス
インフルエンザをはじめとした感染症の流行状況を可視化し、警告するサービスにもオープンデータが使われています。
このサービスは、地域の早期対策につなげるために取り入れられています。リアルタイムに感染症の状況を確認できるのが大きなメリットです。
アプリの場合は自治体だけで完結するのではなく、利用者と共に作れます。利用方法は、ユーザーが自宅付近で風邪の症状を投票し、情報共有するだけなので簡単です。
また、医療機関や保健所が公表している感染症に関する情報を地図上で表示できるので、感染症の発生状況を視覚的に確認できる点も、地域の早期対策につなげられる要素です。
従来は、インフルエンザなどの発生状況を可視化するのは難しいと考えられていました。
しかし、感染症の流行状況の可視化・警告サービスが生み出されたことで、感染症の拡大防止、早期の予防対策に役立てられます。
花粉情報の提供サービス
花粉情報の提供サービスには、総務省が提供する花粉情報のオープンデータが使用されています。オープンデータ以外にも、X(旧:Twitter)の投稿分析情報も活用しています。
花粉の飛散量、飛散地点の周辺・観光スポットなどで投稿された体感ポイントを算出し、飛散状況をわかりやすい形で確認できるのが花粉情報の提供サービスです。
花粉症の方にとって、花粉の飛散状況は気になるものです。
どれほど対策をして外出をすればいいのか、病院で飲み薬・点眼薬・点鼻薬などをもらうタイミングはいつ頃かなどを判断する指標になります。
また、花粉情報の提供サービスでは、オリジナルキャラクターを使ったものもあります。
不動産業での周辺環境の情報提供
不動産業で周辺環境の情報提供を行う際にも、オープンデータが活用されています。
例えば、物件探しサービスで校区情報に関するオープンデータ、住みやすさを確認するサービスでは犯罪率や人口データなどのオープンデータが使われています。
海外では、犯罪発生率や住宅価格、学校の質などのデータに基づいて周辺地域の住みやすさを評価しているアプリもあるので、日本国内でも同じようなサービスが提供されるかもしれません。
新居を構えるのであれば、引越し先の住みやすさは重要なポイントです。
そのため、校区情報に関するデータや犯罪発生率や住宅価格、学校の質などを確認できるサービスであれば、利用者の需要も満たせるでしょう。
オープンデータの入手先一覧
オープンデータの種類は多岐にわたり、入手先も異なります。
次は、オープンデータの入手先を分野ごとに一覧表でご紹介します。オープンデータを取得する際の参考にしてみてください。
政府機関系
政府機関系オープンデータには以下のようなものがあります。
日本総務省統計局 | 日本総務省統計局と統計研究研修所が共同運営しているサイトです。人口や物価指数などを確認できます。 |
DATA.GO.JP | 中央行政のオープンデータポータル}で、日本各府省の保有するオープンデータを確認できます。 |
The CIA World Factbook | CIAが世界の地図と共に毎年公表している国別の政情情報を確認できます。 |
金融・経済系
金融・経済系オープンデータには以下のようなものがあります。
世界銀行 | データ公開イニシアティブによって、約8,000もの開発指標を無料で公開しています。 |
国際通貨基金(IMF) | オンラインの経済データを無料公開しているオープンデータです。IMF加盟国のすべての経済セクターを網羅するマクロ経済データにアクセスできます。 |
全米経済研究所(NBER ) | 1973年6月以降のアメリカにおける景気動向、世界的な金融・経済動向などの報告書を確認できます。 |
ビジネス・企業系
ビジネス・企業系オープンデータには以下のようなものがあります。
法人番号と企業情報 | 前月末時点における法人の最新情報や、新たに設立された法人に関する情報などを、全権データファイルまたは差分データファイルとして提供しているサイトです。 |
OpenCorporates | 世界最大の法人データベースサイトで、法人データのオープン化を世界的に進めています。 |
医療・健康系
医療・健康系オープンデータには以下のようなものがあります。
日本保健衛生(厚生労働統計一覧) | 日本国内にある医療施設や労働者、健康の保持などに関する情報を確認できます。 |
世界保健機関(WHO) | 世界各国の政府や保健医療政策行政機関から報告を受けて作成した統計データベースの公開を行っています。 |
Healthdata.gov | 公共機関や民間の医療機関などから提供されるデータを200以上のデータセットとして公開しています。 |
不動産・観光系
不動産・観光系オープンデータには以下のようなものがあります。
日本政府観光局(JNTO) | 主要訪日旅行市場の基本的なデータを提供しています。 |
日本旅行業協会 | 各種キャンペーンの情報などを提供しています。 |
土地総合情報システム | 地価公示・都道府県地価調査の価格や不動産の取引価格を検索できます。 |
土地代データ | 日本全国の土地価格データが掲載されています。土地価格相場や地域別平均値、地価ランキングを知ることが可能です。 |
その他
上記以外にも、以下のようなオープンデータがあります。
Glassdoor | 企業に関する口コミなどを収集し、公表しています。 |
大学・大学院、専門教育 | 学校教育に必要な情報を共有しています。 |
人文学オープンデータ共同利用センター | 情報学や統計学の最新技術を活用した人文学データの学術情報リポジトリです。 |
オープンデータをビジネスで活用する際の注意点
オープンデータは、営利目的でも非営利目的でも活用できます。しかし、ビジネスで活用する際は、いくつか注意しなければいけないポイントがあるので注意してください。
最後に、オープンデータをビジネスで活用する際の注意点について解説していきます。
使用前に利用条件をよく確認する
オープンデータを活用するなら、使用前に利用条件をよく確認してください。
オープンデータはサイトにアクセスし、該当するデータをダウンロードするだけなので使い方はとても簡単なので、気軽に利用できる便利なデータだと感じる方も多いかもしれません。
確かに便利ですが、サイトによってはデータの使用理由の報告や出典の記載などが必要なケースがあります。
そのため、きちんと利用規約を確認しておかなければいけません。利用規約に反しない程度であれば、データの閲覧やダウンロード、加工などは自由にできます。
プライバシー問題に考慮する
オープンデータは、個人情報に該当しないようにされています。
しかし、オープンデータは多岐にわたるので、データをつなぎ合わせることで個人を特定できる可能性もないとは言い切れません。
膨大なデータを網羅しているからこそ、生まれるリスクです。
アメリカでは、「データブローカー」という悪徳企業が問題になっています。この企業では、ブラウザの履歴や資産情報、納税記録などの個人情報売買を仲介しています。
日本でも同じようなことを行う企業が出てくる可能性もないとは言い切れません。
形式が統一されていないので加工や編集が必要
オープンデータは、形式が統一されていません。特に行政のオープンデータは、自治体によって用語や形式が異なるので、ダウンロードしてすぐに使うのは困難です。
オープンデータを活用するためには、利用する側が加工・編集をしなければいけないことも認識すべき注意点です。
効果的に活用するには、データを抽出するためのツールや加工・編集ができる人材が必要になります。
オープンデータを活用して新しいサービスを作る際、どのようなリソースが必要になるのか、しっかり検討することが重要です。
まとめ・オープンデータ活用で新たなビジネスの可能性を広げよう
政府や地方自治体から提供されるオープンデータを活用することで、新たなビジネスの可能性が広がります。
なぜかというと、オープンデータから消費者のニーズなどを把握できるためです。
注意点を理解した上で活用すれば、新たなビジネスチャンスをつかめるなどのメリットも享受できるので、活用したい情報だといえます。
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(編集:創業手帳編集部)