ひとり社長は企業型DCと個人型iDeCoのどちらがいい?得するための比較ポイント

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確定拠出年金である企業型DCと個人型iDeCoはひとり社長の資産形成におすすめ


年金と聞いて多くの人がまずイメージするのは、厚生年金や国民年金といった公的年金です。
しかし、平均寿命が延び、公的年金だけでは老後の生活に不安があると感じている人も多いかもしれません。

そこで注目を浴びているのが、企業型DCや個人型iDeCoのような確定拠出年金です。
どちらも「確定拠出年金」であり、加入者自身が資産を運用して将来支給される年金額が運用結果によって変わる点では同様です。

ひとり社長が資産形成をするのであれば、企業型DCと個人型iDeCoのどちらが適しているのでしょうか。
それぞれの違いや選ぶ時のポイントを紹介します。

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ひとり社長が確定拠出年金での資産形成がおすすめな理由


起業したばかりの事業主にとっては、ビジネスに集中しすぎて自分の社会保険まで気が回らないこともあるかもしれません。
特に従業員を雇っていないひとり社長の場合には、自分は確定拠出年金に加入できないと勘違いしてしまう人もいます。
ここでは、ひとり社長の年金や社会保険について紹介します。

ひとり社長は税金や社会保険が個人事業主と違う

独立してフリーランスとなったり、起業したり仕事に対する姿勢や働き方は多様化しています。その中で増えているのが、ひとり社長です。
ひとり社長とは、ひとりで会社を設立して従業員を雇わない人、もしくは経営者でありながらプレーヤーとしても活躍する人のことです。

フリーランスとして働く人には個人事業主もいます。
個人事業主もひとり社長もどちらも企業に雇用されずに働く立場ですが、ひとり社長は法人であり事業の責任は法人にあります。
一方で、個人事業主は事業の責任は個人が負わなければいけません。

ひとり社長と個人事業主は税金や社会保険も違います。
ひとり社長の場合は、事業の利益に課せられる税金は法人税や法人事業税、法人住民税などです。
一方で、個人事業主は個人の所得に対して所得税や住民税が課せられます。
社会保険もひとり社長であれば厚生年金保険ですが、個人事業主の場合は国民健康保険です。

個人事業主として独立してから、法人化してひとり社長となるケースも珍しくありません。
個人事業主からひとり社長になる場合には、税金の計算方法や社会保険が変わる点も留意してください。

確定拠出年金


確定拠出年金は、米国の内国歳入法 401Kプランをお手本として生まれました。
拠出された掛金とその運用益の合計額から、将来の給付額が決まる年金制度です。

確定拠出型年金には、個人が掛金を拠出する個人型iDeCoと企業が主体となる企業型DCの2種類があります。
個人型iDeCoは、国民年金加入者と厚生年金加入者の両方を利用できますが、公的年金保険料未納者や免除者は加入者にはなれません。

一方で、企業型DCは厚生年金加入者限定です。
企業型DCは企業型確定拠出年金とも呼ばれ、企業の事情に合わせた柔軟な制度設計ができます。
昔の企業年金制度は、企業が掛金を拠出して運用の責任を負う確定給付年金が主流でした。
しかし、バブル崩壊による運用成績の悪化や終身雇用の崩壊、少子高齢化によって老後の資産形成も自助努力が求められています。
企業の退職金制度として、企業型DCを導入する企業は増えています。

企業型DC 個人型iDeCo
目的 福利厚生 自助努力
加入対象者 60歳未満の厚生年金被保険者
規約に定めることで最長65歳まで可能
原則60歳未満のすべての人
掛金 会社負担 個人負担
掛金の拠出限度額 月額55,000円 自営業者やその家族…月額68,000円
会社員…月額23,000円(企業年金に加入している場合は月額12,000円)*
公務員…月額12,000円
専業主婦(夫)…月額23,000円
国民年金任意加入被保険者…月額68,000円
運営管理機関 企業が金融機関などから選択 個人で金融機関から選択
掛金の納付 会社が納付 個人が納付
(会社員の場合は会社の口座から口座振替する事業主払込と、個人口座から口座振替する個人払込から選択)
運営手数料 会社負担 個人負担
制度開始の手続き 会社の委託を受けた運営管理機関を通じた手続き 個人が運営管理機関を選択して加入申し込みをする
運営 実施企業 国民年金基金連合会
税制メリット 事業主掛金が所得とみなされない
運用収益が非課税
掛金が全額所得控除
運用収益が非課税

企業DCと個人型iDeCoのそれぞれの違いを上記でまとめました。
個人型iDeCoは自助努力のための制度であるのに対して、企業DCは福利厚生が目的です。
そのため、個人型iDeCoは手数料を個人として負担しますが、企業型DCでは会社負担です。

どちらの制度も税金の負担軽減や運用収益が非課税となるメリットがある一方で、原則60歳になるまで受け取りができないことに注意してください。

企業型DCとは

企業型DCとは、企業が掛金を毎月積み立てて、従業員が自分で年金資産を運用する制度です。
金融商品の選択や資産配分などを自分で決定して運用します。

企業型ⅮCは、従業員が自ら年金資産の運用を行うため、運用成績次第で将来受け取る退職金や年金が変動します。
掛金は企業負担でも運用結果はあくまで従業員の自己責任の制度です。
定年退職を迎える60歳以降に積み立ててきた年金資産を一時金か、年金の形式で受け取ります。
積み立てた年金資産は、原則60歳まで引き出しできません。

企業型DCは、原則、厚生年金保険被保険者であれば導入が可能で、ひとり社長であっても導入できます。
ただし、企業型DCを運用する機関によっては企業規模の要件を設けていることもあります。
企業型DCを導入する時には、加入するにあたって条件があるかどうか確認してください。

企業型DCのメリット

企業型DCは、加入する側と企業の両方にメリットがある制度です。企業型DCの事業主掛金は個人の所得とはみなされません。
自分で加入するか決める選択型のDCの場合でも同様です。
従業員が上乗せで支払うマッチング拠出の場合には、個人の所得として拠出するものは全額所得控除の対象になります。
企業型DCの選択制やマッチング拠出については後述します。

さらに、通常の投資信託の運用益は20.315%の税金が課されますが、企業型DCの運用益であれば非課税です。
企業型DCの受け取り方法は、一時金と年金から選択可能です。
年金受け取りの場合には公的年金等控除、一時金受け取りの場合には退職所得控除を利用できます。

企業型DCは導入する会社にもメリットがあります。企業が負担する拠出金は全額を損金算入可能な点です。
また、確定給付型の年金と違って、将来の運用状況による掛金の追加負担が発生しません。
確定拠出年金を導入することによって福利厚生が充実すれば、人材を採用する上でも有利に働きます。

企業型DCの制度設計パターン

企業DCの制度設計には、給与上乗せとマッチング拠出、選択制があります。給与上乗せは、対象者全員の給与に上乗せして支給するタイプです。
上乗せ分は福利厚生費として損金で処理できます。

また、企業型DCには任意加入となる選択制もあります。現行給与の一部を原資とする、財形年金のような任意加入の制度です。
給与上乗せと選択制を併用して、選択制による掛金に支給される掛金を上乗せする方法もあります。

企業が拠出する掛金以上に積み立てたいと考える場合には、会社から支給される掛け金の額を上限として、従業員の所得から上乗せできるマッチング拠出も可能です。
マッチング拠出による掛金は全額が所得控除の対象となり、所得税と住民税を軽減する効果もあります。
それぞれの制度ごとに掛金拠出限度額や掛金が違います。どの制度設計が適しているか、要望に応じた設計を選ぶようにしてください。

個人型iDeCoとは

個人型iDeCoは、国民年金や厚生年金のような公的年金とは別に給付が受けられる私的年金制度です。
公的年金と違って、加入は任意で加入の申し込みや掛金の拠出、掛金の運用のすべてを自分でおこないます。
つまり、自分で決めた額を積み立て運用して60歳以降に受け取るもうひとつの年金ということです。
年金の受取額は、拠出した掛金の合計額や運用成績によって変わります。

個人型iDeCoに加入する時は、個人型iDeCoを扱っている金融機関などの運営管理機関で加入手続きをおこないます。
運営管理機関ごとに運用商品や手数料が違うので、個人型iDeCoで購入したい商品を取り扱っている金融機関で申し込まなければいけません。

個人型iDeCoのメリット

個人型iDeCoのメリットは税制の優遇措置が受けられる点です。個人型iDeCoでは、積み立てた掛金全額が所得控除の対象となります。
拠出した掛金の年間総額を所得から差し引けるため、所得税と住民税が軽減されます。

節税できる金額は、掛金や年収によって違いますが、積立期間中は控除の恩恵を受け続けられるため、長期的に節税効果が期待できる点がメリットです。
さらに、個人型iDeCoで得られた運用益も非課税です。個人型iDeCoで築いた資産は60〜75歳で自分が希望する方法で受け取れます。
年金として分割で受け取る場合には、公的年金等控除、一時金として受け取る場合には退職所得控除が適用となり税負担が軽減されます。

企業型DCと個人型iDeCoは併用もできる

以前は企業型DCに加入している場合、個人型iDeCoには加入できませんでした。
しかし、2022年の法改正によって、原則企業型DCに加入していても個人型iDeCoを利用できるようになりました。

ただし、企業型DCでマッチング拠出を選択している場合や掛金額が毎月定額拠出になっていない場合には、併用できないことがあります。
さらに、企業型DCに加入している人が個人型iDeCoに加入するには、毎月の掛金合計額は拠出限度額の範囲内にしなければいけません。

iDeCoと企業型DCを併用することで、税金の優遇最大化が可能になり、より幅広い運用商品から選択できます。
しかし、併用することによって、企業型DCとiDeCoの2つの口座を管理することになり、運用の手間が大きくなってしまいます。
メリットとデメリットの両方を理解した上で、併用してください。

ひとり社長が企業型DCと個人型iDeCoを比較するポイント


ひとり社長が、将来の資産形成を検討する時は企業型DCと個人型iDeCoのどちらを選ぶかがポイントとなります。
企業型DCと個人型iDeCoは併用も可能ですが、並行して運用すると手間やコストもかかってしまいます。
どちらが自分に合った制度なのか、見極めるためのポイントをまとめました。

①控除額をどうするか

企業型DCとiDeCoは、それぞれ掛金の上限額が設定されています。企業型DCの上限額は、月額55,000円です。
iDeCoは加入資格によって限度額が設定され、月額12,000円〜68,000円となります。
他の制度に加入していないひとり社長の場合は、企業型DCは限度額55,000円、個人型iDeCoに加入する時の限度額は23,000円です。

もともと年金としてあまり拠出する予定がなければ、どちらでも大きな影響はないかもしれません。
しかし、節税効果を大きくしたいのであれば限度額が大きいほうが効果を発揮しやすくなります。

②個人の節税か経費による節税か

企業型DCで掛金を拠出した場合は、経費として計上可能です。そのため、法人税の課税所得を計算する時に損金算入して、法人税を減らす効果があります。

一方、iDeCoの場合は所得税や住民税の控除の対象です。加入者本人の所得に対しての節税になるので、企業型DCとは扱いが異なります。
企業の利益や個人としての所得によっても節税効果は異なるので、シミュレーションしてみてください。

③社会保険とのバランス

社会保険料は収入金額に対する料率で決まります。ひとり社長は、会社から支払われる給与や報酬が自分の所得となります。
個人型iDeCoの掛金は、自分自身の所得から拠出することになり、社会保険料の算定から控除されません。

一方で、企業型DCは会社負担の掛金で、社会保険料の算定基礎には含まれないこととなっています。
掛金が給与から控除されることで給与額が下がり、社会保険料の軽減効果があります。

④福利厚生としての活用

ひとり社長であっても、事業の拡大によって従業員が増える可能性もあります。企業型DCは、従業員の福利厚生としても活用可能です。
福利厚生を充実させることによって従業員のモチベーションがアップしたり、新規採用でより優秀な人材を採用できたりする可能性もあります。

ただし、まだ成長段階の企業だと、管理運営のコストに不安があるかもしれません。企業型DCは、一度導入すれば廃止が難しくなってしまいます。
会社の業績や採用の予定も考えながら検討しなければいけません。

⑤加入の手間

企業型DCを導入するには制度設計からスタートするため手間がかかります。
将来的に従業員が加入した場合には、加入者の入退社や掛金の変更といった事務が発生するため、負担が大きくなることもデメリットです。

一方で、iDeCoは個人で加入するため手続きが簡便に済む点がメリットです。企業型DCを導入する場合には、管理コストまで考えておくようにしてください。

まとめ

ひとり社長の確定拠出年金は、今後もひとりでビジネスを行うのか、または事業拡大で従業員を増やすのかによって選択が変わります。

確定拠出年金は、長期的に運営することになります。
企業DCと個人型iDeCoはそれぞれメリットがありますが、自分の資産形成のため、将来の会社のためにどちらを導入すべきかよく検討してください。

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(編集:創業手帳編集部)

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