Castee 大竹 慎太郎|ソーシャルコラボーレーションサービスで隠れた才能に光を当てる

創業手帳
※このインタビュー内容は2023年07月に行われた取材時点のものです。

SNSインフルエンサーの新しいマネタイズの形

SNS発信に力を入れている個人も増えていますが、情報を発信するプラットフォームやジャンルごとに、インフルエンサーがマネタイズしやすい分野とそうでない分野があります。

そもそもマネタイズしにくい分野では、実力や才能がある発信者でも、なかなかマネタイズできないのが実態です。

インフルエンサー同士のコラボという形で、この課題の解決に乗り出しているのがCasteeの大竹さんです。

そこで今回は、Castee創業までの経緯やCasteeで実現できるインフルエンサーのマネタイズ方法について、創業手帳の大久保が聞きました。

大竹 慎太郎(おおたけ しんたろう)
株式会社Castee 代表取締役
1980年生まれ。2003年サイバーエージェントに新卒入社。SBIグループでの新規事業立ち上げを経て、2009年よりSpeee 執行役員経営企画室長に就任。2012年トライフォートを創業、代表取締役CEOに就任。2018年トライフォートをM&Aにより売却、2020年トライフォートをMBOし合併を経てTrysを設立、代表取締役社長CEOに就任。2021年TrysをM&Aにより売却。2023年3月Casteeを創業、代表取締役に就任。著書に「起業3年目までの教科書(文響社、2018)」がある。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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MBA取得し2度目の起業が「Castee」

大久保:起業までの経緯を教えてください。

大竹:群馬県での学生時代はハンドボールをやっていて、スポーツ推薦で大学に行き、卒業後にサイバーエージェントに入社しました。

そこは、起業を目指している人が多いと思われがちな会社でしたが、当時の私は起業はあまり考えておらず、むしろ起業って普通ではないちょっと変わった人がするものだと思っていました(笑)

その後、SBIグループに転職しながら、MBA(経営学修士)を取得するために大学院に通い、その後、創業まもないSpeeeの役員として参加しました。

このようにキャリアを積み重ねていくと、意外と思ったより普通な人が起業していることに気付いて「自分でもできるかも?」と、起業に対しての固定概念が崩れていきました。

ここまでを20代で経験し、30代に入るときにちょうどスマホ市場の波が来ていて、ビジネスで仕掛けたら上手くいくのでは?と思い、2012年にトライフォートという会社を立ち上げ、私の起業家としての人生が始まりました。

学生起業家やビジネスを経験せず起業する方など、本当にすごいなと思いますが、私は順当にキャリアを積んだ後に起業に至ったため、起業家の中でも割と普通なタイプだと思っています。

1社目の起業で得た気づきとは?

大久保:起業を経験して、気づいた点はありますか?

大竹:1社目のトライフォートでは、経営した10年間で色々とありました。

資金調達をして上場準備をしていましたが、上場直前で延期になってしまったことをきっかけに、2018年にM&Aで会社を一部売却しました。その後、私が個人で買い戻し(MBO)、別の会社と合併させて2年ほど事業をしたのち、再度2021年にM&Aで売却しました。

本来は、一つの会社を永続的に大きくしていきたいと考えていたため、2度も売却していることは周囲からは「すごいね」と言っていただけるものの、私としては必ずしも本望ではありませんでした。

一方で、2度の売却経験をきっかけに、知り合いからは数多くのM&Aの相談をされる様になったのは、想定しなかった変化の一つではあります。

「自分が好きなこと」をするために「エンターテインメント×IT」領域で起業

大久保:その流れで今の会社の起業に繋がると思いますが、詳しく教えていただけますか?

大竹:1社目では、どの様な事業であれば勝てるか、という観点で勝負する事業を特定して起業しました。

2012年頃、スマホが急速に普及してスマホアプリが増えていく中で、スマホ向けのゲームも増えていきました。そのため、スマホアプリを受託開発する事業と、スマホのゲーム事業を2本柱とする会社を立ち上げました。それがトライフォートです。

売却した後に思ったことですが、勝つための情熱を継続させていくには、自分が好きなことをやらなければいけません。勝てるからやるという発想のみだと、事業に飽きてしまって長続きしないのです。

2度目の起業であれば、勝てる領域を探す精度が高まっており、そのアプローチで勝負するのが良いのでは?と思われがちなのですが、根本的には勝てるだけの事業を探したわけではありません。一番は今度こそ「やりたいことをやる」という考えが大きかったです。

そのため、今回の起業は、日本やアジアにはまだ存在しない新市場を作り出すことや、自身がやりたい「エンターテインメント×IT」の事業かつ、国境を越えやすいプラットフォームビジネスで勝負することにしました。

さらに、新しい市場を切り開き、今回のプラットフォームビジネスを展開していく中で、将来的に今あるビッグマーケットをリプレイスすることができると考えており、これらをテーマに掲げてやっています。

ソーシャルコラボーレーションサービス「Castee」の魅力

大久保:Casteeは、具体的にどのようなサービスですか?

大竹SNS上のユーザー同士をマッチングさせて、コラボレーションを実現する日本・アジア初のサービスです。YouTubeやTikTokなどでコラボ動画をよく目にすることがあると思いますが、それをもっと広げて一般化させるコンセプトです。

ビジネスモデル的にはメルカリさんやココナラさんに近いのですが、メルカリでは物の売買を、ココナラさんはスキルの売買を行っていますが、Casteeはコラボの出演をCtoCメインで行うサービスです。

これまで、有名なインフルエンサー同士でしかコラボが実現しなかったところ、面識のないインフルエンサー同士でも、あるいはインフルエンサーと一般ユーザーでも、もっと気軽にコラボができる様にしたいと思っています。

コラボ依頼を出す時に、コラボ出演料を支払える仕様になっているのですが、0円で依頼することも可能です。コラボ実現のためには出演料だけでなく企画内容も重要なので、それらの組み合わせでコラボが実現するかが決まります。

また、コラボは、リアルでなくても、オンラインでも可能です。

InstagramやTikTokやYouTubeのライブ配信、Twitchではプロゲーマーと一般ゲーマーのコラボなども実現できます。TikTokではDUETという機能で、画面を分割してオンライン上で気軽にコラボできる仕様があったりもします。

さらに、SNSのアカウント単位でコラボ依頼を出せるので、BtoCやBtoBのコラボも当然ありえます。最近では、SNS上の企業アカウントが急増していますし、学校や部活、様々なコミュニティ単位でSNSアカウントが存在しているため、コラボの幅はかなり広いと言えます。

また、日本だけでなく海外にも対応しています。

100万人くらいのフォロワーを抱えるインフルエンサーは、その中の半分以上が海外の方だったりします。例えば、Casteeを通してコラボの募集をかけた際、この情報が届くのも海外の方が多くなります。

オンラインでのコラボが実現できる今では、言語の壁さえ超えられればコラボができるのです。そのため、近々多言語対応を実現させて、一刻も早く海外市場にも挑戦していく予定です。

光が当たっていない才能に光を当てる仕組みづくり

大久保:ソーシャルコラボーレーションサービス「Castee」を展開する上での課題を感じていますか?

大竹エンターテインメント領域になるため、可処分時間の奪い合いが根本にあります。

1人の人がエンタメコンテンツに触れる時間は限られていますので、例えば、ゲーム会社にとっての競合はゲーム会社だけではなく、カラオケやテーマパーク、テレビも含まれりことになります。

一方で、SNS領域に関しては、コラボすることでプラスになることしかありません。

現状、TikTok、Instagram、YouTube、Twitter、Twitch、この5つのプラットフォームでコラボができるようにしていますが、それぞれ掛け合わさることで、SNS全体の接触時間が増えることとなります。

大久保:SNSのインフルエンサーも、組織でやっていないから営業力がないという人でも、支援できる様なサービスなんですね。

大竹「才能に対して光を当てていこう」という思いを元に、ビジョンとミッション「CasteeWay」という形で定めています。

例えば有名人が、SNS上で面白いと思ったユーザーを取り上げたら、フォロワー数の多さからバズる可能性があります。

それはきっかけとして光を当てたにすぎず、根本的には元々面白いからバズったということになります。

このように、世の中にはチャンスという光が当たっていない才能はたくさんあると思いますので、SNS上でコラボをすることによってフラットに活躍できる環境になると思っています。

そういった存在になりたいです。

大久保:SNSをやっている、自己表現をする才能がありつつも、営業をしなければいけない人力の領域が合理化されるんですね。

大竹:おっしゃる通り、これまではInstagramやTwitterのDMでコラボ依頼や仕事のオファーなどやり取りをしていたと思います。

スパムが多かったり、お金のやり取りがしづらかったりと、多くの課題を解決するためのプラットフォームとして、このCasteeが存在します。

CasteeによるSNSインフルエンサーのマネタイズ手法

大久保:インフルエンサーとして、マネタイズしていくためには、何をするべきかアドバイスをください。

大竹:商品をPRするマネタイズは、規制が多くなったりで正直限界があると思います。
ユーザーからするとPRだとわかりますし、効果としても薄いからです。

そのため、見たいと思うコンテンツを作る中でマネタイズしていくことが大事になってきます。

YouTubeはアドセンスをつけられるので収益を得られますが、InstagramやTikTokはフォロワーがいるだけだと大きな収益になりません。

面白いコンテンツを作る実力はコラボで浮き彫りになりますが、同時にコラボで収益を得られるようにもなれば、ますますチャンスが広がると思います。

面白いコンテンツを生み出せれば、多くのユーザーがフォローするアカウントになり、本質的な価値を外に提供できるため、インフルエンサーとしてはそういった取り組みを求めると思います。

大久保:SEOも通用しなくなりますよね。

大竹:おっしゃる通り、意味のあるコンテンツでないとGoogleのアルゴリズムに認めてもらうことが出来ません。

SNSの多くはクローズドなプラットフォームのため、前提としてSEOの概念自体が存在しませんが、そんな中でもSEOを活用しようとした場合、リンクをたくさん貼る小細工をしても今では評価されません。

プラットフォームも賢くなっているので、そのような手口は通用しません。

大久保:どういったインフルエンサーだと、コラボを求められることが多いのでしょうか?

大竹:相性はとても大きいです。

例えば、旅行系や音楽・ダンス系のインフルエンサーであれば、同じような人とコラボしやすいですし、コラボ企画の切り口を多数考えられるという意味では、SNS上ですでに様々な企画を実施している方とかは、尚好まれやすいです。

そもそも、コラボを受ける側のメリットとしては、いくつかあると思っています。

今までにない新たな報酬が得られる、コラボによって視聴者が増えた結果フォロワー数が増える可能性がある、というのは通常のメリットです。

それ以外にも、自分のコンテンツを持っている人が、それを輝かせるのに適しています。

例えば音楽をやっている人が、自分の新曲を使ってコラボ、お笑い芸人が新ネタを使ってコラボ、などを募集して実際にコラボすることで、自身のコンテンツをSNS上で拡散することが出来ます。

このようにコンテンツのPRに繋がるコラボの使われ方も増えていくと思っています。

大久保:これをDMでやり取りせず、簡単なステップでできるということですね。

魂を燃やして輝き続けられる領域を見つけた起業家は強い

大久保:起業家に伝えておきたいことはありますか?

大竹:会社をやるからには、魂を燃やして輝き続けられるかという点をとても大事にしています。

だからこそ、好きなことをやるべきだと、常々思っています。

大久保:特徴のないものは、どんどん埋もれていってしまいますよね。

大竹:現時点のCasteeはβ版で、やりたいことの10分の1もできていない段階なのですが、例えば2〜3ヶ月以内に様々な切り口で検索ができる機能を追加しますので、人力では探し尽くせない登録インフルエンサーでも、すぐに探すことができるようになります。その後も矢継ぎ早に新機能をリリース予定です。

いわゆるインフルエンサーマーケティングのような、案件の記事を見つけてタスクをこなすとお金がもらえる仕組みのものは、クローズドなプラットフォームになってますが、Casteeは完全なオープンプラットフォームとなっています。ブログなどのサービスと似ていますね。

そのためログインしなくてもインフルエンサーを探せるという特徴がありますし、Google上にインデックスされるので、検索経由でCasteeの各登録ユーザーページに流入が見込めます。

さらに、コラボを募集したり依頼する当事者だけでなく、それを周りで見ているユーザーが「僕たちは〇〇と△△のこんなコラボが見たいです!」と掲示板のように投稿できて、リクエストが送れたり、それを見た別のユーザーがいいね!できるような機能も追加予定です。

当事者起点ではなく、一般ユーザーがこんなコラボ見てみたい!という声を集め、各インフルエンサーに通知がいく仕組みです。

つまり、コラボする人たちだけでなく、見ている人たちも巻き込んだサービス設計にしていくことができれば、新たな市場を開拓して、コラボカルチャーを産むことができると思っています。

そのため、早く国境を超えなければいけませんし、VTuberやアニメや漫画のキャラクターともコラボができるようにしたいです。

大久保:最後に起業家へのメッセージをいただいてよろしいでしょうか?

大竹:新市場で全く新しいサービスのため、現時点では競合もいません。

競争戦略ではなく、いかに市場を創れるかがポイントです。その中で、どんなサービスにしていくのかは、ぜひ楽しみに見ていてください。

創業手帳では、起業家のインタビューなど多数掲載されています。無料ですので、ぜひご覧ください。

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