法人住民税はいくらかかる?赤字の場合や会計処理についてまとめ

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法人を設立する時には、法人住民税等のコストについても考えておこう


法人が活動を続けるにあたって、法人税のほか、法人事業税や法人住民税といった税金がかかります。税金は企業が活動し続けるためにも支払わなければいけません。

しかし、赤字の場合でも黒字の時と同様に法人税や法人住民税を支払うのでしょうか。
今回は、起業する前に知っておきたい法人に課せられる税金の基礎知識をはじめ、計算方法や会計処理についてまとめました。

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法人住民税の基礎知識


法人を設立する時に事前に知っておきたいのが、法人を維持するコストです。
その中でも、法人にかかる税金は個人事業主とは違う点に注意する必要があります。
法人にかかる税金について紹介します。

法人と個人事業主の税金の違い

法人と個人事業主では、課せられる税金が異なります。
税金には、大きく分けて国に納める国税と各都道府県に納める地方税があります。
以下に、一覧でまとめました。

法人 国税 法人税 消費税 特別法人所得税
地方税 法人住民税 法人事業税 地方消費税
個人事業主 国税 所得税 消費税 特別復興所得税
地方税 個人住民税 個人事業税 地方消費税

税金の種類が違うのはもちろんのこと、税率にも違いがあります。
2022年12月現在、法人が納める法人税の最高税率は最高23.20%です。
一方で、所得税の最高税率は45%です。
そのため、課税対象となる所得金額が大きくなると、税金面で法人のほうが税金は安くなることがあります。

株式会社が支払う税金の種類


法人は、法律上人格が認められている人間とはまったく別の存在です。
会社を設立することによって、会社の代表者である自然人と法律上まったく別の存在である法人が生まれます。
法人が支払う税金について、それぞれを紹介します。

法人税

法人税は、法人が得る所得に対して課せられる国税です。
法人税の税率は、法人の種類や資本金額、年間所得金額で変動します。
法人税は、課税所得×税率-税額控除額で計算します。

法人にかかる法人税は、個人事業主の所得税よりも最高税率が低い点も特徴です。
さらに、法人のほうが経費として認められる範囲が広いため、節税のために法人を選択する人もいます。

法人になると自分の給与も法人の経費として計上でき、法人と個人で所得を分散することが可能です。
自分の給与には給与所得控除も適用されるため、所得を分散して税額を下げる効果があります。

法人住民税

法人住民税は、会社を登記している都道府県や市町村に納める地方税です。
法人住民税は法人税割と均等割から構成され、税率は自治体によって異なります。

法人税割は法人税額を課税標準として決まる税金で、法人税額×税率で計算します。
課税標準とは、税金の課税の対象であり、税額を計算する基礎になる数字を指すものです。
一方で、均等割は資本金額や法人の区分によって金額が決定する仕組みです。

法人事業税

法人事業税は、事務所などがある自治体で事業を営むことに対する地方税です。
法人事業税は、所得割の課税標準額×税率で計算します。
法人の種類や資本金額などで税率が変動する仕組みです。

特別法人事業税

特別法人事業税は、法人事業税の一部を分離して導入された国税です。
国税ではありますが、地方税の法人事業税と併せて納付するものです。

特別法人事業税は、2019年度の税制改正にともなって創設され、法人事業税の申告納付義務がある法人に対して課せられます。
特別法人事業税の税額は、法人の事業税額(所得割額・収入割額)×税で計算されます。

消費税・地方消費税

消費税は、モノやサービスの消費に課税される税金です。
商品を売り上げて受け取った消費税と、仕入れや経費で支払った消費税の差額を計算して納税します。
さらに、消費税は消費税と地方消費税の合計額です。
地方消費税は、譲渡割と貨物割に分けられ、消費税と併せて納付します。

法人住民税の計算方法


法人税・法人事業税・法人住民税は、会計上は「法人税等」で表されることも多く、その違いをあまり意識したことがないかもしれません。
会計上の処理方法はどれも変わらないものの、それぞれの性質には違いがあります。

法人税・法人事業税・法人住民税における性質の違いのひとつは、課税標準です。
法人税や法人事業税の課税標準は所得であり、所得は税務上の益金から税務上の損金を差し引いたものを指します。
法人事業税の場合には、資本金が1億円を超える企業になると別に付加価値や資本金が課税標準となります。

一方で、法人住民税の課税標準は3つあり、そのひとつが法人税額です。
法人税額を課税標準として、法人税割と呼ばれる法人住民税が計算できます。

残りの課税標準は、従業員数と資本金です。
これらを使って均等割の法人住民税の金額を算定します。

ここでは法人住民税について、より詳しい内容を紹介します。

法人税割

法人住民税は、法人税割と均等割の合計額です。
法人税割は、法人税の金額をもとに計算する住民税で、儲かっている法人ほど税額が高くなる性質があります。
法人割の計算式は以下の通りです。

法人税割=法人税額×税率

ただし、税率が一定の基準を超えている法人には超過税率が適用されます。
それ以外の法人は、多くの自治体で標準税率の適用となります。
以下は、2022年現時点での税率での法人税割の計算式です。

(都道府県)法人税額×1.0%
(市町村)法人税額×6.0%

法人住民税には、都道府県に対して納める都道府県民税と、市町村に対して納める市町村民税があり、それぞれ税率は異なります。

均等割

均等割は、その名前からもわかるように、法人であれば等しく払うように義務付けられている税金です。
ただし、等しく支払うといっても、大規模の法人と地域密着型の企業では規模が異なります。

そのため、都道府県民税では資本金などの額、市町村民税では法人の資本金などの額に加えて従業者数で払う税金の額が区分されています。
このように規模に応じて法人を分けた上で、同一区分内で同一額を課しているのが均等割です。

均等割の金額を以下の表でまとめています。

資本金等の額 都道府県民税の均等割額 市町村民税均等割
従業者数50人超
市町村民税均等割
従業者数50人以下
1千万円以下 2万円 12万円 5万円
1千万円超1億円以下 5万円 15万円 13万円
1億円超10億円以下 13万円 40万円 16万円
10億円超50億円以下 54万円 175万円 41万円
50億円超 80万円 300万円 41万円

法人にかかる税金はどのように納付する?


起業をする時には、どのような税金が発生するのかだけでなく、どのように税金を納税するのかも知っておかなければいけません。
企業が活動を続けるためには、納税は義務です。
以下に、それぞれの税金の支払い方をまとめました。

法人税・消費税

法人が支払う国税の中で、支払いに注意しなければならないのは法人税と消費税です。
法人税は、事業年度の終了日の翌日から2カ月以内、消費税も原則として事業年度の終了日の翌日から2カ月以内に支払います

例えば、事業年度を4月1日から翌年の3月31日と定めている場合には、5月31日が期限となります。
国税の納付は、ダイレクト納付やクレジットカード納付、コンビニエンスストア納付などから選択可能です。

法人住民税・法人事業税

法人住民税と法人事業税は、事業年度の終了日の翌日から2カ月以内に支払います。
法人住民税と法人事業税は地方税で、納付書を使って現金払いをするほか、電子納付などの方法もあります。
納付手続きについては、各地方公共団体に確認してみてください。

電子申告システムも活用しよう

法人が支払う税金は種類も多く、それぞれ手続きをしていては手間も時間もかかってしまいます。
そこで普及が進められているのが、国税の電子申告、納税システムである「e-Tax(イータックス)」です。
法人税等の申告や法定調書の提出のほか、納税も「e-Tax」を通じて行えます。

国税の支払いで「e-Tax」が利用できるように、地方税では「eLTAX(エルタックス)」を使って納付できます。
「eLTAX」は、地方税の申告や申請、納税手続きができるシステムです。

従来は、各地方公共団体に対して郵送や窓口で提出しなければならなかった申請も、電子的なひとつの窓口で行えるようになりました。
申告から納税まで、効率良く手続きができる電子申告も活用してみてください

法人税等の会計処理


売上げや仕入れの取引きのように、発生した税金も会計処理が必要です。
法人税等の税金をどのように会計処理すれば良いのかをまとめました。

法人税等の中間納付

企業の税金は年1回の確定申告で申告しますが、法人税等は事業期間の途中に中間申告と中間納付をして納税が分割されます。
中間納付は、会計処理の負担を軽減する目的で、全事業年度の概ね半分程度を納付する仕組みです。
また、仮決算をして納付する方法もあります。

【例】法人税等を200,000円中間納付し、支払いは当座預金から行っている場合

借方 貸方
仮払法人税等 200,000円 当座預金 200,000円

決算時の処理

法人税等の額は決算の時期に明らかになります。
まだ法人税等の納付期限ではありませんが、支払いが確定しているので会計処理が必要です。

【例】確定した法人税等の額が500,000円だった場合

借方 貸方
法人税等 500,000円 仮払法人税等 200,000円
未払法人税等 300,000円

税金納付時

法人税等の未払い分は、未払法人税等として負債に計上します。
税金の支払い時には、未払法人税等を消す会計処理が必要です。

【例】未払法人税等で計上していた残りの税金を当座預金から支払った場合

借方 貸方
未払法人税等 300,000円 当座預金 300,000円

そのほかの税金の会計処理

法人税・法人事業税・法人住民税は法人税として支払いますが、企業が関わる税金はこれだけではありません。
例えば、固定資産税・都市計画税・収入印紙税・自動車税は租税公課として処理します。
税金の種類によって会計処理の方法も異なるので、確認してみてください。

法人住民税は赤字でも支払う?


企業が毎年安定して黒字であり続けるとは限らず、黒字の年もあれば、残念ながら赤字となる年もあるかもしれません。

赤字の時には、税金の費用負担も重くのしかかりますが、赤字の場合には、法人住民税は支払うのでしょうか。

赤字でも原則納付しなければならない税金

法人税等として、法人税・法人事業税・法人住民税について前述しました。
これらは課税標準が異なり、赤字となった時に税金を支払うかどうかによっても違いがあります。

所得を課税標準とする税金は基本的に所得がない時には税金が発生しません。
しかし、所得以外の課税標準を採用している場合には、赤字の時にも税金を支払います。

具体的には、法人住民税の法人割は法人税を課税標準としています。
法人税は、所得を課税標準としているため所得がなければ発生しません。
つまり、所得がない場合には法人税も法人住民税の法人割も発生しない仕組みになっています。

しかし、法人住民税は法人割だけでなく均等割もあり、均等割は資本金や従業員数を課税標準としているため、赤字の場合でも発生します。
つまり、赤字の時でも法人住民税の均等割は支払わなければいけません

法人事業税は、所得を課税標準としているため、所得がない時には発生しません。
ただし、資本金が1億円超になると外形標準課税となり、付加価値割及び資本割という所得以外の課税標準が使われます。
そのため、赤字の時でも法人事業税が発生することがあります。

赤字になっても免除されない税金は、法人住民税の均等割・一部法人の事業税・消費税です。
消費税は消費者から預かった税金で、企業が赤字であっても関係なく納める必要があります。

ただし、特定の条件を満たす場合には免税事業者として納税義務がなくなるケースがあります。
赤字となった場合には、支払わなければならない税金も早めに把握して、資金の準備をしておくことが大切です。

事務所が複数地方にある場合の法人住民税はどうする?

法人は、複数の地方自治体や地域に事務所や支店を置くこともあります。
そういった場合には、事務所や支店を構えているすべての地方団体に法人住民税を納めることになります。

ただし、全地方自治体に同額納付するのではなく、法人税割の場合には課税標準を事務所で働く従業員数などで分割して、税率を乗じた額をそれぞれの地方自治体に支払う仕組みです。
均等割は、課税標準が分割されることはありません。
それぞれの自治体で働く従業員数に応じて、定められた金額を支払います。

均等割が免除されるケースがある

法人住民税の均等割は、企業が赤字の場合にも支払う税金です。
しかし、均等割は法人が存続する限りは原則発生するものの、納付が免除されるケースもあります。
それは、非営利法人として活動している場合や収益事業を営んでいない場合、また法人としての活動を休業している時です。

上記に該当し、条件を満たす場合には法人住民税の均等割が免除されることがあります。
均等割の免除の手続きは、「均等割免除申請書」を自治体の税事務所などに提出してください。
それぞれの自治体によって手続きや要件が異なる場合もあるため、まずは問い合わせるようにおすすめします。

まとめ

法人の設立手続きで、予想外の費用に驚く人も少なくありません。また、法人は設立してからも維持するために税金などの様々な費用が発生し続けます。

どのような税金が発生するのか、法人税や法人住民税にどういった違いがあるのかを知っておき、備えましょう。
これから起業する人も税金の仕組みを知り、どうすればコストダウンできるか、費用はどの程度用意すれば良いのかを検討しておくようにおすすめします。

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(編集:創業手帳編集部)

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