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2022年7月22日フルカイテン株式会社 瀬川直寛|在庫を利益に変えるクラウドの事業展開で注目の企業
在庫を利益に変えるクラウドサービス(SaaS)の事業展開で注目なのが、瀬川直寛さんが2012年に創業したフルカイテン株式会社です。
小売り業を営む方々にとって、商品の仕入れ、適正な販売戦略と在庫管理、商品の完売は、事業を成長させる上でとても重要なことです。
どの商品が、いつ、どこで、いくらで、どんな人たちに購入されているのか、その状況は当初の販売計画(予測)とずれていないか、など、こまめにチェックをしながら、次なる販売戦略を立てたり、商品の仕入れ方や販売方法を工夫し、残在庫を抱えずに販売期間内で完売できるよう工夫と努力をされておられることと思います。
販売商品の量や販売場所が限られている間は、商品管理も行き届くかもしれませんが、商品が多くなり、販売場所や販売方法が多岐にわたってくると、各商品のポテンシャルを適正に管理するのが複雑困難になってくることもあるでしょう。あるいは、商品管理が属人的であるがゆえに、経験の浅い担当者に変わったとたんに販売計画が崩れてしまうケースも考えられます。
そうなってしまうと商品サイクルに滞りが出てきて、結果、在庫を多く抱え、期末には無駄に税金が加算されたり、本来必要のないコストが発生したり、果てはキャッシュフローが悪くなり黒字倒産の危機に陥ったり、という可能性も出てきます。
それぞれの商品、特に在庫商品の特性や売り上げ貢献度を素早く分類・把握し、適正な販売戦略を立てることが出来れば、今までお荷物になってしまっていた在庫を利益に変えていくことが可能です。
例えば、店頭販売では値引きしなければ売れなかった商品が、ECだとプロパー価格(正価)で売れていくということがあったり、販売予定期間を大幅に過ぎてもロングテールでコツコツと地味に販売数を伸ばしていく商品もあったりします。同じ商品でも大きさやサイズが違うことで売れ行きが大きく違うこともあるわけです。
こうした、人力だと数時間以上かかる大量の在庫分析をAIによって全て自動分析し、売上データ、在庫データ、商品マスタを毎日、自動で読み込み、誰もが簡単に最新の在庫が持つ商品力をいつでも確認できるシステムの開発に、今、大きな注目が集まっています。
フルカイテン株式会社の瀬川直寛さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。
・このプロダクトの特徴は何ですか?
小売業は抱えている在庫の2割から粗利の8割を生み出していることが弊社の調査でわかりました。では残り8割の在庫は本当に粗利を生み出すことができないのでしょうか。当然そのようなことはなく、残り8割の在庫には売上や粗利の機会損失が多く含まれています。
FULL KAITENはこういった機会損失に課題を抱える企業に対して、AIや統計学的なアプローチで売れ行きを予測したり購買傾向を分析することで、最適なマーチャンダイジングプランの立案を支援するプロダクトです。
ご利用頂くと、プロパー消化率の向上や不要な値引きの抑制、在庫の最適な店舗配布により、小売企業が抱えている在庫を効率よく利益に変えることが可能になります。
「月曜の朝イチに使われる在庫分析クラウド」というコンセプトで、現在6つの機能を提供しています。主要な機能は以下の通りです。
・クオリティ分析
売上や粗利益の増加を目的に、プロパー販売が可能な商品、値引きを抑制できる商品、セールすべき商品のリストアップが可能。
・単価分析
売上や粗利益の増加を目的に、客単価向上に貢献する商品のリストアップが可能。
・ディストリビュート分析
売上や粗利益の増加を目的に、倉庫から店舗、店舗から倉庫または店舗から店舗の最適な在庫移動数の自動算出が可能。
・追加発注
売上や粗利益の増加を目的に、売れ筋商品の欠品を防ぐための追加発注数量の自動算出が可能。
・どういう方にこのサービスを使ってほしいですか?
業種を問わず小売業の担当者に使って頂きたいです。具体的には以下のようなお悩みを抱えている場合に効果的です。
・プロパー消化率の向上
・不要な値引きを抑制
・客単価を向上
・欠品による機会損失を避ける
・このサービスの解決する社会課題は何ですか?
世界の大量廃棄問題の解決です。これまで小売業は、沢山の在庫を持つことで売上を作ってきました。しかしその結果、値引きが多発し収益性が悪化、また売れ残った在庫は、資金繰りをも悪化させ、長らく小売業界は低利益に喘いでいます。こうした在庫問題は、業界の宿命的課題として何十年も放置されているのが実情です。これらを裏付けるデータとして、FULL KAITEN導入企業の導入当初のデータを分析したところ、「在庫全体のたった2割で粗利の8割を生み出している」という事実が判明しました。
つまり、残りの8割はセールや廃棄になる可能性が高く、アパレルロスの発生源はここにあります。この8割の在庫からしっかり粗利を生み出し、世界の大量廃棄問題を解決することで、未来の子どもや孫の世代により良い地球を残すことがFULL KAITENの存在意義です。
・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?
在庫が原因で3度の倒産危機に直面したことです。
【1度目の倒産危機】
事業成長を求めて取扱商品数を増やした結果、不良在庫がどれなのか見えなくなりました。利益はあるが現金は激減し、預金残高とは対照的に倉庫にしている自宅の一室は在庫の山となりました。
EC時代の在庫の山(自宅の一室)
(ブレイクスルー)
学生時代に勉強したAIや統計の理論、AIには限界もあるという知識が元になり、不良在庫を炙り出すロジックに辿り着きました。そのロジックに沿って不良在庫をセールした結果、現金を取り返して1度目の倒産危機を乗り切りました。
【2度目の倒産危機】
1度目の倒産危機の際に生み出したロジックで、在庫問題の解決に自信をつけたので、仕入れを強化して一気に売上拡大を狙いました。しかし、仕入れ量が支払い余力を超えており、「利益」はキャッシュインを伴わない見かけ上の黒字に過ぎず2か月後には資金がショートするという状況でした。
(ブレイクスルー)
なぜ仕入れ量を毎回間違えてしまうのか必死になって考え、発注点を変動させる手法を編み出しました。加えて、商品は「売れる」「売れない」の二択だけではなく、その中間のいわばグラデーション部分があることにも気付きました。このようにグラデーション状態の商品を対象に販促を強化すれば、「売れる」商品に回復し、無駄に値引きをする必要が無いと分かり、トップラインの売り上げも伸び、売れ残っていた在庫の整理もできました。
【3度目の倒産危機】
客数を増やすため、送料無料ラインを7000円から2000円に下げ、クーポンなどの値引き施策を行いました。しかし、計画通りに客数が伸長せず出荷する時点で赤字でした。
(ブレイクスルー)
クーポン配布を止め、導線やクリック率の改善も打ち切りました。客単価に対する探究心がふつふつと湧き、人生で一番グラフを書きました。
何枚もグラフを書き直す瀬川夫婦
すると、客単価を下げる商品と上げる商品があることに気づき、セットで購入されると客単価を上げる商品を見つけることにも成功しました。そのような商品を中心とした販促を行った結果、客単価は1ヶ月で500円近くも向上しました。
・今後、どういう会社、サービスにしていきたいですか?
世界の大量廃棄問題を解決する世界的な企業になるために、プロフェッショナルな人材を育てる環境を作りたいです。一流になるには時間が必要なので、組織、カルチャー、人に投資をしたいと考えています。当たり前のことを言っていますが、世界の大量廃棄問題の解決ということは、世界に誇れる一流人材にならないとその土俵には立てないということです。
現在のFULL KAITENは、在庫分析に特化したクラウドサービス(SaaS)をサプライチェーンの川下(小売業、SPA)に提供しています。2021年はFULL KAITEN導入企業の売上総額が累計3000億円に達し、業界横断的にビッグデータを蓄積しています現在も大手企業の導入実績が増え続けているため、2022年度には7000億円、2023年度には1兆円を超える見通しです。今後はこのデータを使って業界や業種ごとに生産量を最適化するための需要予測SaaS事業を立ち上げ、サプライチェーンの川中に位置するメーカーや商社に対して提供していく計画です。業界ごとに重要予測SaaSを立ち上げますので事業の幅はますます広がりますし、「世界の大量廃棄問題を解決する」というミッション達成のために海外への展開も狙っています。
フルカイテン設立10周年を祝う大運動会にて
・今の課題はなんですか?
・FULL KAITENを導入いただいているお客様の成果最大化
・サービスを進化させるためのエンジニア採用
・読者にメッセージをお願いします。
FULL KAITENに関わることは、子供や孫の世代により良い地球を残すことに繋がります。社員として働くことも、導入企業として利用することも、最終的に「世界の大量廃棄問題の解決」に繋がり、それは資源や気候変動など現在の地球が抱える課題の解決に繋がるからです。自分が仕事で使う時間が子供や孫の世代により良い地球を残すことに繋がるのは素敵なことだと思いませんか?フルカイテンで働く社員、FULL KAITENを利用する企業を増やすことで、一人でも多くの人を巻き込んで子供や孫の世代により良い地球を残すこと。社員のみんなの働きが社会問題の解決に繋がることをダイレクトに感じられる会社にすること。これが私が社長として行いたいことです。
会社名 | フルカイテン株式会社 |
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代表者名 | 瀬川直寛(せがわ なおひろ) |
創業年 | 2012年5月 |
社員数 | 34名 |
資本金 | 4億2154万円 |
所在地 | 553-0003 大阪府大阪市福島区福島区福島1-4-4 セントラル70 2F-B |
サービス名 | FULL KAITEN |
事業内容 | 在庫を利益に変える在庫分析クラウド「FULL KAITEN」の開発・提供 |
代表者プロフィール | 慶應義塾大学理工学部で天然ガスの熱力学変化に関する予測モデルを研究。ベビー服ECの経営者として、在庫問題が原因で3度の倒産危機に直面。それを乗り越える過程で外的要因や予測不能な変化に強い小売経営モデルを生み出し、『FULL KAITEN』を開発。2017年11月、FULL KAITENをクラウド事業化し、SaaS型システムとして販売を開始。
2018年9月にはEC事業を売却し、FULL KAITENに経営資源を集中している。小売業の「在庫」を「利益」に変えるクラウドサービスとして評価を確立。現在、全国の大手アパレル企業やスポーツメーカーなどで導入が進んでいる。当社は2021年7月、ジャフコ グループ株式会社が運用する投資事業有限責任組合を引受先とする第三者割当増資により、5億円の資金調達を実施。累計調達額は8億円超となり、FULL KAITEN新機能のリリースも控えさらに注目を浴びている。 |
カテゴリ | 有望企業 |
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関連タグ | AI SaaS アパレル クラウドサービス フルカイテン 在庫 大量廃棄 瀬川直寛 |
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