マイナンバーカードは起業や経営に必要?作ることのメリットは?
マイナンバーカードの必要性とは?持っていると便利なケース・持っていない人や紛失時の対処法
マイナンバーカードの取得申請手続きを促す広告やマイナンバーカード取得の特典など、PRをよく見かけるようになりました。
マイナンバーカードは2016年から始まった制度ですが、まだ取得していない人もいるのではないでしょうか。
今後は、様々な公共機関で使う機会が増えることが予想されます。
起業時や経営においても必要となる可能性もあるため、持っていない人は早めに取得したほうが良いでしょう。
マイナンバーカードの必要性やメリット、具体的な使い方などを紹介します。
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この記事の目次
マイナンバーカードとは
マイナンバーカードは、2016年から始まった個人番号(マイナンバー)制度の運用で、個人が使用するカードです。
マイナンバーカードがない人にも、マイナンバーは日本の全国民に割り当てられています。自分のマイナンバーは、通知カードによって知らされました。
マイナンバーカードは通知カードとは違うもので、個人番号を利用するための正式なカードです。
通知カードではなくマイナンバーカードでないとできないこともあります。
主に官公庁の手続きに使用
マイナンバーカードを主に使用するのは、官公庁の手続き関連です。マイナンバーカードがあると、これまでの手続き方法よりも簡単かつ便利な方法を利用できます。
マイナンバーは社会保障や税金の申告や納付に関係すること、災害対策に関することなどで使用します。
マイナンバーを使うことで、複数の機関でそれぞれに保管していた情報の整合性を取り、手続きを正確にかつ速やかに進められるようになりました。
マイナンバーカードがあると、個人の手続きも簡単になったり、手続きできる場所が増えたりします。
マイナンバーカードには、電子証明書が搭載されたICチップがあるため、電子申請などにも活用が可能です。
身分証明書ではない
マイナンバーカードは、全国民にひとりにつき、ひとつ限りで付与されたマイナンバーを書き記す唯一無二のカードです。
そのため、マイナンバーカード1枚で本人であることを証明できます。
顔写真のある身分証明書を持っていない人にとっては、都合の良さそうな身分証明書のように思うかもしれません。
しかし、マイナンバーカードを身分証明書として使用するかどうかは慎重に判断したほうが良いと言えます。
マイナンバーカードには、個人番号がはっきりと書かれているため、身分証明の際に相手に手渡すのは危険です。
個人番号は悪用される恐れがあるため、安易に他人に知らせてはいけません。
また、マイナンバーカードは公的な身分証明書として使用できるとは言われていますが、事業者ごとに扱い方の判断は異なり、利用できない場合もあります。
こうした理由から、マイナンバーカードを身分証明書として利用することは控えたほうが良いと考えられます。
ほかの手段で証明できる人は、マイナンバーカードの使用は控えたほうが安心です。
マイナンバーカードは起業や経営に必要?
マイナンバーカードは身分証明書としてはあまり向いていませんが、官公庁の手続きの利便性は高く、使い勝手が良いものです。
では、独立して事業を興す人や経営者にマイナンバーカードは必要なものなのでしょうか。
マイナンバーカードをまだ取得していない個人事業主やこれから起業する予定の人は、取得するかどうかの検討材料として必要性を確認しておきましょう。
通知カードで足りることも多い
マイナンバーカードは、企業や経営で使うこともありますが、多くの場合は通知カードがあれば対応可能です。
マイナンバーの記載が必要な書類もありますが、マイナンバーカードがないと手続きできないような必須のシーンは、ほとんどないと言えます。
マイナンバーを知りたい時には通知カードにも書かれているため、カード自体を使うことはあまりありません。
持っていると法人設立手続を一度に済ませられる
マイナンバーカードは必ずしも持っている必要はありませんが、マイナンバーカードを利用することで大幅に手間を省ける手続きも増えてきました。
そのひとつが、法人設立手続きです。
2021年2月26日から、「法人設立ワンストップサービス」というオンラインサービスが開始されています。
マイナンバーカードを持っている人限定で、法人設立手続きがオンライン上でまとめてできるようになりました。
これまでは手続きのためにあちこちの機関へ行く必要がありましたが、マイナンバーカードがあればすべてを一括で済ませられます。
この手続きは、通知カードは使えず、マイナンバーカードが必要です。
持っていると節税効果が高い
マイナンバーカードはなくても確定申告できますが、マイナンバーカードがあると確定申告での節税効果が高くなります。
確定申告の青色申告では、青色申告特別控除が受けられますが、その中でも高額な控除を利用するためにはマイナンバーカードを用いた電子申告が必須です。
控除額は高ければ高いほど、課税所得を減らして所得税や住民税の金額を抑えられます。
マイナンバーカードを用いた申告をするだけで節税できるなら、活用しない手はありません。
持っていると確定申告が簡単にできる
マイナンバーカードを持っていると、節税できるだけでなく、確定申告の手続き自体が楽になります。
マイナンバーカードがあれば電子申告を選べて、税務署に出かけることなく確定申告を済ませられるためです。
忙しい個人事業主やフリーランス、経営者にとって確定申告の手間と時間の削減はありがたいことです。
持っているとマイナンバーの証明が簡単にできる
マイナンバー制度が始まったことで、クライアントと業務委託や従業員の雇用の際などにマイナンバーの提供や取得が必要となりました。
マイナンバーが必要となるのは、給与などの支払者となった場合、または、業務委託をした時に一定の報酬額が発生した場合です。
個人事業主やフリーランスとして取引先と業務委託をした場合には、こちらからマイナンバーを提供しなければいけません。
その際にはマイナンバーカードがあればそれだけで済みますが、通知カードの場合にはそのほかに写真付きの身分証明書が必要です。
マイナンバーカードだけで番号確認と身元確認ができるのに、通知カードでは身元確認できないため、カードがないと手間がかかります。
マイナンバーカードの使い方
マイナンバーカードを持っていると、起業や経営で必要となる手続きで便利なサービスを使ったり節税効果を高めたりできるようになります。
シーンごとにマイナンバーカードの便利な使い方をチェックしてみましょう。
法人設立
マイナンバーカードがあると、法人設立手続きに「法人設立ワンストップサービス」が使えるようになります。
行政手続きがオンラインででき、手間と時間、コストを省くことが可能です。
法人設立ワンストップサービスサイトでは誰にでもわかりやすい指示が出るため、指示に従って必要な手続きを進めていくだけです。
はじめに事業や確定申告の方法などのいくつかの質問に答えたら、自分に必要な申請手続きの種類を提案してくれます。
マイナンバーカードを登録してオンラインで申請しましょう。
添付ファイルもデータで登録でき、一度情報を入力すれば同じ内容を何度も入力する必要はありません。
また、この方法で会社を設立する場合、電子定款で手続きすることになるため印紙代も不要です。
オンラインでできる手続きは実に34種類にも及び、申請先も公証役場や税務署、法務局、年金事務所など、幅広く揃っています。
法人設立の忙しい時期も、手続きに追われることなく事業の準備に専念できそうです。
電子申告
マイナンバーカードを使った確定申告は、国税電子申告・納税システム「e-Tax」で行います。
「e-Tax」は確定申告をパソコンやスマホから行えるシステムで、インターネット環境があれば利用できます。
2022年3月現在では、「e-Tax」の確定申告方法は「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」のどちらかを選ぶことが可能です。
このうち、「マイナンバーカード方式」はマイナンバーカードが必要な方式で、ICカードリーダライタかマイナンバーカード対応のスマートフォンがあれば行えます。
利用方法は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で「e-Taxで提出する」を選び、手順に従って確定申告データを作成し送信するだけです。
確定申告ソフトや会計ソフトを利用している場合には、電子申告の準備もサポートしてもらえることもあります。
マイナンバーカードの取得方法
マイナンバーカードを使うと、起業や確定申告が便利になります。
通知カードでも代わりになることはありますが、節税や利便性のことを考えたらマイナンバーカードのほうが優れています。
マイナンバーカードは欲しいと思ってもすぐに手に入るものではないため、早めに申請をして必要なタイミングに間に合うように準備しておくと良いでしょう。
マイナンバーカードの取得方法について解説します。
申請
マイナンバーカードを取得するには事前の申請が必要です。申請手段は、郵送・ネット・マイナンバーカード申請対応の証明写真機の3つです。
申請にはマイナンバー通知カードとセットで送られた交付申請書・申請ID・顔写真が必要となります。
ネットでの申請であれば、いつでもどこからでも行えて便利です。顔写真もデータとして送れるので、プリントアウトする必要がありません。
マイナンバーカード総合サイトにアクセスするか、交付申請書のQRコードを読み込むと手続きページへアクセスできます。必要事項を記入して申し込んでください。
交付通知書を待って受け取り予約
マイナンバーカードができ上がるまでには、1カ月ほどかかります。
申請後マイナンバーカードの準備ができたら交付通知書が届くので、完成したカードの受け取り予約をします。
ネットから受け取り予約も可能です。自分の都合の良い日時を選んで申し込みますが、混み合う時期には予約も取りにくくなるため、余裕をもって予約してください。
地域によっては、郵送でマイナンバーカードを受け取れることもあります。
指定場所で受け取り
予約日時になったら、指定の場所へ行き、マイナンバーカードを受け取ります。
マイナンバーカードの受け取りには送られて来た交付通知書や通知カード、身分証明書が必要です。
身分証明書として使えるのは、免許証・保険証・住基カードなどです。
市区町村の職員とマイナンバーカードの確認や暗証番号の登録をし、使い方の説明を受けたらマイナンバーカードをもらえます。
マイナンバーカード紛失時の手続き方法
マイナンバーカードは、重要な個人情報の詰まったカードです。
紛失しないように注意することも大切ですが、紛失した時に速やかに適切な手続きを踏むことも大切になります。
いざという時に焦らないように、紛失時の手続きについても知っておきましょう。
カードの一時停止
マイナンバーカードを紛失したら、まずはカードの一時停止手続きをします。また、自宅以外でなくした場合には、同時に最寄りの交番などで遺失・盗難届を提出してください。
手続きは、マイナンバー総合フリーダイヤル0120-95-0178 (無料)で可能です。
紛失・廃止届
マイナンバーカードをなくしたら、紛失・廃止届も出します。本人確認書類と自宅の外でなくした場合には、遺失・盗難届の受理番号の控えが必要です。
悪用の恐れがある場合の対処
マイナンバーカードを家の外でなくした場合や盗難に遭った場合など、他人にマイナンバーを見られ、悪用される恐れがある時は、新しいマイナンバーを請求することが可能です。
手続き名は「個人番号指定請求(個人番号の変更)」で、市区町村の戸籍住民課や区民事務所などで対応しています。
手続きには本人確認書類と盗難に遭った場合には遺失・盗難届の受理番号、火災で焼失した場合は罹災証明書が必要です。
再交付申請
マイナンバーカードをなくしたら、再交付も必要です。紛失したマイナンバーカードの再交付は原則有料となります。
再交付手数料は電子証明書を希望する場合は1,000円、希望しない場合は800円です。本人確認書類と再交付申請書用の顔写真を用意して申請します。
申請から再交付までは、初回のカード申請同様に時間がかかります。
マイナンバーカードを持っていない人の対処法
マイナンバーカードは、起業や事業経営に必須ではありません。
まだ必要としない、または、取得したくない場合でも、マイナンバーカード以外の方法で以下のようなケースに対応できます。
番号を知りたい:通知カードを確認する
マイナンバーを知りたいだけの場合には、マイナンバーカードではなく通知カードでも問題ありません。
また、マイナンバーの提出が必要な場合にも、通知カードと運転免許証などの身分証明書をセットで使えば認められます。
番号を知りたい:住民票を取得する
通知カードがない場合、住民票の写しでも希望に応じてマイナンバーを記載して発行できます。
マイナンバー入りの住民票は、市区町村役所などに本人確認書類を持参し請求できます。住民票の手数料は300円です。
電子申告したい:税務署で発行されたIDとパスワードを使う
節税効果の高い確定申告の電子申告も、マイナンバーカードがなくてもできます。
税務署であらかじめ発行してもらったIDとパスワードを使う「ID・パスワード方式」であれば、カードを使わずに電子申告が可能です。
ただし、この方式はマイナンバーカードが浸透するまでの暫定措置であり、長く使うことはできません。
この先もずっと電子申告を続けたい場合には、マイナンバーカードを取得したほうが確実です。
また、「ID・パスワード方式」は電子証明書による認証ができないため、市販の会計ソフトは使えない恐れがあります。
その場合には、作成した確定申告書を見ながら「確定申告書等作成コーナー」でデータを入力し直さなければならず、マイナンバーカード方式よりも手間がかかります。
まとめ
マイナンバーカードは事業や納税に関する手続きの手間を減らし、節税にも役立ちます。必須ではありませんが、できれば取得しておいたほうが安心です。
また、現在マイナンバーカードがなくてもできている手続きなども、マイナンバーカードの浸透とともに、カードが必要になることも考えられます。
マイナンバーカード取得には事前申請が必要なため、すぐには手に入りません。便利だと感じた人は、早めに申請しておきましょう。
(編集:創業手帳編集部)