JOENパートナーズ 城野えん|起業家のための営業組織作り
お客様の課題を解決することが営業の真の役割
どんなに素晴らしい製品やサービスも、広く世の中に知られることなしには売り上げにつながりません。そのために必要になるのが営業であり、起業家としても避けては通れないプロセスです。
企業向けに営業力強化研修を提供する株式会社JOENパートナーズの城野えんさんは、トレンドマイクロで新製品受注数No.1営業として活躍し、東証一部上場の大手IT企業の営業・プレゼン支援にも従事されています。
今回は、営業のプロ、城野さんに起業家にとっての営業の本質や、効果的な人材育成についてお聞きしました。
株式会社JOENパートナーズ代表取締役
慶應大学商学部卒業後、トレンドマイクロ株式会社で営業職を経験。7か国で500回以上の商談・プレゼンテーションした経験を活かし、2020年10月に株式会社JOENパートナーズを設立する。「徹底的に作りこまれた現場目線のプログラムと講師の熱意が若手社員に響く」と評判を呼び、研修は2022年1月現在1年待ち。大手IT企業を中心に9割以上の企業からリピートを受ける注目の実業家。
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なぜ起業家に営業が必要なのか?
城野:起業したい理由は人それぞれですが、おそらくほとんどの方は「自分が作った製品・サービスの価値が素晴らしいと思うので、世の中に広めたい」という理由だと思います。
製品・サービスが存在しているだけでは意味がなく、お客様にその製品・サービスを利用してもらってこそ価値が理解されます。広める方法として、大勢の人にリーチできる広告宣伝も有効ですが、非常にコストがかかりますし、薄く浅くしか価値が伝わりません。
営業なら、一度にリーチできる人数は限られてしまいますが、自分の頭と体だけでできるのでコストがかからないですし、商談でじっくりと時間をかけられる分、濃く深く価値を伝えることができます。
城野:よく、売り込みをすることととらえられがちですが、実際にはお客様の課題を解決することが、営業の真の役割といえます。
どんなお客様にもお困りごとがあり、自社の製品・サービスがそのお困りごとを解決するために必要なものであると心の底から感じることができれば、営業に対しての心理的なハードルも下がるはずです。
城野:足で稼ぐ体育会系の営業から、頭で稼ぐ戦略系営業スタイルにシフトしてきています。
城野:お客様の目線にたてる人が優れた営業になりやすいといえます。具体的には、製品のすばらしさだけを一方的に話し、相手を説得しようとするのではなく、相手が知りたがるであろう事柄について事前に仮説を立てて準備しておき、話をしながら適宜意見を聞き出して共感を得よう、とする営業スタイルはお客様からの評価も高くなります。
城野:起業1年目はあえてかなり高い目標を設定しておくことをお勧めします。ここで良いスタートダッシュがきれないと後で非常に苦労するからです。2年目以降の目標については、簡単すぎるものでは達成感が得られにくいですし、逆に高すぎると最初からあきらめモードになりやる気がでません。ちょうど良い目標とは、「今のやり方やペースでは達成は難しいけれど、必死に1年やればなんとかギリギリいけるかもしれない」と思えるようなものです。
営業部門の効果的な人材育成法とは
城野:チャレンジ精神がある人。相手の気持ちを推し量ることができる人です。
城野:「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」と山本五十六の名言にもありますが、まずは営業のやり方を、先輩の商談同行・研修などで体系立てて教えてあげましょう。
そして商談のロールプレイングを行い、実際に学んだことを使ってもらいます。
少しでも学んだことができていれば褒めてあげましょう。そうすれば自信につながるので、「実際の商談現場でもやってみよう」という気持ちになり、初めてスキルとして定着します。若手社員であればあるほど吸収力が高いので、このやり方が非常に効果的です。
城野:結果や成果がなかなかでなくても、そのプロセスをきちんと見て評価してあげることです。少額でも良いのでインセンティブを用意することもモチベーションアップにつながります。
城野:組織が大きくなればなるほど、営業のやり方が個人任せになりがちです。すると、各営業が個人商店化してしまい、同じチーム内でも「他の営業がどうやって営業しているのか知らない」となることがしばしば起こります。
その結果、トップ営業と売れていない営業の差が激しくなり、トップ営業が転職した瞬間に業績が急落してしまうという危機に陥ります。そうならないためには、自社の営業のやり方について、基本の方針を体系立てて策定し、研修やOJTで学ばせることをお勧めします。
さらに、情報共有を活性化させるために、営業の週次ミーティングを単なる数字や案件の進捗報告の場にするのではなく、うまくいっている人のやり方を共有したり、うまくいっていない人の話を聞いてみんなでアドバイスしあうような相互コミュニケーションの場として活用することも重要です。
社長は営業をするべきか否か?
城野:大きな組織の場合、社長は経営に集中していくべきなので、小さな組織ほど、社長が営業をする重要性が高いです。ひとり会社の場合は、営業=社長になるので非常に重要です。
いきなりビジネス交流会などで新規の人脈づくりをするより、既存の人脈(過去の仕事でかかわった同僚、上司、取引先、ビジネスパートナーなど)の中で営業をかけていくほうがハードルも低いのでおすすめです。
城野:製品・サービスを利用してもらった後に、実際にお客様から「導入・購入したことでこんな変化や良いことがあった」という声を聞いたとき、その企業や個人の成長や幸せに貢献できたことを実感し、やりがいを感じます。
昨今は、カスタマーサクセスの強化に取り組む企業が急増していますが、これからの営業では、「契約・受注」をゴールにするのではなく、導入後に製品・サービスの価値を最大限感じてもらえるよういかにサポートできるかが重要になってくると思います。
城野:創業直後の経営者がぶつかる壁として、よく「営業」があげられると聞きます。これは、それまで会社員時代に営業を経験したことがないため、なんとなく苦手と感じるからではないでしょうか。
先ほども述べたように、営業とは「売り込むこと」ではなく「相手の課題を解決すること」が仕事です。みなさんの素晴らしい製品・サービスを顧客に届ける上での最初の一歩なのです。
これまで培った人脈を活かし、相手の課題を解決してあげることを念頭に置いて、事前に相手が興味を持ちそうなことを入念に調べて仮説をたてて資料を準備し、相手の意見を聞き出しながら商談に臨めばたいていはうまくいきます。
ぜひ今日から積極的に見込み顧客に営業をしていきましょう!
(取材協力:
株式会社JOENパートナーズ代表取締役 城野えん)
(編集: 創業手帳編集部)