ベンチャー社長に贈る!営業と叱り方の極意 中山直樹社長 インタビュー

創業手帳

顧客と良好な関係を築く3つのポイントと「叱り」上手の営業社員育成術

起業直後の会社の運命は、経営者の営業力にかかっている。しかし、企業に所属して営業を行うのと、独立して営業を行うのでは、大きな違いがある。経営者として営業で成果をあげるにはどうすればよいのか?今回は、高収益企業として名高いキーエンスに18年間勤め、光通信の法人営業部長を経て、起業して株式会社MPSSの代表取締役を務める中山直樹さんに、営業の考え方と人材育成について聞いた。
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中山 直樹(なかやま・なおき)
株式会社MPSS 代表取締役社長
中央大学卒業後、山善株式会社を経て、日本屈指の年収で知られる高収益企業のキーエンスで営業の要職を歴任し18年間勤務。キーエンス流の営業と実績を買われ光通信の法人営業部長を経て、起業。現職に至る。現在、株式会社MPSSの代表として医業の開業支援や経営改善のコンサルタント事業などを行っている。

企業という看板をなくしたあなたが取れる営業方法は限られている

― キーエンスに勤められて営業を行われていた頃と、起業されてからの営業方法は異なるのでしょうか。

中山:大きく異なりますね。起業するということは企業の看板がないということです。企業に所属していれば、企業名を言えばある程度は信用されます。アポを取るために商品やサービスの説明を電話口ですれば、話を聞いてくれますよね。起業すると自社にいくら素敵なサービスであっても、相手に聞いてもらうこと自体が難しくなります。自分についての「看板」がなくなってしまうからです。

独立直後の人というのは、他人から見れば「何者でもない」わけです。何者でもない、怪しい人の話を聞こうと思いますか? ですから、まずは「自分をいかに相手に受け入れてもらうか」が重要です。

営業ノウハウをそのまま実行するのは危険

― 書店に行けば営業のノウハウ本がたくさん並んでいます。それらのノウハウを使えば、はじめは受け入れてくれなかった相手でも、受け入れてもらえるようになるのではないでしょうか。

中山:交渉術やイベントの技術といった営業ノウハウはあくまでテクニックであり、ツールでしかないです。そのまま実行することは逆効果だと思った方が良いです。

実際、営業先の人に「あ、この人はツールを駆使して自分に営業しようとしているな」と思われてしまった時点で、信頼を損なう危険性があります。

- 確かに、ツールを駆使している相手と話していても、人と話しているようなワクワク感はないですよね。

中山:ですから、ノウハウというツールを全面に出した営業はしない方がよいのです。

営業では「好意」と「相手の利益」と「継続性」の考え方を

- ノウハウよりも大事なことがあるということですね。

中山:はい。私は考え方やマインドが大切だと思っています。マインドがあって、その上で、ノウハウを活用するのであれば良いと思っています。

そのため、ノウハウを全面的に否定はしません。勉強をした方が良いと思いますし、営業力の素養や下地となるのであれば良いことだと思います。しかし、ノウハウだけに頼って営業をするのは危険だということです。

私は今、独立して医療業界にいるのですが、営業先の相手の方は自分より年齢も経験も長い方が多いです。ノウハウのようなものは一切通用しません。

相手の心を開かせる3つのポイント

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好意をもち、わくわく感を高めていく

- “マインド”というところをもう少し詳しく教えてください。

中山:営業における考え方でノウハウ以上に大事なことは3つあります。
そのキーワードを挙げると、「好意」「相手の利益」「継続性」です。

まずは「好意」ですが、相手に好かれるためには、まず「自分から相手に好意をもつ」ということです。あなたが相手に好意を持つことで、相手の心が開き、人間関係を構築することができます。

営業においても、そこがスタートになります。相手に自分を受け入れてもらうためには、まず自分から相手に好意をもつことが大事です。そうしないと、相手も自分に対して心を開いてくれません。

- 「相手に好意をもつ」というのは具体的にどのようなことでしょうか。

中山:好意とは「相手に興味をもつこと」といってもよいかもしれません。例えば、はじめて会う人に対して「この人はどういう人なんだろう?」と興味を抱くことです。

今日は私が取材を受けていますが、「取材をしていただく方はどんな人だろう?」と興味を抱きながらこちらへ伺いました。このように、興味や好意をもって、わくわくするところから始めないと、良い人間関係はスタートしないのではないでしょうか。

営業される相手としても、「あ、自分に好意を持ってくれているな」と感じて初めて、こちらについての興味をもつのだと思います。

★ポイント1「相手に好意をもつ」:まずは自分から相手に興味をもつ。そこから人間関係は始まる。


ベンチャーだからこそ長期的な営業が成長の近道

― ベンチャーだからこその「営業の考え方」はありますか。

中山:ベンチャーの場合、早く売り上げを立てたいと思って、焦ってしまうことがあります。そうなると目先のことにとらわれてしまいます。しかし、会社のことを考えれば、長期的な関係をお客様と築いた方が良いのです。そうすれば、安定収入を確保できるので、経営が安定して、新しい投資といった様々な手を打つことができるようになります。

そのためにも、営業をして説明をするときには「相手の利益を現在と将来にわたって考える」癖をつけてください。

ただその時に考慮すべきなのは、その時だけではなく未来の利益にもなるか?と想像することです。瞬間的な利益もメリットではあるのですが、本当に相手を想うのであれば、その先も考えて提案をすべきでしょう。

はじめのポイント「好意を持つ」と合わせて、あなたが相手を想って長期的なメリットのある提案をすれば、相手は心を開いてくれるでしょう。

★ポイント2「相手の利益を考える」:今だけでなく将来にわたる相手の利益を考え、提案する。


あえて下請けに甘んじ、相手の信頼を得る

- 最後のキーワード「継続性」とは長期的な関係を築くということでしょうか。

中山:そうです。「お互いの取引やサービスの継続性を考えること」です。独立直後の場合、仕事を依頼する側からみると、あなたが継続的に仕事をできるのか少なからず不安を抱いています。

そのため、自社で対応できる内容であれば構いませんが、問題は、自社のキャパシティを超えている仕事と感じた場合です。利益を立てたいと思って無理をしがちですが、それでは相手と良好な関係を長期的に築くことはできません。必ずミスが起こり、相手に損害を与えてしまいます。

ですから、自分のキャパシティを超えていると感じた場合は、それを補えるような会社に仲介として入ってもらうことも時として必要です。特に起業間もない創業期のベンチャーの場合は、提供できる商品やサービスの実績も乏しく信頼性がありません。信頼や安心を与えるためにも無理をしないことが大事です。

そうやって相手の信頼を勝ち得ていきながら、会社を大きくしていくことで、下請けから直接契約ができる企業へと成長していくのです。

★ポイント3「継続性を考える」:お互いの取引の継続性を考慮し、自分のキャパシティに不安がある場合は下請けにまわる。


社員育成で持つべきマインドと上手に部下を叱る方法とは

社員育成方法でも、企業に所属する営業と経営者自ら行う営業では考え方が異なる。企業に所属していれば面接をすることはあっても、最終的な採用の合否は役員面接によって決まる。自分の知らないところで決定されて、配属されてきた人を教育するだけなので、責任は小さい。一方で、経営者になれば、自身が最終意思決定して採用した人材によって、今後の会社の命運が大きく左右される可能性がある。良い人を採用しても、教育ができなければ、辞めていってしまうかもしれない。その責任の全部を経営者自身が持たなければいけない。この違いを中山さんはどのように乗り越えたのかを聞いた。

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- 中山さんは営業社員の育成も積極的に行ってこられたと思います。社員を育成する方法について教えて下さい。

中山:何よりもまず、自分の抱える社員に「家族のような愛情をもって接すること」が大切です。私は、企業に勤めていた時から自分の部署に配属された社員は「会社から預かっている」という感覚をもっていました。

新卒3年目以下の若い社員であれば「親から預かった」という感覚もあります。

しかし、今まで企業に勤めていたときに見ていると、この感覚をもっている中間管理職は少ないのではないでしょうか。役員や上の人で採用を決め、人事部の考課によって各部署に配属されてくるだけですから。悪いやつが入ってくれば運が悪かったとかしか考えていないでしょう。

そういった考えであれば、教育とかもなおざりになってしまいます。それでも部署として売り上げが立てば問題ないわけですから。

私は、自分自身をその人の親父や兄貴だと捉えていますから、叱るときは真剣に叱ります。叱られる本人も、この顔で言われますからきっと辛いとは思いますが(笑)、その人のためになるのであれば、やはり叱りますね。

こういった考えで企業にいたときも教育をしていたので、独立してからも困りませんでした。

声を荒げるのは10秒まで

― 怒る時に大切にしていることなどもあるのですか。

中山:私は、「絶対に叱るのは10秒以内」と決めています。声を荒らげて「○○、ばかもん!」と言うのは10秒以内に収めるのです。その後に「なぜいけなかったか」「今後どうすればよいか」などを冷静に説明します。

大きな声をだすのは、部下に腹を立て当たっているわけではありません。あくまで事実の深刻さを強調するために行います。まあ、私が大声を出すと「窓が震える」とも言われましたが。

- (笑)

中山:やはり、「言うべきこと」は言わないとその人は育たないのです。社員が育たなければ、会社の戦力にもなりません。社員というのは、時期は遅かれ早かれ辞める時が来るものです。ですから、気づいた時になるべく早く、おもいっきり伝えるとよいと思います。

叱るべきことを言うか・言わないかで迷う方もよくいらっしゃいます。しかし、これは相手に対して愛情があるかないかの問題だと思います。もし相手に愛情があるのであれば、遠慮は必要ないでしょう。

自分は「相手にとっての親父や兄貴だ」というマインドがあれば、言わなくてはいられないと思いますし、そういうマインドを持つと良いと思います。

まとめ

1 営業のポイントは「好意」「相手の利益」「継続性」の3つ

  • 好意:まずは自分から相手に興味をもつことから、人間関係を始める
  • 相手の利益:今だけでなく将来にわたる相手の利益を考え、提案する
  • 継続性:お互いの取引の継続性を考慮し、時として下請けにまわる

2 社員育成で大切なのは、親父や兄貴のようなマインドを持つこと

  • 社員には家族のような愛情をもって接する
  • 叱る時は大声をだすのは10秒以内とし、あくまで強調のために行う
  • その後に理由を冷静に説明して理解してもらう

(創業手帳編集部)

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