医学生アプリの定番「みんコレ!」メドピアに事業譲渡。創設者の野田北斗医師に創業とM&Aの舞台裏を聞く
こうやっておけば良かった!野田医師が起業やM&Aに関するコツを起業家に向けてアドバイス
高齢化が進む日本において今後、より必要性が高まっていく医療。近年、医療業界で重要視されているのが”医師の育成”です。
医師でありながら自分自身の経験をもとに、医師国家試験の解答集計サービス「みんコレ!」を創業した野田北斗氏。会員数17,000人ものサービスに成長したものの、2021年8月に医療サービスを展開するメドピア株式会社へ事業譲渡(M&A)しました。
創業とM&Aの両方を経験した野田氏に、これから起業やM&Aを考える人へ役立つ内容を「みんコレ!」初期の頃から応援してきた創業手帳代表・大久保がお話を伺いました。
株式会社みんコレ 創設者
アメリカ・ボストン生まれ、吉祥寺育ち。環境問題に関心を抱き東北大学理学部に進むも、自身の理想と周囲の考えの相違を感じる。進路模索の末に山梨大学医学部に進学し、自身の受験期に医師国家試験の当日解答集計サービス「みんコレ!」を考案し、運営をスタート。2017年に(株)みんコレを立ち上げ、精神科医として活躍しながらサービス向上に努めていたが、2021年に事業譲渡。現在は2度目の起業を考えている。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
大手の参入は特許取得で防ぐことができたかもしれない
大久保:エグジットおめでとうございます。創業やM&Aを考える人のために役立つことを伺っていきたいです。
まず、創業するときの注意点について教えて下さい。
野田:今だから言えることですが「特許」を取っておけば良かったなと感じます。
みんコレ!は17,000人に登録されるほど大きなサービスとなりました。しかし、成功した事例を見て大手各社が参入してきたんです。
一部は特許を取得したのですがサービスのリリース後だったこともあり、一番重要な部分の特許は取れませんでした。
特許というのはサービスを公開してしまうと取得できないこともあります。新しいサービスを思いついたら、まず特許の取得にチャレンジしたほうが良いでしょう。
新しいことにチャレンジして事業が成長し、事業譲渡した際に金額でかなり評価されたのは満足感が高かったですね。
地方起業のメリットは「地元の支援を受けられること」
大久保:アプリで成功しているのは東京などの大都市圏が多いですよね。山梨県の南アルプス市から全国展開できるようなサービスを作れたというのは、地方で奮闘する企業にとって大きく背中を押されたと思います。
地方で起業するメリットはありますか。
野田:地方で起業するメリットは、地域で同じことをやっている会社が無かったり少ないため、地元の支援を受けやすいことです。
地元のMt.Fujiイノベーションキャンプなど、アクセラレーター(※)として自治体も応援してくれます。大久保さんや創業手帳とも、そういった繋がりの中で縁ができましたし。
こういった地元の支援を受けやすいことが地方起業のメリットといえますね。
※アクセラレーター・・・起業家をサポートして事業成長を加速させる人材や団体のこと。
M&Aでは複数の企業と話して相場感を掴むことが大切
大久保:どういったタイミングでM&Aを考えましたか。また、M&Aを考える人にアドバイスがあれば教えて下さい。
野田:医師の国家試験支援サービスということで会員数は増えましたが、マネタイズの部分などは大手が強いこともあり、早い段階でM&Aしようと決めていました。
医師向けのサービスは大手であれば買ってくれるだろうと予想していたんです。
はじめはサービスのお客様という形から始まり、事業提携に進みました。そうすることでシナジーがはっきりしてくるため、その後で買収について打診をしていったという流れです。
1社目の交渉のときはかなり低い金額で見積もられてしまいましたが、次に交渉したメドピアさんで満足できる金額を提示してもらえました。
素人なのでいくらが妥当なのかなど相場感がよく分からなかったですね。意外とM&Aは相場があるようでないため、複数の企業と話して相場を知るのが良いと思います。
大久保:ほかにM&Aをする際のアドバイスはありますか。
野田:会員属性などの本当にコアな情報やノウハウについては、最後の最後まで明かしませんでした。
情報を漏らさないというNDA契約を結んだとしても、やはり重要な情報を知られてしまうのは危険です。不成立もあり得るので、情報をどの段階で開示するのかに注意しましょう。
起業とエグジットで得たものはお金よりも「経験と絆」
大久保:今回の経験でどういったことが良かったでしょうか。また、今後はどういう方向で進んでいきますか。
野田:自分がやってきた事業が評価されて満足のいく金額で買収されたことによって、運営の負担や心配が無くなったのは良かったと思います。
でも、一番良かったと感じるのは経験と絆を得られたことですね。
今後は医師として働きながら2回目の起業をしたいと考えています。2回目の起業はもっと上手くできる自信がありますし。
起業はすべて自分で決めていけること、頭の中にあるサービスを実現できることが魅力です。ぜひ、みなさんも起業に挑戦してみて下さいね。
大久保:本日はありがとうございました!
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(取材協力:
株式会社みんコレ CEO/ 野田北斗(のだほくと))
(編集: 創業手帳編集部)