開業資金を集めるにはどうすればいい?知っておきたい制度や手法をまとめました

資金調達手帳

資金集めで事業計画は大きく変わる


事業を始めるにあたり、開業資金を集めることは重要です。開業資金をいくら、どのように調達するかによって、今後の事業計画にも影響を与えます。
開業資金を潤沢に準備できれば、事業に余裕が生まれビジネスチャンスを逃すことはありません。
資金繰りに走り回ることなく効率的に事業を進めるためにも、自社に合った資金調達の方法を知りましょう。

今回は、開業資金を集める方法について紹介します。

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開業にかかる費用とは

一般的に、開業するためにかかる費用には、以下のものがあります。
・物件の賃料、購入費用
事業所や店舗を構える際に、物件の賃料や購入費用が必要です。この資金は、開業資金の中でも大きな位置を占めます。

・仕入れ費用
商品の製造・販売を行う場合、原料や商品の仕入れにかかる費用も考慮しなければなりません。

・設備、備品の準備
事業所や店舗の内装などの設備を整える、什器やPCなどの備品を調達するのも費用がかかります。

・電話、インターネット接続
電話やインターネットなどの通信環境整備も大切です。

・広告費
チラシを作成する場合の印刷費用に加え、ホームページ作成を外注する場合には作成費用、ドメイン取得費用やサーバーレンタル費用も考慮しなくてはなりません。

開業資金の平均額について

開業資金の金額については、業種ごとに開きがありますが、平均値としては1,100万円前後との報告があります。

金額ごとの割合では、500万円までで開業できる業種が半数近くを占めており、比較的安価かつ手軽に開業できる業種に人気が集まっているといえます。

自己資金と他機関からの調達額の割合

資金を集める際には、もともと所有している自己資金に加えて、金融機関からの融資などを合わせて開業資金とします。
これらの割合の平均としては、自己資金がおよそ270万円で全体の2割、融資などがおよそ830万円で全体の7割です。つまり、自己資金と融資などで資金全体の9割に及びます。
残りの1割は身内からの調達で賄っていると考えられます。

この結果から、自己資金は開業資金の2割程度は用意しておくことが無難でしょう。

自己資金の集め方について

自己資金をどれだけ所有しているかは、金融機関からの融資などを受けるときにも審査対象のひとつです。
では、自己資金を集めるにはどのような方法があるかを見ていきます。

・貯蓄する
開業前に会社勤務や副業を行い、コツコツとお金を貯める方法であり、開業資金を調達するには一般的です。
この時、現金を直接持つのではなく、預金として提示できるほうが良いでしょう。

・生命保険を解約する
解約返戻金がある生命保険の場合、解約することで返戻金を自己資金に充てられます。また、一定の基準で保険会社から借入れができるケースもあります。

・株式、不動産などを売却する
所有している株式などの有価証券や、不動産を売却することで利益を資金とします。
ただし、有価証券はタイミングにより売却損が出ること、不動産では買い手がつくまでに期間を要することを注意しなくてはなりません。

・身内から贈与を受ける
親族などの身内から資金の贈与を受ければ、そのまま自己資金に充てられます。しかし、贈与額が110万円を超える額であれば贈与税が課せられるため、気を付けてください。

初期費用として運転資金はどれくらい必要か

開業資金の中で、初期費用と考えるものと当面の運転資金にするものを分けて考える必要があります。
運転資金に関しては、業種にもよりますが、およそ3カ月分のランニングコストを組み込むと良いでしょう。

特に、小売り店やメーカーなどで販売した商品を売掛処理した場合には、現金が入ってくるタイミングが少し先になります。
その期間にも、仕入れや管理費などの支払いは生じるため、現金が少ない状態では取引きが困難になるかもしれません。

そのため、運転資金の3カ月分のランニングコストを用意しておけば、売掛金入金があるまでにも資金繰りに余裕ができます。

開業資金を集める具体的な方法とは


次に、自己資金以外で資金を集める方法を紹介します。この方法には、いくつかの種類があり、それぞれの条件やメリットやデメリットに違いがあります。

自社の事業や自己資金の状況から、適切な資金調達の方法を選びましょう。

開業資金を集める方法① 融資を受ける

資金調達としてよく用いられるのが、金融機関からの融資を受ける方法です。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫とは、個人事業主や中小企業に向けて、事業のサポートを行うべく資金の融資を行っている機関です。
この機関の事業については、国がすべて出資しており、起業間もなくでも比較的融資が受けやすいシステムが用意されています。
起業したての個人事業主や中小企業が受けられる主な融資は、以下のようなものです。

新創業融資制度について

こちらの制度は、起業間もなくで社会的信用を得られてない経営者のために設けられたものです。

・保証人、担保がいらない
新創業融資制度では、連帯保証人を立てる・担保を入れる必要がありません。

・融資を受けられるまでの期間が短い
新創業融資制度を申込んだ時点から、実際に融資を受けられる期間はおよそ1カ月程度です。融資までの期間の短さから、資金計画が立てやすいでしょう。

中小企業経営力強化資金について

こちらの制度は、特に中小企業として革新的な事業を行っている会社に対し、事業の推進・支援するためのものです。

・金利が低い
中小企業経営力強化資金では、金利が低く設定されています。融資期間にもよりますが、利率2.41%~2.90%程度で融資を受けられます(基準利率の場合)。

・返済期間が長い
返済期間については、運転資金が7年以内、設備資金は20年以内と、比較的長く設定されています。
また、それぞれ2年の措置期間(元金ではなく利息のみの支払いで良い期間)があります。

日本政策金融公庫から融資を受けることのメリット・デメリット

日本政策金融公庫からの融資を受ける時に享受できるメリットは、何よりも新たに起業する人を対象とした融資の制度が用意されている点です。
制度によっては保証人や担保が不要または相談可能であることも利点です。

さらに、比較的低金利であるため資金繰りも立てやすくなります。

デメリットとしては民間金融機関のように、借換えができず返済期間の変更や金利の変更などができないことがあげられます。
日本政策金融公庫に設定されている予算を使い切ると、想定していた融資額を受けられない可能性もあるでしょう。

民間金融機関

民間金融機関とは、銀行や信用金庫などの機関を指します。いずれも民間の機関であり、潤沢な資金があることから高額の融資を見込めます。

さらに、経営者本人と信頼関係が築ければ、融資について細やかな相談に乗ってくれる場合もあるかもしれません。

民間金融機関から融資を受けることのメリット・デメリット

民間金融機関でも、比較的低い金利で融資を受けられます。また、大手銀行であれば全国各地に支店があり、返済などの手続きも行いやすいでしょう。
前述のように信頼関係を築ければ、多少の融通が利く場合もあるようです。

デメリットは、やはり厳しい審査があることです。事業として将来性や信用があり、返済能力があると判断されなければ、融資を受けることは難しいです。
また、機関との信頼関係が築けない・返済能力を認められない場合、審査に通過できず融資を受けられません。

信頼性を得るために信用保証協会を利用する

起業間もない会社は、社会的信用を証明できません。
そのため、本来では審査に通過しづらいですが、信用保証協会からの保証を得られれば、融資が可能となるケースがあります。

保証審査で問題ないと判断されれば、信用の保証を金融機関に通知されるため、借入れできるようになります。

資金を集める方法で借入れをした時に注意したいこと

上記のように、開業資金を集める時に融資を受ける場合、注意しておくべき点がいくつかあります。

返済計画をきちんと立てる

融資を受けた金額は、必ず返済しなければなりません。そのため、返済月には十分にキャッシュを残しておく必要があります。
起業間もなくでは、売掛金入金が先になることも多いため、その期間中の返済計画もきちんと立てておくのが大切です。

キャッシュフローをチェックする

売上げは黒字なのに、キャッシュフローで赤字になった場合には、黒字倒産の事態に陥るかもしれません。
融資を受けた際は、返済と出費、入金など現金の流れを正しく管理することが求められます。

消費者金融はできるだけ利用しない

融資を受けられる機関には、消費者金融も含まれますが、この利用はできるだけ避けるのが無難です。理由は、日本政策金融公庫や銀行などよりも金利が跳ね上がるためです。
金利が倍以上になるケースもあり、資金繰りを圧迫することにもなりかねません。

開業資金を集める方法② 補助金や助成金を受ける

補助金や助成金は、国や地方自体が推進・推奨する事業を行っている会社を支援する目的で交付される制度です。

補助金と助成金の違い

補助金と助成金には、以下のような違いがあります。

補助金は経費に応じた金額を補助してもらえる

補助金は、経済産業省の管轄する制度であり、国や自治体の政策に見合った事業を行っている会社をサポートするものです。
条件に合致した会社は、開業にかかった経費に応じた金額の補助が受けられます。また、応募期間が比較的短いため、注意してください。
政策に見合った事業について、例えば以下のような補助金制度は、それぞれに目的があります。

・地域創造的起業補助金
2017年度までは創業補助金と呼ばれていたもので、日本の経済を活性化させ国全体の経済状況を底上げすることを目的としています。
補助金額は、外部資金調達の有無によって異なりますが、50万円~最大200万円までです。

・ものづくり補助金
こちらは特に製造業において、製品の開発や生産システムの向上を支援するための補助金です。新たなアイデアの創出や効率的な製品生産を目指します。
補助金の上限は事業類型によって異なり、最大で3,000万円とされています。

助成金は条件により一定金額の助成が受けられる

助成金は、主に雇用に関する取組みを行う会社の支援が目的です。こちらは厚生労働省の管轄で、正規雇用などの様々な取組みを行う会社が助成を受けられます。
雇用について、指定された条件を満たしている場合には、一定の金額の助成を受けられます。起業間もない経営者向けの主な助成金は、以下のようなものです。

・キャリアアップ助成金
非正規雇用者を正規雇用者として採用することや、同等の待遇を整備する取組みを行う会社に適用されます。

・中途採用等支援助成金
中途採用者の受入れ促進を目的としたもので、この取組みを目指したいくつかの条件をクリアすることで助成を受けられます。
この制度には、採用枠拡大・UIJターンの支援・中高年の起業者による中高年の中途採用の3コースがあり、それぞれに助成額が異なります。

補助金や助成金を受ける方法のメリット・デメリット

補助金および助成金は、基本的に返済する必要がありません。そのため、返済を含めない資金繰りが可能で、キャッシュフローにも余裕ができるでしょう。
さらに、いずれも交付が決定すれば、事業に将来性が認められたことにつながり、社会的信用を得られるかもしれません。

デメリットと言えるのは、補助金も助成金も、原則は後払いであり、交付されるまでの資金は自分で用意する必要があることです。
この点から、起業して間もなくは事務的負担が大きいため、申請から交付までのキャッシュフローの管理は、十分にチェックしておいてください。

開業資金を集める方法③ クラウドファンディング

クラウドファンディングは、事業に対して一般から広く出資者を募り、資金を得る方法です。
投資は少額から可能で、事業を応援したい出資者からの支援を受けられます。

クラウドファンディングの出資者に対するリターンは、会社の商品やサービスの優待などが挙げられます。
現金でのリターンではないため、出資者が魅力的と感じる事業であることが特徴でしょう。

クラウドファンディングのメリット・デメリット

クラウドファンディングのメリットには、第一に誰でも始められる点が挙げられます。
これから起業する人のように社会的信用を構築しておらずとも、出資が受けられるかもしれません。

また、クラウドファンディングの案件を掲載するサイトに事業を公開すれば、幅広い広告効果も得られる点も大きなメリットです。

デメリットはどうでしょうか。
クラウドファンディングでは事業内容に共感する出資者を集める必要があります。事業に共感を持たれなければ、目標金額までの支援を受けられないでしょう。
申請から目標額への到達、実際に入金があるまで比較的長い時間を要する上、その期間が読めないため、資金調達を急いでいる人には難しい仕組みかもしれません。

開業資金を集める方法④ ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタルとは、将来的に成長し上場が見込めるベンチャー企業に対し出資を行って、上場して株価が上昇した時点で株式を売却し、利益を得る会社です。

そして、ベンチャー企業の成長のためにコンサルティングなども請負い、支援を行います。

ベンチャーキャピタルのメリット・デメリット

ベンチャーキャピタルからの出資は株式の購入であるため、上場により売却益が発生すれば出資額の返済は必要ありません。
ベンチャーキャピタルが大手企業であった場合、起業したての会社でも信頼度がアップします。
その他、ベンチャーキャピタルとの提携により、経営に関するノウハウを得られるかもしれません。

デメリットを見てみましょう。
株式をほぼ売却して資金を得るため、ベンチャーキャピタルは筆頭株主となります。その結果、経営権を掌握され思うような事業が行えないリスクがあるでしょう。
事業に将来性がないと判断されると、ベンチャーキャピタル側には利益が生じないため、早々に出資を打ち切られるリスクも考えられます。

まとめ

開業のための資金集めは、必ずしも容易ではありません。
起業したてで、まだ社会的信用を得ていない会社は、必要な資金に対して自己資金が一定以上あることや、枠組みのしっかりした事業計画などにより審査されます。
しかし、融資や補助金・助成金などのほかに、クラウドファンディングのように気軽に始められる資金の集め方も登場しています。
自分に合った資金調達方法を選びましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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