店の遊休スペースとモノづくり企業をマッチング Catalu JAPANが製造業界に起こす新たなムーブメント
Catalu Japanの吉本代表にインタビューしました
(2019/10/10更新)
店舗の遊休スペースを使った、商品の展示サービスを展開しているCatalu JAPAN。モノづくり企業と、製品のコンセプトにマッチしたスペースを持つ店舗とをマッチすることで、双方にとって効果的なPRの形を提供しています。
吉本正代表は、日本の製造業界に対する課題意識からこの事業を始めました。製造業界に新たな刺激を生むプラットフォームづくりに取り組む吉本氏に、創業エピソードを語っていただきました。
国際基督教大学卒業後、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。その後、IT・経営コンサルタント、新規事業開発を担当。会社創業を経て、2016年に銀行系大手シンクタンクで地方創生、オープンイノベーションやスタートアップの支援業務に従事する。2018年、株式会社Catalu JAPANで2度目の創業。現在に至る。
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生まれ育った土地での、製造業の苦戦がきっかけ
吉本:モノづくりを行っている事業者と、店舗を持つ事業者を結び、店舗のスペースを活用した商品展示サービス「カタルスペース」を展開しています。
モノづくりを行っている会社(職人)は、誰もが商品に込められた思いやストーリーをもっと多くの人に知ってもらいたいと思っているはずです。そのためには、商品を実際に見てもらうもらうことが効果的ですが、実際に店舗に扱って頂いたり、ECサイトを作ってそこに顧客を誘導することは容易でなく、多くの良い製品も知ってもらうことすらできていません。
万が一、小売店で扱って頂けたとしても、埋もれてしまうことも多いです。どのような場所で、どのようなきっかけで、または誰からの紹介で消費者に知ってもらうのか。それが製品を巡る一連のストーリーとして魅力的に映るかどうかが、実は大きなポイントなのです。
一方で、サービス店舗を運営している方で、遊休スペースを何かに活用できないかと考えているケースが多いです。スペースを月単位で展示スペースとしてモノづくり企業にお貸しすると、店舗側には副収入を得ることと、商品をきっかけに新たな客層を獲得できるチャンスが広がるというメリットが生まれます。また、純粋に地方を応援したい、良い製品と出会いたいという思いを持った店舗も多いです。商品の展示に関して在庫を抱える必要がないことも魅力の一つといえるでしょう。
サービス利用の流れは、最初に、商品提供側がカタルスペースに登録した店舗の中から、店舗の雰囲気や客層といったデータを見ながら、自社商品と親和性のある店舗に対して「展示したい」とアプローチします。店舗側の審査が通れば展示開始です。
ただ商品を多くの方に知ってもらうというだけではなく、商品に付けたQRコードによってイベントやECサイトへの流入もサポートします。ユーザーにとっては、販売にあたって自分たちのオペレーションが必要ない点も大きなメリットといえるでしょう。まさに「商品を展示したい」と「スペースを有効に活用したい」のニーズを結びつけるプラットフォームなのです。
吉本:私が生まれ育った岐阜県は、大手自動車メーカーの下請け工場が非常に多いエリアでした。友人の多くは年齢的に親の工場を引き継いでいるのですが、引き継いだものの予定通りに運営できずに廃業となった例も少なくありません。やはり下請けの仕事が中心になってしまうために健全な経営になりにくいこと、現状から抜け出そうとアクションを起こしてみても自分の周りの流通ネットワークしか持たないため、大きな広がりが期待出来ないことなどが理由に挙げられます。
官公庁調査をみると、1986年には87万件あった事業者数も2016年には45万件に激減しています。さらに後継者が確保できていない企業数は実に81%を超えているのです。かつて日本を支えていた製造業は、地盤沈下が著しい危険な状態だと感じました。そこで、モノづくり業界に、これまでになかった新たなムーブメントを起こしたかったのです。
2018年6月に会社設立し、設立後の約半年はひたすら実証実験を繰り返す日々でした。その後、2019年4月に「カタルスペース」を開始。現在は運営スタッフも5名となりました。
ちなみに「Catalu」とは英語の「カタリスト(Catalyst):触媒」がベースとなっていて、2つの意味を持たせています。一つは、お互いが触媒となることでベストな化学反応を促進したいという願い、もう一つは『語る』。お気に入りの商品を人から人へ伝えていくという思いです。
一度スタートを切ってしまえば、あとは景色が見えてくる
吉本:弊社の仕組みでは店舗と製品のマッチ度合いが肝になってきます。ただ製品を置いてあるだけにならないように、どんな項目や仕組みが必要なのか、ということには本当に頭を悩ませました。実証実験を繰り返し、その結果やヒアリングを通して仮説を設定し直し、再度実証実験をするというサイクルを繰り返しました。
吉本:営業促進に関しては、もともと前職で培った全国の自治体とのネットワークでモノづくりの現場に声をかけていきました。自治体側も全国に展開するための販路開拓に迷っていたこともあり、賛同までが早かったですね。
店舗に関しては、もちろんエリアによって温度差があるのですが、比較的に大きな企業からの問い合わせが増えてきています。宿泊施設や公共スペース、鉄道関係、商業施設などです。モノづくりを支援したいという社会的貢献(CSR)の視点からの参加も多く、僕らにとっては追い風がきていると思っています。
吉本:現在、このビジネスモデルは特許出願に向けて準備中です。しかしそれは独占的にビジネスを行うということではありません。頭の中は、この新たなマーケットの拡大しかありません。そのためには多様な業界とのアライアンスを検討しています。近日中には金融機関等との連携も決定する予定です。
また、よりサービスを強化していくために、弊社独自のECモール機能も付与する予定でいます。これまでのスペースは月額固定金額制でしたが、ECへ誘導し、販売した実績に応じた成果報酬型のプランを導入していきます。それによって製造業者はよりリスクが無い形となり、店舗にとってもより製品を薦めやすい仕組みになっていきます。
吉本:最初踏み出す瞬間は、本当にやっていけるのか不安があると思います。ただ真面目に事業を積み重ねていれば必ず誰かが見てくれているものです。協力者や賛同者が現れ、意外な形で事業が進んだりします。
本当にやりたいことがあるのならば、まず第一歩を踏み出してみる。ただそれでも不安はあるものです。その場合はいきなり会社を辞めるのではなく、就業後に準備を進めてはいかがでしょうか。今はそれができる時代ですから。
一度スタートを切ってしまえば、見えてくる景色が違ってくるものです。やっている中で自分がどれだけワクワクできるか。それが自分の中での指標になると思います。
起業後にお客様と接していくと、厳しい声をいただくことがあります。振り返ってみると、お客様の声で自分の世界観がより鋭くなっていきましたね。そういった声をお聞きしながら改善を繰り返していくといいでしょう。私の中でも、まだまだ考えていることが半分も実現できていません。共に頑張っていきましょう。
(取材協力:株式会社Catalu JAPAN/)
(取材協力:三幸エステート株式会社)
(編集:創業手帳編集部)