ゾーホージャパン マニカンダン・タンガラジ|エンジニア出身の社長に聞いた!Zohoの強みは徹底した「顧客目線の開発」
日本市場で信頼を得て、中小スタートアップの成長を支えたい
「Zoho CRM」は、Zoho Corporation Pvt. Ltdが開発した顧客管理・営業支援ツールです。
Zoho Corporationはインドに本社を置き、日本、アメリカ、オランダ、シンガポールなど世界各地に拠点を持つグローバル企業です。日本国内では、Zoho Corporationの日本法人であるゾーホージャパン株式会社が販売およびサポートを行っています。
ゾーホージャパンが毎年開催しているビジネスイベント「Zoholics(ゾーホリクス)Japan 2024」に、今年は創業手帳 代表の大久保も登壇しました。(イベントの様子はコチラ)
そして今回お届けするのは、ゾーホージャパンのマニカンダン・タンガラジ社長(以下、マニ社長)と大久保の対談です。世界で1億人を超えるユーザーが利用するZoho のソフトウェアは、どのような環境で開発されているのか。Zoho の特徴や日本市場に感じること、中小スタートアップがCRMを活用するメリットなどをお伺いしました。
ゾーホージャパン株式会社 代表取締役社長
24年にわたり、サイバーセキュリティ、IAM(IDの管理・認証許可)、クラウド、マイクロソフトエコシステムなどITにおいて最も複雑な課題にアプローチするソリューション構築に貢献。創業初期から現在の大企業へと成長を遂げるに至るまで重要な役割を果たしてきました。
現在は、ゾーホージャパン株式会社の代表取締役およびZoho Corporation Pvt. Ltd のエンタープライズIT部門であるManageEngine の副社長。日本市場において、顧客を中心としたソリューション提供のアプローチでテクノロジーとビジネスのギャップを埋めることに重点を置き、顧客からの需要に応えながらマーケティング、セールスのビジネス強化によりZoho ブランドの成長事業を統括。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
AI連携も構想中の「Zoho CRM」はスタートアップの成長手段
大久保:創業手帳もZoho CRM とZoho Campaigns を活用しています。特に、Zoho Campaigns を使ったメール配信は、自社の成長と安定に役立ちました。これから成長しなければならない中小企業やスタートアップにとっても、Zoho CRM の活用はとても有効な手段ですよね。
マニ社長:今おっしゃっていただいたZoho CRM やZoho Campaigns は、Zoho のが開発した用途・目的に応じたツールです。
私たちのツールは効果が高いと示されていますが、その理由は私たちがお客様の声を重視しているからです。私たちは、お客様のご希望を伺い、ご要望・要件を理解します。そして、お客様のご要望をZoho のプラットフォームへ取り込むことに尽力しています。
だからこそ、Zoho CRM は多くの中小企業の成長を支援してこれたのだと思います。
大久保:Zohoが今注力している機能、より注目してほしい機能はありますか?
マニ社長:現在、Zoho が注力しているのは、自動化とユニフィケーション(機能間のデータ連携)です。私たちは複数のZoho ツールですでに連携を成功させており、さらなる連携も進めています。サンドボックス(テスト環境)との連携がまだ実現していないため、現在開発が進められている段階です。
大久保:AIやLLM(大規模言語モデル)自体の開発もされているのでしょうか?
マニ社長:Zoho は、自社独自のAIアシスタント「Zia(ジア)」を提供しています。私たちは常に選択肢をお客様へ提供しており、AIの分野においても同様です。お客様はZoho 独自のAIの仕組み(モデル)や処理ルール(ロジック)を利用することもできます。
当社のプラットフォーム全体で行っているように、AI機能においてもコードを書かずに使えるノーコード、少しのコードを書くだけで使えるローコード、そして本格的なコーディングを行うプロコードのそれぞれに対応した開発方法を提供しています。
必要に応じてお客様ご自身で処理ルール(ロジック)を書き込むことも可能です。
Ziaはすでに、日本のお客様向けに最適な連絡時間帯や最適なコミュニケーション手段、売上予測、異常検出、自動化の提案、商品のレコメンドなどの機能を提供しています。Zoho はさらに、2025年の年末までに生成AI機能への日本語対応も追加する予定です。
55以上のアプリを開発したのは、徹底した顧客目線
大久保:AIも実装されるとのことですが、Zoho にはすでにたくさんの製品がありますよね。
マニ社長:はい、Zoho のプラットフォーム上には、55のツールがあります。
私たちが多くのツールを提供しているのは、「お客様の課題を解決するソリューションを開発すること」へ常に注力しているからです。
大久保:ツールの数が多い理由は、顧客の業務改善のために開発してきたからなのですね。では、なぜZoho はこれだけ多くの開発ができるのでしょうか?会社としての特徴についてもお伺いできますか?
マニ社長:Zoho の製品開発の成功は、2つの基本原則に基づいています。
1つ目は、私たちが株式を公開しない非公開企業であることです。開発プロセスは自社で完全にコントロールできています。この独自性のおかけで、製品の択一性を優先しながら市場のニーズへ柔軟に対応できます。
Zoho のエンジニアたちは、当社の基準を満たす屈強なソリューションの提供に集中でき、その結果としてすべての製品がお客様への真の価値を提供できるようになっています。
2つ目は、お客様のニーズへ常にコミットすることを優先しています。このお客様中心の企業哲学と社内で課題を解決する文化が製品開発の方向性を自然と導いています。
お客様が抱える課題を見つけた際には、それに対応する包括的なソリューションを自主的に開発できる自由と専門知識を私たちは備えています。
大久保:身の回りの課題をエンジニア自身が解決していく風土は、起業家にも通じると感じました。マニ社長もエンジニア出身でいらっしゃるんですよね。
マニ社長:はい、最初にソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートし、製品開発の経験を積みました。
大久保:日本では営業出身の方が社長になることが多いですが、マニ社長のようにエンジニア出身の方が社長になっておられるのは、「顧客目線の開発」を重視するZoho らしさの表れかもしれませんね。
中小企業がCRMを導入するメリット
大久保:Zoho CRM の導入は、中小企業やスタートアップにとって、どのような効果が期待できるのでしょうか?
マニ社長:中小企業では、どうしても日常的なタスクに追われがちです。事務作業などに多くの時間を取られていたり、業務を理解している特定の従業員に任せきりになったりしていることも少なくないと思います。
そのような状況では、従業員全員が会社の利益を生む活動に専念するのは難しいですよね。Zoho CRM を導入すれば、例えばお客様へフォローアップメールを送信するなど、さまざまな業務を、自動化できるようになります。
また、特定の従業員に負担がかかっている業務も、整ったプロセスを定めて誰もが作業できるように改善が可能です。その結果、従業員は利益を生む活動、会社を成長させるための活動に集中できるようになるのです。
大久保:会社の利益を生む上でもハッピーですし、従業員の働きやすさにとってもハッピーな状況を作れるのですね。
信頼性が重視される日本市場でチャレンジを続けたい
大久保:日本市場をどのように見ておられますか?
マニ社長:私は日本市場の「技術的優位性」と「将来への可能性」を高く評価しています。日本ビジネスにおいて最も素晴らしいと感じるのは、「品質」と「長期的な関係を重視する姿勢」です。
Zoho では、信頼性が高く、安心して利用できる製品を提供することに力を入れており、これは日本ビジネス価値観とも非常にマッチしています。だからこそ、私たちは日本市場に大きな可能性を感じています。
大久保:日本市場で今後チャレンジしたいことはありますか?
マニ社長:私たちが日本市場で克服したい主な課題は2つあります。
まず1つ目はローカリゼーションで、日本語や文化に合わせて私たちの製品を適応させることです。
2つ目は、私たちの技術の効果を示し、高品質な製品を提供することで信頼を築くことです。これらの取り組みを通じて、日本とその顧客との密接な関係を築き、彼らにとっての信頼できる選択肢となることを目指しています。
大久保:日本は世界と比べてもデジタル化がとても遅れています。高額なシステムのベンダーが多いうえに、ユーザーもデジタルをなかなか使いこなせないからです。だからこそ、安価でハイクオリティなシステムを提供されているZohoが、日本で活躍できる余地は大きいと思います。
マニ社長:はい、その通りです。特に、中小企業がコスト効率の良いデジタルトランスフォーメーションを進めるのが難しい状況にあります。そのため、私たちは中小企業を積極的に支援し、徐々にZoho CRMの導入が進んでいます。
今後は日本企業との関わりをさらに増やして、多くの企業の支援ができれば嬉しいですね。
大久保:Zoho とそのユーザー、関係者を集めたイベントであるZoholicsも、日本企業との関わりを深めるために開催されているのでしょうか?
マニ社長:私たちのビジネスのほとんどがオンラインで行われています。これは広い層にリーチすることができますが、顧客と直接会う機会は少なくなっています。
そこで、Zoholics はそのギャップを埋めるために、お客様が私たちと直接出会い、交流できる機会を提供することを目的としています。
また、私が社長として一番大切にしているのも、「人間関係」や「人を大事にすること」です。Zoho のユーザー同士や関係者間などでも、輪が広がっていくと嬉しいですね。
大久保:最後に日本の起業家へ向けてメッセージをお願いします。
マニ社長:今後はますますデジタルトランスフォーメーション(DX)が重要になります。
すでにCRMを導入している企業も多いかもしれませんが、まだであれば今がデジタル化を進めるのに一番良いタイミングだと思います。
大久保の視点
創業手帳は、起業の成功率を上げる経営ガイドブックとして、毎月アップデートをし、今知っておいてほしい情報を起業家・経営者の方々にお届けしています。無料でお取り寄せ可能です。
(取材協力:
ゾーホージャパン株式会社 代表取締役社長 マニカンダン・タンガラジ)
(編集: 創業手帳編集部)
海外のスタートアップといえばユニコーンに代表される巨額調達が思い浮かびます。
しかしZoho のように、非上場にすることで投資家や株価にとらわれず顧客とプロダクトにフォーカスするという視点は一つの戦略のあり方だと思います。