事業向け融資の大まかな流れは?審査後の手続きや手数料、審査期間などを解説
融資申込から審査、着金までの過程や時間を紹介します。必要書類も列挙するので事前準備にお役立て下さい。
中小企業の経営者や個人事業主のみなさま、金融機関の融資はどのような流れで行われるかご存じでしょうか。今後、借入をお考えなら、融資にどのような過程があり、どのくらいの時間がかかるのかを、把握しておくのがおすすめです。
そこで今回は、事業向け融資の流れについて、審査期間や審査後の手続き、手数料などを含めて解説します。申込や契約の際の必要書類も列挙するので、ぜひこれから融資を受ける際の参考にしてください。
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この記事の目次
融資の大まかな流れ
融資の基本的な流れは、以下の通りです。
- 相談・申込
- 面談・現地調査(審査)
- 融資実行
- 返済
この流れは、日本政策金融公庫の融資でも、銀行の信用保証付き融資、プロパー融資でも変わりません。以下では、各段階について簡単に説明するので参考にしてください。
1. 相談・申込
まずは金融機関(日本政策金融公庫、信用保証協会、銀行)の窓口にて、融資の相談を行います。日本政策金融公庫の場合は、「事業資金相談ダイヤル 0120-154-505」でも相談が可能です。
相談の際は、手元に「会社案内」「決算書」「事業計画書」などを用意しておくと、より具体的な話が聞けます。
相談のうえ、融資に申し込むことを決めれば、窓口で申込手続きを行いましょう。日本政策金融公庫・国民生活事業(小規模向け)の場合、インターネット申し込みも利用できます。
融資の申込に必要な書類
融資を申し込む際に必要となる書類は以下の通りです。
日本政策金融公庫 | 個人企業・小規模企業 | <個人営業の方> ・最近2期分の申告決算書(申告されている方) <法人営業の方> ・最近2期分の確定申告書・決算書(勘定科目明細書を含みます。) ・最近の試算表(決算後6ヵ月以上経過している場合または事業を始めたばかりで決算を終えていない方) <共通> |
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中小企業 | ・会社案内、製品カタログなどの参考資料 ・法人の登記事項証明書 ・最新3期分の決算書・税務申告書 ・納税証明書 ・最近の試算表(決算月から時間が経っている場合) ・設備投資を行うときは、概要のわかる資料(見積書等) ・担保の内容がわかる資料 |
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創業予定の方 | ・創業計画書 ・設備資金のお申込の場合は見積書 ・履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人の場合) ・担保をご希望の場合は、不動産の登記簿謄本または登記事項証明書 ・生活衛生関係の事業を営む方は、都道府県知事の「推せん書」(借入申込金額が500万円以下の場合は不要です。)または、生活衛生同業組合の「振興事業に係る資金証明書」 ・運転免許証(両面)またはパスポート(顔写真のページおよび現住所等の記載のあるページ)のコピー ・許認可証のコピー(飲食店などの許可・届出等が必要な事業を営んでいる方) |
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信用保証付き融資の場合 | (1)信用保証委託申込書(保証人等明細) (2)申込人(企業)概要 (3)信用保証依頼書 (4)個人情報の取扱いに関する同意書 (5)確定申告書(決算書) (6)商業登記簿謄本 (7)印鑑証明書 |
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銀行のプロパー融資の場合 | (1)決算書 (2)月次試算表 (3)資金繰り表 (4)契約書 (5)事業計画書 (6)経営計画書 など |
出典:日本政策金融公庫「お手続きの流れ」
全国信用保証協会連合会「信用保証のお申し込み」
企業実務 2014. 12「銀行から融資を引き出す提出書類の作り方」
なお、場合によっては上記以外の補足資料が必要になることもあります。必要書類の詳細については、金融機関の窓口や担当者へお問い合わせください。
2. 面談・現地調査(審査)
審査の内容は、金融機関や申し込み内容などによって異なりますが、面談や訪問が行われることも多いです。
例えば、日本政策金融公庫の国民生活事業では、面談が実施され、資金の使い道や事業の状況(計画)などについて質問されます。中小企業事業では、公庫職員が申込者の本社や事業計画予定地などに訪問し、事業や計画の内容が調べられます。
審査結果はいつ、どのように通知されるか?
申し込みから審査完了までにかかる期間は、一般的に2〜4週間程度です。金融機関や融資のタイプによる審査期間の違いについては、後述の内容を参考にしてください。
審査が完了すれば、担当者から審査結果の連絡がきます。日本政策金融公庫の場合、連絡方法は電話と郵送です。まず担当者から電話で連絡があり、審査に通った場合は、借用証書が郵送されるという流れだといわれています。
銀行の信用保証付き融資やプロパー融資の場合、審査結果の通知手段は、電話もしくはメールです。信用保証付き融資では、信用保証協会が発行する「信用保証書」が後日郵送され、それをもって正式な保証承諾・審査合格となります。
3. 融資実行
審査通過の通知を受けたら、必要書類を用意し、融資の契約手続きを行います。契約締結後、金融機関から融資金が振り込まれます。着金までにかかる期間は、書類の記入や郵送などの時間も含めると、早くて1週間前後です。
契約手続きに関しては、後述の「審査後に必要となる契約手続きについて」もご参照ください。
4. 返済
融資の実行後は、決められた返済条件に基づき、金融機関へ借入金の返済を行います。返済方法は、各金融機関や契約内容によってさまざまです。
日本政策金融公庫の場合、個人企業・小規模企業への融資では、返済は原則として月賦払い。返済方法は、元金均等返済、元利均等返済、ステップ返済などから選べます。中小企業への融資では、原則として元金均等割賦返済で、申込者の口座から自動振替となります。
融資の審査期間はどのくらい?
融資ごとの審査期間(目安)
日本政策金融公庫 | 信用保証付き融資 | 銀行融資 |
---|---|---|
3週間程度 | 2〜3週間程度 | 2〜4週間程度 |
上記の通り、融資の審査期間はおおよそ2週間〜4週間程度です。
日本政策金融公庫の場合、公式サイトのQ&Aにて、申込から融資決定まで「平均的には、3週間程度」と明記されています。※国民生活事業の場合
また信用保証付き融資では、保証協会の審査で3日〜1週間程度、銀行の融資審査で1日〜1週間程度、合計で2〜3週間程度かかるとするのが、地銀の元貸付業務担当による見解です。
なお、銀行でプロパー融資を受ける場合は、2〜3週間で審査が完了するといわれています。ただし、担保を設定する場合は、担保を評価する時間が1週間ほど余分にかかるため、1ヶ月前後となるでしょう。
地方自治体の制度融資では「2ヶ月程度」を見ておくのが良い
地方自治体の制度融資※では、信用保証付き融資の審査以前に、自治体による確認作業が行われることがあります。その場合、審査期間は合計で2ヶ月程度を見ておくのが良いでしょう。
例えば、埼玉県の中小企業制度融資では、所定の受付機関が、融資申込書に記載された内容の調査や現地確認を行います。そのほか、自治体によっては、中小企業診断士などの専門家と、事前面談が行われることもあるようです。よって、一般的に制度融資の審査期間は、長くなる傾向があります。
ただし、制度融資の仕組みは、自治体によって異なります。そのため、効率的な審査の仕組みを持っている自治体であれば、早めに融資が受けられる場合もあるでしょう。
※制度融資とは、地方自治体が信用保証付き融資をあっせんし、中小企業が融資を受けやすくするための仕組み。
審査に通れば、融資金はいつ振り込まれる?
融資の契約手続きが完了すれば、融資金は3営業日程度で振り込まれるといわれています。ただし、契約にかかる必要書類の準備や郵送、金融機関の確認などに時間を要するので、審査完了から少なくとも1週間は見ておくべきです。
以上より、申込から審査を経て、着金するまでには、1ヶ月から1ヶ月半程度かかると考えられます。制度融資の場合、自治体の調査や面談の状況によっては、2ヶ月、3ヶ月とかかるでしょう。
なお、審査後の契約手続きの流れについては、次項の内容をご確認ください。
審査後に必要となる契約手続きについて
審査に通ったら、以下の必要書類を準備して、融資の契約手続きを行います。
- ご融資のお知らせ・借用証書(事業資金用)
- お客さまの情報の利用に関する同意書
- 償還金等の預金口座振替利用届
- 収入印紙(郵便局などで購入)
- 印鑑証明書(法人は法務局、個人のは市役所などで取得)
- 預金通帳(融資金の送金先、返済金の口座振替に使用) など
- 契約書
- 同意書
- 印鑑証明書
- 商業登記簿謄本
- 代表者住民票
- 代表者印鑑証明書
- 納税証明書 など
※信用保証付き融資では、ほとんどの書類が2部ずつ必要(銀行宛と保証協会宛)
借用証書や契約書、同意書などについては、審査通過後に金融機関から郵送されます。それ以外の書類については、事前に準備しておくと、契約手続きをスムーズに進めることが可能です。
また書類の作成にあたっては、ペン(消せないもの)や実印、届出印(銀行印)などが必要になるので、これらも準備しておきましょう。
契約手続きや必要書類のさらなる詳細に関しては、金融機関の窓口や担当者にご確認ください。
融資実行にかかる手数料はある?
手数料の有無や金額については、以下のように融資の種類によって異なります。
融資ごとの手数料
- 日本政策金融公庫:送金手数料220円(税込)
- 信用保証付き融資:所定の信用保証料
- プロパー融資:なし
信用保証付き融資にかかる信用手数料は、例えば、所定の条件で500万円を借りた場合、69,000円となります。※
※東京信用保証協会「信用保証料簡易シミュレーション」を使用。均等分割返済、保証期間24ヶ月、据置期間なし、保証料率1.15%で計算。
まとめ
事業向け融資の流れは、相談・申込から面談・現地調査を経て、審査完了、融資実行と進むのが一般的です。審査期間は融資の種類によっても異なりますが、2〜4週間程度といわれています。
審査後は、借用証書や同意書をはじめとする必要書類を、金融機関へ提出します。それらの書類が受理され、契約締結となれば、3営業日程度で融資金が振り込まれるという運びです。
これらを総合すると、融資の申込から着金までには、1ヶ月〜1ヶ月半ほどかかることになります。そのため、融資が必要な場合は、時間に余裕を持って準備や申込を行うのがおすすめです。急いで資金調達をしなければならない場合は、ビジネスローンやファクタリングなども検討してみましょう。ただし、ビジネスローンやファクタリングは創業時の融資には不向きなので、創業時は時間に余裕を持って取り組むようにしましょう。
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(編集:創業手帳編集部)