環境省も推奨するワーケーション。メリット・デメリットは?自治体の事例も紹介
休暇と仕事を両立できるワーケーションの魅力に迫る~理想のライフワークバランスのために!~
(2020/08/16更新)
コロナ禍において働き方の変化を実感されている方も多いのではないでしょうか。
新たな働き方が模索されるなか、2020年7月「ワーケーションやサテライトオフィスなどは、新しい旅行や働き方のスタイルとして、政府も普及推進をしていきたい」と政府が言及し、ワーケーションという言葉が注目を集めました。
休暇と仕事を両立できるワーケーションですが、実際にはどのように行われ、推進のためにどのような取り組みがなされているのでしょうか。
ワーケーションの意味やメリット、課題を解説。自治体の取り組みなどを具体的に見ていきます。
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この記事の目次
ワーケーションとは
ワーケーションとは、「ワーク(仕事)」「バケーション(休暇)」を組み合わせた言葉で、観光地で仕事をするなどのイメージがありますが、観光地に限らず本拠地を置くエリア以外の地域で仕事しながら休暇を取得することをさします。
通信環境などが整った場所であれば、全国どこでもワーケーションが可能ですが、会社の許可やテレワークが可能な仕事内容であることといった条件が必要となります。
ワーケーションのポイントは以下の4点です。
・会社の承認がある
・通常の勤務地や自宅とは違う場所で仕事に取り組む
・休暇中に仕事をする
・テレワークなどを活用する
ワーケーションを導入するためには、会社の理解と体制構築、そして場所の選定が重要なポイントになります。
ワーケーションの滞在期間については、1日や2日といった短期間から数ヶ月の長期まで多岐に渡り、会社の制度によって異なります。滞在中の仕事と休暇の時間割合も様々で、1週間の滞在で1日だけ仕事をする、もしくは4日間仕事をするなど、会社の制度によって幅があります。
ワーケーションのメリット
ワーケーションには、利用する社員側にも提供する会社側にもメリットがあります。それぞれにとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
利用する社員のメリット
自由度の高い働き方ができる
長期休暇中に会議のために会社に顔を出す必要がなくなります。滞在先から休暇の合間にテレワークで会議に参加できれば、会議の予定を気にして休暇をコントロールする必要がなくなります。
新たな発想が生まれる
非日常な環境下で気持ちがリラックスした状態にあると、新たな気持ちで仕事に取り組むことができます。
非日常を楽しみながら仕事に取り組める
滞在場所がホテルであれば、掃除や食事の用意といった日常の家事に煩わされることがありません。また、家族同伴でなければ、仕事に集中することができます。
家族同伴のワーケーションであれば、仕事中に家族が観光やイベントを楽しみその後合流するなどといった柔軟な楽しみ方ができます。
費用や移動時間を抑えることができる
トップシーズンを避けて長期旅行に出かけることができるため費用を安く抑えることができます。トップシーズンを避けることで交通渋滞に悩まされることがなくなるのも嬉しいポイントです。
ワーケーションを上手に利用することで、プライベートと仕事を両立し、理想のワークライフバランスに近づけることできます。
提供する会社側のメリット
チームの結束力が高まる
チーム単位でワーケーションを取り入れた場合、課題や目標に対してチームで一丸となって取り組むことができます。それによって、チームとしての結束力を高める効果が期待できます。
有給申請の分散と取得促進を図れる
平成31年に労働基準法が改正され、企業は法廷年次有給休暇数が10日以上である全ての労働者に対して、毎年5日間の年次有給休暇を確実に取得させることが義務付けられました。また、政府の目標では「2020(令和2)年までに年次有給休暇の取得率を70%にする」ことが掲げられています。
ワーケーションを導入することで、有給申請の分散や長期休暇の取得促進効果も期待できます。
利用者にとってもメリットの大きいワーケーションを取り入れて多様な働き方を認めることで、優秀な人材の確保や定着を促進する効果もあります。
ワーケーションのデメリットや課題、注意点など
ワーケーションにはデメリットや課題もあります。利用する社員側、提供する会社側にとってどのようなデメリットがあるのでしょうか。
利用する社員のデメリット
オンとオフの切り替えが難しい
仕事に取り組む時間や内容などをリスト化し、仕事の時間とプライベートの時間をしっかりと分けて取り組まなければ効率ダウンにつながります。
コミュニケーションが難しい
リモートワークに慣れていない方にとっては、コミュニケーションの取りにくさがデメリットのひとつです。チャットやテレビ会議の活用だけではなく、イメージを正しく共有するために言語化や可視化をする必要があります。
情報管理リスクがある
滞在先のカフェで仕事をしてパソコンを置き忘れてしまったり、カフェや図書館のWi-Fiを利用して重要な情報を盗まれてしまったりといった情報管理リスクがあります。
提供する会社側のデメリット
導入や運用にコストがかかる
ワーケーションを取り入れるためには、労務管理やマネジメントの整備や仕組みづくりが必要で、そのための導入費用や運用コストがかかってしまいます。さらに、ワーケーションを実施するためには、セキュリティ対策をしっかりと行う必要もあるため対策コストもかかります。
ワーケーション利用者の評価が下がる
上司がワーケーションを正しく理解できてないと、ワーケーションで働く部下の評価がさがってしまうこともあります。
仕事と遊びの混同と捉える反発がある
「バケーション」や「バカンス」と仕事を繋げるのに抵抗を覚える人もいます。そのため、評価体制やマネジメントシステムの整備だけではなく、社内への啓蒙活動も重要なポイントになります。
環境省を始め各自治体が推進・支援
環境省では、令和2年度(補正予算)において、「国立・国定公園への誘客の推進事業費及び国立・国定公園、温泉地でのワーケーションの推進事業費の間接補助事業」を実施しています。これは、ワーケーション等の実施に係る事業やワーケーション等環境整備事業に補助金(上限300万円)の交付を行うもので、これを追い風に積極的に参加する自治体が増加してきています。
ワーケーションを受け入れる自治体で構成される「ワーケーション自治体協議会(WAJ)」には、1道9県85市町村の計95もの自治体が参加しています。(2020年8月5日現在)
ワーケーションは国や自治体をあげて推進・支援されており、今後も支援の拡充が見込まれます。
ワーケーション推進のための自治体の取り組み
長野県や和歌山県は、ワーケーションを早期から積極的に支援してきたことで知られています。
今回は積極的な取り組みを行っている自治体の中から、特に注目したい3例をご紹介します。
長野県上水内郡信濃町「信濃町ノマドワークセンター」
ワーケーションの先駆けとして自治体をけん引している長野県。
長野県には数多くのワーケーションに適した施設がありますが、中でも注目したいのが信濃町とNPO法人Nature Serviceによる「信濃町ノマドワークセンター」です。
信濃町ノマドワークセンターは、法人向け貸し切り型リモートオフィス施設で、自然の中でありながら都会と変わらずに仕事に取り組むことができます。
<支援内容>
ITやロボティクス産業に特化した設計で、リモートオフィス機能のみならず、創業を志す方に対してノウハウ等を提供する審査制のインキュベーション機能や3Dプリンターなどを備えたラボを持つ施設でもあります。
宿泊施設はありませんが、予約時に相談するとコーディネーターが周辺の施設を紹介してくれるので、企業研修にもピッタリです。
和歌山県白浜町「シラコンバレー」「JR×住まいサブスク」
長野県と並んでワーケーションに積極的に取り組んできた和歌山県。
和歌山県は、早期にワーケーション推進に取り組み、試行錯誤を繰り返しながらワーケーションの普及をけん引しているエリアです。
観光地として知られる白浜には、年間約340万人もの観光客が訪れます。
ICT企業誘致に力を入れ、多くの企業がサテライトオフィスを開設しています。
通信環境が整っており、IT産業集積地としても注目を集め「シリコンバレー」ならぬ「シラコンバレー」を目指すべく、「白浜町企業誘致促進条例」を制定しています。
<支援内容>
耐災害ネットワークの実証実験を国の機関であるNICTと「NerveNet(ナーブネット)」と行っており、平時は「Shirahama free Wi-Fi」として無料開放しています。
優遇施策や補助金交付も行っており、更に積極的な企業誘致を実施しています。
また、JR西日本とKabuk Styleが手掛けるワ―ケーションや多拠点生活を応援するサービス「JR×住まいサブスク」は、定額で住み放題の「HafH」や「ADDress」にJRのおトクなプランをセットにできるサービスなどを提供してます。
自治体の積極的な活動が、多彩な展開に繋がる良い例と言えるでしょう。
静岡県賀茂郡南伊豆町「南伊豆るプロジェクト」
南伊豆には解決できていない地域課題が山積しており、その地域課題解決をビジネスとして行える企業の誘致を目的として、「サテライトオフィス誘致事業」に取り組み、ワーケーションに力を入れています。
単に企業を誘致するだけではなく、「サテライトオフィス誘致に成功した10年後の南伊豆町」の姿を明確にしました。
地域の方々と企業が連動することで、南伊豆の良さをいかしつつ、「地域の子供が憧れ働く企業が栄える町」や「区や地域、ヨソモノとジモトなど様々な垣根が消えた町」を目指しています。
<支援内容>
空き家バンクや現在検討しているビジネスに応じた町内関係者の紹介、専属のコンシェルジュを1社につき1名配置してくれるだけでなく、南伊豆町空き家バンクリフォーム等補助金制度もあります。専属のコンシェルジュは地元の方々との繋がりをサポートしてくれるなど、現地での支援を行ってくれます。
また、オフィス開設後の定住時に利用することができる起業支援や住宅支援なども用意されています。
ワーケーションで仕事効率アップとプライベートの充実を
テレワークの普及などによりワーケーションを利用した働き方が可能になったことを追い風に、「仕事とプライベートを混同するな」という時代から「仕事とプライベートの調和」が求められるようになりつつある昨今。
働き方が多様化する中で、優秀な人材の確保と定着促進、そしてワークライフバランスの確保は企業にとって重要な課題のひとつです。
ワーケーションを取り入れることで、仕事に取り組みやすい環境を整備し、新しい働き方を実現してみませんか。
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(編集:創業手帳編集部)