知らなかったら危険!?自社商品を出す前に調べておきたい「商標権」取得の2ステップ

創業手帳

商品のイメージが決定される、大切な「商標」の守り方

(2017/05/01更新)

「自分が開発した商品を世に広めていきたい!」そんな熱い気持ちを持って商品開発を進めている創業者のあなた!ちょっと待ってください!
商品のイメージ作りに重要な「商標」について調べていますか?しっかり調べておかないと、良い商品を作っても同じような商標がすでに登録されている・・・なんていう可能性もあるんです。

そこで今回は、創業時に押さえておきたい「商標権」について、知的財産の専門家であるプラナス特許事務所の森戸弁理士に解説していただきました。
しっかり学んで、大切な商品イメージを守りましょう!

こんなシチュエーションで、知的財産権が関わります

「商標権」は「知的財産権」のうちの一つです。最初に「知的財産権」について、簡単にご紹介しておきましょう。次の3つのシチュエーションを考えてみてください。

(1)さあ、起業だ。屋号は練りに練った○○○〇、そうだついでだからロゴも作っておこう。折角だからロゴはちょっとお金をかけて、こだわってみよう!

(2)この事業アイディアは絶対成功する。あとは資金だ! そうだ、はやりのクラウドファンディングをやってみよう。マーケティングにもなるし。

(3)やっぱり、ホームページは必要ね。そういえば、前にインターネット上に素敵な画像を見つけたから、その写真を掲載しようかな。そういえばあの文章も宣伝に使えるわね。そっくりそのまま、マネさせてもらうわ。

実は、上の事例のなかに知的財産権にかかわる問題が潜んでいます。

「ホームページ上のコンテンツを勝手に使ったら著作権違反なんでしょ?」と思われるかもしれませんが、すべてのインターネット上のコンテンツが利用できないわけではありません。ルールの範囲内であれば利用できる場合もあります。
知的財産権を理解することで、インターネット上のコンテンツ利用の判断から、知財に関するリスクを把握した上での経営判断までできるようになります。

そもそも「知的財産」って?

堅苦しい話で恐縮ですが、法律(※1)において「知的財産」とは、
 ① 発明や、著作物など人間の創造的活動によって生み出されるもの
 ② 商標や商号などの事業活動に用いる表示
 ③ 営業秘密などの情報

と定義されています。
そして、知的財産にかかわる権利のことを知的財産権と呼ぶわけです。

※1 知的財産基本法第二条第一項
この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。

知的財産権の種類

知的財産権は下図のように分類されています。
出典:特許庁ウェブサイト(https://www.jpo.go.jp/seido/s_gaiyou/chizai02.htm

それでは、商標権についてポイントを解説していきましょう。

商標権とは

商標権とは、自分の商売において、商標を独占排他的に使用できる権利のことです。

ちなみに、商標とは、商売に使う標章(マーク)のことですね。取り扱う商品・サービスを他業者の商品・サービスと異なることをお客さんに理解してもらうため(識別してもらうため)に用いますよね。

商標権を取得した商標は、それを使用する商売、また似たような商売の範囲内で、重複して登録されることはありません。同じ商標がついているのに、商品やサービスのクオリティーがまちまちだったら、お客さんは困りますよね。そういったことを防ぐためにも商標権制度は意味があるのです。

商標権を取得するには?

商標権を取得するためには、特許庁に申請書(願書)を提出します。申請書には自分が使用したい商標と、自分の商売の範囲(指定商品や指定役務と言います)を記載します。
商標は、文字や図形またその組み合わせなどを記載することができます。また近年の法律改正により、音やホログラム等も商標として申請できるようになりました。

特許庁における所定の審査をクリアできれば、登録料を支払うことで商標権を取得することができます。審査の状況にもよりますが、権利取得まで大体6か月程かかります。

商標権を取得するメリット

商標権を取得するメリットは何といっても「自分の商売にその商標の使用を独占できること」です。さらに、お客さんを惑わせるような「類似商標」を、他人が使用することも排除できます。
ただし、その独占、排除できる範囲は、「自分の商売」および「似たような商売」の範囲になります。

「似たような商売」その基準は特許庁で定めてられています。(※2)

例えば、あなたは、商標権を持つホットドックショップの経営者としましょう。あなたは、同じ商標や類似商標を使用するホットドックショップのみならず、ハンバーガーショップを営んでいる他人に対し、その商標の使用を止めるよう要請や警告をすることができます。一般的に、ホットドックショップとハンバーガーショップは、似たような商売と判断できますからね。

※2 特許庁の定める基準は絶対的な基準ではなく、裁判において覆される場合もあります。裁判所は、似ている商売か否かを、お客さんがどれだけ紛らわしいと感じるか、取引の実情などを個別に勘案した上で判断します。

商標権取得のための2ステップ

では、実際に申請する際のステップを押さえておきましょう!

①商標の調査

まずは、自分の商標やそれに類似する商標を既に他人が登録していないか確認しましょう。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage

特許庁の関係団体が運営するJ-PlatPatというサイトで調べることができます。
ここで自分の商標が登録されていないことを確認してから、商標を使うようにしましょう。
ただし、誰かが先に商標権を取得するリスクは常につきまといますから、資金に余裕のできた段階でなるべく早く申請(出願)をすることをお勧めします。
商標の調べ方について、わからないことがあったらヘルプデスクに問い合わせてみましょう。

②出願

出願は、インターネット、郵送、持参のいずれかで特許庁に対して行います。インターネット出願は便利ですが、出願ソフトのインストールや特許庁への申請人の事前登録、本人であることを証明する電子証明書の入手などなど、結構準備に手間がかかります。継続して出願する予定が無いのであれば、郵送または持参がよいでしょう。出願書類の様式等、手続については特許庁のHPをチェックしましょう。

https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/syutugan_tetuzuki/05_01.pdf

気になる費用ですが、出願費用が12,000円~(※3)審査が終了し登録となった場合に支払う登録料が28,200円~(※4)です。
なお商標権は10年毎に更新することができます。10年後に更新する場合、別途更新費用が必要になります。
代理人(弁理士)に手続を依頼する場合は別途代理人手数料がかかります。

代理人に依頼するメリットは、申請時間の節約はもちろん、前述の商売の範囲(指定商品、指定役務)を的確に記載してもらえることです。また、商標登録ができない商標(※5)についても精通していますので、申請する際の大きな味方になるでしょう。

※3 平成29年4月現在  3400円+1区分につき8600円を加えた額
   郵送または持参により、書類にて出願の場合は、電子化手数料として
   1200円+書類1枚につき700円が別途必要になります。
※4 平成29年4月現在  10年分の登録料として 区分数×28200円
               5年毎分納の場合 区分数×16400円
※5 既に登録されている商標や似ている商標のほか、例えばありふれた商標や
   国際機関を表す商標等、登録を受けることができない商標については、法律で
   細かく規定されています。

商標権の注意点

商標権を持つことで、前述の通り、商標を独占できたり、類似商標を止めさせることができます。
ですが、裏を返せば、他人が先に商標権を取得してしまうと、自分の商標の使用ができなくなるリスクがあるとも言えます。
商号の登記が済んだ後、しかも事業がある程度軌道に乗った段階で、全くの他人から使用差し止めの警告を受ける可能性がある、ということも頭に入れておきましょう。

まとめ

今回は商標権について解説しました。申請に費用は掛かりますが、商標権を取得(商標を登録)しておいてデメリットはありません。大切な財産を守るために、資金に余裕があったらぜひ商標登録を行っておきましょう。

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(監修:プラナス特許事務所 所長弁理士 森戸啓太郎 )
(編集:創業手帳編集部)

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