若手社長が在学中に起業したタイミーの強みとは
スキマ時間で働ける求職者と企業のマッチングアプリ、タイミーがコロナ禍でも強い理由を創業手帳が分析します
「この時間なら働ける」人と「この時間だけ働いてほしい」企業をつなぐスキマバイトアプリのタイミー。立教大学在学中の小川社長が起業した会社です。創業手帳では、まだ資金調達前の雑居ビルにいた時代のタイミーに注目し取材しています。当時はなんと手書きで「タイミー」と書かれたダンボールが表札代わりでした。
タイミーはその後資金調達を経て、大きなサービスに成長しました。そんなタイミーは、大学生への影響も絶大です。「タイミーを見て自分も会社を作りました」という大学生も実際に創業手帳に来ています。そんなタイミーの社会的影響、また今後の不安はないのかについて、創業手帳が分析します。
タイミー代表取締役
1997年4月13日生まれ。高校生の時に起業に関心を持ち、リクルート/サイバーエージェントでのインターンを経験。2017年8月にアパレル関連事業の株式会社Recolleを立ち上げるも1年で事業転換を決意。2018年8月10日よりスキマバイトアプリ「タイミー」のサービスを開始。「一人一人の時間を豊かに」というビジョンのもと、様々な業種・職種で手軽に働くことができるプラットフォームを目指す。
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この記事の目次
若者に希望を与える若手社長
タイミーの小川社長は最初の取材時には22歳の立教大学生。在学中に巨額の資金調達をし、その資金も使って事業をスケールさせました。年齢が若いということは、今後の事業や経営者としての「残り時間」と伸びしろが大きいというメリットがあります。
「タイミーの小川社長を見て触発されて起業にチャレンジしました。」という大学生が実際にいるように、「自分もできるのではないか」というモデルケースとして若者に希望を与えています。
日本の若者のキャリア志向は大企業・公務員が中心でしたが、高齢化が進み閉塞感があり、若者たちの志向も変わりつつあります。
もちろん会社やプロフェッショナルを目指す大学生もいないと困りますが、日本は海外に比べて明らかに起業に挑戦する割合が低いのです。
例えば、トヨタもパナソニック、ソニーも元々ベンチャー企業ですし、もっと言えば財閥系の三菱グループも150年前に起業家の岩崎弥太郎という当時の若者が作りました。ソフトバンク級の大型の起業家があまり出てきていないのが日本の課題とも言えます。
ちなみに、タイミーでインターンをしていた小川社長と同世代の人物が、実際に独立し起業した例もあるそうです。
アメリカでも中国でも、海外では起業家が人気の職業の一位ですが、日本はそうではありません。そんな閉塞感のある日本の若者に影響を与えているという功績は大きいと言えるでしょう。
コロナで業績が落ち込むもV字回復!今後の展望は?
スキマ時間を利用してアルバイトができるタイミー。新型コロナの影響により、以前は6割もあった飲食店の導入割合が大幅に縮小し、物流企業や小売企業の導入が増えたといいます。現在は飲食、小売り、物流など、多岐にわたる業種でのアルバイトを選択することが可能になりました。これはユーザーにとっても嬉しい変化ですね。
タイミーのサービスが今後も伸びていくだろうと考えられる理由は5つあります。
- 日本は人材や時間が固定化されており、スキマ時間を流動させにくい。
- 経済停滞で所得や資産が上がりにくい。
- 企業側にとって人材が確保しにくい。とくに若者は少子化で確保が難しい。
- アプリのため会員とデータが蓄積しやすい
- 規模と収益性の大きい市場である
無駄な莫大な時間を流通させる社会的な需要がある。
ワーカー側の働く理由がある。
人材ビジネスで多い属人的な営業に依存するビジネスモデルだと成長が二次曲線で上がりにくい。タイミーの場合、利用ユーザの会員やデータが蓄積されていくので、時間の経過とともに事業が強くなり成長がドライブしていく可能性が高い。
人材は日本ではリクルートなどが牽引して、一定の高単価・高収益な人材ビジネスマーケットが形成されてきた。
市場の特性として、収益を出しやすい市場にいると言えよう。
昔は「大手が出てきたら瞬殺される」という声もあったタイミーですが、今やその規模はかなり大きくなっており、簡単には他に左右されないユーザー数になってきています。
不安な点を挙げるとすれば、コロナ対応、ユーザーの確保、単価や定着率のアップ、競合との戦い、拡大に伴う組織整備でしょう。
コロナについては、ユーザーの店鋪現場系の業界が影響を受けている以上、その影響は避けられませんが、それらの課題も解決していくでしょう。
働き方改革、ギグワークなど世の中の流れにマッチしたサービス内容
大企業が少しずつ副業を解禁している流れや、少子化の影響もあり、「スキルを持っている人をシェアしていこう」という世の中の動きに、タイミーの「手軽に、少しだけ働こう」という仕組みはうまくマッチしていると言えます。
サービス開始当初は学生が全ユーザーの約7割を占めていましたが、現在は2割まで減り、その代わりに30~50代のフリーターや社会人が増えてきているそうです。
タイミーでは労働が終わった後に、双方が評価するシステムがあるため、いい人材を確保するためには企業側も待遇や労働環境を見直す必要があり、職場環境の改善にもつながっているといいます。
タイミーの実施したユーザーアンケートによると、約半数の人が正規採用を望んでいるという意外な事実も浮き彫りになりました。
ギグワークとは、短時間のみの労働のことを指しますが、好きなときに好きなだけ自由に働くことができるため、副業としても人気です。例えば最近街中でよく見る、フードデリバリーの配達員も副業ギグワークとして人気があるそうですが、業務委託のため労災がおりないという問題点を抱えています。一方タイミーはギグワークでありながらも雇用契約を結ぶ形になるので、そういった点でも安心です。まだ日本では浸透しているとは言い難いギグワークですが、今後タイミーなどのプラットフォームを通じてより一般的なものになるでしょう。
また、ギグワークは職業体験の場としても有効と言えます。大人になると、なかなかいろいろな職業を体験するということは難しいですよね。自分にはどんな仕事が合っているのか、どんな仕事をしているときに楽しいと思えるのかを身をもって体験してみるのも、いい経験になるかもしれません。
起業家や若者へのメッセージ
最後に、小川社長から読者の皆さんへのメッセージをいただきました。
「人生の時間は一度きり。いつ死ぬかわからないし、後悔のないように全力で生きろ」
この言葉は常に自分に問いかけている言葉です。いつかやりたいと思っていることは少しでも早いタイミングでチャレンジしてもらえたらと思います。自分自身にもまだまだ課題は山積みです。一緒に頑張りましょう!
(取材協力:
株式会社タイミー代表取締役 小川嶺)
(編集: 創業手帳編集部)