The Model(ザモデル)型の営業組織とは?仕組みやメリット、注意点を解説
The Model(ザモデル)は時代の変化によって生まれた新しい営業モデル
近年、「The Model(ザモデル)」という営業プロセスが新たに注目を集めています。The Modelは従来の営業モデルとは異なり、時代の変化に合わせて誕生したものです。
そのため、時代の変化に合った営業が行えるようにと導入を検討している方も多いかもしれません。
そこで今回は、The Model型の営業組織における仕組みや導入するメリット、導入時の注意点などをご紹介していきます。
営業組織の見直しを図りたい、The Model型の営業組織を取り入れたいと考える方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
The Model(ザモデル)とは?分業型の営業プロセスモデル
そもそもThe Modelとは、アメリカで発展した分業型の営業プロセスで、アメリカのカリフォルニア州に本社を置くSalesforce社が提唱する概念です。
日本国内ではSalesforceを経て株式会社マルケトの代表を務める、福田康隆氏の著書で紹介され広まっていきました。
The Modelが注目を集めている背景
The Modelが注目された背景には、サブスクリプションやSaaS事業の拡大が影響しています。
これまで商品やサービスを提供した場合、一度売ってしまえば終わりという流れが主流でした。
しかし、サブスクリプションやSaaS事業の拡大によって、ユーザーが商品・サービスを継続的に利用するビジネスモデルが成り立ち、従来の営業組織ではひとりですべてを担当するのが難しい状態になってしまいました。
そこで注目を集めたのが、分業型の営業プロセスとなるThe Modelです。分業型の営業プロセスだと、各部門で連携が取りにくいという課題がありました。
しかし、CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)などが普及したことで連携が取りやすくなり、The Modelを導入しやすくなったことも注目を集めている理由のひとつといえます。
The Model(ザモデル)型営業組織の仕組み
The Modelは営業プロセスを分業し、部門間で連携を取ることで顧客満足度の向上を図ります。ここでは、そのようなThe Model型営業組織の仕組みについてご紹介します。
4部門の役割について
The Model型営業組織において、営業プロセスを分業すると4つの部門に分けられます。それぞれの部門が担っている役割について解説します。
1.マーケティング
マーケティングの主な役割は、見込み客を獲得することと、興味関心のあるユーザーに育てるナーチャリングの2つです。
近年はインターネットの普及によって営業と接点を持つ前に、ユーザーの情報収集はほとんど終わっている状態が多く見られます。
しかし、マーケティング部門は情報収集を行う潜在顧客に対してもアプローチが可能です。
マーケティング部門では事前にペルソナを設定し、顧客からのCVやWebサイトのPVなどを指標にして成果を測定します。
自社の利益につながるよう、具体的な購入行動につなげるのがマーケティング部門の大きなメリットです。
マーケティング部門では見込み客を獲得するために、様々な活動に取組んでいます。
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- Webサイトやブログの運営
- SNSの活用
- イベントやセミナーの開催
- コンテンツマーケティングの実施
- MA(マーケティングオートメーション)ツールの活用 など
2.インサイドセールス
インサイドセールスの主な役割は、マーケティング部門から引き継がれた見込み客の購買意欲をさらに高めることです。
具体的には、見込み客から顧客化につなげる育成や案件化を図ることです。
インサイドセールス部門が見込み客を育成する際におこなうアプローチは、電話やメールといった非対面による手法です。
どのような課題を解決したいのかを理解し、そのニーズを満たせる商品・サービスの価値を伝えることで、顧客化を目指します。
見込み客を顧客まで育成でき、前向きに商品・サービスの利用を検討できるようになったら、営業(フィールドセールス)部門へ引き渡し、具体的な商談へと移行していきます。
3.営業(フィールドセールス)
営業(フィールドセールス)では、商談管理と受注が主な役割となります。
これまでの営業活動では新規の顧客を増やすために、見込み客に向けて電話・メール・訪問といったアウトバウンドセールスが行われ、時間をかなり費やしていました。
また、短期受注の見込みがある顧客の対応にも追われていたため、商談に集中できない状態でした。
しかし、The Model型営業組織で分業化され、営業部門は商談に時間をかけられるようになったのです。
営業部門はインサイドセールスとは異なり、直接顧客と対話をすることになります。営業活動全体の成果が決まるため、非常に重要な役割を担っています。
4.カスタマーサクセス
営業部門で顧客が商品・サービスを契約したら、カスタマーサクセス部門へ移行します。
カスタマーサクセスは顧客が利用する際のサポートから問い合わせ対応、アップセル・クロスセルの提案などの役割を担っており、顧客に長期間利用してもらうことを目指します。
ヘルプデスクなどをメインとするカスタマーサポートと似ていますが、カスタマーサクセスは顧客が商品・サービスを通じて成功体験につながるよう支援し、契約を継続してもらうことをメインに活動しています。
商品・サービスの価値を最大化させるためにも、カスタマーサクセス部門の存在は欠かせません。
4部門でKPIを設定
The Modelでは、マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの4部門でそれぞれKPIを設定することになります。
KPIはプロセスにおける数値目標です。The Modelでは各部門で活動内容は異なるものの、業務自体は連動しているため、KPIも連動させる必要があります。
また、4部門でKPIを細かく設定することで、もしも目標を達成できなかった場合にどこで問題が生じているのかがわかりやすくなり、対策も取りやすくなります。
The Model型営業組織を導入する際は、必ず4部門でKPIを設定してください。
KPIを設定する際は、売上予算から逆算して考えます。例えば売上予算が2,000万円で平均受注単価が200万円だった場合、受注数で考えると20件は必要になります。
受注率が50%だと商談数は40件必要で、さらに商談化率が20%だった場合は案件数が200件必要です。
案件化率20%の場合だと見込み客数は1,000人必要で、見込み客獲得率10%で来訪者1万人が必要となります。
このように、売上予算から逆算することで具体的な数値目標を算出できます。
The Model(ザモデル)型営業組織を導入するメリット
The Model型営業組織の導入によって、様々なメリットが得られます。ここでは、The Modelを導入すると得られる5つのメリットをご紹介します。
営業効率が上がる
The Modelの営業プロセスでは、まずマーケティング・インサイドセールスによって見込み客を増やし、ナーチャリングを行うことで顧客化につなげることが可能です。
すでに顧客化した状態で営業部門が引き継ぐため、顧客への提案から受注までのプロセスだけに注力でき、営業効率の向上が期待できます。
また、営業部門だけでなくそれぞれの部門に業務が分担されることで、各部門の専門性も向上していきます。
これまで営業活動はすべてひとりの営業マンが担っていましたが、各部門が集中的に業務へ取組めるようになるため、さらなる効率化が目指すことが可能です。
問題が明確になる
The Modelでは4つの部門でそれぞれKPIを設定します。KPIの設定によってどこに問題が起きているのかが可視化され、弱点を把握することが可能です。
弱点がわかれば、万が一トラブルが発生した場合でも対策を講じやすくなります。
また、営業プロセスの可視化によって全体だけでなく、各部門でそれぞれ自身の成果や課題を把握しやすくなることもメリットのひとつです。
各部門が成果に対してフィードバックを行い、改善点や最も効果のあった方法などを共有できます。
再現性の高い営業活動ができる
The Modelを導入すると、営業プロセスにおいて4部門が共有・連携を取りやすいようなルールを定めることになります。
このルールに沿って営業活動が行われるため、従業員の経験やセンスなどに頼った属人的な営業活動をなくすことが可能です。
属人的な営業活動は、業務効率と品質の低下やマネジメントが難しくなること、ノウハウ・ナレッジを蓄積できないといったデメリットがあります。
特に継続性が求められる顧客対応業務は担当者によって違いが出てしまうと、信用を失ってしまう可能性も高いです。
The Modelはこうした属人性を回避し、誰でも適切な顧客アプローチができるようになります。
部門間での共有・連携が強化される
The Modelでは各部門の活動によって得られた結果が、次の部門が担当するプロセスにも影響を与えます。
部門内では次の部門に悪影響を及ぼさないために、自身の目標を確実にクリアしようと取組みます。
各部門がそれぞれ目標を達成し、しっかりと成果が出れば全体の目標達成にもつなげることが可能です。
各部門がより高い成果を出すためには、情報の共有と連携強化も欠かせません。
分業化というと連携を取らないイメージがあるかもしれませんが、目標は共通しているため、営業プロセス全体における目標を達成するために各部門が協力体制を構築します。
失注した案件にもアプローチし直せる
失注した案件に対してアプローチし直せるのもThe Modelのメリットです。
マーケティング部門によって創出した見込み客がすべて顧客化し、商品・サービスを利用するわけではありません。
最初はかなりの数を取り込めても、実際に商品・サービスを購入するのは一握りとなるケースもあります。
しかし、The Model型営業組織では営業部門へ移行しなかった見込み客をマーケティング・インサイドセールスの2部門によって、長期的にフォローすることが可能です。
その結果、一度は失注した案件も継続的なアプローチが行えます。
The Model(ザモデル)を取り入れる際の注意点
The Modelによって様々なメリットを得られますが、実際に導入する際にはいくつか注意点を押さえておく必要があります。
最後に、The Modelを取り入れる際の注意点を解説します。
目標を明確にする
The Modelを取り入れる際には、必ず目標を明確にしておいてください。
現状の営業組織において何が問題となっているのかをハッキリさせ、何をどのように変えれば良いかを検討して目標設定につなげていきます。
上記でも4部門それぞれでKPIを設定することについてご紹介しましたが、目標を数値化する場合は部署ごとに分断するのではなく、営業プロセスがつながっていることから数値目標も全体で最適化を行う必要があります。
部門間で十分な連携が取れる体制をつくる
営業プロセスを分業化させるThe Modelでは、部門間で十分な連携が取れる体制を構築することも重要となります。
せっかくThe Modelを導入しても部門間で分断が起きてしまい、情報共有が難しい状況だと意味がありません。
また、従業員一人ひとりに部門連携の重要性を理解・周知させていくことも重要です。
組織が理解していても、実際に現場で業務を担う従業員が理解していなければ成果も得られませんし、ほかの部門から不満が上がってしまう可能性もあります。
こうしたトラブルを回避するためにも、情報共有や連携することの重要性を理解してもらうことが大切です。
データを取得できる業務オペレーションを確立させる
The ModelではKPIを設定し、高速でPDCAサイクルを回しながら営業活動の精度を高めていきます。PDCAサイクルで分析・評価をするためにはデータが必要です。
そのため、分析に必要なデータを取得できる業務オペレーションを確立させることも重要となります。
例えばインサイドセールスなら電話やメールの回数と内容を振り返れるよう、データを残しておくことで分析だけでなく改善点も見つけやすくなり、より業務の質を向上できます。
これはインサイドセールスに限らず、ほかの3部門でも共通していえることです。
営業プロセスに関わるすべてのメンバーが活動記録をデータに残し、活用できるようにすることは、The Modelを活用して目標達成を目指すために必要不可欠な要素となります。
まとめ・The Model(ザモデル)型を取り入れて営業効率の最大化を目指そう
The Modelは営業プロセスを分業化した新たな営業モデルであり、導入する企業も増えてきています。
The Modelを導入してから成功を目指すためには部門間の連携が必須となるため、導入前に部門間の連携体制についてどのように構築していくかを検討しておいてください。
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(編集:創業手帳編集部)