定款変更にかかる費用の目安は?費用を抑える方法も合わせて解説!
経営状況の変化によって定款の変更が必要となる場合がある
会社を設立する際には必ず「定款」を作成することになります。しかし、会社を経営していく中で、定款に書かれている内容に変更が生じる場合もあります。
この時、定款の内容を修正・追加・削除しなければなりません。
今回は、定款変更にかかる費用相場と、定款変更にかかる費用を抑えるための方法について解説します。
定款変更しない場合に生じるリスクも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
定款変更が必要になるケースとは
定款変更が必要になるケースは、主に定款に記載されている内容に変更が生じた場合です。以下のケースでは定款変更が必要になります。
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- 本店所在地を移転させる場合
- 役員の人数や任期を変更したい場合
- 事業目的や会社名(商号)を変更したい場合
例えば、本店所在地を移転させる際には、新しい所在地が確定した時点で定款変更が必要です。
役員の人数を増やしたり任期を変更したりすることで安定した経営体制を構築できるようになります。ただし、定款変更の手続きを行わなければなりません。
事業目的や社名変更も、認知度を向上させたり新たな市場に参入する際に効果的に進められることが期待できたりしますが、そのためには定款変更も必要です。
定款に記載すべき内容と、変更に登記が必要な項目
会社法によって定款に記載する内容には基準が設けられており、3つの項目に分かれています。
ここで定款に記載すべき内容と、定款の変更に登記が必要な項目について解説します。
絶対的・相対的・任意的記載事項とは?
定款に記載する事項は主に3つの種類に分けられます。
特徴 | 該当する事項 | |
---|---|---|
絶対的記載事項 | 定款に必ず記載すべき事項。記載されていないと定款が無効になる。 | ・事業目的 ・商号 ・本店所在地 ・設立時に出資される財産の価額またはその最低額 ・発起人の氏名または名称、住所 |
相対的記載事項 | 記載がなくても問題ないが、定款への記載がないとその事項の効力が認められなくなる。 | ・現物出資 ・財産引受 ・発起人の報酬や特別利益 ・設立費用 ・設立時取締役および取締役選任に関する累積投票廃除 ・株主名簿の管理人 ・株券発行 ・取締役会・監査役の設置 ・役員の任期伸長 ・公告方法 など |
任意的記載事項 | 会社の本質に反しない範囲で自由に記載できる事項。法律上の要件ではないが、会社運営のルールを記載できる。 | ・資本金額の変更 ・利益配分の方法 ・会計年度、決算期 ・定時株主総会の招集時期 ・株主総会の議長 ・取締役などの数 ・株主名簿の基準日 など |
登記が必要なのはどの記載事項か
定款変更の際に登記が必要かどうかは、記載事項によって異なります。例えば、絶対的記載事項を変更する際には登記が必要です。
また、相対的事項に含まれる取締役会や監査役を設置したり、株券を発行したりする場合には登記を行う必要があります。
さらに、資本金額を変更する際には任意的記載事項でも登記が必要です。
定款の変更手続きにかかる費用相場
定款の変更手続きを行うためには、費用が発生する場合もあります。ここでは費用相場について解説します。
登記申請費用
定款の変更手続き自体に費用はかからないものの、定款に記載された事項の中で登記が必要となる事項に対して、登録免許税が発生します。
登録免許税は複数の事項を変更する場合でも原則3万円です。しかし、項目によっては費用が若干異なるため、事前に確認しておくと安心です。
記載事項 | 費用相場 |
---|---|
商号 | 1件あたり3万円 |
事業目的 | 1件あたり3万円 |
本社所在地 | 管轄法務局の区域内:3万円 管轄法務局の区域外:新旧それぞれの住所で3万円ずつ、計6万円 |
役員 | 1件あたり1万円(資本金額1億円を超える会社は3万円) |
増資 | 3万円または増加した資本金額の0.7%のいずれか多い金額 |
解散・清算 | 解散登記:3万円 清算人の就任登記:9,000円 監査役を設置していた場合の退任登記:1万円(資本金額1億円を超える会社は3万円) 監査役設置会社の定め廃止の登記:3万円 |
商号
会社名を変更する場合には、「商号変更登記」が必要です。
登記申請の内容や資本金額によって支払う金額が変わるものの、商号変更に対して一律3万円の登録免許税を支払うことになります。
なお、登記申請時に印鑑登録証明書を取得する必要がありますが、取得する際の手数料として1通300円がかかります。
事業目的
会社の事業目的も絶対的記載事項に含まれています。新規事業の立ち上げや事業目的を変更する際には変更登記が必要です。
また、変更登記に加えて株式会社なら株主総会による特別決議、合同会社なら社員全員からの同意が必要となります。
なお、事業目的も商号変更と同様に、一律3万円の登録免許税を納める必要があります。
本社所在地
本店の場所を移転する際にも変更登記が必要です。
定款に記載されている本店所在地は最小行政区画(東京23区内は「区」、郡は「町・村」、それ以外は「市」)でも登録できます。
なお、同じ区画内での移転であれば定款の変更は不要となるものの、変更登記は必要です。
本社所在地を変更する場合、元の住所と移転先が同じ法務局の管轄内であれば、登録免許税は3万円だけで済みます。
しかし、移転先が管轄外になる場合は、移転前と移転後の管轄法務局に対して登記申請を行うことになるため、合計6万円を納める必要があります。
役員
役員を変更する場合は定款に記載された事項をもとにするため、定款変更を行う必要はありません。
ただし、変更登記は必要になることから、1件1万円(資本金額1億円を超える会社は3万円)を納めることになります。
また、役員の人数や任期を変更する際は定款変更が必要となるものの登記は不要となるため、登録免許税は発生しません。
増資
定款に記載された資本金額を増資したい場合、定款変更の有無に限らず変更登記が必要です。
支払う金額は、3万円または増加した資本金額に1000分の7を乗じた金額(0.7%)のいずれか多い金額になります。
増加した資本金額に0.7%乗じた金額が3万円以上になるのは、450万円前後です。そのため、増加した資本金額が450万円以上であれば登録免許税も3万円以上になります。
解散・清算
株式会社を解散する際には、解散の登記と清算人就任の登記を申請することになります。解散登記には3万円、清算人就任の登記では9,000円を登録免許税として納めます。
また、監査役を設置していた会社が解散する際には費用が発生し、別途監査役退任登記で1万円(資本金額1億円を超える会社は3万円)、監査役を設置した企業の定めを廃止する登記では3万円です。
専門家に依頼した場合の費用相場
定款変更は素早く、正確に対応する必要があることから、司法書士への依頼が必要になるケースもあります。
専門家に依頼した場合の費用相場は、変更が必要な記載事項によって変動します。
変更する記載事項 | 費用相場 |
---|---|
商号・事業目的の変更 | 2~4万円 |
本店所在地の移転(管轄法務局の区域外) | 4~7万円 |
役員変更 | 2~4万円 |
増資 | 3~6万円 |
解散手続き | 5~10万円 |
定款の変更登記をしないとどうなる?
定款の内容を変更したものの、登記を行っていない場合、会社に様々な不利益が生じる場合もあります。
ここで、定款の変更登記をしなかった場合に起こり得るリスクについて解説します。
過料が課される可能性がある
定款の変更に伴う登記は、原則変更から2週間以内の申請が必要です。
登記事項に変更があったにも関わらず、2週間以上経ってから登記変更した場合には、「登記懈怠(とうきけたい)」として代表者に対し過料が課される可能性があります。
過料の金額自体は数万円程度が一般的ではあるものの、悪質と判断された場合には100万円以下の過料が課されることもあることに注意が必要です。
なお、悪質と判断されるのは、放置していた期間が数年にも及ぶ場合です。
許認可や補助金が受けられない場合もある
事業内容を追加・変更した際に、定款に記載された事業目的の変更を行っていないと、行政からの許認可申請が通らない可能性もあります。
新たな事業を開始しようとしても、定款にその業種を記載していなければ、許認可の申請自体受理してもらえないかもしれません。
また、資金不足を解消するために補助金・助成金の申請を行っても、定款に記載された内容と実際の事業目的が異なる場合には補助金・助成金が受けられない可能性もあります。
こうした事態を防ぐためにも、定款の変更登記は常に最新の状態に更新しておかなくてはなりません。
融資・取引きで信用を失ってしまう
金融機関から融資を受けたり新規取引先と契約したりする際には、登記簿謄本の提出を求められる場合があります。
登記情報と実際の事業内容や組織構成が異なる場合には、「管理が行われていない企業」と判断され、信用を失う可能性があります。
信用が失われると、融資を受けたくても審査に通らなかったり、取引を停止されたりするケースもあることに注意が必要です。
定款変更にかかる費用を抑える方法
定款変更によって変更登記が必要な場合、登録免許税と司法書士への報酬が発生します。ここからは、定款変更にかかる費用を抑える方法について解説します。
自社だけで対応する
変更登記で発生する登録免許税は必ず支払う必要があるため、司法書士に支払う報酬を節約することがポイントになってきます。
大きく費用を抑えたいのであれば、プロには依頼せず自社で対応する方法がおすすめです。
自社の従業員だけで手続きを行えば、必要な費用は登録免許税のみになります。ただし、書類に不備があると変更登記ができなくなることに注意が必要です。
自社だけで対応したいが不備をなくしたい場合には、書類の準備はすべて対応し、確認作業のみ司法書士に依頼する方法がおすすめです。
書類の確認だけしてもらえれば、変更登記を依頼するよりも安く済む可能性が高いです。
念のため書類のチェックのみ対応してもらえるかを確認した上で、依頼するようにしましょう。
報酬額を比較する
司法書士に依頼する場合には、事前に報酬額がどれくらいかかるのかチェックしてみてください。各事務所のホームページに詳しい報酬額が記載されているケースが多いです。
事務所によっては報酬額が安く設定されている場合もあるため、複数の事務所で比較してみてください。
費用の安さだけで選ぶのは注意が必要
各事務所の報酬額を比較することも重要ですが、費用が安いという理由だけで事務所を選ぶのは危険です。
事務所によってはホームページに記載された料金は安くても、結果として様々な追加料金が発生し、結局高額な報酬を支払うことになるケースもあります。
また、事務所によっては対応できる作業が限られており、自社で対応する部分が増える可能性もあります。
複数の司法書士から選ぶ際には見積もりを提示してもらい、追加料金の有無について確認しておきましょう。
料金面でよくわからない箇所や不安がある場合は、納得するまで確認することも重要です。
司法書士を選ぶ基準として、報酬額のチェックも大切ですが、他の要素も含めた上で決めることが大切です。
コミュニケーションが取りやすいかどうか、密に連絡が取れるかどうか、通常業務以外に専門性はあるかどうかを確認してください。
中小・零細企業を中心に対応している事務所を選ぶ
各事務所の報酬金額は基本的に自由に設定することが可能ですが、中小企業や零細企業に特化して対応している事務所であれば、比較的割安な料金設定になっている場合もあります。
また、大規模な事務所には在籍する司法書士の数が多く、一人ひとりの経験や知識量に差が出ることがあるかもしれません。自社の規模に適した事務所を選んでみてください。
まとめ・定款変更は項目によって費用が異なる!
定款変更は、項目によって変更登記が必要になる場合とそうでない場合に分かれます。また、変更登記の項目ごとに登録免許税や司法書士への報酬額も異なります。
定款変更を行う前に、どれくらいの費用がかかるのか、どういった手続きが必要になるのかを確認した上で、スムーズに定款変更・変更登記を行ってください。
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(編集:創業手帳編集部)