退職金にも税金はかかる!?確定申告の必要性なども詳しく解説!

創業手帳

退職金にかかる税金や税金の計算方法など


退職金制度を設けている企業では、一定の年数以上働いていれば勤続年数や業績などに応じてお金が支給されます。
受け取った退職金は生活費や独立・開業のための資金など、自由に使うことが可能です。
ただし、退職金を受け取る際には、税金がかかることを理解しておく必要があります。

そこで今回は、退職金にかかる税金の種類や計算方法、確定申告の必要性について解説します。

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退職金にかかる税金の種類とは?


退職金を受け取った場合にかかる税金は、「所得税」および「復興特別所得税」と「住民税」の2種類です。
これらは企業に属している間も支払っているのでなじみ深い税金ではありますが、あらためてどのようなものなのかご紹介します。

個人の収入にかかる「所得税」と「復興特別所得税」

所得税は、給料などの個人の収入に対してかかる国税です。
1月1日~12月31日までの収入から所得控除を差し引き、その金額に税率をかけることで個人で納める所得税が決まります。
取得税の税率は5~45%の7段階に分かれており、課税される所得金額によって異なるのが特徴です。

一方、復興特別所得税は、2013年~2037年まで所得税額に付加される国税です。
東日本大震災の復興施策を実施するための財源確保を目的に創設されました。期間中は2.1%上乗せする形で所得税を納税する必要があります。

なお、退職金(退職所得)は、ほかの所得と合算せずに単独で税額を計算して納税する分離課税が適用されます。

地方公共団体から課せられる「住民税」

住民税は、地方公共団体に納める地方税です。都道府県に納税する道府県民税・都民税、市区町村に納税する区市町村民税に分けられます。
納税する場所は、1月1日時点で住所がある都道府県・市区町村になります。

住民税が徴収されている理由は、地方公共団体が提供する教育・福祉・救急・ゴミ処理などの公共サービスの運営にかかる費用をまかなうためです。
また、退職金にかかる住民税は、所得税と同じく分離課税で納めることになります。

退職金にかかる税金の計算方法・流れ


退職金にかかる税金の計算方法は、受け取り方によって異なります。
計算方法や計算の流れを知ることで、退職金を受け取った際にどのくらいの税金がかかるのかイメージすることが可能です。ここで、税金の計算方法と流れをご紹介します。

1.課税退職所得額を算出する

まずは課税対象となる退職所得を求める必要があります。課税退職所得は、「(退職金-退職所得控除額)×1/2」で計算可能です。
なお、退職金が控除額以内であれば、課税退職所得がないことになるので、税金はかかりません。

退職控除額は勤続年数によって異なるため、以下の計算式で求めてください。

勤続年数20年以下 40万円×勤続年数
(退職金が80万円以下の場合の控除額は80万円)
勤続年数20年以上 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

勤続年数25年で、退職金1,500万円を受け取ったケースでシミュレーションすると、課税退職所得は以下のようになります。

退職所得控除額:800万円+70万円×(25年-20年)=1,150万円
課税退職所得額:(1,500万円-1,150万円)×1/2=175万円

上記のケースでは、退職控除額が1,150万円、課税退職所得が175万円という計算になりました。

2.所得税を算出する(一時金形式で受け取る場合)

次に、所得税を計算します。一括で退職金を受け取る一時金形式は、退職所得として課税することになります。
所得税は「退職所得×所得税率-控除額」で求めることが可能です。国税庁が定める税率と控除額は以下のとおりです。

課税退職所得金額 税率 控除額
1,000円~194万9,000円 5% 0円
195万円~329万9,000円 10% 9万7,500円
330万円~694万9,000円 20% 42万7,500円
695万円~899万9,000円 23% 63万6,000円
900万円~1,799万9,000円 33% 153万6,000円
1,800万円~3,999万9,000円 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

課税退職所得が175万円の場合、税率は5%になり、控除額は0円となります。このケースでかかる所得税は以下のとおりです。

所得税:175万円×5%=8万7,500円

上記のケースでは、退職金にかかる所得税は8万7,500円と計算されました。

3.所得税を算出する(年金形式で受け取る場合)

退職金を分割して年金形式で受け取る場合、雑所得として課税されます。そのため、所得税は「雑所得×所得税率-控除額」で計算できます。
計算に使う税率は、一時金形式で受け取る場合と同様です。
年金形式で所得税を求める場合、まず雑所得の計算が必要です。雑所得は「年金の金額×公的年金等控除額」で計算できます。
控除後の雑所得金額の計算方法は、国税庁のホームページに掲載される速算表から確認するのがおすすめです。

参考に、公的年金等にかかる雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以下の雑所得の計算方法をご紹介します。

【公的年金等にかかる雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合】

年齢 公的年金等の収入金額 公的年金等にかかる雑所得の金額
65歳未満 60万円以下 0円
60万円~130万円未満 収入金額の合計額-60万円
130万円~410万円未満 収入金額の合計額×0.75-27万5,000円
410万円~770万円未満 収入金額の合計額×0.85- 68万5,000円
770万円~1,000万円未満 収入金額の合計額×0.95-145万5,000円
1,000万円以上 収入金額の合計額-195万5,000円
65歳以上 110万円以下 0円
110万円~330万円未満 収入金額の合計額-110万円
330万円~410万円未満 収入金額の合計額×0.75-27万5,000円
410万円~770万円未満 収入金額の合計額×0.85-68万5,000円
770万円~1,000万円未満 収入金額の合計額×0.95-145万5,000円
1,000万円以上 収入金額の合計額-195万5,000円

上記の表を参考に、60歳の人が退職金を10年間で150万円(合計1,500万円)受け取るケースでシミュレーションすると、雑所得額と所得税額は以下のように計算されます。

雑所得額:150万円×0.75-27万5,000円=85万円
所得税額:85万円×5%=4万2,500円

上記のケースでは、雑所得が85万円となり、4万2,500円の所得税がかかるという計算になります。
雑所得の計算方法は合計所得金額によって異なるので、事前に国税庁のホームページで速算表を確認してください。

4.復興特別所得税を算出する

復興特別所得税は、所得税の2.1%分が付加されます。そのため、「所得税×2.1%」で計算することが可能です。
上記で求めた所得税からシミュレーションすると、一時金形式で受け取るケースと年金形式で受け取るケースの復興特別所得税は以下のようになります。

一時金形式の場合:8万7,500円×2.1%=1,837円(端数切り捨て)
年金形式の場合:4万2,500円×2.1=892円(端数切り捨て)

一時金形式の場合、復興特別所得税は1,837円となるので、所得税と合わせると8万9,337円になります。
一方、年金の復興特別所得税は892円なので、所得税と合わせると4万3,392円です。

5.住民税を算出する

住民税の計算で使う税率は一律10%となるため、「課税退職所得(雑所得)×10%」で計算が可能です。
上記で求めた課税退職所得と雑所得でシミュレーションすると、住民税は以下のようになります。

一時金形式の場合:175万円×10%=17万5,000円
年金形式の場合:85万円×10%=8万5,000円

住民税は、一時金形式だと17万5,000円、年金形式は8万5,000円となります。

退職金は受け取り方によって税金が変わる


退職金にかかる税金には控除が適用されますが、受け取り方によって課税方式が異なるため、納める税額も異なります。
一般的に退職所得控除のほうが控除額は大きいため、一時金で受け取るほうが退職金の手取り額は年金よりも多いです。
そうなると、一時金での受け取りのほうが得だと考えられます。
しかし、年金形式で受け取る場合、金融機関が運用することで運用益が上乗せされ、受け取り総額を増やせる可能性があります。
一時金だとすぐに使い過ぎてしまうリスクがありますが、年金形式なら定期的に収入を得られることもメリットです。

このようなメリットがあるため、税金だけでどちらの受け取り方が良いのか比べるのは難しいといえます。
そのため、退職金をどう使っていくのか考慮した上で、自分に合った受け取り方を選ぶのがおすすめです。

退職金を受け取ったら確定申告は必要?


退職金には税金がかかることから、確定申告が必要になるのではと考えるかもしれません。退職金の場合、確定申告が不要なケースと必要なケースがあるのでご紹介します。

原則として確定申告は不要

退職金にも、今まで支払われていた給与と同様に、支払われる際に所得税と住民税が源泉徴収されています。
そのため、個人で確定申告や納税をする必要はありません。また、退職金に対しても源泉徴収票を交付してもらうことが可能です。
ただし、確定申告を不要にするためには、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しておく必要があります。

「退職所得の受給に関する申告書」について

「退職所得の受給に関する申告書」は、退職金額や勤務年数などに基づき、正しい税率で源泉徴収するために必要な書類です。
この書類を提出していない場合、退職金額に対して20.42%の税率で源泉徴収されてしまいます。
申告書類の提出期限は、退職金が支払われる前日までです。企業側から提示されるのが一般的なので、後回しにせず、速やかに必要事項を記載して提出してください。

退職金の確定申告をすべきケースも

原則確定申告は不要ではあるものの、申告するべきケースもあります。そのケースは以下のとおりです。

転職先で年末調整したけれど前職の源泉徴収票を提出していない

退職した時、勤めていた会社から支払われた給与が年間20万円以下であれば、確定申告をする必要がありません。
しかし、退職した年の12月31日までに転職して年末調整をする際に、前職の源泉徴収票を提出しなかった場合は確定申告が必要です。

前職の源泉徴収票を提出していない場合、年末調整の際に前職の収入や徴収された税金が考慮されないまま所得税総額が調整されます。
そのため、自ら確定申告を行うことで払い過ぎた所得税が戻ってくる可能性があります。

退職する時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない

「退職所得の受給に関する申告書」を提出せずに退職金を受け取った場合、退職所得控除が適用されません。
一律20.42%の税率をかけた所得税が源泉徴収されるため、本来よりも高い税金を納めることになります。
確定申告をすることで本来の税額に調整され、払い過ぎた分を取り戻すことが可能です。

年度の途中で退職し、年末調整を行っていない

年度の途中で退職した場合、勤めていた企業では年末調整をしてもらえないので、転職をしないのであれば確定申告が必要です。
会社が毎月徴収する税金は、あくまでも概算であり、正式な所得合計額や税額は年末調整の際に確定されます。
そのため、本来納めるべき税金の総額と源泉徴収された金額を比較し、過不足金額の調整が必要となります。
しかし、退職後は年末調整をしてもらえません。自分で確定申告をすることで、払い過ぎた税金を取り戻せます。

雑所得以外の所得が20万円を超える

退職金を年金形式で受け取る場合、公的年金等にかかる雑所得と扱われます。その雑所得以外に所得があり、それが20万円以上となると確定申告が必要です。
公的年金等にかかる雑所得以外に所得の例には、以下のものが挙げられます。

所得 対象の収入
給与所得 会社から支払われる給与・賞与など
配当所得 株式の配当金や投資信託の収入の分配など
一時所得 満期保険金や懸賞・福引きの賞金品など
雑所得 個人年金や原稿料など(公的年金は除く)

各種所得控除を受けたい

日本には15種類の所得控除があり、適用することで所得税を圧縮できます。例えば、通院費を含めて医療費が10万円以上かかっていれば、医療費控除を適用することが可能です。
ふるさと納税など寄付をした際には、寄付金控除を利用できます。

退職後に年末調整が行われない場合、各種所得控除は適用されないため、確定申告をして適用させる必要があります。
また、雑損控除・医療費控除・寄附金控除は確定申告をしないと適用されません。
そのため、退職後に転職して年末調整をする場合でも、適用できる所得控除によっては確定申告をしましょう。

まとめ・退職金にも税金はかかるので!必要に応じて確定申告しよう

退職金にも所得税・住民税がかかるため、満額で受け取ることはできません。受け取り方によっても税額が異なり、手取り額が変わってくる点にも注意が必要です。
退職前に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、退職金に対する確定申告は原則不要です。
ただし、退職後は年末調整が行われないため、払い過ぎている税金が返ってくることはありません。
そのため、必要に応じて確定申告を行い、税金を還付してもらいましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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