商業登記と法人登記の違いとは?登記の目的・手続きの流れや注意点をご紹介

創業手帳

商業登記と法人登記の意味などの違いをわかりやすく解説します


これから起業する場合には登記手続きを行う必要があります。
登記手続きは起業する時だけでなく、経営を続けていく中で何度も行われる場合もあることから、どのようなものなのか理解しておくことも重要です。
登記にも様々な種類があり、「商業登記」や「法人登記」などがあります。これらは似ているもののそれぞれ意味が異なるものです。

そこで今回は、商業登記と法人登記の違いについてご紹介します。手続きの流れや注意点なども解説しているので、これから起業を考えている方はぜひ参考にしてみてください。

商業登記と法人登記の違いとは?


商業登記と法人登記には具体的にどのような違いがあるのでしょう。まずは、商業登記と法人登記の意味や目的を解説しつつ、違いについてご紹介します。

商業登記とは

商業登記とは、商法や会社法によって定められた事項を商業登記簿に記載し、一般に向けて公示する制度です。
商業登記簿に記載する事項には社名や役員情報、会社の目的、資本金などが挙げられます。
商業登記は会社を設立する際にも行われますが、それ以外にも様々なシーンで手続きが必要です。

  • 本店(会社住所)の移転
  • 役員変更
  • 商号や目的の変更
  • 増資
  • 株式分割 など

会社に関してあらゆる変更があった際に登記手続きが必要となるため、「会社変更登記」と呼ばれる場合もあります。

商業登記をする目的

商業登記をする目的は、迅速な取引きを実現しつつ取引き先を保護するためです。
商業登記に記載する事項は個人商人や会社に関する事項の中でも、取引き上重要となってくる事項になります。

取引きをする際には関係者間で利害関係が発生します。
例えば取引きをする会社の本社所在地はどこにあるのか、会社の代表者は誰なのか、といった情報があることで一定の信頼性を持てるようになるのです。
円滑に取引きを進めるためにも商業登記簿で情報を公示しておくことが大切です。
また、取引きに必要な法人口座を開設する際に、法人の登記事項証明書や印鑑証明書などが必要になりす。
ほかにも融資や国から補助金を受ける場合、許認可や入札手続きの際などにも登記事項証明書が必要なケースは少なくありません。

このように、会社にとって重要な手続きにも使用することが多いため、商業登記をする必要があります。
なお、商業登記簿謄本に詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

商業登記簿謄本について、詳しくはこちらの記事を>>
商業登記簿謄本とは?使う場面や取得方法、取得にかかる手数料を解説

法人登記とは

法人登記とは、会社以外の法人を設立する際に必要な登記です。
株式会社などの会社も法人に含まれるものの、一般的に株式会社や合同会社などは商業登記として扱われます。
法人登記に含まれる団体は以下のとおりです。

  • 一般社団法人
  • 一般財団法人
  • 定非営利活動(NPO)法人
  • 社会福祉法人
  • 宗教法人
  • 学校法人
  • 医療法人社団 など

法人登記でも商業登記と同様、法人団体の設立時や団体に関して変更があった場合に登記・変更の手続きを行わなくてはなりません。
なお、どの組織に属しているかによって根拠となる法律も違ってきます。商業登記をする株式会社や合同会社などは会社法が根拠になります。
一方、法人登記をする法人団体はそれぞれで根拠となる法律が異なるので注意が必要です。

法人登記をする目的

法人登記をする目的も商業登記とほとんど同じで、設立した法人の概要を一般に示すことで信頼性を維持し、取引きを安心して行えるようにすることを目的としています。
また、行政から許認可を受けたり、補助金を申請したりするためにも登記申請が必要です。
取引先だけでなく行政が実在する団体か、信頼できる団体かを確認するために法人登記が活用されています。

法人登記についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

法人登記について、詳しくはこちらの記事を>>
法人登記とは? 必要な12種類の書類から申請方法の手順をわかりやすく解説!

商業登記・法人登記までの流れ


商業登記と法人登記は似ているものの、組織形態によって異なります。しかし、手続きをする際の流れにそれほど大きな違いはありません。
そこで、今回は会社を設立する場合を例に挙げ、登記申請の流れについてご紹介します。

1.会社の概要や設立方法を決める

会社を設立するためには、まず会社の概要や設立方法を決める必要があります。会社の設立方法は以下の2種類です。

  • 発起設立
  • 募集設立

発起設立は株式をすべて発起人が引き受ける方法です。一方、募集設立は発行する株式の一部を発起人が受け、残りの株式は引受人を募集します。
基本的には簡単に会社設立が行えるという理由で、発起設立を選ぶケースが多いです。

2.法人用の実印を作成する

次に法人用の実印を作成します。商業登記規則の改正により、オンラインで商業登記をする場合は印鑑登録が任意となりましたが、金融機関からの融資や行政からの許認可を受ける際などで実印を求められるケースもあります。
そのため、法人用の実印はあらかじめ作成しておくと安心です。
法人用の実印は設立時に必要な「代表者印」に加え、「法人銀行印」と「角印」を準備しておきます。
印鑑業者などに依頼して法人用の実印が完成したら代表者印の登録を行い、印鑑証明書を発行してもらいます。

3.定款を作成して認証手続きを行う

定款とは、会社の根本的な規則・ルールを定めた書類です。会社を設立する上で定款を作成し、認証手続きを受ける必要があります。
定款に記載する事項は企業によって異なるものの、「絶対的記載事項」と呼ばれるものは必ず記載しておかなくてはなりません。

  • 目的
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 設立時に出資される財産の価値またはその最低額
  • 発起人の氏名または名称、住所

絶対的記載事項がないと定款として認められなくなってしまうので注意してください。
株式会社を設立する際には、作成した定款は公証人から認証を受けることで効力を発揮できるようになります。

4.発起人の個人口座に資本金を払い込む

定款を作成したら、次に発起人個人の銀行口座を用意して、資本金の払い込みを行います。
定款を作成した段階ではまだ会社が設立していない状態なので、資本金は発起人個人の銀行口座に払い込むことになります。
もし発起人が複数人いる場合は代表者(発起人総代)の銀行口座を使用してください。
銀行口座は会社を設立してからそのまま法人口座に振り替える必要があります。そのため、会社設立後も取引きを継続したいと考えている金融機関の口座を活用してください。

口座を用意したら資本金を振り込みます。複数の発起人がいる場合は誰がいくら出資するか決まっているものです。
この金額がきちんと守られているかどうか確かめるためにも、「預け入れ」ではなく「振り込み」で口座に資本金を入れる必要があります。
なお、発起人がひとりしかいない場合はわざわざ振り込みにする必要はありません。
ただし、この場合でも資本金として用意したお金ということが明確になるよう、一旦資本金の額以上を引き出してから同じ口座に資本金分を入金しておくことが大切です。
資本金を口座に入れたら通帳のコピーを取り、払込証明書を作成しておきます。

5.法務局に登記申請を行う

登記申請に必要な書類を準備したら、会社の本店所在地を管轄する法務局で登記申請を行います。
管轄が違っていると登記申請を行っても受理されなくなってしまうので、事前に法務局のホームページでチェックしておくと安心です。
法務局に登記申請する方法は3種類に分かれます。

  • 法務局の窓口
  • 郵送
  • オンライン

法務局の窓口で申請する場合

法務局に出向き、窓口で直接書類を提出する方法です。
提出する書類に不備がないか窓口である程度チェックしてもらえるため、初めての登記申請が不安な方に適しています。
窓口で申請する場合、法務局が申請を受け付けた当日が会社日として設定されます。

提出する書類の不備が特に見つからなければ、申請から1週間~10日程度で登記が完了しますが、登記が完了した旨が通知されることはありません。
逆に不備があった場合は法務局から連絡が来て、指摘された箇所を期限内に再提出することになります。

郵送で申請する場合

管轄する法務局に対して書類一式を郵送で提出する方法です。
郵送方法などにルールなどは特にないものの、配達状況を追跡できる「簡易書留」や郵便局窓口で引き受けたことを証明してもらえる「特定記録郵便」などを活用すると安心です。
管轄する法務局が遠方にあったり、行く時間がなかったりする人は郵送での申請を活用してください。

郵送で申請した場合、登記が完了するまでの期間は窓口と同様で1週間~10日程度となります。
こちらも提出した書類に不備があった場合は法務局から指摘があるため、期限までに再提出しなくてはなりません。
再提出は再び郵送するのも良いし、法務局の窓口へ修正した書類を直接提出することも可能です。

オンラインで申請する場合

商業登記はオンラインからも申請できます。
法務局の登記・供託オンライン申請システム「登記ねっと 供託ねっと」から専用のソフトをダウンロードし、申請手続きを行います。
オンラインなので自宅から空いた時間を利用して申請することが可能です。万が一提出書類に不備があった場合でも専用ソフトを通じて訂正できます。

ただし、オンライン上で登記をするためには申請人による電子署名が必要です。電子定款を作成していない場合は電子証明書を取得する必要もあります。
PC操作やインターネットでの申請に慣れていない方だと少しハードルが高いと感じてしまうかもしれません。

商業登記・法人登記における注意点


商業登記・法人登記において、様々な注意点もあります。どのような注意点に気を付けるべきかの解説です。

定款の認証と登記申請に費用がかかる

会社を設立する際には、定款認証と登記申請でそれぞれ費用が発生します。定款認証は認証する公証人への手数料として支払う費用です。
資本金の額に応じて支払う手数料も異なってきます。

資本金額 手数料
100万円未満 3万円
100万円以上300万円未満 4万円
300万円以上 5万円

また、定款の印紙代(4万円)と定款謄本の手数料として約2,000円(ページ数によって変動)もかかってきます。ただし、電子定款の場合は印紙代4万円が不要です。
登記申請では、登録免許税として資本金の1,000分の7または15万円のいずれか金額が大きいほうを納めなくてはなりません。

例えば資本金1,000万円だと7÷1,000×1,000万=7万円になり、15万円のほうが大きいので15万円の登録免許税を納めることになります。
資本金が約2,140万円以上になると15万円以上の登録免許税が必要です。

提出書類の不備に注意する

登記で提出する書類に不備があると再提出しなくてはなりません。
再提出となるとその分手間も増えてしまうので、提出する前にきちんと確認して不備がないようにすることが大切です。
特にチェックを受けやすいのは以下の内容です。

  • 必要事項の記入漏れがある
  • 商号や所在地、代表者の住所が誤っている
  • 登録免許税を収入印紙で貼る場合、貼り忘れてしまった
  • 実印を押し忘れている

書類の不備に不安がある方は、登記申請に必要な書類を自分ではなく司法書士に相談し、代行で作成してもらうことも検討してみてください。
司法書士は登記申請の手続きを代行することが可能です。また、定款作成や定款認証まで代行してもらえます。

登記簿の内容を変えるなら変更登記が必要になる

経営を続けていく中で、登記簿の内容が変更されることもあります。登記簿の内容が変更になる場合は「変更登記」をすることが大切です。
変更登記は登記申請書と株主総会議事録という2つの書類が必要です。
手続きは管轄の法務局で直接申請する方法と、オンラインで電子申請をする方法の2種類から選べます。
変更してから2週間以内に手続きを行う必要があり、これを怠ると過料が課せられるので注意しなくてはなりません。
また、変更登記の際にも登録免許税を納めることになります。

まとめ・商業登記と法人登記の違いを知って起業の準備をしよう

商業登記と法人登記は組織形態によって呼び方が変わってくるものの、手続きの流れなどで大きな違いはありません。
会社を設立する際には登記が必須となるため、商業登記・法人登記について理解し、準備を進めていくことが大切です。

創業手帳(冊子版)では、登記も含めて会社設立に必要な情報などをご紹介しています。起業前後はもちろん、経営を続けていく中で知っておきたい情報もお届けしているので、ぜひお役立てください。

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(編集:創業手帳編集部)

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